14 / 102
呪いの皇子と森の片隅のお花屋さん
怪しい香2
しおりを挟む
城内にたどり着くと、案内役の侍女がすぐに現れた。彼女の顔を見た途端、オルガの鼻がかすかにひくつく。
(……このひとも、少し臭い)
それでもオルガは、なにも言わずに微笑んだ。
「こんにちは!」
侍女はぎこちなく頭を下げ、無言で歩き出す。
オルガとマッシモがその背を追おうとした、そのとき。
「……なんでここにいる?」
石畳に響く硬い声。
曲がり角の向こうから現れたのは、帝国騎士団副団長レオニダス。そして、その後ろで気だるそうに歩いてくる長身の男――騎士団長ルーカス。
「おー、マッシモと…君がもしかしてオルガ嬢?迎えに行く手間が省けたねぇ。」
ルーカスはにやりと笑うが、レオニダスは少し眉をひそめたまま、オルガを見下ろす。
「予定より二日早いが…できたのか?」
「こんにちは!石頭のー、えーと」
「レオニダスだ。なんだ石頭とは?」
「そう、それそれ!なんかこう……名前からして硬そうだよね。石頭って感じ!」
言った瞬間、オルガの隣でマッシモが小さく咳払いする。
ルーカスが肩を震わせながら笑った。
「ははっ、いいじゃないか。俺もあいつのことはそう呼んでるよ、心の中でな!」
「団長!?」
レオニダスがぴくりと眉を動かす。
「事実だしな」
マッシモがぼそりと添えて、オルガはにんまり笑った。
「うんうん、ね?石頭副団長♪」
「……口の利き方には気をつけろ」
「わかったってば」
オルガはさらりと返すと、懐からそっと布袋を取り出して見せた。
「この子が“咲きたい”って言ってたから来ちゃったよ!お迎えの件はごめんね。」
ルーカスが目を細め、マッシモと一度目を合わせる。
「……本当に咲くのか?」
「うん。今回は大丈夫だと思う!」
オルガの瞳は真っ直ぐで、飄々としながらもどこかに芯がある。
その様子を見て、ルーカスがにやりと笑った。
「いいねぇ。嫌いじゃない。……よし、じゃあお姫様とお付きの方々で、魔法師団長のとこに行こうか。」
「“お姫様”じゃなくて、“お花屋さん”だよ。」
「おう、失礼。花の姫様とお呼びしよう。」
「2人の会話を聞いていると深刻さにかけるんだが」
と、マッシモが呆れたように言って、一行は城の奥へと足を進める。
(……ルーカスとレオニダスもちょっと、匂う)
すぐそばにいるわけでもないのに、ほんのわずかに、あの臭いが残っている。もしかして——
(騎士団に内部にもいるのかも…)
疑念はあっても、声には出さない。
扉の向こう。種が望む場所へと、今はただ、進むだけだった。
(……このひとも、少し臭い)
それでもオルガは、なにも言わずに微笑んだ。
「こんにちは!」
侍女はぎこちなく頭を下げ、無言で歩き出す。
オルガとマッシモがその背を追おうとした、そのとき。
「……なんでここにいる?」
石畳に響く硬い声。
曲がり角の向こうから現れたのは、帝国騎士団副団長レオニダス。そして、その後ろで気だるそうに歩いてくる長身の男――騎士団長ルーカス。
「おー、マッシモと…君がもしかしてオルガ嬢?迎えに行く手間が省けたねぇ。」
ルーカスはにやりと笑うが、レオニダスは少し眉をひそめたまま、オルガを見下ろす。
「予定より二日早いが…できたのか?」
「こんにちは!石頭のー、えーと」
「レオニダスだ。なんだ石頭とは?」
「そう、それそれ!なんかこう……名前からして硬そうだよね。石頭って感じ!」
言った瞬間、オルガの隣でマッシモが小さく咳払いする。
ルーカスが肩を震わせながら笑った。
「ははっ、いいじゃないか。俺もあいつのことはそう呼んでるよ、心の中でな!」
「団長!?」
レオニダスがぴくりと眉を動かす。
「事実だしな」
マッシモがぼそりと添えて、オルガはにんまり笑った。
「うんうん、ね?石頭副団長♪」
「……口の利き方には気をつけろ」
「わかったってば」
オルガはさらりと返すと、懐からそっと布袋を取り出して見せた。
「この子が“咲きたい”って言ってたから来ちゃったよ!お迎えの件はごめんね。」
ルーカスが目を細め、マッシモと一度目を合わせる。
「……本当に咲くのか?」
「うん。今回は大丈夫だと思う!」
オルガの瞳は真っ直ぐで、飄々としながらもどこかに芯がある。
その様子を見て、ルーカスがにやりと笑った。
「いいねぇ。嫌いじゃない。……よし、じゃあお姫様とお付きの方々で、魔法師団長のとこに行こうか。」
「“お姫様”じゃなくて、“お花屋さん”だよ。」
「おう、失礼。花の姫様とお呼びしよう。」
「2人の会話を聞いていると深刻さにかけるんだが」
と、マッシモが呆れたように言って、一行は城の奥へと足を進める。
(……ルーカスとレオニダスもちょっと、匂う)
すぐそばにいるわけでもないのに、ほんのわずかに、あの臭いが残っている。もしかして——
(騎士団に内部にもいるのかも…)
疑念はあっても、声には出さない。
扉の向こう。種が望む場所へと、今はただ、進むだけだった。
15
あなたにおすすめの小説
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜
たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。
だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。
契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。
農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。
そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。
戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!
パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い
☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。
「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」
そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。
スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。
これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる