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開戦
軍令本部戦域会議室
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案内された部屋には五人の男女が待っていた。
体型も年齢も性別もそれぞれに違った印象を放っていたが、強烈な落ち着きと興味を持って、手堅く立派な調度の丸い机に並んで待っていた。机の上の敷き布は真っ白で執務というよりはなにか食事が始まるような雰囲気ですらあった。
「ゲリエ氏と秘書どの、それとゴルデベルグ大尉をお連れいたしました」
「エイディス少佐、ご苦労でした。下がってよろしい」
エイディス少佐の申告に細面の将軍がうなずた。
「マイヤール少尉。ご苦労。どうやら皮をはがないで済みそうだな。報告の続きを楽しみにしている」
真ん中に座った肩幅のある割に上背の小さな禿頭の将軍が言った。おそらく彼がワージン将軍だろう。
それぞれ、ヨーセン将軍、イズール将軍、ワージン将軍、フェルト将軍、イモノエ将軍であるという。
「――こういう形の席になっていてなんだが、ゲリエくんと初対面というのが全く信じられない。君のことはそこのゴルデベルグ大尉からいろいろな形で聞かされていたし、彼女の積極果敢な報告や論説は全く彼女の可憐な姿とは似ても似つかないもので、それを支えている男性というものがどういう人物なのか様々に想像を巡らせていたのだが、想像を上回る凛々しく若々しい青年ぶりになるほどと奇妙に納得もいった。
前振りが長くなったが、まずは面会の席に応じてくれたことを一同を代表して感謝しよう。今日は時間をつくりよく来てくれた。
彼らもそれぞれに忙しいのだが、君との面会の席の話をしたところ、ゴルデベルグ大尉の活躍とその報告を目にしていて、興味を持っていたということで是非とも話を直接してみたいということで集まってくれた。
もちろん彼らの興味の中心は君の工房がストーン商会に卸している機関車であったわけだが、私とヨーセン将軍との秘密のお楽しみであったはずの新型小銃の話も耳聡く聞きつけて来てね。先ほどの会と相成ったわけだ。こちらの会へは他にも幾人もの将官が来たがったんだが、とりあえず忙しい者達から先に会わすことにした。
さて、早速だが、私たちは君の銃の報告を呼んでそれぞれに先ほど会で数字の出た言い値、百丁二十万発で六十万タレル、で君の小銃をそれぞれに数口づつ買いたいと考えている。三ヶ月で何口準備でき、うち何口を軍都まで運べるかね」
ワージン将軍は全く駆け引きを考えることなく言った。
「正直なところ、確実な在庫実績がないので見積もりでよろしければ、現状小銃の部品の生産実験を行っているところで見積もりでは月産千から二千の間。銃弾の方も運転試験をおこなっているところですが、月産百万から二百万の間というところだと思います。全く単純な計算では三千丁三百万発というところがお約束できるところで、上値で六千丁六百万発というところですが、小銃弾の方は多少実績があるので上値に近い数字が出るはずです」
イズール将軍が手元に報告を引き寄せると探すようにした。
「私がこの銃で気になっているのは弾倉というものなんだが、つまりこれがこの銃の速射速度を支えている心臓の一つで、記述を見るとどうやら取り外し交換をおこなうことで素早くまとめて弾を込める部品のようだ。これは使い捨てなのかね」
「無制限に何度も使えるわけではありませんが、何回か何十回かは繰り返し使えるはずです。簡単なバネ仕掛けですので」
「先ほどの組み合わせの中には説明がなかったが、いくつ付けてくれるものだね」
イズール将軍が尋ねた。
「四十発入りを二つと二十発入りを二つと考えています」
「足りない」
イズール将軍が報告書をめくるようにして記述を指で叩き示すようにして言った。
「――この新型銃は、騎兵への対策として全く完璧な回答を示している。散射という概念だ。騎兵を撃破するに足る最低限の弾幕を短時間に構築する。そして効果を確認する時間を作る。これは全く完璧な戦列銃兵の伴になる。だが、数が揃うまでの当面は捜索騎兵と散兵の装備品だろう。彼らが弾切れで一々帰ってくるようでは話にならない。弾倉の弾込め自体は落ち着いていればできるようだが、歩きながらできるほどに簡単なものでもなさそうだ」
イズール将軍は探していた報告が記述されていた部分を探しだして、満足そうに言った。
「いくらならよろしいと思われますか」
マジンは尋ね返した。
「一丁辺り、大小は八つづつ四百八十発。正直なところ組み合わせまではなんとも言えない。が、四百八十発分の弾倉。捜索騎兵にはそれくらい必要だ」
イズール将軍が断言した。
「高温の薬莢が撒き散らされて馬上での運用は問題ありという記述もどこかにあったが」
ヨーセン将軍が手元の報告書を捲り返した。
「その程度はカゴとか袋とか付けてやればなんとかなるだろう」
イズール将軍が反論した。
「百丁分の追加として六百づつ千二百か。いくらになるね」
ワージン将軍が言った。
「あまりキチンと考えたことがありませんが、まとめて三万タレルというところです」
「一つ二十五タレルか。使い捨てじゃないってなら、まぁ、いいんじゃないか」
ワージン将軍が気軽そうに言った。
「一便が百丁二十万発ということだったが、そこに載せられるものかね」
ヨーセン将軍が尋ねた。
「その前に、生産は間に合うかね。銃の生産の都合もあるだろう」
イズール将軍が確認するように言った。
「そちらは両方共、大丈夫です。生産は別枠ですし、輸送の便にはその程度であれば載せられます」
マジンの言葉に将軍達がうなずき互いの顔を見合わせるようにする。
「ところで、ワージン将軍」
「なんだろうか、フェルト将軍」
それまで熱心に報告書を読んでいたフェルト将軍が手元から目を上げてワージン将軍に尋ねた。
「この、キミのところの汚損試験というやつだが」
「ああ。それ面白いだろう」
フェルト将軍の言葉にワージン将軍は自慢気に応えた。
「面白く興味深い。兵や輜重列に踏ませたりというのもなかなかに興味深い試みだ。川の泥や肥に漬けても水で洗えばそのまま撃てるというのは全く興味深かった。雨中は疎か川の中からでも撃てるというのも驚いた。読む限り相当に丈夫な銃であるようだが、槌で殴りつけて装桿をへし折ったり、安全装置なるものの安全を試すために仕掛けたまま引き金をこじり割ってしまうというのは、いささかやり過ぎではないかね」
フェルト将軍がどう言って良いものかという迷った声で言った。
「うん。まぁ私も部下から一丁わざと壊す、と聞いてやり過ぎだと思ったが、実のところ必要だったとも今は思っている。結果としてこの銃が暴発しなかったことと、その後の修理で発砲に耐えたことで、この銃はつかえるという納得に全員達した」
ワージン将軍は得意げなまま応えた。
「銃剣は使えるのかね」
ヨーセン将軍が尋ねた。
「我が家には軍で使っている小銃がありませんので、銃剣については今はとくに手当はしていません」
「紐や針金でからげる必要があるがそのための長さはあるらしいな」
マジンの言葉を聞いて報告書を読みながらフェルト将軍が言った。
「軍で使っている銃と銃剣をいただければ軍の銃剣を使えるように改造することは容易いと思います」
「まぁ、そうしてくれると兵たちは落ち着くかもしれないが、銃列で使うわけではないからな。そっちはあわてないでいいだろう。そんなところを手当するよりは銃弾の増産をして欲しい」
ワージン将軍がそう言って制した。
「私としてはそろそろ銃の発注をして次の話題に移りたいのだけれど」
イモノエ将軍がそう言って促した。
「長話はご婦人方の嗜みかと思ったが、興味に惹かれて無用な話にのめり込んでしまったかな」
フェルト将軍が隣のイモノエ将軍に会釈をした。
列席唯一の女性将軍であるイモノエ将軍は馬鹿馬鹿しいというように鼻を鳴らして答えた。
「とりあえず、新型銃についての話は一旦区切って、我々の納品希望量をはっきりさせておこう。弾倉はさっきの大小六百づつ千二百個で三万というアレを足す感じでいいんだろうが、まずは銃から各人イモノエ将軍から、順に隣にでいいかな」
ワージン将軍はそう言った。
「ちょっと待って下さい。その前に小銃の銃身と銃床についてそれぞれ二種類あったのですが、どちらがよろしいですか」
慌ててマジンが進行を止めた。
「長いほうが当たりやすいのだろう」
不思議そうな顔でフェルト将軍が言った。
「それは間違いないところですが、銃身の長さで二百シリカ違いますと馬上での取り回しが全く異なります。銃床が折れることで更に五百シリカ変わりますとほぼ半分の長さになって取り回しが全く別の銃になります。案内をしてくれたマイヤール少尉の見解では尖兵活動の中でも肩幅よりは短いほうが都合が良いという話もありました」
マジンが慌てて説明した。
