31 / 103
王宮の毒花と森の片隅のお花屋さん
術者と協力者3
しおりを挟む
魔法師団長ゼーレは、夜通し皇子のために結界と治療魔法を施し続け、疲労の色濃い体に鞭打って、騎士団の職務室へと足を運んだ。
扉を開けると、中には見慣れた顔がふたつ。茶色の長髪に柔和な笑みを浮かべたルーカス団長と、黒髪の仏頂面をした副団長レオニダス。肝心の人物の姿は見当たらない。
「…あの礼儀知らずの小娘が来ていると聞いたのじゃが、気のせいだったかのう?」
ゼーレのつぶやきに、ルーカスとレオニダスはちらりと視線を交わし、少しだけ頬を緩めた。
「先ほど帰りましたよ。王宮にはもううんざりだそうです」
「一日でうんざりってさ、俺なんてどうなるんだ? 毎日、筋肉、筋肉、仏頂面、筋肉だよ? せっかくオルガちゃんに癒してもらおうと思ってたのになあ」
軽口を叩くルーカスを無視して、ゼーレは目線を逸らした。残念がっていると思われるのが癪だった。
「…まあよい。オルガの話はあとじゃ。魔法師の不審死について報告があったと聞いたが、詳しく教えてもらえるかの」
応じたのはレオニダスだった。手元の報告書を一枚差し出しながら、淡々と説明を始める。
「亡くなったのはロラン・ガット、五十一歳。優秀な魔法師でしたが、どの組織にも属さず、個人で依頼を受けていたようです。ゼーレ殿、ご存じですか?」
ゼーレの表情がわずかに揺れた。記憶の底から、若き日の情景が浮かび上がる。
「ああ…知っておる。学園の後輩じゃ。数年に一度の逸材と呼ばれとった。…真っ直ぐすぎるところがあったが、腕は確かじゃった」
ゼーレの沈黙を気にも留めず、レオニダスは言葉を継いだ。
「数年前から呪いに関心を持つようになり、その方面の依頼を専門に請け負っていたようです。そして二年前あたりから、ドレイヴァン侯爵家への出入りが確認されています」
その名を聞いた瞬間、ゼーレの目が鋭く光った。
「…ドレイヴァン侯爵家。エメリナ側妃殿のご実家じゃな。あの一族から情報が漏れるとは珍しい…」
「アルデバラン殿下も本気ってことです。殿下の密偵が何人も動いてますよ、寝る間も惜しんで」
ルーカスが軽く肩をすくめた。
扉を開けると、中には見慣れた顔がふたつ。茶色の長髪に柔和な笑みを浮かべたルーカス団長と、黒髪の仏頂面をした副団長レオニダス。肝心の人物の姿は見当たらない。
「…あの礼儀知らずの小娘が来ていると聞いたのじゃが、気のせいだったかのう?」
ゼーレのつぶやきに、ルーカスとレオニダスはちらりと視線を交わし、少しだけ頬を緩めた。
「先ほど帰りましたよ。王宮にはもううんざりだそうです」
「一日でうんざりってさ、俺なんてどうなるんだ? 毎日、筋肉、筋肉、仏頂面、筋肉だよ? せっかくオルガちゃんに癒してもらおうと思ってたのになあ」
軽口を叩くルーカスを無視して、ゼーレは目線を逸らした。残念がっていると思われるのが癪だった。
「…まあよい。オルガの話はあとじゃ。魔法師の不審死について報告があったと聞いたが、詳しく教えてもらえるかの」
応じたのはレオニダスだった。手元の報告書を一枚差し出しながら、淡々と説明を始める。
「亡くなったのはロラン・ガット、五十一歳。優秀な魔法師でしたが、どの組織にも属さず、個人で依頼を受けていたようです。ゼーレ殿、ご存じですか?」
ゼーレの表情がわずかに揺れた。記憶の底から、若き日の情景が浮かび上がる。
「ああ…知っておる。学園の後輩じゃ。数年に一度の逸材と呼ばれとった。…真っ直ぐすぎるところがあったが、腕は確かじゃった」
ゼーレの沈黙を気にも留めず、レオニダスは言葉を継いだ。
「数年前から呪いに関心を持つようになり、その方面の依頼を専門に請け負っていたようです。そして二年前あたりから、ドレイヴァン侯爵家への出入りが確認されています」
その名を聞いた瞬間、ゼーレの目が鋭く光った。
「…ドレイヴァン侯爵家。エメリナ側妃殿のご実家じゃな。あの一族から情報が漏れるとは珍しい…」
「アルデバラン殿下も本気ってことです。殿下の密偵が何人も動いてますよ、寝る間も惜しんで」
ルーカスが軽く肩をすくめた。
15
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました
佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。
ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。
それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。
義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。
指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。
どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。
異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。
かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。
(※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる