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装甲歩兵旅団
アルジェン・アウルム十七才
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アルジェンとアウルムは全く席次を並べるように軍学校を卒業することになった。
彼女らは学生総代と兵科主席になったが、代表して登壇したいわけではなかったのでそこはどうでも良かった。
問題は彼女らが彼女らの保護者が軍に対して過大とも云える貢献をしている人物で、極めて政治的な意味を持つはずの共和国軍軍学校の学生総代や兵科主席というモノを全く理解しないまま、それにふさわしい十分な成績を収めたことを保護者ともどもあまり理解しないままに卒業までの間近な時期を過ごしていたことにある。
女性として亜人として全く主席で卒業することに問題のない成績であったことと別に、彼女らの父親が大きく軍に貢献していることはそれなりに地位のある軍人であれば理解していたから、軍学校として亜人を公平に扱っていることを政治的に示すまたとない機会であったし、彼女らを逃すと次はいつになるのかわからないという事もあった。
そういうわけで二人が軍には進まないつもりだと口にした時は指導教官たちがこぞって頭を抱えることになった。
およそ感情論を置き去りにすれば二人が極めて優秀な学生であることは、学内で知らない者は少なかったし、参謀本部でも亜人の高級将校の増員を期待する声がふつふつと湧き上がっていた。
三桁混成聯隊の聯隊長の多くは亜人で准将という地位もあったが、彼らの多くは旧制度の地方猟兵聯隊制度を拡大援用した封建領主や傭兵団長如き存在で、タダビトとの軋轢を望まず共和国に協力をしてくれているが、必ずしも共和国軍に興味があるというわけではない。
所謂、共和国軍の中央官僚としての高級軍人としての亜人の必要性は語られつつも、実態としては人材に悩む問題でもあった。
当然にマジンも軍学校に呼び出され、戦時下における優秀な人材が必要で、刑事兵役満了者でさえ満了に伴う退役にも慰留金が支給され、軍務継続再就役を求めるような状態になっていると説明を受けた。
しばらくの擦った揉んだがあって、二人は軍に任官入営することになった。
一般に中尉配属は妊娠や傷病などの事故がなければ、高級な伝令使である戦務参謀か前線部隊での本部幕僚見習いということになる。
階段を登ったり降りたりするかけっこを真剣事の業務にするのも、中尉配属の参謀の勤めである。
二人は大本営での勤務が約束されることになった。
地方聯隊や州軍義勇兵の幹部育成コースである騎兵過程であれば、大本営でのどこかの本部勤務を飾って地方に戻るための半ば当然の配置なのだが、つまりアルジェンとアウルムの生命と人望人脈について大本営が重視している、という様式的な表明であった。
しかしそれは当の二人にとって軍学校の生活と同じように父親を困らせない何かの足しになるのであれば、という程度の意味しかない。
卒業生の形見分けと称する部屋の片付けや小さくなった制服などを下級生に分配する儀式があって、アルジェンとアウルムは配属中尉という待遇で軍に任官される予定で配置までのひとつきをローゼンヘン館で過ごすことにした。
鉄道が既に通っている区間は戦争中、士官には三等待遇での鉄道利用が認められていた。要するに臨時徴発の権利ということで、軍人手帳を使うことで得られる特権的な福利厚生の一環とも云えた。三等席に余裕がない場合、便乗券として貨物車に乗り込むことになるわけだが、差額を払えば二等に移ることも認められていたから、多くの士官は便乗扱いで貨物車に移るくらいなら、素直に二等の金額を払うことを選んだ。
兵下士官にはそういった特権的な権利はなかったが、一日に何便かある軍専用列車には便乗が可能で、多少足りなくても行き過ぎても全行程を馬で行くよりはだいぶ早かった。
アルジェンとアウルムは一等車での帰り道、父親と過ごす三日間しゃべりっぱなしだった。
これまで父であるマジンは二人のことを無口な寡黙な子供だと思っていたのだが、軍学校で過ごす数年ですっかり性格が変わってしまった様子だった。
幾度となく軍学校にも足を向けその都度あっているはずなのだが、マジンはまるでソラとユエを相手にしているような気分になった。
二人は父親にこの八年で起こったことを尋ねた。
色々だ、という言葉では当然に二人は納得しなかった。
「機関小銃を八十万丁納入して、自動車が二万台売れて、鉄道が北街道をもうすぐ制覇して、シャッツドゥン砂漠に露天掘りの鉱床ができて、泥海に港と工場を立てて、荒れ野に油井ができて、第四堰堤がもうすぐ完成して、カシウス湖がウチのものになって、会社の従業員がもうすぐ七万人を超えて、お前たちの妹と弟が九百四十人増えた。うちには今、子供を除いて千二百人ばかりが寝泊まりしている。年寄りの職人が五十人ばかり増えたのと千くらい女が増えた。他に南の島に幾つか家がある」
しばらく二人は父親が口にした言葉を繰り返して唱えて、意味を反芻し説明を求めた。
八年ぶりに帰ってきたアルジェンとアウルムにとってはデカートもヴィンゼも全然別の土地だった。
ふたりともマジンの頭の上で口の中に目玉があるような有様で辺りを見回していた。
特にマジンが工房で組み立てている博物館にあった巨人の化石を小さくしたような二領の大きな鎧は何に使うのかと思って潜り込んでみれば真っ暗なハリボテだった。
「なんのために作ったの」
流石にアウルムも使えないということはわかったところで尋ねると、マジンは電算機室へ二人を案内した。
逓信院からの出向してきた研究者と今は随分員数を減らしたジェーヴィー教授の研究室とローゼンヘン工業の研究者たちが様々に研究をしていたが、その脇にマジンの個人用の機械が幾つか並んでいた。
そのうちの一つは甲冑の動作から信号を拾って動きを取り込んでいた。
筋繊維や各部のダンパーの伸縮や捩じれを読み取って動作の整理をおこなっている。小さくても特に問題があるわけでもないので、子供たちが竹馬代わりに実験に協力してくれていることで特に下半身の挙動情報は転倒のパターンを含めてかなり豊富に収集できていた。
その挙動が緑色の蛍光色で模式的に再現できる。
「ちょっと待って。この機械はなにをするものなの」
アルジェンが電子計算機の説明を求めた。
なにをするものなのかという説明はひどく難しいものだが、大量の数値を管理循環参照しながら計算を積み上げてゆく機械だと説明した。
具体的には最近はある面を微細な三角形の集合と見てその三角の変形量を部品全体の歪みとして応力状況や破断部分を推定するのに使っていた。主たる解析内容は静的分布の時間積み重ねだが、将来的には時間的な応答遅れを含めた動的分布を計算することで振動破断の近似解析をおこない、最終的には部品単位ではなく実用を想定した製品全体の加振状況の近似解析をおこなう予定だった。
今のところはマトリクスや計算力もだが出力や外部記憶などの周辺技術の要領がわるく、あまり細かな分割ができていなかった。立派な目玉を持っているイカのような有様でひどくアンバランスな状態だった。
しかし似たような計算構造で鉄道の運行であるとか、物流の状況把握であるとかといった要素の少ない振動の近似問題や或いは直接的な在庫管理や会計事務のような静的数値管理などは電算機の得意とする分野であった。
他に色を数値管理することで色調を研究したり、音についても同様に数値転換することで符号化することで再現性を高めたりという、作業がおこなえるようになっていた。
音については単なる定周波ブザーを断続的に鳴らすことで音程を作る事ができるようになっていて、錯覚が耳にもあることを教えていた。和音についてもある程度表現できていた。
音の位相の話で言えば小型の定周波ブザーを複数奥行きを持たせて並べて和音を含めた音楽を演奏することは成功していた。基本的にはマイクロフォンで採取した波形を電算機上で符号化処理して複数のブザーの断続と遅れを使って別の波を起こす。という装置だった。ブザーアレイというべき装置は音が振動であるという一つの信念とその証明の結実でもあった。言葉をマイクに向かって吹き込むと多少歪んだ音でブザーの群れが声を再現した。
「要するにたくさんの数値を押しならべる形で計算ができる多目的計算機だが、その計算結果をいろいろな形で電気的に表現することができる」
と言うと二人は揃って溜息を吐いた。
「途中がとてもたくさん抜けているけど、電灯をつけたりしているあの電気で小さなソロバンの玉を動かしてそのソロバンの珠の位置で色々な仕組みを動かす機械なんだね。その珠の位置で計算の仕組みを切り替えられるような。で、電気のスイッチの集合だから色々な電気機械を動かせる」
アウルムが機械について補足するように自分の理解を述べた。
「そういう感じだ。元は電話交換機の中に入っていたモノを拡大した。アレも基本的に電気スイッチをたくさん並べたものだ」
ああ、と二人は納得した様子だった。
「どのくらい速く動いているの」
「一番早いものはだいたい一秒間に十の二十三乗回計算できることになっている。どんな早さかというと円周率を小一時間で一兆桁計算できて指定した四桁の数字の並びがどこにあるかを示してくれる。はずだがそれだけの出力を蓄える方法がまだない。一兆文字を記憶する方法も出力する方法も今のところまだない。今のところは百万桁くらいだ。それだと計算そのものはほとんど一瞬なんだが、出力は結構かかる」
「なんでそんな不釣り合いなことになっているの」
アウルムが不思議そうに確認をした。
「まぁ、作れますよっていう以上の意味は無い実験みたいなものだからね。今のところは。なににつかえるかっていう考えは全然なかったんだ。微細織機で配線をさせたり気体化させた材料を誘電蒸着させたりという実験が主眼だ。一般的な回路に接続するために六層のゲートが必要でその間は記憶回路化している。合計すると二千億桁ばかりの記憶回路があって、あらかたの計算はその間だけでできるんだが、結局その先を計算に応じた早さで素早く取り出す方法がない」
「そこまで出来てはいるんだ」
「ゲートを通過するたびに信号速度がだいたい百分の一になるから、中心から六層目のところでは一秒間に十の十乗回、十億回の計算出力と云うところで実用的には落ち着く。ゲートを増やしてギャップを小さくしてゆくと速度そのものは上がるのだけど、今のままだと計算以外の電力が増えることになる。電話局を千ばかり押し込んだような状態になっているから、速度を上げてゆくと今度は全体の温度が問題になりはじめる。結局、電気の振幅で出力しているから回路全体の問題でもある。周辺装置の整理が進んで能力が上がらないとこれ以上は火事になる。回路の細密化を推し進めることで計算そのものは微細電力と回路をトンネルする電子や磁気とによって事実上の超電導回路が作れるのだけど、それを大規模化しようとしたり高速度で出力しようとすると振動的な電磁気抵抗が起きて、途端に消費電力が増える。力任せに流すために小さい区間に大きな電力を流すと回路全体が焼ける。ゲートの熱抵抗を整えるためにヘリウムと窒素とを使って冷却を調整していると言うと微妙な感じが伝わるかね」
「どうやってそんな細密化をしているの」
「基本的には光画と同じなんだけど、より小さな電子を選んで使う。電子そのものは実は空間に存在する軌跡のようなもので究極的には物体というよりは空間のエネルギーポテンシャルというべきものなんだ。いわば水面の波面の動きが光の反射や回折をすることで波として目に見えるようなそういうもので実態としては空間の歪としての質量を伴うけれど、厳密に詰めてゆくと物質でもエネルギーでさえもない。ただその現象は空間のひずみとして質量を伴うし、エネルギーの伝播をおこなうから観測もおこなえる」
「そういう仮説の解釈だと光ってなんなの」
「糸のたわんだところかな。織物によくできちゃう星みたいなダマみたいな。質量としては感知されないのだけど微細なエネルギーの流れとしては引っかかるようなところ」
「よくわかんないけど、空間の歪っていう概念とは違う空間の欠陥みたいな感じかしら」
「不連続点であるから欠陥ではあるけど、質量を考えるときにはよくある積分定数に飲み込まれちゃう無名の特異点の状態くらいに考えておけばいい。まぁ、背景に巨大なエネルギー要素があってその特殊な形が光であるということだ。ともかくより小さな形の揃った電子を使って回路を形成することで望みの形に近い回路に仕上げるんだ。質量のある存在だから電子の運動にも回転というやつがくわわることで電子の写像に変化もあるのだけど、それをある程度制御しておこなっている。元の密度が大きいから運動による歪も大きいしね」
「どうやっているの。結構電気使うでしょ」
「どうやっているかというと陽子を金槌代わりに三つぶつけて隙間を通している。陽子そのものも実を言えばあまり形の揃ったものというわけではないのだけど、質量が大きいことで電子よりは挙動が安定している。実際に三個の陽子を同時に衝突させられるほどの実力は我が家の装置にはないわけだけど、陽子が電磁気的に反発する釣り合い点が構築され、そこを電子を通すことで電子の回転挙動を整理することはできる。ふらふらと歩いていた女が三人の男に同時に声をかけられて慌てて通りを抜けるようなものだ」
「電気は。そのためだけに発電機回す必要があるでしょ」
「まぁそうなんだけど、転換炉発電機を使っているから、経費そのものはあまり変化がない。今使っている小型の転換炉だとあんまりバンバン回路を焼くわけにはゆかないのだけど、歩留まりを考えなければ千くらいを十日かけて作ることはわけもない。二回ほどバカに邪魔されたが、バカも死ななかったし、とりあえず幾らかは完成したからモノとしてはできた」
「それで、そのあとは」
「まぁだいたいそれで終わりなんだけど、あとはマスクに軽く電気をかけて金槌代わりに使った陽子をマスクに吸い上げたり、それちゃった電子を引っ掛けたりというところかな。マスクに引っかからなかった電子は小銃弾と一緒だから後ろの方ではまた挙動を乱しちゃうけど、適当な焦点で通過した材料はとても鮮明な回路を形成する。そういう回路を傾けた部材を旋回させながら六層重ねて厚みのある立体的な像として回路成形する。理想的な構造をしているのは焦点距離中心部の部材のはずなんだけど、いろいろな理由でその前後のほうが回路としての出来は良いみたいだ」
そこまで口にしたマジンの顔を見てアウルムは困った顔で姉の顔を探した。
「アルジェン」
「なに」
「わかった?」
アウルムは縋るように姉に尋ねた。
「なに。わかんない」
「父様の言ってることわかんないんだけど」
「説明に比喩が多すぎて、分かるわけない。数字もテキトーだし、あんまり説明する気ないんだと思う。これだけ話しても基本的なところが出てこないところを見ると分かるように説明するのが難しくて困っているんだと思う。電話局においてある大きな機械をうんと小さくしたものだってことだけわかればいいんじゃないかな。なにに使うって云うより作ってみただけらしいし。父様の学志館の論文だけじゃ話についていけないことはわかった」
アルジェンはとりあえず自慢話程度に聞いておくつもりにしたことを告げる。
よく出来た姉ぶりにマジンは苦笑するしかない。
「わるかったな。べらべらと上手く説明できない話に付き合わせて」
「しょうがないよ。めちゃめちゃヒトもモノも増えたもの。車イスのおじいちゃん達が随分いるけどウェッソンさんは元気なの」
「ああ。まぁ流石に少し歳とった感じにはなってきたが、元気だ」
「誰が年寄りですって」
そう言いながらウェッソンが現れた。
「まぁ確かに旦那よりは歳もいってますがね。ここにいる、年寄り連中よりは二十は若いですよ。しかし、アレですなぁ。お嬢たちは、随分デカくなりましたな。軍の生活ってのは合う奴合わない奴ってのがあるわけですが、お嬢たちの体に限っちゃ、かなり水が合ったようですな。そんで、この後どうするんです。戦争終わるまで付き合うんですか」
「うん。帰ってこようかとも思ったけど、戦争終わるまでっていっても鉄道がアタンズまで伸びたら、いろいろ変わるでしょ。大本営で中尉配属にしてもらえることになったから、ちょっと付き合ってくる」
姉に合わせて頷くアウルムを眺めてウェッソンは破顔した。
「中尉配属ってことは一桁席次で修了ですか。これはすごい。まぁ、そういうことならもう少し付き合わないと色々勿体無い。鉄道が東の街まで伸びれば、もう一回勝てばいいだけですよ。来年には鉄道がアタンズまで伸びることになっているから、そこからはまた様子が変わりますよ。デカートの鉄道本部じゃ軍の鉄道大隊とかって連中が線路やら列車やらのあちこちに指差して声かけてって体操代わりにやっていますよ。まぁウチの連中も指差しくらいはやってはいますがね」
ウェッソンの言葉にマジンは困った顔で応じる。
「もともとマイノラが骸炭炉の手順を覚えらんねぇって言い出したから、手順を唱えるのに合わせて指で触る機械をさせって話になったわけだが、なんか色々に使われているみたいだな」
「いいんじゃないすかね。声の様子や身振りで体調もわかるし、そもそも露骨に間違ってれば周りが指摘できるし、指先で視線を追わせるとどうでもいいものも意外とちゃんと見えたりしますし」
そう言いながらウェッソンは指を指して天井の灯りの辺りをなぞってみせる。
「みんな割りとそう言ってる。おかげでやらない社主は、どうなんだ的な話になることもある」
「そりゃ、まぁ、偉い人には偉い人なりのナニがあるってやつですよ。……お嬢はいつまで休暇ですか。中尉配属ってことは春には配属でしょ」
ウェッソンは不満顔のマジンを鼻で笑って話を切り替えた。
「配属は再来月だけど、その前に任官式典がある。来月の二十日頃には軍都で手帳の更新と健康診断と被服票やなんかの書類の準備かな。こっちでやってもいいけど、結局大本営持ってゆかないとならない。鉄道があるから随分のんびりできる。前はほんとに一年休暇もらえる優等生じゃないと郷里に帰って任官の報告とかできなかったけど、去年の先輩はどっか結構遠くまでひとつきで行って帰ってきて、校長に報告していた」
「優等だと一年休暇がもらえるんじゃなかったのか」
首をひねるようにマジンが娘に尋ねた。
「それ、卒業の前に学校でも聞いてたんだけど、戦時だから一年休暇ってのは後回しらしい。任官の特別給与になるって聞いた。リザ様の説明結構穴だらけ」
怒るでもなくアルジェンが言った。
「配属は決まっているんですか」
「中尉配属だから普通は大本営で中尉参謀って伝令をさせられるって聞いているんだけど、大本営に電話が敷かれて一昨年部隊拡張って話があったから、予算もいくらかは目処があるって話でどこかの部隊の小隊長とかになるかもしれない」
アウルムが推測を口にした。
「どこか希望を聞かれたりはしないのか」
「希望って云われても軍隊のどこがいいとか何やりたいとか、全然考えてなかった」
「うん。座学の課題も教練も割とどれも楽しかったし、学校は結構楽しかったけど、軍隊とか軍人とかはあんまり考えたことがなかった」
「魔導検査くらいかな。ムニュムニュして気持ち悪かったのは」
アルジェンの言葉にアウルムが思い出すように言った。
「ああ。そういえば、アレはわたしも嫌だった。二等魔導士資格とかって事になったけど、アレはあんまり向いてなさそうだった」
「決闘とかって奴は」
「二回だけあったかな」
「私は十回くらいあったよ。嫁になれ~。みたいな感じの。流石に断ったけど」
「怪我させてないだろうな」
娘二人は顔を見合わせた。
「流石にそれは無理。男女の決闘でそんなに余裕あるわけないし」
「男の先輩が怪我もなくて引き下がれるわけ無いじゃん。大丈夫。目とか指とかもいだり、死なせたりはしてないよ」
「戦時下だからか割と教官たちがピリピリしていた」
現場の人員が足りないから部隊拡張の話が出ているというのに、優秀な人材を育てているはずの現場で無駄に消耗するのは管理上全くよろしくないから、気楽に応える娘達とは真逆にいつぞやのホライン少佐の気分がよく分かる。
「そういえば、新設部隊といえば自動車聯隊。大活躍みたいですな。リザール城塞の手前まで敵中突破して帰ってきたって街でも評判でしたよ。まぁ、アレだけ裏の原で亀になったり青天井決めたりしていれば、そりゃまぁ少しは頑張ってもらわないとなりませんが」
話を切り替えるようにウェッソンが口にした。
「――戦車の増産ってのはどうするんですか。一応注文に先立って幾らかは作っちまいましたが」
サラリとウェッソンが口にした話題にマジンも少し困った顔をした。
ペロドナー商会に続いて鉄道部警備隊にも二十両ほどは準備していたが、どう考えても不要な装備だった。確かに列車強盗との戦闘そのものは月に一度ほどの頻度であちこちで起きてはいるのだが、殆どは車内或いは駅構内での事件で、そういう事件の制圧には小銃弾さえ大仰で青弾か黄弾を準備した機関拳銃のほうが効果的で、黄弾を太らせたような音響爆弾や黄弾の配合を変更した白弾と称する発煙弾のほうが使い手はあった。
いま鉄道警備隊は二十五シリカ拳銃弾の青弾を警備用の対人弾として機関拳銃に詰めて装備していた。大柄で大仰な弾丸の割には戸板一枚抜けないようなものだが、ともかく大きな音がすることと相手を殺す心配が殆ど無いことから気楽に撃てるところが特徴で捕物に便利に使われている。
二十五シリカ拳銃弾には他に黒弾という対物用の弾丸があり、そちらは重金属を使った堅く重たい釘状の弾丸を軽い被筒を付けて銃口に合わせることで弾速を下げないまま打ち出している。条件にもよるが貨物自動車の窓や運転席の多くの部分にも有効な威力を持っている。前線の部隊がいちいち弾丸を選んで使うわけもなく、前線でおしならべて使うには高価過ぎる材料だが、対車両用の弾丸がないわけではなかった。
軍隊向けにはそんな特殊な材料の弾丸を使わなくても、もう少しすれば老人たちに詰めを任せている新型の軽野砲、噴進砲が完成するはずだった。
既に弾頭部の試験は去年のうちに終わっていて、威力は確認済みだった。マジンも一昨年のうちに威力を確かめている。今は推進部分の調整と製造工程の設計がおこなわれている。弓矢やタコの足のような長い尾を引かせると空中姿勢が安定することはわかっているのだが、そうすると速度の損失も大きく、もともと弾体の直径が威力に大きく関係することからゆるくやまなりな弾道を描きがちでひどく狙いにくいことや射手やその後方に向かって吹き出すガスなどの大元のところで多少調整が必要でいくつか方向性を示せる見本を準備している段階だった。
試験の都合を考えれば荒れ野の鉄道警備隊と後備聯隊ということになる。
線路や電線を狙った窃盗団などもあり、機動力のある戦力が必要であることは間違いないのだが、今の段階で戦車が必要だった敵はワイルでの装甲車を相手にした戦闘以外では発生していない。
鉄道線路の脇には舗装された保線路が広がる以上、常識的判断からすれば装軌車両である必要もなく、装甲自動車の発展はともかく戦車は不要だった。
「ああ。アレねぇ。夏頃の話では、本当なら年の暮か年明けにも軍の誰だかが納品状況の確認に来るはずだったんだよね。見込みでは七十両。まぁその時に鉄道部のも合わせて引き取ってもらうはずだったんだ。流石に二十両は今はいらない」
どうも軍の中で色々あった様子で戦車というか様々に様子が二転三転している。
機関小銃の時もあったことなので、他に用事の多い今はまだ手を打っていないが、どうしたものかというところでもある
「また裏の原で訓練のはずだったんですかね」
「今度はどこだかわからないけど、そうしてくれるとウチとしては助かるとは言っておいた。誰がどうやっても最初のふたつきみつきは無茶をして壊すし、壊さないと覚えない。それに人目のあるところでカッコ悪いところを見せないですむだろう」
裏の原という鉄道線の北側の荒れ地の通称はどこの裏か表かという話はあるが、次第に定着を始めている土地の名前でクラウク村でもそういうふうに呼ばれている。
「まぁ、アタシらも知らない山ん中に助けに行くよりは気楽ですな」
「そうは言っておいたんだけど、なんかいろいろ変わったみたいだな」
諦めるようため息を吐いた。
「そういえば戦車って見ていない」
「軍学校でも話題にはなってた。なんか大砲を積んだ自動車って感じの話だったけど」
「ああ。今なら新品ピカピカのが並んでますや。――あ、アタシはこれで。お嬢。それじゃまた晩飯の時にでも」
しかけていた機械が一仕事を終えたのを見てウェッソンが雑談から抜けた。
自転車で軽くゲリエ村まで足を伸ばし自動車工場設備の中の特殊車輌倉庫を開くとそこは大小様々な重機械が並んでいる。その中ほどのごちゃごちゃとした一角に戦車と装甲車が並んでいた。
「これかぁ。こっちの小さい方はともかく、大きい方はかっこいいけど乗り心地は悪そうだね」
アウルムが軽く言った。
「まぁ、どうだろう。やかましいのは確かだけど、石畳と舗装路以外では普通の馬車よりはマシだと思う。大抵の道で大きいから思ったほど悪くないという感じかな。ただ、大きいから突然事故になりやすい。装甲車の方は機関銃に耐えられるだけの丈夫さとちょっと大きめの銃を積んでいる普通の自動車だよ。鉄道強盗を追い払うための自動車だ」
「大砲で撃たれたらひっくり返らないの」
アウルムが尋ねた。
「走っているところを距離千キュビットで十パウン砲を横から撃たれたら転ぶ。正面からだと大丈夫。戦車の方は攻城砲以外では履帯と大砲と潜望鏡くらいかな。壊れる可能性があるのは。ただどちらも運転視界が悪いから、調子に乗って走っていると交通事故は起こす。そうすると簡単に大砲や履帯は折れたりちぎれたりするし、裏返ることもある。石の上や氷の上ではクルクルツルツル回るよ。まぁ雪の上なら戦車は割と普通に走る。かなり流れるのは車と一緒だけど」
「こんなに長い大砲、意味があるの」
「実を言えばあまり意味がなかった。けど、役には立った」
「どういうこと」
「音速の六倍で弾丸を打ち出す。山なりに撃つと射程で五十リーグを余裕で超える。弾丸の丸みと地球の丸みのせいで真空中平面の計算よりも射程がだいぶ伸びるんだ。どれだけ伸びるかは方位地形や風向きも関係するからなかなかわからないし、そんな遠くじゃ狙うどころじゃないわけだが上手く使ったみたいだ」
「新聞で読んだ新兵器って、この大砲のことだったのね。意味があったってことでしょ」
「戦車に積む意味はあまりなかった。この大砲は一キュビット半の鋼鈑を撃ち抜く性能があるけど、そんな城塞はないわけだし」
「陣地とかを吹き飛ばすのにはつかえるんじゃないの」
「まぁつかえる。一般的な塹壕を支援なしに乗り越える大きさとそれに耐えられる運動能力と、その大きさ構造の範囲内で最大の威力の砲を積んだわけだから、役に立たないというわけではない。けど、そこまでの性能もいらなかったな、というだけだ」
「陣地を吹き飛ばすのには使えないの」
「使えはするけど、砲弾があまり大きくないんだ。硬いものを撃ち抜くのは得意なんだけど、土の掩体に大穴を開けようと思ったら、深く穴を開けるだけじゃダメで周りを大きく発破しなくてはいけない」
「でも強そう」
「強いけど、敵がいない強さってのも、ちょっと扱いに困るだろ」
「無敵ってかっこいいと思うよ。いんびんしぶるーめっしぇーん」
「無敵には違いない。帝国軍が龍猪とか云うのを戦場に出してきても、これで負けるとは思えない」
「戦車同士で撃ちあうとどうなるの」
「正面主要部は守り切れる。ほかはダメだろうと思う。運が良ければ生きていられる作りにはしてあるけど、運が悪ければ死ぬし、運が良くても悪くても戦えない状態にはなるはずだ」
二人はふうんという顔をして少し不思議そうな顔をした。
「よくわからないんだけど、正面の鉄板は一キュビットも厚みがあるの」
「ない。ただ、正面は鉄板よりだいぶ硬い材料を使って三層ずらして重ねている。だから、正面からはまず抜けない。砲口が一番の弱点だ。側面は一層しかないから、よほど運が良くてもダメだろうし、後ろはそういうものはない。弾薬庫になっているから車内の扉が閉まっていれば、爆圧を上に逃がしてくれて助かるかもしれない。とはいえそれは戦車同士の話だ。共和国の普通に使っている武器でこれを撃破しようと思ったら千パウン攻城臼砲を当てるしかない。師団砲兵が持っている五十パウン砲でも無理だ」
「兵隊がやっつけるにはどうすればいいの」
「基本的には動けなくして撃たれないように逃げるか、爆弾の上を通過している時に爆破するか。だろうな。塹壕を通過している時に爆弾をしかけるというのが典型的だけど、速度が早いから実は難しい。それくらいなら塹壕ごと爆破して落とし穴にしたほうがまだ見込みがある。装軌車輌の弱点は履帯だから、ともかく動きを止めることを考えるほうがいい」