「ふむ。なるほど。ウチで使うんなら短銃身、折りたたみができる方がいいな。銃剣はいらない。空薬莢が飛び散るということなんだが、排莢口の籠だか袋だかの準備はお願いできるものだろうか」
イズール将軍が尋ねて言った。
「申し訳ありません。そこまでは準備しかねます。が、排莢口にそういったものを取り付けやすいようにしておきます」
「絵図面を付けてくれると助かる」
マジンの言葉にイズール将軍は頷いて言った。
「そういえば壊す試験をしたとか言う銃は返すつもりで壊してたんじゃないの」
イモノエ将軍が横合いから尋ねた。
「そのつもりもあったようだが別途いろいろ試験や調査をしていて、新しく買えるならしばらく手元においておきたいということになった。野戦修理の手引を作っているようだ」
ワージン将軍が応えた。
「銃身の長さの件だが、両方つけてもらうことは出来ないかね。報告によれば交換は容易ということだが。何やら覆いはガタつくがそれぞれ組み合わせは出来るとあった」
ヨーセン将軍が言った。
「それは可能ですが、流石にただというわけには」
マジンは流石にヨーセン将軍の意図を測りかねた。
「それはわかっている。だが現実一般論として、銃で一番の不安部分は銃身だ。この銃が難しい工作なしに銃身を交換できるというのは実に頼もしい。報告によれば射手の腕の差がはっきり出るのが銃身長によるものであるらしいことはわかった。一方で銃身長そのものが明確な威力の差になる程でもないことも示されている。だが、試験の結果を言えば命中率は今我々が頼らざるをえない旧式の前装銃とは格段に異なり、短銃身のものであっても全く問題にする必要が無いくらいのものであるといえる。つまりは、長くても短くてもこの際あまり問題にならないということだ」
ヨーセン将軍は一回言葉を切って他の将軍を見渡した。
「――ところで一方で私はこの銃にいずれ銃剣を付ける必要についてはやはり感じている。というのは、結局どれほど精強であっても兵士というのは怯えるもので、混乱するものだからだ。そういう意味で短すぎる銃というものが兵士に与える影響を憂慮するし、銃剣というものがあるだけで兵士が一呼吸安心するなら使う使わないにかかわらず欲しいと思う。前線ではこの銃も銃剣の有無にかかわらず槍のように刺突して或いは鈍器として使われるだろう。結果として銃身を傷つける機会について想像せざるを得ないし、ワージン将軍の幕下でもそのつもりで立木や地面に叩きつける突き刺すなどという奇怪な試験を行ったのだろうと思う。あまりに丈夫で壊れないからムキになっただけかもしれないがね。
ともかく、この報告書を見る限り、この銃の壊れるところといえば銃身と弾倉くらいだろうという印象だ。
そういう点から考えれば、私はこの銃の交換銃身という意味で短銃身を必要数だけ別途買って交換した長銃身は修理用に保管しておくのがいいと感じている。
銃床の折りたたみについては輜重列に踏まれれば壊れるという結果をどう考えるかというところだろう。生産の手間にならないのならば全て折りたたみで良いと思う。……値段の差は今はないのだろう」
ヨーセン将軍は資料を探すように眺めながらの言葉を切って、マジンよりも他の将軍の言葉を待つように見渡した。
「試験品のうちは歩留まりの中に丸められるので、価格上同じです」
マジンの答にヨーセン将軍は頷いた。
「短銃身はいくらになるね」
ワージン将軍が尋ねた。
「百本九万タレルでいかがですか」
マジンはセントーラの差し出す行程時間表を眺めながら言った。
「安くはないが、この際文句をいうほどではないわね」
イモノエ将軍が言った。
「この先結局、折りたたみ銃床が高くつくとしても、今敢えて折りたためない銃床を求める者はいないと思う。銃剣に関してもいずれ欲しいのは山々だが、しかしひとまずは散兵が騎兵を追い落としに使える小銃がほしい」
ヨーセン将軍の言葉に並んでいた将軍たちは頷いた。
「銃から各人イモノエ将軍から、順に隣にでいいかな」
「十口」
「六口」
「五口」
「六口」
「八口」
「弾倉は」
「七口」
「五口」
「十口」
「八口」
「十口」
「交換用短銃身」
「二口」
「二口」
「三口」
「五口」
「三口」
将軍たちの新型銃に対する運用構想の差で注文で微妙にバラけていた。
「銃が三十五口か。先ほど話にあった生産量の見積もりだと銃弾が三ヶ月の見積もり生産量の上値を超えているな」
ワージン将軍が手元の書付を眺めながら言った。
「うちは三ヶ月では再編成が終わらないから、定量が来るなら後回しでもいい」
ヨーセン将軍が言った。
「来月中にないと困るのはウチとワージン将軍のところかな」
フェルト将軍がそう言った。
「いや。ウチは月内でないと困る。帝国軍の空騎兵に補足され続けているらしい。おそらくぼんやりしていると攻勢を受ける。かと言って引けば立て籠もっているどちらかに全力が向くのだろう。連中城塞にこちらの手がかからないと思って好き勝手に鳥を使うようになった。おかげでアタンズがかなりやられているらしい。最悪アタンズに合流しろと言ってあるが、そうすれば帝国が別の手をうってくるのは間違いない。春のうちに一回アタンズを助けてやらないと、諸君らの来援を待つまでもなく抜かれる」
ワージン将軍はさらりと言った。
「わかっていたことだが。連中の鳥ばかりは厄介だな。これまでは巣に戻るタイミングで砲撃を集めて黙らせる手もあったが、今となってはそれも難しい。味方の上に砲弾を降らせるのも本末転倒だしな」
フェルト将軍が苦々しげに言った。
「新型銃でもあの巨鳥を叩き落とすほどに弾を集めるのは難しいだろうとウチの連中も言っていた。それでもあの銃が五百あれば合戦ひとあたりで包囲を崩すところまではできるはずだ。それでアタンズとペイテルがどれだけ立てなおしてくれるかが勝負だろう」
ワージン将軍が先行きを説明した。
「――問題はその後だが、フェルト将軍が来たとして我々が追い回されているうちにアタンズが落ちたのでは同じことだ」
「我々が追いつく前にワージン将軍の師団が壊滅していることもあり得る」
ワージン将軍の言葉にフェルト将軍が皮肉げに言った。
「彼らにこんな話を聞かせて良いのかしら」
イモノエ将軍が今更のように呆れ声で言った。
「我々が如何に急いでいるかということを知ってもらう必要はあると思う。これは冗談でも何でもなく一大国難だという理解をして欲しいし、当然に他言は無用だ」
イズール将軍が言った。
マジンは切り出してみることにした。
「先ほどマイヤール少尉に新型小銃の聞き取りをしているとき、超遠距離射撃の話が出まして、マイヤール少尉から超長射程の銃について個人的に購入したい旨の要望がありました。その際には価格で折り合いが難しそうだったのですが、少尉が云うには将軍が融資をしてくれるかもしれないという話もありました。軍装備とはまったく別の話を他の将軍ご列席の中、この場で挟むのは全く心苦しいのですが、ワージン将軍もお忙しい中、改めての機会もなさそうですので、敢えて切り出させていただきます。射程半リーグを射的に供する事のできる銃に興味はお有りでしょうか」
将軍たちが顔を見合わせるようにした。
「興味はある。射程半リーグで一般標的を狙え、十分な威力があるということだな。その話が出たということは、試射が見られる状態であるということだね」
ワージン将軍が頷き念を押すように言った。
「量産の予定は全く無い一品物の私物ですが、マイヤール少尉の腕前を聞くに使いこなせるかと思います」
マジンは頷き説明した。
「値段は」
ワージン将軍が尋ねた。
「七万五千タレル」
「高いな。だがいいだろう。明日、試射を見せてくれ」
マジンの言い値にワージン将軍は鼻を鳴らして言った。
「――さて、話を戻そう。月内に軍都に何口届くね」
ワージン将軍は改めて尋ねた。
「月内に二便。確約できるのは四口分。六口可能と思いますが、一便目で確定します。何分軍都からですと工房の様子が把握できません」
マジンの言葉にワージン将軍が頷いた。将軍たちが明らかに安堵した表情になる。
「それで結構」
ワージン将軍が頷いた。
「その後はフェルト将軍の六口でよろしいですか。二便になるはずです」
「そのようにしてくれ」
フェルト将軍が頷き言った。
「うちの分が間に合わなかったらフェルト将軍に預けてくれ。そうならないことを望んでいるが」
ワージン将軍が言った。
「次は、ウチかイモノエ将軍だな」
「お先にどうぞ。と言いたいけれど、多分ウチが先にもらったほうが進発が混乱しないでしょう」
イモノエ将軍がイズール将軍に応えて言った。
「慌ただしいが、多分そうだな」
イズール将軍が頷いていった。
「けれど、十六口、運びきれるものかしら」
イモノエ将軍が疑わしげに尋ねた。
「今からですと三ヶ月で八便までは保証できますが、四口分の輸送の手配が間に合わないと思います。大雑把に五グレノル半です」
マジンはセントーラが首をふるのにそう応えた。
「たしか、デカートまで行けば荷物の引き渡しは問題がないと言っていたね」
フェルト将軍が確認した。
「そこまでは船便で運べますから。面倒はほとんどありません」
「輜重を留めて置けるような土地もデカート郊外にあると言っていた」
フェルト将軍が重ねて確認した。
「問題は少なさそうだな。デカートへの輜重の手配をしよう。さっきの話を聞いているとデカートの連中の対応は不安だが」
イズール将軍が言った。
「最後はウチだが、日程は少し余裕がある。八口きちんと届けてくれればいい。弾薬の話を聞くとウチもデカートまで足を伸ばしたほうが良さそうだな」
ヨーセン将軍が言った。
「お願いできれば助かります」
マジンがいうのにヨーセン将軍は頷いた。
「さて、やれやれ。なんとなくだが、手は打てたような気がするのが、この手の話の悪いところだな」
フェルト将軍が韜晦するように言った。
「現実、俺とフェルト将軍はこれで打つ手が殆どなくなったとも言える。尤も前線のアタンズ・ペイテルの踏ん張りがなければ、打つ手どころか、俺がこうして戻ってくる暇もなかったし、フェルト将軍もここには居られなかったろう。そういう意味では全くゴルデベルグ大尉の無謀とも思える活躍は我々全員を救ったと思っている。それを支えた機関車二十五両については、悪いがうちの師団が一回まとめて預かる。ともかく一回早く戻らないとアタンズが危ないのは本当らしい。ゲリエ氏の手配の二便目とやらを受け取ったら、その日のうちに出立する予定だ」
ワージン将軍が宣言した。
「次の話題は後装銃弾の話でよろしいのかな」
イズール将軍が尋ねた。
「その前に機関車が今買えるのかどうかは興味が有るところなのだけど」
イモノエ将軍が尋ねた。
「在庫という意味であれば、完成品五両と組み立て前の状態のものが五十両ほどあります」
将軍たちが揃って向き直った。
「三ヶ月で何両引き取れるかしら」
イモノエ将軍が尋ねた。
「五十両は確実に。ただしデカート引き渡しになります」
「値段は」
「三百万タレル」
イモノエ将軍は短く早いやり取りに満足したような顔をした。
「あるところにはある、といういつものお話ね」
「しかも聞いていたのよりもだいぶ安い」
フェルト将軍は少し不満気に言った。
「それは仕方ないところでしょう。売り込みが直じゃなかったのだし、デカートまでしか話が伸びていない」
イモノエ将軍が宥めるように言った。
「またデカートか」
イズール将軍が皮肉げに笑った。
「というよりも、お若い工房主に我々がここまで頼っているのが問題なのだろう」
ヨーセン将軍がため息混じりに言った。
「だが、こうなればデカートは軍に背を向けていることも難しくなる。戦争に勝った後のことを考えられるような状況になれば、デカートも無視はできない。結果として共和国全体の戦争態勢にはずみがつくことになる」
ワージン将軍は自信ありげに言った。
「だが、そうあるために新型銃だけでは手数が足りない」
ヨーセン将軍が言った。
「まずは、機関車を引き取る方法だろう」
イズール将軍が言った。
「ウチは五両あれば十分だ。先行する諸君にこそ必要だろう」
ヨーセン将軍が遠慮するように言った。
「ウチも出立には間に合わない」
フェルト将軍も残念そうにそう言った。
「自走されるつもりであれば、空荷の貨車に兵の方をお乗せすることは出来ます。乗り心地は保証できませんが、夏の暑さはありませんので毛布さえあればなんとか耐えられると思いますし、町で軍人会が使えるのであれば私どもも荷の心配が減ります」
マジンの言葉にフェルト将軍の顔が明るくなった。
「それは助かる。しかし、ウチの予算では二両だな」
フェルト将軍が皮肉な顔で言った。
「ウチも二両」
イモノエ将軍が言った。
「三両頼む」
イズール将軍が言った。
「流石に高いか」
ワージン将軍が残念そうに同僚を眺めた。
「価格は効果相応だろう。ただ効果が抜群に高いのもわかるが、それ以上に連絡参謀を貼り付けないと動きが早すぎて使いにくい、とウチの連中は言っている。正直ゴルデベルグ大尉ほど射撃や戦術判断に優れた前線向きの果断な魔導猟兵は少ない。そもそも連中には逃げよ臆病たれと教育されている。ウチにも跳ね返りの杖つきはいるから任せてみるが、まずはお試しだ」
イズール将軍が応えるように説明した。
「魔導猟兵は送話が出来なくても、どこにいるのかがわかりやすければそれだけで随分違う、って話は聞くわね。ゴルデベルグ大尉は追いやすい的だって、ウチの参謀は言っていた。向き不向きは色々あるけど、作戦環境に応じて主流が変わるということでしょうね」
イモノエ将軍の評はリザにとって褒められているのかけなされているのか微妙なところだった。
「――さて、これで多分フェルト将軍の打ち手も終わったことでしょう」
イモノエ将軍が言った。
「つぎは、ウチの話ですな」
ヨーセン将軍が切り替えるようにワージン将軍に話を振った。
「さて。ここからは、先ほどの諮問委員会の反省会でもある。呼び立てたゲリエ氏と秘書君には二度手間になってしまったわけだが、我軍の苦境を理解していただく一助になれば、あの茶番も無駄というほどでもなかったと思う。
――ともあれ、せっかくの新型小銃に師団定数の二百四十万発の銃弾を確保できていないというのが、今に至る共和国軍全体の鈍さの原因でもある。陣地の構築と転換運用があれば銃の性能の差はある程度消すことができるわけだが、それでは野戦を挑むことが困難で主導権を握ることが出来ない。優勢な補給があれば敵の出血を待って反攻という手もあるが、現状それも難しい。帝国軍の補給は年を越えるまでは破綻しないだろうと云うのが、大方の見方だ。一方アタンズは夏まで支えられるかどうかが危ぶまれている。したがって、戦力の散発的投入になることは知りながら我々はアタンズの救援をおこなうことに決めた。幸い前装銃の数そのものは揃っているし、玉薬自体は補給が受けられた。我々は保管していた後装銃のうち千丁を残してヨーセン将軍に五千丁託し銃弾を十万発受け取った。フェルト将軍も手持ちの一万丁をヨーセン将軍に託し銃弾を四十万発を受け取った。しかしこれでヨーセン将軍の部隊は手持ちの銃弾がなくなってしまった。
――その手当をゲリエ氏にお願いしたい」
マジンはしばしワージン将軍が語った言葉の意味が理解できなかった。
口を開き閉じ言葉を探す。
「それは重要な機密では」
やっと言葉にしたマジンにワージン将軍は頷いた。
「君たちにとっては当然に確認調査不可能な内容で荒唐無稽な法螺話ではあるが、同時に重要な機密でもある。だが、兵站本部のザル共がすでに数字を口にしたあとでは、我々が遠慮をするのもバカバカしいだろう。ともかくだ。ヨーセン将軍に現行後装小銃の銃弾を最低限三百万発可能なれば二千万発納入して欲しい。というのが、後半の話題だ」
ワージン将軍はそう言葉を切った。
場が沈黙したところでヨーセン将軍が軽く身を乗り出すように事情の説明を始めた。
「フェルト将軍と私とで備弾のやりくりをしていたところに、ワージン将軍のところの参謀から小銃の売り込みの件で話が来てね。是非ともということで話を聞きに来た。その後、イズール将軍とイモノエ将軍も進発が可能になったのだが、小銃の備弾についてやはり悩んでいたので声をかけたところ、幕下の参謀からワージン将軍がなにやら動いているということを聞き、今日の諮問委員会の傍聴を希望することになっていたという流れだ。
――分かりやすく念を押せば、共和国の全軍が装備転換の混乱で立ちゆかなくなっているところに、今回の開戦の大損害と小銃の売り込みがあった。だが、それだけじゃ足りないから、すでにいくらか数がある混乱のもとになった小銃用の弾もほしい。そういうことだ」
ヨーセン将軍がマジンにこの会の経緯について説明した。
「先程も触れましたとおり、基本的には銃と銃弾の見本をいただき、体制の整備に三ヶ月待っていただければ、月産二百万発程度という見積もりをすることは出来ますが、先様があってのことなので契約上法律上の問題は軍が間に入っていただかないと面倒が起きると思っています。最悪私が拘束されると、一切合財が止まってしまうこともありえます。ともかく、三ヶ月のうちに見積もりはお出しできますが、裁判沙汰になるとすべてが止まってしまうことだけはご承知ください。金額については今のところ十万発十万タレルと考えています。輸送の目処はデカートまでそれ以上はお答えできません」
マジンは状況と目論見を告げた。
「さっきは言葉を濁していたが、幕僚の話では企業買収も視野に入れているとか、或いは戦争後を前提にした長期的展望もあるとか聞いているが、どこまで本気かね」
ワージン将軍が尋ねた。
「イモノエ将軍とイズール将軍の備弾はどのくらいでしょう」
マジンは尋ね返した。
「関係有るのかね」
ワージン将軍が確認した。
「つまりは、私のこの既存の銃弾の件をどの程度真剣に希望されているのかということを伺いたいと思いました」
イモノエ将軍は頷いた。
