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【最終章】異世界改革
おかしもが合言葉
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エネルと共に城の近くまで来てみたものの、門を守るはずの騎士たちの姿は一人もない。耳を澄ませば、風の音しか聞こえない。
固く閉ざされた城門を見上げながら、エミリはどう動くべきか頭を悩ませていた。
「ねえ、これ……エルヴィンさんが来ても中に入れるの?」
普段なら、門番が身分を確認して門を開けるはずだろう。しかし、誰もいない。
「まあ、中には誰かしらいるだろう。それか、魔術かなんかで開くんじゃないか?」
エネルは興味なさそうに答えるが、エミリはどうしても気になる。
「だっておかしくない? 魔王城へ兵を出してるっていうのに、本拠地がこんなに静まり返ってるなんて。普通、念のため誰かしら残して守るでしょ?」
確かに、とエネルは顎に手をあて少し考え込む。
「市民たちが、この城は魔王に乗っ取られてると思ってるのと同じで、騎士たちもそう信じてるのかもな。だったら、ここを守る意味はないし魔王城へ向かった方が筋は通る」
「じゃあ……王様は? 王様を置いて行動しちゃってるってこと?」
「さあな。エルヴィンが来ないと何もわからん」
謎ばかりだった。
エミリとしては、エルヴィンの仲介で王と話し合いをするつもりだった。しかし、想像以上に状況が混沌としていて、どう動けばいいのかわからない。
「避難してる人たちに出くわして、スムーズには来られないかも。エルヴィンさんたちが到着するまで、まだ時間かかりそうよね……」
「だろうな……」
「もう、待ってるのも変に不安になるだけだし……ディランさんのところに加勢しに行っちゃいましょ!」
その瞬間、エネルは露骨に嫌そうな顔をした。
「戦の真っ最中にドラゴンに乗って加勢って……ファンタジー!」
「ドラーグだ」
エミリがぷいっとそっぽを向き、エネルは深いため息をついた。
「盛り上がっているところ悪いがその必要はないかもな」
「は?」
その時、エネルは手で待てのポーズをエミリにする。魔法での通信が入り、言葉を遮られたのだ。
「——今ディランと共に向かった魔族から通信が入った。うまく収めたらしいぞ。やはり魔王に乗っ取られたと思っていたらしい」
うまく収まったのは良いが、これまでテンプレにありそうな派手な活躍もできていない。
ドラゴンにまたがり聖剣を振りかざし戦いを終わらせる——そんなビッグチャンスを逃した気がして、エミリは少し肩を落とした。
「あ、そういえば聖剣持ってないや」
「お前、時々変なこと言うよな……まあいいが——?!」
その時、不意に地の底から突き上げるような大きな衝撃が王都全体を揺らした。
建物がミシッと軋み、石畳がわずかに震える。
「な、なんだ!?」
バランスを崩したエネルの横で、まだ王都に残っていた住民も悲鳴をあげて混乱する。
(震度三くらいね……)
だがエミリだけは、一瞬で状況を把握していた。
地震とともに育った日本人にとって、この程度の揺れ自体は大したことはない。
「今の震度二くらい?」「いや三はあったでしょ」
そんな呑気な会話が始まるレベル。
けれど、それは“耐震バッチリな日本”だからこそ言える余裕だ。
この世界は違う。
耐震設計なんて概念はないし、建物の造りも脆い。
日本以外の外国でよくあるように、ちょっとした揺れで建物が崩れる危険すらある。
(まずい……揺れそのものより建物が危険!)
