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異世界の仕事改革
あるのは二択
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人間たちと共にタルーア村へ戻ると、まずは彼らを少し休ませることにした。
そのあいだ、エミリはチーム・エミリ――つまり、いつもの仲間たちを集めて、少し話をすることにした。
「そもそもなんですけど、森に魔物がいたんですね? アレイスさんもエルヴィンさんも、初めて会った時よくご無事で」
「俺たちも遭遇したが、運が良かった。それより、アレイスが“追っ手”にやられていたからな……あの時は、エミリ殿とピリカ殿が来てくれて助かった」
アレイスは静かに頷いた。
「エミリ様は知らないかもしれませんが、魔族の前には魔物は寄ってこないんです。だから、いつも私と一緒にいるエミリ様は遭遇することがないんですよ」
と、ピリカが説明する。
「なるほど、魔族補正ですか。奥が深いですねー」
エミリはうんうんと頷きながら、ふと思い出した疑問を口にした。
「ところで、魔石ってどこにあるんですか? 掘るんですか? 拾うんですか?」
その問いに答えたのは、村長デランだった。
「森のあちこちに埋まっとる。この辺りは魔素が濃いからのう」
「ということは……魔素がなんかして、石が魔石になると……」
「まあ、そんな感じじゃ。わしらにとっちゃただの石じゃが、人間にとっては魔法の代用にもなる資源らしい。迷惑な話じゃよ」
エミリは「なるほど~」と呟きながら、エルヴィンの表情に気づいた。彼は黙って、何かを考え込んでいる。
「エルヴィンさん? 大丈夫ですか?」
「……ああ。ちょっと気になることがあってな。カリア王国には、もともと魔石の備蓄がそれなりにあったはずなんだ。召喚に使ったとしても、急いでかき集めるほど枯渇するとは思えない。何かが……おかしい」
「召喚が失敗して、もう一回やり直す必要があったとか…?」
アレイス言葉に、エルヴィンが目を細めて頷く。
その時、ずっと黙っていたエネルがぽつりと口を開いた。
「……お前ら、なんでそんなにカリア王国の事情に詳しい?」
その問いに、場が静まり返る。数秒の沈黙のあと、エルヴィンがため息をついて口を開いた。
「俺は…カリア王国の第二王子だ。そしてアレイスは、俺の護衛をしていた」
静かな告白だった。けれど、エミリにはその重みがずしりと伝わってきた。
(ギャップ萌え銀髪魔族ナンバーツーに、BL枠(もしくはポリコレ)王子とその恋人兼護衛、可愛いドジっ子魔法使い。
どう見ても全員キャラが立ちすぎでは?
……で、私はというと、能力的にどう考えてもセリフが多いだけの女A枠!!そろそろ……なんかこう、覚醒イベント来てもよいのでは?)
試しに自分の手を見つめ、ゆっくりと開いたり閉じたりしてみる。が――なにか炎が出るわけでも、光が灯るわけでもない。
「エミリ様、どうかされましたか?」
「いえ、しょうもないこと考えてました。お気になさらず」
軽く笑ってごまかしながら、エミリは王子の告白にざわつく心を抑えつつ、静かに場を見渡した。
全員が重たいものを抱えながらも、今この瞬間だけは同じ方向を見ている――そう感じた。
彼女は腰を上げ、みんなに視線を配りながら言った。
「じゃあ、今ある情報を整理しましょうか」
自然と、皆の視線が集まる。
「まず。召喚魔法のために、大量の魔石が必要になってる。その量は“普通”じゃない。それってつまり……召喚をやり直す必要があった――失敗した、もしくは“意図した結果”が得られなかった」
エミリは少し間を置き、言葉を丁寧に選ぶように続けた。
「たとえば――召喚は成功したが、呼び出す場所が違っていた……とか?」
その仮説に、全員が思わず息を呑む。
「だから、向こうは“予定外の結果”に焦って、もう一度召喚しようとしてる。で、そのためにまた魔石をかき集めてる……そう考えると、話が繋がりますよね」
エルヴィンが顎に手を当て、真剣な顔で言葉をつなぐ。
「……確かに、エミリ殿が魔族の森に現れたのはもしかすると…?」
それを聞いてエミリは頷く。
「……というわけで、いろいろ事情は見えてきました。召喚魔法がどうやら怪しい、魔石の備蓄は妙に減ってる、そして今ここには、疲れきった人たちが何十人と寝ていると。」
エミリは周囲を見渡し、真剣な声で続ける。
「とりあえず――人間の皆さんの現状を改善すること。それと、魔石を盗まなくても済む仕組みを考えること。まずはそこからだと思うんです」
少しだけ間を置いて、肩の力を抜くように笑った。
「手始めに、人間の皆さんの問題から着手しましょう。私の世界では…、職場に深刻な問題が起きたとき、選択肢は二つしかありません」
みんながじっと彼女を見つめる中、エミリはにやりと笑う。
「デモとストライキです!」(※あくまでも森沢エミリの考えです)
「で、でも?」
「すと?すとら…?」
エミリはみんなを、置いてきぼりにすると自分一人で納得した様に話をつづける。
「今の彼らって、完全にブラック企業の新人研修モードなんですよ。
“仕事ができない自分が悪い”って刷り込まれてるから、理不尽でもがむしゃらに要求に応えようとするんです。
でも、“え、働かなくてもいいの?”って気づく人が出てくれば、一気にやる気になってくれるでしょう。群衆心理ってやつですね。
最初は一人で動けなくても、誰かが声を上げると、みんながそれに引き寄せられて動き出すんです」