「百万発。もらえるならもちろん欲しい」
「七十万発。我々も補給が受けられるなら金額に関係なく欲しいと思っている。支払いは軍票になってしまうがね」
イズール将軍も状況を述べた。
「結構です。ローテル鉄工の件。再来月中の取得を目標に既に買収への調査を始めています。過程で未確認ながら疑獄や不正の噂がありました。余談は許しませんが、金額と時間以外の障害はないと考えています。ロータル鉄工の資産は今後の新型小銃配備計画を含めた長期計画においては軍都周辺の拠点として必要だと考えています」
マジンの言葉にそれぞれ様々に反応があったが将軍たちは納得したようだった。
「憲兵総監が来てたな。結局最後まで発言はしてなかったが」
フェルト将軍が思い返すように言った。
「軍令部長と憲兵総監の間にいた奴は結局誰だったんだ。ロータル鉄工の件を色々、買収についても質問していたが」
イズール将軍が答えを知る人を探すように尋ねた。
「傍聴出席者の一覧では兵站部給水局とか場違いな部署名があったけど名前がなかったわね。彼がそうかしら」
イモノエ将軍が推測を述べた。
「ロータル鉄工の件を直接口にした相手としては、キオール中佐、マクマール中佐、ホライン少佐それから私が調査を依頼した人物と、ゴルデベルグ大尉と私の秘書の六名だけです。ただ、最初の三名の方とは軍の食堂での雑談に紛れてでしたし、ゴルデベルグ大尉と秘書とは少々気安く相談していたので、何かの折に目をつけられて聞かれたという可能性は否定しきれません」
マジンがそう言うと将軍たちは少し考えるような顔をした。
「どういう経緯であれ既存の弾丸を別の工房で生産し納入するということになれば、結局はロータル鉄工に至るのは話題としては自然だろう。敢えて質問をしたのが誰かというところは気になるが、いまは気にしても仕方ないんじゃないか」
ワージン将軍の言い様は一面正しくもあったが、直接の当事者としては危機感を感じずにはいられなかった。とはいえ、訴えるべき相手がここにいるわけでもなかった。
「――もう廃棄小銃と銃弾の手続きはしてある。試験用の三丁と銃弾五十についてはすぐに渡せる。ともかく弾がなくては話にならない。早速、銃弾の生産の準備にかかって欲しい」
ワージン将軍が急かすように言った。
「それで品目はどうする」
フェルト将軍が尋ねた。
「品目ってのはどういう意味だ。銃弾じゃダメなのか」
ワージン将軍は驚いたように言うのをフェルト将軍が驚いた顔で見つめる。
「契約上あの銃は専用銃弾を使うことになっている。ロータル鉄工の認証を受けていない銃弾を使うと問題になるというのが、あの銃の銃弾生産を妨げていた理由の一つでもある。知らなかったのか」
フェルト将軍が説明した。
「バカなことを決めたものだ」
ワージン将軍は吐き捨てるように感想を述べた。
「金属薬莢式という新しい構造だからな。真鍮の薄板を綺麗につなぐのも一苦労できちんと貼り合わせないと中で割れて引っかかるようになるから、その辺もあって工房に許可が出ないようだったな」
フェルト将軍が説明した。
「では、ウチから納入するのは銃身清掃具でいかがでしょう」
マジンが提案するとヨーセン将軍が面白そうな顔をした。
「うん。それで行こう」
ヨーセン将軍が頷いた。
「そうすると、どういうことだ。これで実際に生産と納入がおこなわれれば問題解決か」
イズール将軍が思いついたように尋ねた。
「部隊認証の消耗品要求として予算を求める限りにおいては、銃身清掃具としてゲリエ氏に発注することが可能になるということね。戦場文学の一種だけど、穏当な方だとは思う。そういう意味では新型小銃と銃弾についても品目を定めておいたほうが多分いいわね。一般性をもたせた名前で」
イモノエ将軍が面白そうに言った。
「そうしたら、機関小銃と九・百シリカ口径銃弾、ということで」
マジンが提案した。
「単に九シリカ銃弾ではダメなのか」
イズール将軍が尋ねた。
「ウチでは既に拳銃用に短い九・五十シリカ口径銃弾があるのです」
「なるほど。そういうことなら、わかりやすいほうがいい」
イズール将軍は頷いた。
「ところでだが。勘違いがないように確認しておくと、解決する問題はあくまで軍の内部の書類運行上のものであって、ゲリエ氏が求めていた彼とロータル鉄工の間の問題には全く寄与しない。銃身清掃具として実際にその機能があるように作られていようと、ロータル鉄工は納入されている事態を知れば問題を裁判に持ち込もうとするだろう。ロータル鉄工の買収失敗ということにでもなれば、最悪ヨーセン将軍の進発直前に騒ぎになって後続の生産が止まるかもしれない。幸いデカートは遠いから秋まで騒ぎになるとも思えないが、予定では我々がまさに死力を尽くしているはずの時期だ。もちろん兵站本部が全面的な使用承認をすれば別だが、そんなのを待っていたら、来年になってしまう。ゲリエ氏には悪いが戦争に勝たないと予算も裁判も帝国に奪われることになる」
フェルト将軍が補足して状況説明をした。
「兵站本部の連中が納得しないとロータル鉄工とゲリエ氏の仲介は無理だろうかね」
ヨーセン将軍がため息混じりに尋ねた。
「ダメだろう。時間を考えればなかなかに厳しい。そして横車を押しているのはこの場合我々だ。本件は穏当な解決を期待するのはもともと難しい。おそらくゲリエ氏による経営権買収が一番穏当なぐらいの局面だろうね。こう言っちゃ何だが、我々がゲリエ氏に頼ろうと考えているのも、切羽詰まって手数も時間もないからだ。実績なしの口約束で、空白三ヶ月の計画をたてるなぞ、どのみちまともな方法とはいえない。連中はその辺をつつきたいのかもしれない。憲兵総監が来ていたのは、軍令本部長との釣り合いを取るためでもあるけど、手際手数が余っているという示威行動でもある。参謀本部長がこなかったのは、政治的になりすぎると面倒くさくてかなわないというところだろう。あそこが絡むとどうしてもアチコチ話がいってしまう」
フェルト将軍は大雑把に想像を述べた。
「私が詐欺師だと思われているということですか」
「そう思われている可能性はある。或いは間諜と通じていると疑われているか。まぁそれを言うと兵站本部の委員の方が怪しくはあるが。キミが餌か魚かはわからないが、まぁともかくその辺に網を投げるために来たんだろう」
フェルト将軍が自分の考えを説明した。
「我々がキミに望みできることは字義通りの銃後として矢玉の備えを万全に頼みたいということだけだ。ロータル鉄工をどうにかすることは、現状我々の状況では出来ない。ただ、状況の判断を可能にする材料ならば幾らかは提示することはできる。その件については、ゴルデベルグ大尉。キミを通じて提供することになる。ここにいる将軍は君たちの万全の支援を期待している。無論可能ならば時間の許す限り便宜を図るつもりもある」
ワージン将軍がそうまとめた。
「承りました」
リザの返事にワージン将軍が頷いた。
「いや、本当は戦後計画の話をもっと気楽に聞きたかったのだが、午前中の会のせいで具体的な話に入るのが遅すぎた」
ワージン将軍が残念そうに言った。
「戦後計画というと小銃の普及後の話か」
興味ありげにフェルト将軍が口にした。
「いや、小銃普及に際しての輸送連絡網の話だ。鉄道というらしい。なんでも鉱山にあるトロッコのようなものを拡大して町を繋いでいっぺんに数百グレノルの貨物を扱えるようにすることを考えているそうだ」
ワージン将軍が楽しげに言った。
「ほう。それがあれば輜重の問題が消えるじゃないか。戦争に勝つのも容易そうだ」
イズール将軍が笑った。
「お楽しみを楽しむためにまずは勝て。ということね」
イモノエ将軍がそう言うと席を立った。
「私には明日のお楽しみがある。諸君も暇なら試射の見学に来るといい。機関小銃も見せられる。ウチの幕舎のそばの演習場を借りることになると思う」
ワージン将軍がそう言うとイズール将軍が皮肉げに笑った。
「口に入らないことがわかっている飴玉の味の感想なぞ聞きたくもない。とはいえ買うにせよ買わないにせよ、報告書にはまとめて欲しい」
イズール将軍はそう言って席を立った。
「ウチからは誰か見学を回すことにする。一品物と言ってもお前のところでいらないならウチがもらうかもしれないし、無理にも頼むかもしれない」
フェルト将軍がそう言いながら立った。
将軍たちが立ち揃うとそれを合図に隣室からぞろぞろと新たな人々が入ってきた。
「我々はこの後それぞれ別の用事があるので失礼する。が、今の話の内容を書面の形に起こしたものを幕僚たちが準備しているはずだ。契約書と云うにはいささか不確かではあるが、最低限こちらの購入支払い意思は揺らがないという証拠として預けたい。
最後になるがゲリエくん、キミに出会えたことを我々全員本当に心から喜んでいる。お互いこれから全く忙しいことになると思うが、そのついでに彼方でキミに感謝しながら戦ってる我々の勝利を祈ってくれれば言うことはない。
