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【最終章】異世界改革
脳筋と脳筋
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ドラーグが金色に輝く双羽をはためかせ、凄まじい風を巻き起こしながら、毎度おなじみのナフレア近くの領主館へと降り立った。
エミリは地面に降りるなり、ふらふらと足元をおぼつかせてその場にへたり込む。
初めてのドラゴン――いや、正確にはドラーグ搭乗体験を終えた直後である。
例えるなら、某山のふもとにある遊園地のジェットコースターに、安全バーなしで乗るようなものだった。
高所恐怖症の人間なら確実に気絶コースだろう。もしこの世界に転移してきた人に会うことがあるならば、彼女は全力でこう忠告するに違いない——「ドラゴン的な乗り物はおすすめしません」と。
「エミリさまーっ! ドラーグで来たんですね!?」
領主館の扉が勢いよく開き、ピリカが満面の笑みで飛び出してくる。
今やすっかり領主館の常連――いや、もはや居候と言ってもいい。
魔族領に帰る気配はなく、領主デラルドのそばに張り付いている姿は、押しかけ女房そのものだった。
これほど分かりやすいアピールをしているにもかかわらず、肝心のデラルドがどこまで気づいているのか、エミリには見当もつかない。
ピリカに抱きつかれながら、エミリは周囲に目をやる。ふと、前回来たときと領主館の様子が違っていることに気づいた。
「あれ? 騎士たちはどこいったんです?」
かつて、エルヴィンとデラルドが独立を宣言した際、領主館を包囲していたカリア王国の騎士たち。
魔石をエネルとピリカが回収したあとも、しばらくは陣を張っていたはずだ。
エミリはその状況をエルヴィンに任せ、魔王城へ戻っていたが……周囲に見慣れた鎧は見当たらない。
(もしかして……ディランさんがこっちについたことで、統率が取れなくなって撤退した? だとしたら王都の防備が厚くなってるかも……厄介ね)
そう思った矢先、ピリカがぱっと手を挙げて言った。
「あ! 数名は王都に戻りましたけど、ほとんどはこちらに残ってるんですよ!」
「残ってる……?」
ピリカの説明によると、包囲中に魔族たちと接触した騎士の一部が、彼らの実態を知ったらしい。
想像していたような残虐な化け物ではなく、むしろ誇り高く、地位や権力に興味はなく、己の力と信念を貫く存在。
その在り方に、騎士たちは恐怖よりも敬意を抱くようになったのだという。
「つまり……脳筋と脳筋は、言葉よりも拳で理解し合ったってことね」
エミリがぼそりと呟くと、エネルが肩をすくめる。
「その脳筋ってやつ、前から気になってたんだが……結局なんなんだ?」
エミリは苦笑を浮かべ、肩をすくめて腕を軽く組んだ。少し気まずそうに目を逸らしながら、言葉を探すように口を開く。
「えーっと……頭より先に体が動く人たちのことかな。考えるより殴るが早いタイプ?」
エネルはしばし無言でエミリを見つめ、やがて小さく鼻で笑った。
「なるほど……だが、そうじゃない者がいるのか?」
「さすが、力自慢大会第二位の方のご意見ね……」
エミリは半眼になりながら皮肉を返す。だがエネルはまったく理解した様子もなく、首をかしげて本気で考え込んでいる。
「……考える前に殴る方が早いだろ?」
「……もういいわ」
エミリは深いため息をつき、諦め半分の笑みを浮かべた。
領主館の周囲には、確かに人間と魔族が入り混じって訓練する姿が見える。
まだぎこちない空気はあるものの、そこには確かに共存の形が芽吹きつつあった。
エミリはその光景を見つめ、胸の奥が少しだけ温かくなる。
ふと視線を戻すと、すでに開け放たれた扉のそばにエルヴィンが寄りかかっていた。
腕を組み微かに笑みを浮かべながら、どうやら先ほどから話を聞いていたらしい。
「まったく……みんな脳筋でまとめられてしまうとはね。俺まで同類にされていそうだ」
エミリは思わず吹き出しそうになりながらも、すぐ真顔に戻る。
「エルヴィンさん。ちょうどよかった。あなたに話があって来たんです」
彼は興味深そうに片眉を上げ、部屋の中へ足を踏み入れた。
エミリは一歩近づき、真剣な眼差しで言った。
「……私、これから王都へ行こうと思ってます。
王と直接話をしなければ、何も変わりません。
机の上で決められた正義に、魔族たちが潰されるだけです」
短い沈黙のあと、エルヴィンが小さく息を吐いた。
「そうだな……俺も逃げてばかりではだめだ。