エミリは大声で叫んだ。
「みなさん!建物から離れてください!壁から離れて広場へ!!」
突然の指示に人々は戸惑ったが、エミリの必死の声に押され、数人が彼女について避難し始める。
エミリは揺れを見て固まっていたエネルの腕をつかむ。
「エネルも!建物のそばは危ないから!」
「なんなんだ、これは魔術か!?」
「原因はどうでもいいの!倒れてくる物から離れるのが最優先!」
揺れはすぐに収まったが、広場に避難した住民たちはほっと息をついた。
「嬢ちゃんのおかげで助かったよ……」
「指示が的確だったな、ありがとう」
エミリは少し誇らしげに胸を張った。
『押さない、駆けない、喋らない、戻らない』を呪文のように覚え、小学生のころから何十回も避難訓練を重ね、防災頭巾を椅子のクッション代わりに常備している。そんな国は、他を探してもまず見つからないだろう。
異世界でも、海外でも、日本人ならほとんどが身につけているこうした知識が、いざというとき命を救うのだ。
「……地面がよく揺れる国で暮らしていたので、こういうの慣れてまして」
エネルはまじまじとエミリを見た。
「お前……揺れの中で全然動じてなかったな。普通は足がすくむぞ」
「慣れって怖いね……ほんとに」
エミリは小さく笑い、再び赤黒い霧に覆われた王城を見上げた。
固く閉ざされた城門を見上げながら、エミリはどう動くべきか頭を悩ませていた。
「ねえ、これ……エルヴィンさんが来ても中に入れるの?」
普段なら、門番が身分を確認して門を開けるはずだろう。しかし、誰もいない。
「まあ、中には誰かしらいるだろう。それか、魔術かなんかで開くんじゃないか?」
エネルは興味なさそうに答えるが、エミリはどうしても気になる。
「だっておかしくない? 魔王城へ兵を出してるっていうのに、本拠地がこんなに静まり返ってるなんて。普通、念のため誰かしら残して守るでしょ?」
確かに、とエネルは顎に手をあて少し考え込む。
「市民たちが、この城は魔王に乗っ取られてると思ってるのと同じで、騎士たちもそう信じてるのかもな。だったら、ここを守る意味はないし魔王城へ向かった方が筋は通る」
「じゃあ……王様は? 王様を置いて行動しちゃってるってこと?」
「さあな。エルヴィンが来ないと何もわからん」
謎ばかりだった。
エミリとしては、エルヴィンの仲介で王と話し合いをするつもりだった。しかし、想像以上に状況が混沌としていて、どう動けばいいのかわからない。
「避難してる人たちに出くわして、スムーズには来られないかも。エルヴィンさんたちが到着するまで、まだ時間かかりそうよね……」
「だろうな……」
「もう、待ってるのも変に不安になるだけだし……ディランさんのところに加勢しに行っちゃいましょ!」
その瞬間、エネルは露骨に嫌そうな顔をした。
「戦の真っ最中にドラゴンに乗って加勢って……ファンタジー!」
「ドラーグだ」
エミリがぷいっとそっぽを向き、エネルは深いため息をついた。
「盛り上がっているところ悪いがその必要はないかもな」
「は?」
その時、エネルは手で待てのポーズをエミリにする。魔法での通信が入り、言葉を遮られたのだ。
「——今ディランと共に向かった魔族から通信が入った。うまく収めたらしいぞ。やはり魔王に乗っ取られたと思っていたらしい」
うまく収まったのは良いが、これまでテンプレにありそうな派手な活躍もできていない。
ドラゴンにまたがり聖剣を振りかざし戦いを終わらせる——そんなビッグチャンスを逃した気がして、エミリは少し肩を落とした。
「あ、そういえば聖剣持ってないや」
「お前、時々変なこと言うよな……まあいいが——?!」
その時、不意に地の底から突き上げるような大きな衝撃が王都全体を揺らした。
建物がミシッと軋み、石畳がわずかに震える。
「な、なんだ!?」
バランスを崩したエネルの横で、まだ王都に残っていた住民も悲鳴をあげて混乱する。
(震度三くらいね……)
だがエミリだけは、一瞬で状況を把握していた。
地震とともに育った日本人にとって、この程度の揺れ自体は大したことはない。
「今の震度二くらい?」「いや三はあったでしょ」
そんな呑気な会話が始まるレベル。
けれど、それは“耐震バッチリな日本”だからこそ言える余裕だ。
この世界は違う。
耐震設計なんて概念はないし、建物の造りも脆い。
日本以外の外国でよくあるように、ちょっとした揺れで建物が崩れる危険すらある。
(まずい……揺れそのものより建物が危険!)
エミリは大声で叫んだ。
「みなさん!建物から離れてください!壁から離れて広場へ!!」
突然の指示に人々は戸惑ったが、エミリの必死の声に押され、数人が彼女について避難し始める。
エミリは揺れを見て固まっていたエネルの腕をつかむ。
「エネルも!建物のそばは危ないから!」
「なんなんだ、これは魔術か!?」
「原因はどうでもいいの!倒れてくる物から離れるのが最優先!」
揺れはすぐに収まったが、広場に避難した住民たちはほっと息をついた。
「嬢ちゃんのおかげで助かったよ……」
「指示が的確だったな、ありがとう」
エミリは少し誇らしげに胸を張った。
『押さない、駆けない、喋らない、戻らない』を呪文のように覚え、小学生のころから何十回も避難訓練を重ね、防災頭巾を椅子のクッション代わりに常備している。そんな国は、他を探してもまず見つからないだろう。
異世界でも、海外でも、日本人ならほとんどが身につけているこうした知識が、いざというとき命を救うのだ。
「……地面がよく揺れる国で暮らしていたので、こういうの慣れてまして」
エネルはまじまじとエミリを見た。
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エミリは小さく笑い、再び赤黒い霧に覆われた王城を見上げた。
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