それではお名残惜しいが失礼する」
ワージン将軍の言葉にリザと幕僚たちが敬礼をして将軍たちを見送った。
体型も年齢も性別もそれぞれに違った印象を放っていたが、強烈な落ち着きと興味を持って、手堅く立派な調度の丸い机に並んで待っていた。机の上の敷き布は真っ白で執務というよりはなにか食事が始まるような雰囲気ですらあった。
「ゲリエ氏と秘書どの、それとゴルデベルグ大尉をお連れいたしました」
「エイディス少佐、ご苦労でした。下がってよろしい」
エイディス少佐の申告に細面の将軍がうなずた。
「マイヤール少尉。ご苦労。どうやら皮をはがないで済みそうだな。報告の続きを楽しみにしている」
真ん中に座った肩幅のある割に上背の小さな禿頭の将軍が言った。おそらく彼がワージン将軍だろう。
それぞれ、ヨーセン将軍、イズール将軍、ワージン将軍、フェルト将軍、イモノエ将軍であるという。
「――こういう形の席になっていてなんだが、ゲリエくんと初対面というのが全く信じられない。君のことはそこのゴルデベルグ大尉からいろいろな形で聞かされていたし、彼女の積極果敢な報告や論説は全く彼女の可憐な姿とは似ても似つかないもので、それを支えている男性というものがどういう人物なのか様々に想像を巡らせていたのだが、想像を上回る凛々しく若々しい青年ぶりになるほどと奇妙に納得もいった。
前振りが長くなったが、まずは面会の席に応じてくれたことを一同を代表して感謝しよう。今日は時間をつくりよく来てくれた。
彼らもそれぞれに忙しいのだが、君との面会の席の話をしたところ、ゴルデベルグ大尉の活躍とその報告を目にしていて、興味を持っていたということで是非とも話を直接してみたいということで集まってくれた。
もちろん彼らの興味の中心は君の工房がストーン商会に卸している機関車であったわけだが、私とヨーセン将軍との秘密のお楽しみであったはずの新型小銃の話も耳聡く聞きつけて来てね。先ほどの会と相成ったわけだ。こちらの会へは他にも幾人もの将官が来たがったんだが、とりあえず忙しい者達から先に会わすことにした。
さて、早速だが、私たちは君の銃の報告を呼んでそれぞれに先ほど会で数字の出た言い値、百丁二十万発で六十万タレル、で君の小銃をそれぞれに数口づつ買いたいと考えている。三ヶ月で何口準備でき、うち何口を軍都まで運べるかね」
ワージン将軍は全く駆け引きを考えることなく言った。
「正直なところ、確実な在庫実績がないので見積もりでよろしければ、現状小銃の部品の生産実験を行っているところで見積もりでは月産千から二千の間。銃弾の方も運転試験をおこなっているところですが、月産百万から二百万の間というところだと思います。全く単純な計算では三千丁三百万発というところがお約束できるところで、上値で六千丁六百万発というところですが、小銃弾の方は多少実績があるので上値に近い数字が出るはずです」
イズール将軍が手元に報告を引き寄せると探すようにした。
「私がこの銃で気になっているのは弾倉というものなんだが、つまりこれがこの銃の速射速度を支えている心臓の一つで、記述を見るとどうやら取り外し交換をおこなうことで素早くまとめて弾を込める部品のようだ。これは使い捨てなのかね」
「無制限に何度も使えるわけではありませんが、何回か何十回かは繰り返し使えるはずです。簡単なバネ仕掛けですので」
「先ほどの組み合わせの中には説明がなかったが、いくつ付けてくれるものだね」
イズール将軍が尋ねた。
「四十発入りを二つと二十発入りを二つと考えています」
「足りない」
イズール将軍が報告書をめくるようにして記述を指で叩き示すようにして言った。
「――この新型銃は、騎兵への対策として全く完璧な回答を示している。散射という概念だ。騎兵を撃破するに足る最低限の弾幕を短時間に構築する。そして効果を確認する時間を作る。これは全く完璧な戦列銃兵の伴になる。だが、数が揃うまでの当面は捜索騎兵と散兵の装備品だろう。彼らが弾切れで一々帰ってくるようでは話にならない。弾倉の弾込め自体は落ち着いていればできるようだが、歩きながらできるほどに簡単なものでもなさそうだ」
イズール将軍は探していた報告が記述されていた部分を探しだして、満足そうに言った。
「いくらならよろしいと思われますか」
マジンは尋ね返した。
「一丁辺り、大小は八つづつ四百八十発。正直なところ組み合わせまではなんとも言えない。が、四百八十発分の弾倉。捜索騎兵にはそれくらい必要だ」
イズール将軍が断言した。
「高温の薬莢が撒き散らされて馬上での運用は問題ありという記述もどこかにあったが」
ヨーセン将軍が手元の報告書を捲り返した。
「その程度はカゴとか袋とか付けてやればなんとかなるだろう」
イズール将軍が反論した。
「百丁分の追加として六百づつ千二百か。いくらになるね」
ワージン将軍が言った。
「あまりキチンと考えたことがありませんが、まとめて三万タレルというところです」
「一つ二十五タレルか。使い捨てじゃないってなら、まぁ、いいんじゃないか」
ワージン将軍が気軽そうに言った。
「一便が百丁二十万発ということだったが、そこに載せられるものかね」
ヨーセン将軍が尋ねた。
「その前に、生産は間に合うかね。銃の生産の都合もあるだろう」
イズール将軍が確認するように言った。
「そちらは両方共、大丈夫です。生産は別枠ですし、輸送の便にはその程度であれば載せられます」
マジンの言葉に将軍達がうなずき互いの顔を見合わせるようにする。
「ところで、ワージン将軍」
「なんだろうか、フェルト将軍」
それまで熱心に報告書を読んでいたフェルト将軍が手元から目を上げてワージン将軍に尋ねた。
「この、キミのところの汚損試験というやつだが」
「ああ。それ面白いだろう」
フェルト将軍の言葉にワージン将軍は自慢気に応えた。
「面白く興味深い。兵や輜重列に踏ませたりというのもなかなかに興味深い試みだ。川の泥や肥に漬けても水で洗えばそのまま撃てるというのは全く興味深かった。雨中は疎か川の中からでも撃てるというのも驚いた。読む限り相当に丈夫な銃であるようだが、槌で殴りつけて装桿をへし折ったり、安全装置なるものの安全を試すために仕掛けたまま引き金をこじり割ってしまうというのは、いささかやり過ぎではないかね」
フェルト将軍がどう言って良いものかという迷った声で言った。
「うん。まぁ私も部下から一丁わざと壊す、と聞いてやり過ぎだと思ったが、実のところ必要だったとも今は思っている。結果としてこの銃が暴発しなかったことと、その後の修理で発砲に耐えたことで、この銃はつかえるという納得に全員達した」
ワージン将軍は得意げなまま応えた。
「銃剣は使えるのかね」
ヨーセン将軍が尋ねた。
「我が家には軍で使っている小銃がありませんので、銃剣については今はとくに手当はしていません」
「紐や針金でからげる必要があるがそのための長さはあるらしいな」
マジンの言葉を聞いて報告書を読みながらフェルト将軍が言った。
「軍で使っている銃と銃剣をいただければ軍の銃剣を使えるように改造することは容易いと思います」
「まぁ、そうしてくれると兵たちは落ち着くかもしれないが、銃列で使うわけではないからな。そっちはあわてないでいいだろう。そんなところを手当するよりは銃弾の増産をして欲しい」
ワージン将軍がそう言って制した。
「私としてはそろそろ銃の発注をして次の話題に移りたいのだけれど」
イモノエ将軍がそう言って促した。
「長話はご婦人方の嗜みかと思ったが、興味に惹かれて無用な話にのめり込んでしまったかな」
フェルト将軍が隣のイモノエ将軍に会釈をした。
列席唯一の女性将軍であるイモノエ将軍は馬鹿馬鹿しいというように鼻を鳴らして答えた。
「とりあえず、新型銃についての話は一旦区切って、我々の納品希望量をはっきりさせておこう。弾倉はさっきの大小六百づつ千二百個で三万というアレを足す感じでいいんだろうが、まずは銃から各人イモノエ将軍から、順に隣にでいいかな」
ワージン将軍はそう言った。
「ちょっと待って下さい。その前に小銃の銃身と銃床についてそれぞれ二種類あったのですが、どちらがよろしいですか」
慌ててマジンが進行を止めた。
「長いほうが当たりやすいのだろう」
不思議そうな顔でフェルト将軍が言った。
「それは間違いないところですが、銃身の長さで二百シリカ違いますと馬上での取り回しが全く異なります。銃床が折れることで更に五百シリカ変わりますとほぼ半分の長さになって取り回しが全く別の銃になります。案内をしてくれたマイヤール少尉の見解では尖兵活動の中でも肩幅よりは短いほうが都合が良いという話もありました」
マジンが慌てて説明した。
「ふむ。なるほど。ウチで使うんなら短銃身、折りたたみができる方がいいな。銃剣はいらない。空薬莢が飛び散るということなんだが、排莢口の籠だか袋だかの準備はお願いできるものだろうか」
イズール将軍が尋ねて言った。
「申し訳ありません。そこまでは準備しかねます。が、排莢口にそういったものを取り付けやすいようにしておきます」
「絵図面を付けてくれると助かる」
マジンの言葉にイズール将軍は頷いて言った。
「そういえば壊す試験をしたとか言う銃は返すつもりで壊してたんじゃないの」
イモノエ将軍が横合いから尋ねた。
「そのつもりもあったようだが別途いろいろ試験や調査をしていて、新しく買えるならしばらく手元においておきたいということになった。野戦修理の手引を作っているようだ」
ワージン将軍が応えた。
「銃身の長さの件だが、両方つけてもらうことは出来ないかね。報告によれば交換は容易ということだが。何やら覆いはガタつくがそれぞれ組み合わせは出来るとあった」
ヨーセン将軍が言った。
「それは可能ですが、流石にただというわけには」
マジンは流石にヨーセン将軍の意図を測りかねた。
「それはわかっている。だが現実一般論として、銃で一番の不安部分は銃身だ。この銃が難しい工作なしに銃身を交換できるというのは実に頼もしい。報告によれば射手の腕の差がはっきり出るのが銃身長によるものであるらしいことはわかった。一方で銃身長そのものが明確な威力の差になる程でもないことも示されている。だが、試験の結果を言えば命中率は今我々が頼らざるをえない旧式の前装銃とは格段に異なり、短銃身のものであっても全く問題にする必要が無いくらいのものであるといえる。つまりは、長くても短くてもこの際あまり問題にならないということだ」
ヨーセン将軍は一回言葉を切って他の将軍を見渡した。
「――ところで一方で私はこの銃にいずれ銃剣を付ける必要についてはやはり感じている。というのは、結局どれほど精強であっても兵士というのは怯えるもので、混乱するものだからだ。そういう意味で短すぎる銃というものが兵士に与える影響を憂慮するし、銃剣というものがあるだけで兵士が一呼吸安心するなら使う使わないにかかわらず欲しいと思う。前線ではこの銃も銃剣の有無にかかわらず槍のように刺突して或いは鈍器として使われるだろう。結果として銃身を傷つける機会について想像せざるを得ないし、ワージン将軍の幕下でもそのつもりで立木や地面に叩きつける突き刺すなどという奇怪な試験を行ったのだろうと思う。あまりに丈夫で壊れないからムキになっただけかもしれないがね。
ともかく、この報告書を見る限り、この銃の壊れるところといえば銃身と弾倉くらいだろうという印象だ。
そういう点から考えれば、私はこの銃の交換銃身という意味で短銃身を必要数だけ別途買って交換した長銃身は修理用に保管しておくのがいいと感じている。
銃床の折りたたみについては輜重列に踏まれれば壊れるという結果をどう考えるかというところだろう。生産の手間にならないのならば全て折りたたみで良いと思う。……値段の差は今はないのだろう」
ヨーセン将軍は資料を探すように眺めながらの言葉を切って、マジンよりも他の将軍の言葉を待つように見渡した。
「試験品のうちは歩留まりの中に丸められるので、価格上同じです」
マジンの答にヨーセン将軍は頷いた。
「短銃身はいくらになるね」
ワージン将軍が尋ねた。
「百本九万タレルでいかがですか」
マジンはセントーラの差し出す行程時間表を眺めながら言った。
「安くはないが、この際文句をいうほどではないわね」
イモノエ将軍が言った。
「この先結局、折りたたみ銃床が高くつくとしても、今敢えて折りたためない銃床を求める者はいないと思う。銃剣に関してもいずれ欲しいのは山々だが、しかしひとまずは散兵が騎兵を追い落としに使える小銃がほしい」
ヨーセン将軍の言葉に並んでいた将軍たちは頷いた。
「銃から各人イモノエ将軍から、順に隣にでいいかな」
「十口」
「六口」
「五口」
「六口」
「八口」
「弾倉は」
「七口」
「五口」
「十口」
「八口」
「十口」
「交換用短銃身」
「二口」
「二口」
「三口」
「五口」
「三口」
将軍たちの新型銃に対する運用構想の差で注文で微妙にバラけていた。
「銃が三十五口か。先ほど話にあった生産量の見積もりだと銃弾が三ヶ月の見積もり生産量の上値を超えているな」
ワージン将軍が手元の書付を眺めながら言った。
「うちは三ヶ月では再編成が終わらないから、定量が来るなら後回しでもいい」
ヨーセン将軍が言った。
「来月中にないと困るのはウチとワージン将軍のところかな」
フェルト将軍がそう言った。
「いや。ウチは月内でないと困る。帝国軍の空騎兵に補足され続けているらしい。おそらくぼんやりしていると攻勢を受ける。かと言って引けば立て籠もっているどちらかに全力が向くのだろう。連中城塞にこちらの手がかからないと思って好き勝手に鳥を使うようになった。おかげでアタンズがかなりやられているらしい。最悪アタンズに合流しろと言ってあるが、そうすれば帝国が別の手をうってくるのは間違いない。春のうちに一回アタンズを助けてやらないと、諸君らの来援を待つまでもなく抜かれる」
ワージン将軍はさらりと言った。
「わかっていたことだが。連中の鳥ばかりは厄介だな。これまでは巣に戻るタイミングで砲撃を集めて黙らせる手もあったが、今となってはそれも難しい。味方の上に砲弾を降らせるのも本末転倒だしな」
フェルト将軍が苦々しげに言った。
「新型銃でもあの巨鳥を叩き落とすほどに弾を集めるのは難しいだろうとウチの連中も言っていた。それでもあの銃が五百あれば合戦ひとあたりで包囲を崩すところまではできるはずだ。それでアタンズとペイテルがどれだけ立てなおしてくれるかが勝負だろう」
ワージン将軍が先行きを説明した。
「――問題はその後だが、フェルト将軍が来たとして我々が追い回されているうちにアタンズが落ちたのでは同じことだ」
「我々が追いつく前にワージン将軍の師団が壊滅していることもあり得る」
ワージン将軍の言葉にフェルト将軍が皮肉げに言った。
「彼らにこんな話を聞かせて良いのかしら」
イモノエ将軍が今更のように呆れ声で言った。
「我々が如何に急いでいるかということを知ってもらう必要はあると思う。これは冗談でも何でもなく一大国難だという理解をして欲しいし、当然に他言は無用だ」
イズール将軍が言った。
マジンは切り出してみることにした。
「先ほどマイヤール少尉に新型小銃の聞き取りをしているとき、超遠距離射撃の話が出まして、マイヤール少尉から超長射程の銃について個人的に購入したい旨の要望がありました。その際には価格で折り合いが難しそうだったのですが、少尉が云うには将軍が融資をしてくれるかもしれないという話もありました。軍装備とはまったく別の話を他の将軍ご列席の中、この場で挟むのは全く心苦しいのですが、ワージン将軍もお忙しい中、改めての機会もなさそうですので、敢えて切り出させていただきます。射程半リーグを射的に供する事のできる銃に興味はお有りでしょうか」
将軍たちが顔を見合わせるようにした。
「興味はある。射程半リーグで一般標的を狙え、十分な威力があるということだな。その話が出たということは、試射が見られる状態であるということだね」
ワージン将軍が頷き念を押すように言った。
「量産の予定は全く無い一品物の私物ですが、マイヤール少尉の腕前を聞くに使いこなせるかと思います」
マジンは頷き説明した。
「値段は」
ワージン将軍が尋ねた。
「七万五千タレル」
「高いな。だがいいだろう。明日、試射を見せてくれ」
マジンの言い値にワージン将軍は鼻を鳴らして言った。
「――さて、話を戻そう。月内に軍都に何口届くね」
ワージン将軍は改めて尋ねた。
「月内に二便。確約できるのは四口分。六口可能と思いますが、一便目で確定します。何分軍都からですと工房の様子が把握できません」
マジンの言葉にワージン将軍が頷いた。将軍たちが明らかに安堵した表情になる。
「それで結構」
ワージン将軍が頷いた。
「その後はフェルト将軍の六口でよろしいですか。二便になるはずです」
「そのようにしてくれ」
フェルト将軍が頷き言った。
「うちの分が間に合わなかったらフェルト将軍に預けてくれ。そうならないことを望んでいるが」
ワージン将軍が言った。
「次は、ウチかイモノエ将軍だな」
「お先にどうぞ。と言いたいけれど、多分ウチが先にもらったほうが進発が混乱しないでしょう」
イモノエ将軍がイズール将軍に応えて言った。
「慌ただしいが、多分そうだな」
イズール将軍が頷いていった。
「けれど、十六口、運びきれるものかしら」
イモノエ将軍が疑わしげに尋ねた。
「今からですと三ヶ月で八便までは保証できますが、四口分の輸送の手配が間に合わないと思います。大雑把に五グレノル半です」
マジンはセントーラが首をふるのにそう応えた。
「たしか、デカートまで行けば荷物の引き渡しは問題がないと言っていたね」
フェルト将軍が確認した。
「そこまでは船便で運べますから。面倒はほとんどありません」
「輜重を留めて置けるような土地もデカート郊外にあると言っていた」