父上と、向き合わなくては」
その表情には、迷いよりも覚悟の色があった。
長い間背を向けてきた現実に、ようやく立ち向かおうとする男の顔だった。
エミリは地面に降りるなり、ふらふらと足元をおぼつかせてその場にへたり込む。
初めてのドラゴン――いや、正確にはドラーグ搭乗体験を終えた直後である。
例えるなら、某山のふもとにある遊園地のジェットコースターに、安全バーなしで乗るようなものだった。
高所恐怖症の人間なら確実に気絶コースだろう。もしこの世界に転移してきた人に会うことがあるならば、彼女は全力でこう忠告するに違いない——「ドラゴン的な乗り物はおすすめしません」と。
「エミリさまーっ! ドラーグで来たんですね!?」
領主館の扉が勢いよく開き、ピリカが満面の笑みで飛び出してくる。
今やすっかり領主館の常連――いや、もはや居候と言ってもいい。
魔族領に帰る気配はなく、領主デラルドのそばに張り付いている姿は、押しかけ女房そのものだった。
これほど分かりやすいアピールをしているにもかかわらず、肝心のデラルドがどこまで気づいているのか、エミリには見当もつかない。
ピリカに抱きつかれながら、エミリは周囲に目をやる。ふと、前回来たときと領主館の様子が違っていることに気づいた。
「あれ? 騎士たちはどこいったんです?」
かつて、エルヴィンとデラルドが独立を宣言した際、領主館を包囲していたカリア王国の騎士たち。
魔石をエネルとピリカが回収したあとも、しばらくは陣を張っていたはずだ。
エミリはその状況をエルヴィンに任せ、魔王城へ戻っていたが……周囲に見慣れた鎧は見当たらない。
(もしかして……ディランさんがこっちについたことで、統率が取れなくなって撤退した? だとしたら王都の防備が厚くなってるかも……厄介ね)
そう思った矢先、ピリカがぱっと手を挙げて言った。
「あ! 数名は王都に戻りましたけど、ほとんどはこちらに残ってるんですよ!」
「残ってる……?」
ピリカの説明によると、包囲中に魔族たちと接触した騎士の一部が、彼らの実態を知ったらしい。
想像していたような残虐な化け物ではなく、むしろ誇り高く、地位や権力に興味はなく、己の力と信念を貫く存在。
その在り方に、騎士たちは恐怖よりも敬意を抱くようになったのだという。
「つまり……脳筋と脳筋は、言葉よりも拳で理解し合ったってことね」
エミリがぼそりと呟くと、エネルが肩をすくめる。
「その脳筋ってやつ、前から気になってたんだが……結局なんなんだ?」
エミリは苦笑を浮かべ、肩をすくめて腕を軽く組んだ。少し気まずそうに目を逸らしながら、言葉を探すように口を開く。
「えーっと……頭より先に体が動く人たちのことかな。考えるより殴るが早いタイプ?」
エネルはしばし無言でエミリを見つめ、やがて小さく鼻で笑った。
「なるほど……だが、そうじゃない者がいるのか?」
「さすが、力自慢大会第二位の方のご意見ね……」
エミリは半眼になりながら皮肉を返す。だがエネルはまったく理解した様子もなく、首をかしげて本気で考え込んでいる。
「……考える前に殴る方が早いだろ?」
「……もういいわ」
エミリは深いため息をつき、諦め半分の笑みを浮かべた。
領主館の周囲には、確かに人間と魔族が入り混じって訓練する姿が見える。
まだぎこちない空気はあるものの、そこには確かに共存の形が芽吹きつつあった。
エミリはその光景を見つめ、胸の奥が少しだけ温かくなる。
ふと視線を戻すと、すでに開け放たれた扉のそばにエルヴィンが寄りかかっていた。
腕を組み微かに笑みを浮かべながら、どうやら先ほどから話を聞いていたらしい。
「まったく……みんな脳筋でまとめられてしまうとはね。俺まで同類にされていそうだ」
エミリは思わず吹き出しそうになりながらも、すぐ真顔に戻る。
「エルヴィンさん。ちょうどよかった。あなたに話があって来たんです」
彼は興味深そうに片眉を上げ、部屋の中へ足を踏み入れた。
エミリは一歩近づき、真剣な眼差しで言った。
「……私、これから王都へ行こうと思ってます。
王と直接話をしなければ、何も変わりません。
机の上で決められた正義に、魔族たちが潰されるだけです」
短い沈黙のあと、エルヴィンが小さく息を吐いた。
「そうだな……俺も逃げてばかりではだめだ。
父上と、向き合わなくては」
その表情には、迷いよりも覚悟の色があった。
長い間背を向けてきた現実に、ようやく立ち向かおうとする男の顔だった。
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