「どれぐらい爆薬があればいいの」
「爆薬は仕掛け方で威力が全然変わるからなんとも言えないってのが正直なところだけど、例えば二ストン半火薬が入るワイン樽を二つ重ねて地面に埋めて戦車に樽を踏ませた状態で爆発させると履帯と車輪はもげるし車体もひっくり返るけど、中の物が燃えたりはしない。ちゃんとラックに納めていれば砲弾ももちろん誘爆しない」
「戦車が横転するのは日常的なことみたいな説明があった。対策しているんでしょ」
「もちろんしている。けど、車輪がもがれるような破壊を受ければ、一日二日では直せないし、引きずって持って帰るにも専用の機材が必要になる。仰向けになれば砲塔が無事でも旋回はできないから戦闘は事実上できない」
「火薬五ストンとか大隊の行李のほとんど全部じゃない。それに砲兵向けに小分けされてるよ。大隊の根こそぎを準備して罠が一つか二つじゃ対応できない」
「普通の塹壕の前方か後方に戦車用の罠に対戦車壕を切る必要が出てくる。戦車は見ての通り塹壕を踏み越えるために大きくなりがちだから対戦車壕を塹壕として使うのは使いにくいわけだけど、古いマスケットの銃身を植えて槍代わりに履帯を切るという戦術も帝国軍は生み出していた。戦車の寸法と重量を考えると正直対応が難しい種類の罠だ。もともと貨物車用の対策みたいで、成功率は低いみたいだけどね」
「もうちょっと手軽な方法は」
「一番いいのは同じ大砲で陣地で待ち構えること。戦車は視界が悪いから巧妙に配置された陣地を見通すことは難しい。正面はそれでもいろいろ視界を確保する努力をしているけど、側面や後方は砲塔の上から見回すしか方法がないと言ってもいい状態だ。腹を向けている戦車を狙う。大きく目立つ砲塔は比較的頑強に作ってあるけど、車体特に履帯や車輪といった足回りはどうしても脆弱だ。乗員を殺傷できる可能性が比較的高いのは砲塔後部側面なわけだが、動いている物を狙い撃ちをするのは難しい。見越しでも見通しでも車体側面を狙うことをおすすめする。塹壕や堤体を乗り越えるとき見通しが良くなることが多い。そういう側面を狙うことで撃破率は上がる。ただ、そういう場合でも騎兵砲ぐらいでは撃破は難しいし履帯の切断も運が良くないと出来ない。鉛球や少々の鉄くれを挟んだくらいでは潰されるだけだ。騎兵砲の弾くらいだと踏んづけて爆発させても問題にならないことも多いし、マスケットを二三丁履帯と車輪の間に挟んでも潰してちぎってでおしまいになる。履帯も車輪も戦車が飛び跳ねてもそれだけじゃ千切れないような作りになっているから、部下が爆弾抱えて飛び込んで止めるって言い出したら殴ってでも辞めさせろ。それくらいならさっきも言ったとおりどっかの塹壕を発破して落とし穴にしたほうがマシだし、落とし穴にするような発破は抱えて行って爆発させれば出来るってもんじゃない。鉛球を武器の基本にしている間は戦車は倒せない」
「逃げろってことね」
「ただ逃げるのは難しいから、視界を邪魔したり、足を止めさせたりする必要がある」
「軍に一般的な対策がないことはわかったけど、対策そのものはあるんでしょ」
アウルムが強請るように尋ねるのに、苦笑をするようにマジンは応えた。
「そもそも計算されて作られた障害地形以外の全てを撃破できるような、その場の歩兵の思いつきでは抵抗できないような機械として戦車は作られているし、同等規模の戦車を敵として戦えるように想定されているから、持って歩けるような武器で対処するのは本当に難しいんだ。歩兵ができることで一番効果的なのは多分煙を焚いて煙幕弾を放り込んで視界を奪うことだろう。塹壕のストーブの脇に派手に煙が出るものを用意して、そっちに敵の目が向いている間に逃げろとしか言えない。視界を失った戦車は同士討ちや運転事故を防ぐために慎重に動かざるを得ない。戦車は乗ってみればわかるけど大きく頑丈だから見えないところも結構大きい。一方で射界内に限っては、主砲の性能に見合うくらい遠くまでよく見えるように作ってある。裏手においてある戦車の試験車を元にした重機があるから、それに乗せてあげるよ。乗ってみれば戦車の特徴はすぐ分かる。砲塔の上からの見晴らしは本当にいいし、照準鏡で覗ける範囲はとても良く見える。が、一旦中にはいってしまうと見ているところしか見えないんだ。だから、戦車の車長は敵に身を晒してでも極力周りを見渡す必要がある。危なくないなら運転手も直に外をみたほうがいい。そうやっても大きい乗り物だからごちゃごちゃしたところではあちこちぶつけるが、頑丈に作ってあるものだからそれで戦車が壊れることは殆ど無い。運転手は目をつぶって車長の命令だけ聞いてあちこちぶつけず運転できるようになるのが基本だってことになったみたいだ」
「なんか、斜板された馬みたいな話ね」
「ま、そうだな」
「あの烏帽子みたいに突き出しているのもそういうのなのね」
アウルムが視察潜望鏡を指差して言った。
「まぁそうなんだが。結局望遠鏡だからね。一応一周覗けるんだが、あんまり視界が良いわけではないし、狭い車内では評判も悪かったんだ。頑丈には作ってあるけど、ひっくり返った戦車に耐えられるほどのものじゃないし、壊れる。車内から周りを見る方法は他にも色々準備はしてあるんだけどね。細かな使い勝手の話はセラムかペロドナーのところの誰かに聞くのがいいと思う。色々やったけど評判は良くはない。でもそういう使い勝手とは別に歩兵でやっつけられるかって話は難しいだろうって応えると思う。だから、歩兵ができることって言えば戦車の使い勝手が悪くなるように陣地を整えるのが先じゃないかな」
「陣地を整えるって簡単に言うけど、街を作るのと同じくらい大変だよ」
アウルムが不満に膨れるように言った。
「多分そうだと思う。だけど穴や溝を掘ればそれっぽく使えるから、両軍ともにいろいろ頑張っているわけだよ。帝国軍は堀とか小川とか使うのうまいしな」
「それで土木機械をもたせたのね」
「半分は戦車の生産と訓練が間に合わなかったからなんだ。でも陣地の設定をおこなうことを重視する今の戦争の形式であれば、土木工作を助ける機械は重要だし、それがなければ戦車と歩兵は陣地を抜けられても砲兵と輜重がついてこられない。うちには幸い両方あるから、いま共和国軍に必要なのはどっちなのかを試してもらっている。それは戦車だ~って言い出すとそれはそれで困ったことが起きるけど、まぁあんまり安い値段のものでもないから大丈夫だろう」
アウルムが不思議そうな顔をした。
「結局、使えないの。これ。強そうだけど」
「強い。間違いなく強いんだ。だけど今の共和国軍じゃ使い切れない。それに、ここまでは必要なかった」
マジンがそう言うと二人は納得したような顔になった。
「やり過ぎちゃったのね」
その後二人を試験用の車輌に乗せて辺りをひとっ走りしてみせると、二人は全く無邪気に喜んでくれた。
彼女らは学生総代と兵科主席になったが、代表して登壇したいわけではなかったのでそこはどうでも良かった。