フェルト将軍が重ねて確認した。
「問題は少なさそうだな。デカートへの輜重の手配をしよう。さっきの話を聞いているとデカートの連中の対応は不安だが」
イズール将軍が言った。
「最後はウチだが、日程は少し余裕がある。八口きちんと届けてくれればいい。弾薬の話を聞くとウチもデカートまで足を伸ばしたほうが良さそうだな」
ヨーセン将軍が言った。
「お願いできれば助かります」
マジンがいうのにヨーセン将軍は頷いた。
「さて、やれやれ。なんとなくだが、手は打てたような気がするのが、この手の話の悪いところだな」
フェルト将軍が韜晦するように言った。
「現実、俺とフェルト将軍はこれで打つ手が殆どなくなったとも言える。尤も前線のアタンズ・ペイテルの踏ん張りがなければ、打つ手どころか、俺がこうして戻ってくる暇もなかったし、フェルト将軍もここには居られなかったろう。そういう意味では全くゴルデベルグ大尉の無謀とも思える活躍は我々全員を救ったと思っている。それを支えた機関車二十五両については、悪いがうちの師団が一回まとめて預かる。ともかく一回早く戻らないとアタンズが危ないのは本当らしい。ゲリエ氏の手配の二便目とやらを受け取ったら、その日のうちに出立する予定だ」
ワージン将軍が宣言した。
「次の話題は後装銃弾の話でよろしいのかな」
イズール将軍が尋ねた。
「その前に機関車が今買えるのかどうかは興味が有るところなのだけど」
イモノエ将軍が尋ねた。
「在庫という意味であれば、完成品五両と組み立て前の状態のものが五十両ほどあります」
将軍たちが揃って向き直った。
「三ヶ月で何両引き取れるかしら」
イモノエ将軍が尋ねた。
「五十両は確実に。ただしデカート引き渡しになります」
「値段は」
「三百万タレル」
イモノエ将軍は短く早いやり取りに満足したような顔をした。
「あるところにはある、といういつものお話ね」
「しかも聞いていたのよりもだいぶ安い」
フェルト将軍は少し不満気に言った。
「それは仕方ないところでしょう。売り込みが直じゃなかったのだし、デカートまでしか話が伸びていない」
イモノエ将軍が宥めるように言った。
「またデカートか」
イズール将軍が皮肉げに笑った。
「というよりも、お若い工房主に我々がここまで頼っているのが問題なのだろう」
ヨーセン将軍がため息混じりに言った。
「だが、こうなればデカートは軍に背を向けていることも難しくなる。戦争に勝った後のことを考えられるような状況になれば、デカートも無視はできない。結果として共和国全体の戦争態勢にはずみがつくことになる」
ワージン将軍は自信ありげに言った。
「だが、そうあるために新型銃だけでは手数が足りない」
ヨーセン将軍が言った。
「まずは、機関車を引き取る方法だろう」
イズール将軍が言った。
「ウチは五両あれば十分だ。先行する諸君にこそ必要だろう」
ヨーセン将軍が遠慮するように言った。
「ウチも出立には間に合わない」
フェルト将軍も残念そうにそう言った。
「自走されるつもりであれば、空荷の貨車に兵の方をお乗せすることは出来ます。乗り心地は保証できませんが、夏の暑さはありませんので毛布さえあればなんとか耐えられると思いますし、町で軍人会が使えるのであれば私どもも荷の心配が減ります」
マジンの言葉にフェルト将軍の顔が明るくなった。
「それは助かる。しかし、ウチの予算では二両だな」
フェルト将軍が皮肉な顔で言った。
「ウチも二両」
イモノエ将軍が言った。
「三両頼む」
イズール将軍が言った。
「流石に高いか」
ワージン将軍が残念そうに同僚を眺めた。
「価格は効果相応だろう。ただ効果が抜群に高いのもわかるが、それ以上に連絡参謀を貼り付けないと動きが早すぎて使いにくい、とウチの連中は言っている。正直ゴルデベルグ大尉ほど射撃や戦術判断に優れた前線向きの果断な魔導猟兵は少ない。そもそも連中には逃げよ臆病たれと教育されている。ウチにも跳ね返りの杖つきはいるから任せてみるが、まずはお試しだ」
イズール将軍が応えるように説明した。
「魔導猟兵は送話が出来なくても、どこにいるのかがわかりやすければそれだけで随分違う、って話は聞くわね。ゴルデベルグ大尉は追いやすい的だって、ウチの参謀は言っていた。向き不向きは色々あるけど、作戦環境に応じて主流が変わるということでしょうね」
イモノエ将軍の評はリザにとって褒められているのかけなされているのか微妙なところだった。
「――さて、これで多分フェルト将軍の打ち手も終わったことでしょう」
イモノエ将軍が言った。
「つぎは、ウチの話ですな」
ヨーセン将軍が切り替えるようにワージン将軍に話を振った。
「さて。ここからは、先ほどの諮問委員会の反省会でもある。呼び立てたゲリエ氏と秘書君には二度手間になってしまったわけだが、我軍の苦境を理解していただく一助になれば、あの茶番も無駄というほどでもなかったと思う。
――ともあれ、せっかくの新型小銃に師団定数の二百四十万発の銃弾を確保できていないというのが、今に至る共和国軍全体の鈍さの原因でもある。陣地の構築と転換運用があれば銃の性能の差はある程度消すことができるわけだが、それでは野戦を挑むことが困難で主導権を握ることが出来ない。優勢な補給があれば敵の出血を待って反攻という手もあるが、現状それも難しい。帝国軍の補給は年を越えるまでは破綻しないだろうと云うのが、大方の見方だ。一方アタンズは夏まで支えられるかどうかが危ぶまれている。したがって、戦力の散発的投入になることは知りながら我々はアタンズの救援をおこなうことに決めた。幸い前装銃の数そのものは揃っているし、玉薬自体は補給が受けられた。我々は保管していた後装銃のうち千丁を残してヨーセン将軍に五千丁託し銃弾を十万発受け取った。フェルト将軍も手持ちの一万丁をヨーセン将軍に託し銃弾を四十万発を受け取った。しかしこれでヨーセン将軍の部隊は手持ちの銃弾がなくなってしまった。
――その手当をゲリエ氏にお願いしたい」
マジンはしばしワージン将軍が語った言葉の意味が理解できなかった。
口を開き閉じ言葉を探す。
「それは重要な機密では」
やっと言葉にしたマジンにワージン将軍は頷いた。
「君たちにとっては当然に確認調査不可能な内容で荒唐無稽な法螺話ではあるが、同時に重要な機密でもある。だが、兵站本部のザル共がすでに数字を口にしたあとでは、我々が遠慮をするのもバカバカしいだろう。ともかくだ。ヨーセン将軍に現行後装小銃の銃弾を最低限三百万発可能なれば二千万発納入して欲しい。というのが、後半の話題だ」
ワージン将軍はそう言葉を切った。
場が沈黙したところでヨーセン将軍が軽く身を乗り出すように事情の説明を始めた。
「フェルト将軍と私とで備弾のやりくりをしていたところに、ワージン将軍のところの参謀から小銃の売り込みの件で話が来てね。是非ともということで話を聞きに来た。その後、イズール将軍とイモノエ将軍も進発が可能になったのだが、小銃の備弾についてやはり悩んでいたので声をかけたところ、幕下の参謀からワージン将軍がなにやら動いているということを聞き、今日の諮問委員会の傍聴を希望することになっていたという流れだ。
――分かりやすく念を押せば、共和国の全軍が装備転換の混乱で立ちゆかなくなっているところに、今回の開戦の大損害と小銃の売り込みがあった。だが、それだけじゃ足りないから、すでにいくらか数がある混乱のもとになった小銃用の弾もほしい。そういうことだ」
ヨーセン将軍がマジンにこの会の経緯について説明した。
「先程も触れましたとおり、基本的には銃と銃弾の見本をいただき、体制の整備に三ヶ月待っていただければ、月産二百万発程度という見積もりをすることは出来ますが、先様があってのことなので契約上法律上の問題は軍が間に入っていただかないと面倒が起きると思っています。最悪私が拘束されると、一切合財が止まってしまうこともありえます。ともかく、三ヶ月のうちに見積もりはお出しできますが、裁判沙汰になるとすべてが止まってしまうことだけはご承知ください。金額については今のところ十万発十万タレルと考えています。輸送の目処はデカートまでそれ以上はお答えできません」
マジンは状況と目論見を告げた。
「さっきは言葉を濁していたが、幕僚の話では企業買収も視野に入れているとか、或いは戦争後を前提にした長期的展望もあるとか聞いているが、どこまで本気かね」
ワージン将軍が尋ねた。
「イモノエ将軍とイズール将軍の備弾はどのくらいでしょう」
マジンは尋ね返した。
「関係有るのかね」
ワージン将軍が確認した。
「つまりは、私のこの既存の銃弾の件をどの程度真剣に希望されているのかということを伺いたいと思いました」
イモノエ将軍は頷いた。
「百万発。もらえるならもちろん欲しい」
「七十万発。我々も補給が受けられるなら金額に関係なく欲しいと思っている。支払いは軍票になってしまうがね」
イズール将軍も状況を述べた。
