【完結】花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜

ソニエッタ

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王宮の毒花と森の片隅のお花屋さん

術者と協力者3

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魔法師団長ゼーレは、夜通し皇子のために結界と治療魔法を施し続け、疲労の色濃い体に鞭打って、騎士団の職務室へと足を運んだ。

扉を開けると、中には見慣れた顔がふたつ。茶色の長髪に柔和な笑みを浮かべたルーカス団長と、黒髪の仏頂面をした副団長レオニダス。肝心の人物の姿は見当たらない。

「…あの礼儀知らずの小娘が来ていると聞いたのじゃが、気のせいだったかのう?」

ゼーレのつぶやきに、ルーカスとレオニダスはちらりと視線を交わし、少しだけ頬を緩めた。

「先ほど帰りましたよ。王宮にはもううんざりだそうです」

「一日でうんざりってさ、俺なんてどうなるんだ? 毎日、筋肉、筋肉、仏頂面、筋肉だよ? せっかくオルガちゃんに癒してもらおうと思ってたのになあ」

軽口を叩くルーカスを無視して、ゼーレは目線を逸らした。残念がっていると思われるのが癪だった。

「…まあよい。オルガの話はあとじゃ。魔法師の不審死について報告があったと聞いたが、詳しく教えてもらえるかの」

応じたのはレオニダスだった。手元の報告書を一枚差し出しながら、淡々と説明を始める。

「亡くなったのはロラン・ガット、五十一歳。優秀な魔法師でしたが、どの組織にも属さず、個人で依頼を受けていたようです。ゼーレ殿、ご存じですか?」

ゼーレの表情がわずかに揺れた。記憶の底から、若き日の情景が浮かび上がる。

「ああ…知っておる。学園の後輩じゃ。数年に一度の逸材と呼ばれとった。…真っ直ぐすぎるところがあったが、腕は確かじゃった」

ゼーレの沈黙を気にも留めず、レオニダスは言葉を継いだ。

「数年前から呪いに関心を持つようになり、その方面の依頼を専門に請け負っていたようです。そして二年前あたりから、ドレイヴァン侯爵家への出入りが確認されています」

その名を聞いた瞬間、ゼーレの目が鋭く光った。

「…ドレイヴァン侯爵家。エメリナ側妃殿のご実家じゃな。あの一族から情報が漏れるとは珍しい…」

「アルデバラン殿下も本気ってことです。殿下の密偵が何人も動いてますよ、寝る間も惜しんで」

ルーカスが軽く肩をすくめた。

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