問題は彼女らが彼女らの保護者が軍に対して過大とも云える貢献をしている人物で、極めて政治的な意味を持つはずの共和国軍軍学校の学生総代や兵科主席というモノを全く理解しないまま、それにふさわしい十分な成績を収めたことを保護者ともどもあまり理解しないままに卒業までの間近な時期を過ごしていたことにある。
女性として亜人として全く主席で卒業することに問題のない成績であったことと別に、彼女らの父親が大きく軍に貢献していることはそれなりに地位のある軍人であれば理解していたから、軍学校として亜人を公平に扱っていることを政治的に示すまたとない機会であったし、彼女らを逃すと次はいつになるのかわからないという事もあった。
そういうわけで二人が軍には進まないつもりだと口にした時は指導教官たちがこぞって頭を抱えることになった。
およそ感情論を置き去りにすれば二人が極めて優秀な学生であることは、学内で知らない者は少なかったし、参謀本部でも亜人の高級将校の増員を期待する声がふつふつと湧き上がっていた。
三桁混成聯隊の聯隊長の多くは亜人で准将という地位もあったが、彼らの多くは旧制度の地方猟兵聯隊制度を拡大援用した封建領主や傭兵団長如き存在で、タダビトとの軋轢を望まず共和国に協力をしてくれているが、必ずしも共和国軍に興味があるというわけではない。
所謂、共和国軍の中央官僚としての高級軍人としての亜人の必要性は語られつつも、実態としては人材に悩む問題でもあった。
当然にマジンも軍学校に呼び出され、戦時下における優秀な人材が必要で、刑事兵役満了者でさえ満了に伴う退役にも慰留金が支給され、軍務継続再就役を求めるような状態になっていると説明を受けた。
しばらくの擦った揉んだがあって、二人は軍に任官入営することになった。
一般に中尉配属は妊娠や傷病などの事故がなければ、高級な伝令使である戦務参謀か前線部隊での本部幕僚見習いということになる。
階段を登ったり降りたりするかけっこを真剣事の業務にするのも、中尉配属の参謀の勤めである。
二人は大本営での勤務が約束されることになった。
地方聯隊や州軍義勇兵の幹部育成コースである騎兵過程であれば、大本営でのどこかの本部勤務を飾って地方に戻るための半ば当然の配置なのだが、つまりアルジェンとアウルムの生命と人望人脈について大本営が重視している、という様式的な表明であった。
しかしそれは当の二人にとって軍学校の生活と同じように父親を困らせない何かの足しになるのであれば、という程度の意味しかない。
卒業生の形見分けと称する部屋の片付けや小さくなった制服などを下級生に分配する儀式があって、アルジェンとアウルムは配属中尉という待遇で軍に任官される予定で配置までのひとつきをローゼンヘン館で過ごすことにした。
鉄道が既に通っている区間は戦争中、士官には三等待遇での鉄道利用が認められていた。要するに臨時徴発の権利ということで、軍人手帳を使うことで得られる特権的な福利厚生の一環とも云えた。三等席に余裕がない場合、便乗券として貨物車に乗り込むことになるわけだが、差額を払えば二等に移ることも認められていたから、多くの士官は便乗扱いで貨物車に移るくらいなら、素直に二等の金額を払うことを選んだ。
兵下士官にはそういった特権的な権利はなかったが、一日に何便かある軍専用列車には便乗が可能で、多少足りなくても行き過ぎても全行程を馬で行くよりはだいぶ早かった。
アルジェンとアウルムは一等車での帰り道、父親と過ごす三日間しゃべりっぱなしだった。
これまで父であるマジンは二人のことを無口な寡黙な子供だと思っていたのだが、軍学校で過ごす数年ですっかり性格が変わってしまった様子だった。
幾度となく軍学校にも足を向けその都度あっているはずなのだが、マジンはまるでソラとユエを相手にしているような気分になった。
二人は父親にこの八年で起こったことを尋ねた。
色々だ、という言葉では当然に二人は納得しなかった。
「機関小銃を八十万丁納入して、自動車が二万台売れて、鉄道が北街道をもうすぐ制覇して、シャッツドゥン砂漠に露天掘りの鉱床ができて、泥海に港と工場を立てて、荒れ野に油井ができて、第四堰堤がもうすぐ完成して、カシウス湖がウチのものになって、会社の従業員がもうすぐ七万人を超えて、お前たちの妹と弟が九百四十人増えた。うちには今、子供を除いて千二百人ばかりが寝泊まりしている。年寄りの職人が五十人ばかり増えたのと千くらい女が増えた。他に南の島に幾つか家がある」
しばらく二人は父親が口にした言葉を繰り返して唱えて、意味を反芻し説明を求めた。
八年ぶりに帰ってきたアルジェンとアウルムにとってはデカートもヴィンゼも全然別の土地だった。
ふたりともマジンの頭の上で口の中に目玉があるような有様で辺りを見回していた。
特にマジンが工房で組み立てている博物館にあった巨人の化石を小さくしたような二領の大きな鎧は何に使うのかと思って潜り込んでみれば真っ暗なハリボテだった。
「なんのために作ったの」
流石にアウルムも使えないということはわかったところで尋ねると、マジンは電算機室へ二人を案内した。
逓信院からの出向してきた研究者と今は随分員数を減らしたジェーヴィー教授の研究室とローゼンヘン工業の研究者たちが様々に研究をしていたが、その脇にマジンの個人用の機械が幾つか並んでいた。
そのうちの一つは甲冑の動作から信号を拾って動きを取り込んでいた。
筋繊維や各部のダンパーの伸縮や捩じれを読み取って動作の整理をおこなっている。小さくても特に問題があるわけでもないので、子供たちが竹馬代わりに実験に協力してくれていることで特に下半身の挙動情報は転倒のパターンを含めてかなり豊富に収集できていた。
その挙動が緑色の蛍光色で模式的に再現できる。
「ちょっと待って。この機械はなにをするものなの」
アルジェンが電子計算機の説明を求めた。
なにをするものなのかという説明はひどく難しいものだが、大量の数値を管理循環参照しながら計算を積み上げてゆく機械だと説明した。
具体的には最近はある面を微細な三角形の集合と見てその三角の変形量を部品全体の歪みとして応力状況や破断部分を推定するのに使っていた。主たる解析内容は静的分布の時間積み重ねだが、将来的には時間的な応答遅れを含めた動的分布を計算することで振動破断の近似解析をおこない、最終的には部品単位ではなく実用を想定した製品全体の加振状況の近似解析をおこなう予定だった。
今のところはマトリクスや計算力もだが出力や外部記憶などの周辺技術の要領がわるく、あまり細かな分割ができていなかった。立派な目玉を持っているイカのような有様でひどくアンバランスな状態だった。
しかし似たような計算構造で鉄道の運行であるとか、物流の状況把握であるとかといった要素の少ない振動の近似問題や或いは直接的な在庫管理や会計事務のような静的数値管理などは電算機の得意とする分野であった。
他に色を数値管理することで色調を研究したり、音についても同様に数値転換することで符号化することで再現性を高めたりという、作業がおこなえるようになっていた。
音については単なる定周波ブザーを断続的に鳴らすことで音程を作る事ができるようになっていて、錯覚が耳にもあることを教えていた。和音についてもある程度表現できていた。