「結構です。ローテル鉄工の件。再来月中の取得を目標に既に買収への調査を始めています。過程で未確認ながら疑獄や不正の噂がありました。余談は許しませんが、金額と時間以外の障害はないと考えています。ロータル鉄工の資産は今後の新型小銃配備計画を含めた長期計画においては軍都周辺の拠点として必要だと考えています」
マジンの言葉にそれぞれ様々に反応があったが将軍たちは納得したようだった。
「憲兵総監が来てたな。結局最後まで発言はしてなかったが」
フェルト将軍が思い返すように言った。
「軍令部長と憲兵総監の間にいた奴は結局誰だったんだ。ロータル鉄工の件を色々、買収についても質問していたが」
イズール将軍が答えを知る人を探すように尋ねた。
「傍聴出席者の一覧では兵站部給水局とか場違いな部署名があったけど名前がなかったわね。彼がそうかしら」
イモノエ将軍が推測を述べた。
「ロータル鉄工の件を直接口にした相手としては、キオール中佐、マクマール中佐、ホライン少佐それから私が調査を依頼した人物と、ゴルデベルグ大尉と私の秘書の六名だけです。ただ、最初の三名の方とは軍の食堂での雑談に紛れてでしたし、ゴルデベルグ大尉と秘書とは少々気安く相談していたので、何かの折に目をつけられて聞かれたという可能性は否定しきれません」
マジンがそう言うと将軍たちは少し考えるような顔をした。
「どういう経緯であれ既存の弾丸を別の工房で生産し納入するということになれば、結局はロータル鉄工に至るのは話題としては自然だろう。敢えて質問をしたのが誰かというところは気になるが、いまは気にしても仕方ないんじゃないか」
ワージン将軍の言い様は一面正しくもあったが、直接の当事者としては危機感を感じずにはいられなかった。とはいえ、訴えるべき相手がここにいるわけでもなかった。
「――もう廃棄小銃と銃弾の手続きはしてある。試験用の三丁と銃弾五十についてはすぐに渡せる。ともかく弾がなくては話にならない。早速、銃弾の生産の準備にかかって欲しい」
ワージン将軍が急かすように言った。
「それで品目はどうする」
フェルト将軍が尋ねた。
「品目ってのはどういう意味だ。銃弾じゃダメなのか」
ワージン将軍は驚いたように言うのをフェルト将軍が驚いた顔で見つめる。
「契約上あの銃は専用銃弾を使うことになっている。ロータル鉄工の認証を受けていない銃弾を使うと問題になるというのが、あの銃の銃弾生産を妨げていた理由の一つでもある。知らなかったのか」
フェルト将軍が説明した。
「バカなことを決めたものだ」
ワージン将軍は吐き捨てるように感想を述べた。
「金属薬莢式という新しい構造だからな。真鍮の薄板を綺麗につなぐのも一苦労できちんと貼り合わせないと中で割れて引っかかるようになるから、その辺もあって工房に許可が出ないようだったな」
フェルト将軍が説明した。
「では、ウチから納入するのは銃身清掃具でいかがでしょう」
マジンが提案するとヨーセン将軍が面白そうな顔をした。
「うん。それで行こう」
ヨーセン将軍が頷いた。
「そうすると、どういうことだ。これで実際に生産と納入がおこなわれれば問題解決か」
イズール将軍が思いついたように尋ねた。
「部隊認証の消耗品要求として予算を求める限りにおいては、銃身清掃具としてゲリエ氏に発注することが可能になるということね。戦場文学の一種だけど、穏当な方だとは思う。そういう意味では新型小銃と銃弾についても品目を定めておいたほうが多分いいわね。一般性をもたせた名前で」
イモノエ将軍が面白そうに言った。
「そうしたら、機関小銃と九・百シリカ口径銃弾、ということで」
マジンが提案した。
「単に九シリカ銃弾ではダメなのか」
イズール将軍が尋ねた。
「ウチでは既に拳銃用に短い九・五十シリカ口径銃弾があるのです」
「なるほど。そういうことなら、わかりやすいほうがいい」
イズール将軍は頷いた。
「ところでだが。勘違いがないように確認しておくと、解決する問題はあくまで軍の内部の書類運行上のものであって、ゲリエ氏が求めていた彼とロータル鉄工の間の問題には全く寄与しない。銃身清掃具として実際にその機能があるように作られていようと、ロータル鉄工は納入されている事態を知れば問題を裁判に持ち込もうとするだろう。ロータル鉄工の買収失敗ということにでもなれば、最悪ヨーセン将軍の進発直前に騒ぎになって後続の生産が止まるかもしれない。幸いデカートは遠いから秋まで騒ぎになるとも思えないが、予定では我々がまさに死力を尽くしているはずの時期だ。もちろん兵站本部が全面的な使用承認をすれば別だが、そんなのを待っていたら、来年になってしまう。ゲリエ氏には悪いが戦争に勝たないと予算も裁判も帝国に奪われることになる」
フェルト将軍が補足して状況説明をした。
「兵站本部の連中が納得しないとロータル鉄工とゲリエ氏の仲介は無理だろうかね」
ヨーセン将軍がため息混じりに尋ねた。
「ダメだろう。時間を考えればなかなかに厳しい。そして横車を押しているのはこの場合我々だ。本件は穏当な解決を期待するのはもともと難しい。おそらくゲリエ氏による経営権買収が一番穏当なぐらいの局面だろうね。こう言っちゃ何だが、我々がゲリエ氏に頼ろうと考えているのも、切羽詰まって手数も時間もないからだ。実績なしの口約束で、空白三ヶ月の計画をたてるなぞ、どのみちまともな方法とはいえない。連中はその辺をつつきたいのかもしれない。憲兵総監が来ていたのは、軍令本部長との釣り合いを取るためでもあるけど、手際手数が余っているという示威行動でもある。参謀本部長がこなかったのは、政治的になりすぎると面倒くさくてかなわないというところだろう。あそこが絡むとどうしてもアチコチ話がいってしまう」
フェルト将軍は大雑把に想像を述べた。
「私が詐欺師だと思われているということですか」
「そう思われている可能性はある。或いは間諜と通じていると疑われているか。まぁそれを言うと兵站本部の委員の方が怪しくはあるが。キミが餌か魚かはわからないが、まぁともかくその辺に網を投げるために来たんだろう」
フェルト将軍が自分の考えを説明した。
「我々がキミに望みできることは字義通りの銃後として矢玉の備えを万全に頼みたいということだけだ。ロータル鉄工をどうにかすることは、現状我々の状況では出来ない。ただ、状況の判断を可能にする材料ならば幾らかは提示することはできる。その件については、ゴルデベルグ大尉。キミを通じて提供することになる。ここにいる将軍は君たちの万全の支援を期待している。無論可能ならば時間の許す限り便宜を図るつもりもある」
ワージン将軍がそうまとめた。
「承りました」
リザの返事にワージン将軍が頷いた。
「いや、本当は戦後計画の話をもっと気楽に聞きたかったのだが、午前中の会のせいで具体的な話に入るのが遅すぎた」
ワージン将軍が残念そうに言った。
「戦後計画というと小銃の普及後の話か」
興味ありげにフェルト将軍が口にした。
「いや、小銃普及に際しての輸送連絡網の話だ。鉄道というらしい。なんでも鉱山にあるトロッコのようなものを拡大して町を繋いでいっぺんに数百グレノルの貨物を扱えるようにすることを考えているそうだ」
ワージン将軍が楽しげに言った。
「ほう。それがあれば輜重の問題が消えるじゃないか。戦争に勝つのも容易そうだ」
イズール将軍が笑った。
「お楽しみを楽しむためにまずは勝て。ということね」
イモノエ将軍がそう言うと席を立った。
「私には明日のお楽しみがある。諸君も暇なら試射の見学に来るといい。機関小銃も見せられる。ウチの幕舎のそばの演習場を借りることになると思う」
ワージン将軍がそう言うとイズール将軍が皮肉げに笑った。
「口に入らないことがわかっている飴玉の味の感想なぞ聞きたくもない。とはいえ買うにせよ買わないにせよ、報告書にはまとめて欲しい」
イズール将軍はそう言って席を立った。
「ウチからは誰か見学を回すことにする。一品物と言ってもお前のところでいらないならウチがもらうかもしれないし、無理にも頼むかもしれない」
フェルト将軍がそう言いながら立った。
将軍たちが立ち揃うとそれを合図に隣室からぞろぞろと新たな人々が入ってきた。
「我々はこの後それぞれ別の用事があるので失礼する。が、今の話の内容を書面の形に起こしたものを幕僚たちが準備しているはずだ。契約書と云うにはいささか不確かではあるが、最低限こちらの購入支払い意思は揺らがないという証拠として預けたい。
最後になるがゲリエくん、キミに出会えたことを我々全員本当に心から喜んでいる。お互いこれから全く忙しいことになると思うが、そのついでに彼方でキミに感謝しながら戦ってる我々の勝利を祈ってくれれば言うことはない。
それではお名残惜しいが失礼する」
ワージン将軍の言葉にリザと幕僚たちが敬礼をして将軍たちを見送った。
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