エネルが少し考えてから呟く。
「…全くよくわからないが…何をどうやってやるのかだけは教えてくれ…」
そのあいだ、エミリはチーム・エミリ――つまり、いつもの仲間たちを集めて、少し話をすることにした。
「そもそもなんですけど、森に魔物がいたんですね? アレイスさんもエルヴィンさんも、初めて会った時よくご無事で」
「俺たちも遭遇したが、運が良かった。それより、アレイスが“追っ手”にやられていたからな……あの時は、エミリ殿とピリカ殿が来てくれて助かった」
アレイスは静かに頷いた。
「エミリ様は知らないかもしれませんが、魔族の前には魔物は寄ってこないんです。だから、いつも私と一緒にいるエミリ様は遭遇することがないんですよ」
と、ピリカが説明する。
「なるほど、魔族補正ですか。奥が深いですねー」
エミリはうんうんと頷きながら、ふと思い出した疑問を口にした。
「ところで、魔石ってどこにあるんですか? 掘るんですか? 拾うんですか?」
その問いに答えたのは、村長デランだった。
「森のあちこちに埋まっとる。この辺りは魔素が濃いからのう」
「ということは……魔素がなんかして、石が魔石になると……」
「まあ、そんな感じじゃ。わしらにとっちゃただの石じゃが、人間にとっては魔法の代用にもなる資源らしい。迷惑な話じゃよ」
エミリは「なるほど~」と呟きながら、エルヴィンの表情に気づいた。彼は黙って、何かを考え込んでいる。
「エルヴィンさん? 大丈夫ですか?」
「……ああ。ちょっと気になることがあってな。カリア王国には、もともと魔石の備蓄がそれなりにあったはずなんだ。召喚に使ったとしても、急いでかき集めるほど枯渇するとは思えない。何かが……おかしい」
「召喚が失敗して、もう一回やり直す必要があったとか…?」
アレイス言葉に、エルヴィンが目を細めて頷く。
その時、ずっと黙っていたエネルがぽつりと口を開いた。
「……お前ら、なんでそんなにカリア王国の事情に詳しい?」
その問いに、場が静まり返る。数秒の沈黙のあと、エルヴィンがため息をついて口を開いた。
「俺は…カリア王国の第二王子だ。そしてアレイスは、俺の護衛をしていた」
静かな告白だった。けれど、エミリにはその重みがずしりと伝わってきた。
(ギャップ萌え銀髪魔族ナンバーツーに、BL枠(もしくはポリコレ)王子とその恋人兼護衛、可愛いドジっ子魔法使い。
どう見ても全員キャラが立ちすぎでは?
……で、私はというと、能力的にどう考えてもセリフが多いだけの女A枠!!そろそろ……なんかこう、覚醒イベント来てもよいのでは?)
試しに自分の手を見つめ、ゆっくりと開いたり閉じたりしてみる。が――なにか炎が出るわけでも、光が灯るわけでもない。
「エミリ様、どうかされましたか?」
「いえ、しょうもないこと考えてました。お気になさらず」
軽く笑ってごまかしながら、エミリは王子の告白にざわつく心を抑えつつ、静かに場を見渡した。
全員が重たいものを抱えながらも、今この瞬間だけは同じ方向を見ている――そう感じた。
彼女は腰を上げ、みんなに視線を配りながら言った。
「じゃあ、今ある情報を整理しましょうか」
自然と、皆の視線が集まる。
「まず。召喚魔法のために、大量の魔石が必要になってる。その量は“普通”じゃない。それってつまり……召喚をやり直す必要があった――失敗した、もしくは“意図した結果”が得られなかった」
エミリは少し間を置き、言葉を丁寧に選ぶように続けた。
「たとえば――召喚は成功したが、呼び出す場所が違っていた……とか?」
その仮説に、全員が思わず息を呑む。
「だから、向こうは“予定外の結果”に焦って、もう一度召喚しようとしてる。で、そのためにまた魔石をかき集めてる……そう考えると、話が繋がりますよね」
エルヴィンが顎に手を当て、真剣な顔で言葉をつなぐ。
「……確かに、エミリ殿が魔族の森に現れたのはもしかすると…?」
それを聞いてエミリは頷く。
「……というわけで、いろいろ事情は見えてきました。召喚魔法がどうやら怪しい、魔石の備蓄は妙に減ってる、そして今ここには、疲れきった人たちが何十人と寝ていると。」
エミリは周囲を見渡し、真剣な声で続ける。
「とりあえず――人間の皆さんの現状を改善すること。それと、魔石を盗まなくても済む仕組みを考えること。まずはそこからだと思うんです」
少しだけ間を置いて、肩の力を抜くように笑った。
「手始めに、人間の皆さんの問題から着手しましょう。私の世界では…、職場に深刻な問題が起きたとき、選択肢は二つしかありません」
みんながじっと彼女を見つめる中、エミリはにやりと笑う。
「デモとストライキです!」(※あくまでも森沢エミリの考えです)
「で、でも?」
「すと?すとら…?」
エミリはみんなを、置いてきぼりにすると自分一人で納得した様に話をつづける。
「今の彼らって、完全にブラック企業の新人研修モードなんですよ。
“仕事ができない自分が悪い”って刷り込まれてるから、理不尽でもがむしゃらに要求に応えようとするんです。
でも、“え、働かなくてもいいの?”って気づく人が出てくれば、一気にやる気になってくれるでしょう。群衆心理ってやつですね。
最初は一人で動けなくても、誰かが声を上げると、みんながそれに引き寄せられて動き出すんです」
エネルが少し考えてから呟く。
「…全くよくわからないが…何をどうやってやるのかだけは教えてくれ…」
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