音の位相の話で言えば小型の定周波ブザーを複数奥行きを持たせて並べて和音を含めた音楽を演奏することは成功していた。基本的にはマイクロフォンで採取した波形を電算機上で符号化処理して複数のブザーの断続と遅れを使って別の波を起こす。という装置だった。ブザーアレイというべき装置は音が振動であるという一つの信念とその証明の結実でもあった。言葉をマイクに向かって吹き込むと多少歪んだ音でブザーの群れが声を再現した。
「要するにたくさんの数値を押しならべる形で計算ができる多目的計算機だが、その計算結果をいろいろな形で電気的に表現することができる」
と言うと二人は揃って溜息を吐いた。
「途中がとてもたくさん抜けているけど、電灯をつけたりしているあの電気で小さなソロバンの玉を動かしてそのソロバンの珠の位置で色々な仕組みを動かす機械なんだね。その珠の位置で計算の仕組みを切り替えられるような。で、電気のスイッチの集合だから色々な電気機械を動かせる」
アウルムが機械について補足するように自分の理解を述べた。
「そういう感じだ。元は電話交換機の中に入っていたモノを拡大した。アレも基本的に電気スイッチをたくさん並べたものだ」
ああ、と二人は納得した様子だった。
「どのくらい速く動いているの」
「一番早いものはだいたい一秒間に十の二十三乗回計算できることになっている。どんな早さかというと円周率を小一時間で一兆桁計算できて指定した四桁の数字の並びがどこにあるかを示してくれる。はずだがそれだけの出力を蓄える方法がまだない。一兆文字を記憶する方法も出力する方法も今のところまだない。今のところは百万桁くらいだ。それだと計算そのものはほとんど一瞬なんだが、出力は結構かかる」
「なんでそんな不釣り合いなことになっているの」
アウルムが不思議そうに確認をした。
「まぁ、作れますよっていう以上の意味は無い実験みたいなものだからね。今のところは。なににつかえるかっていう考えは全然なかったんだ。微細織機で配線をさせたり気体化させた材料を誘電蒸着させたりという実験が主眼だ。一般的な回路に接続するために六層のゲートが必要でその間は記憶回路化している。合計すると二千億桁ばかりの記憶回路があって、あらかたの計算はその間だけでできるんだが、結局その先を計算に応じた早さで素早く取り出す方法がない」
「そこまで出来てはいるんだ」
「ゲートを通過するたびに信号速度がだいたい百分の一になるから、中心から六層目のところでは一秒間に十の十乗回、十億回の計算出力と云うところで実用的には落ち着く。ゲートを増やしてギャップを小さくしてゆくと速度そのものは上がるのだけど、今のままだと計算以外の電力が増えることになる。電話局を千ばかり押し込んだような状態になっているから、速度を上げてゆくと今度は全体の温度が問題になりはじめる。結局、電気の振幅で出力しているから回路全体の問題でもある。周辺装置の整理が進んで能力が上がらないとこれ以上は火事になる。回路の細密化を推し進めることで計算そのものは微細電力と回路をトンネルする電子や磁気とによって事実上の超電導回路が作れるのだけど、それを大規模化しようとしたり高速度で出力しようとすると振動的な電磁気抵抗が起きて、途端に消費電力が増える。力任せに流すために小さい区間に大きな電力を流すと回路全体が焼ける。ゲートの熱抵抗を整えるためにヘリウムと窒素とを使って冷却を調整していると言うと微妙な感じが伝わるかね」
「どうやってそんな細密化をしているの」
「基本的には光画と同じなんだけど、より小さな電子を選んで使う。電子そのものは実は空間に存在する軌跡のようなもので究極的には物体というよりは空間のエネルギーポテンシャルというべきものなんだ。いわば水面の波面の動きが光の反射や回折をすることで波として目に見えるようなそういうもので実態としては空間の歪としての質量を伴うけれど、厳密に詰めてゆくと物質でもエネルギーでさえもない。ただその現象は空間のひずみとして質量を伴うし、エネルギーの伝播をおこなうから観測もおこなえる」
「そういう仮説の解釈だと光ってなんなの」
「糸のたわんだところかな。織物によくできちゃう星みたいなダマみたいな。質量としては感知されないのだけど微細なエネルギーの流れとしては引っかかるようなところ」
「よくわかんないけど、空間の歪っていう概念とは違う空間の欠陥みたいな感じかしら」
「不連続点であるから欠陥ではあるけど、質量を考えるときにはよくある積分定数に飲み込まれちゃう無名の特異点の状態くらいに考えておけばいい。まぁ、背景に巨大なエネルギー要素があってその特殊な形が光であるということだ。ともかくより小さな形の揃った電子を使って回路を形成することで望みの形に近い回路に仕上げるんだ。質量のある存在だから電子の運動にも回転というやつがくわわることで電子の写像に変化もあるのだけど、それをある程度制御しておこなっている。元の密度が大きいから運動による歪も大きいしね」
「どうやっているの。結構電気使うでしょ」
「どうやっているかというと陽子を金槌代わりに三つぶつけて隙間を通している。陽子そのものも実を言えばあまり形の揃ったものというわけではないのだけど、質量が大きいことで電子よりは挙動が安定している。実際に三個の陽子を同時に衝突させられるほどの実力は我が家の装置にはないわけだけど、陽子が電磁気的に反発する釣り合い点が構築され、そこを電子を通すことで電子の回転挙動を整理することはできる。ふらふらと歩いていた女が三人の男に同時に声をかけられて慌てて通りを抜けるようなものだ」
「電気は。そのためだけに発電機回す必要があるでしょ」
「まぁそうなんだけど、転換炉発電機を使っているから、経費そのものはあまり変化がない。今使っている小型の転換炉だとあんまりバンバン回路を焼くわけにはゆかないのだけど、歩留まりを考えなければ千くらいを十日かけて作ることはわけもない。二回ほどバカに邪魔されたが、バカも死ななかったし、とりあえず幾らかは完成したからモノとしてはできた」
「それで、そのあとは」
「まぁだいたいそれで終わりなんだけど、あとはマスクに軽く電気をかけて金槌代わりに使った陽子をマスクに吸い上げたり、それちゃった電子を引っ掛けたりというところかな。マスクに引っかからなかった電子は小銃弾と一緒だから後ろの方ではまた挙動を乱しちゃうけど、適当な焦点で通過した材料はとても鮮明な回路を形成する。そういう回路を傾けた部材を旋回させながら六層重ねて厚みのある立体的な像として回路成形する。理想的な構造をしているのは焦点距離中心部の部材のはずなんだけど、いろいろな理由でその前後のほうが回路としての出来は良いみたいだ」
そこまで口にしたマジンの顔を見てアウルムは困った顔で姉の顔を探した。
「アルジェン」
「なに」
「わかった?」
アウルムは縋るように姉に尋ねた。
「なに。わかんない」
「父様の言ってることわかんないんだけど」
「説明に比喩が多すぎて、分かるわけない。数字もテキトーだし、あんまり説明する気ないんだと思う。これだけ話しても基本的なところが出てこないところを見ると分かるように説明するのが難しくて困っているんだと思う。電話局においてある大きな機械をうんと小さくしたものだってことだけわかればいいんじゃないかな。なにに使うって云うより作ってみただけらしいし。父様の学志館の論文だけじゃ話についていけないことはわかった」
アルジェンはとりあえず自慢話程度に聞いておくつもりにしたことを告げる。
よく出来た姉ぶりにマジンは苦笑するしかない。
「わるかったな。べらべらと上手く説明できない話に付き合わせて」
「しょうがないよ。めちゃめちゃヒトもモノも増えたもの。車イスのおじいちゃん達が随分いるけどウェッソンさんは元気なの」
「ああ。まぁ流石に少し歳とった感じにはなってきたが、元気だ」
「誰が年寄りですって」
そう言いながらウェッソンが現れた。
「まぁ確かに旦那よりは歳もいってますがね。ここにいる、年寄り連中よりは二十は若いですよ。しかし、アレですなぁ。お嬢たちは、随分デカくなりましたな。軍の生活ってのは合う奴合わない奴ってのがあるわけですが、お嬢たちの体に限っちゃ、かなり水が合ったようですな。そんで、この後どうするんです。戦争終わるまで付き合うんですか」
「うん。帰ってこようかとも思ったけど、戦争終わるまでっていっても鉄道がアタンズまで伸びたら、いろいろ変わるでしょ。大本営で中尉配属にしてもらえることになったから、ちょっと付き合ってくる」
姉に合わせて頷くアウルムを眺めてウェッソンは破顔した。
「中尉配属ってことは一桁席次で修了ですか。これはすごい。まぁ、そういうことならもう少し付き合わないと色々勿体無い。鉄道が東の街まで伸びれば、もう一回勝てばいいだけですよ。来年には鉄道がアタンズまで伸びることになっているから、そこからはまた様子が変わりますよ。デカートの鉄道本部じゃ軍の鉄道大隊とかって連中が線路やら列車やらのあちこちに指差して声かけてって体操代わりにやっていますよ。まぁウチの連中も指差しくらいはやってはいますがね」
ウェッソンの言葉にマジンは困った顔で応じる。
「もともとマイノラが骸炭炉の手順を覚えらんねぇって言い出したから、手順を唱えるのに合わせて指で触る機械をさせって話になったわけだが、なんか色々に使われているみたいだな」
「いいんじゃないすかね。声の様子や身振りで体調もわかるし、そもそも露骨に間違ってれば周りが指摘できるし、指先で視線を追わせるとどうでもいいものも意外とちゃんと見えたりしますし」
そう言いながらウェッソンは指を指して天井の灯りの辺りをなぞってみせる。
「みんな割りとそう言ってる。おかげでやらない社主は、どうなんだ的な話になることもある」
「そりゃ、まぁ、偉い人には偉い人なりのナニがあるってやつですよ。……お嬢はいつまで休暇ですか。中尉配属ってことは春には配属でしょ」
ウェッソンは不満顔のマジンを鼻で笑って話を切り替えた。
「配属は再来月だけど、その前に任官式典がある。来月の二十日頃には軍都で手帳の更新と健康診断と被服票やなんかの書類の準備かな。こっちでやってもいいけど、結局大本営持ってゆかないとならない。鉄道があるから随分のんびりできる。前はほんとに一年休暇もらえる優等生じゃないと郷里に帰って任官の報告とかできなかったけど、去年の先輩はどっか結構遠くまでひとつきで行って帰ってきて、校長に報告していた」
「優等だと一年休暇がもらえるんじゃなかったのか」
首をひねるようにマジンが娘に尋ねた。
「それ、卒業の前に学校でも聞いてたんだけど、戦時だから一年休暇ってのは後回しらしい。任官の特別給与になるって聞いた。リザ様の説明結構穴だらけ」
怒るでもなくアルジェンが言った。
「配属は決まっているんですか」
「中尉配属だから普通は大本営で中尉参謀って伝令をさせられるって聞いているんだけど、大本営に電話が敷かれて一昨年部隊拡張って話があったから、予算もいくらかは目処があるって話でどこかの部隊の小隊長とかになるかもしれない」
アウルムが推測を口にした。
「どこか希望を聞かれたりはしないのか」
「希望って云われても軍隊のどこがいいとか何やりたいとか、全然考えてなかった」
「うん。座学の課題も教練も割とどれも楽しかったし、学校は結構楽しかったけど、軍隊とか軍人とかはあんまり考えたことがなかった」
「魔導検査くらいかな。ムニュムニュして気持ち悪かったのは」
アルジェンの言葉にアウルムが思い出すように言った。
「ああ。そういえば、アレはわたしも嫌だった。二等魔導士資格とかって事になったけど、アレはあんまり向いてなさそうだった」
「決闘とかって奴は」
「二回だけあったかな」
「私は十回くらいあったよ。嫁になれ~。みたいな感じの。流石に断ったけど」
「怪我させてないだろうな」
娘二人は顔を見合わせた。
「流石にそれは無理。男女の決闘でそんなに余裕あるわけないし」
「男の先輩が怪我もなくて引き下がれるわけ無いじゃん。大丈夫。目とか指とかもいだり、死なせたりはしてないよ」
「戦時下だからか割と教官たちがピリピリしていた」
現場の人員が足りないから部隊拡張の話が出ているというのに、優秀な人材を育てているはずの現場で無駄に消耗するのは管理上全くよろしくないから、気楽に応える娘達とは真逆にいつぞやのホライン少佐の気分がよく分かる。
「そういえば、新設部隊といえば自動車聯隊。大活躍みたいですな。リザール城塞の手前まで敵中突破して帰ってきたって街でも評判でしたよ。まぁ、アレだけ裏の原で亀になったり青天井決めたりしていれば、そりゃまぁ少しは頑張ってもらわないとなりませんが」
話を切り替えるようにウェッソンが口にした。
「――戦車の増産ってのはどうするんですか。一応注文に先立って幾らかは作っちまいましたが」
サラリとウェッソンが口にした話題にマジンも少し困った顔をした。
ペロドナー商会に続いて鉄道部警備隊にも二十両ほどは準備していたが、どう考えても不要な装備だった。確かに列車強盗との戦闘そのものは月に一度ほどの頻度であちこちで起きてはいるのだが、殆どは車内或いは駅構内での事件で、そういう事件の制圧には小銃弾さえ大仰で青弾か黄弾を準備した機関拳銃のほうが効果的で、黄弾を太らせたような音響爆弾や黄弾の配合を変更した白弾と称する発煙弾のほうが使い手はあった。
いま鉄道警備隊は二十五シリカ拳銃弾の青弾を警備用の対人弾として機関拳銃に詰めて装備していた。大柄で大仰な弾丸の割には戸板一枚抜けないようなものだが、ともかく大きな音がすることと相手を殺す心配が殆ど無いことから気楽に撃てるところが特徴で捕物に便利に使われている。
二十五シリカ拳銃弾には他に黒弾という対物用の弾丸があり、そちらは重金属を使った堅く重たい釘状の弾丸を軽い被筒を付けて銃口に合わせることで弾速を下げないまま打ち出している。条件にもよるが貨物自動車の窓や運転席の多くの部分にも有効な威力を持っている。前線の部隊がいちいち弾丸を選んで使うわけもなく、前線でおしならべて使うには高価過ぎる材料だが、対車両用の弾丸がないわけではなかった。
軍隊向けにはそんな特殊な材料の弾丸を使わなくても、もう少しすれば老人たちに詰めを任せている新型の軽野砲、噴進砲が完成するはずだった。
既に弾頭部の試験は去年のうちに終わっていて、威力は確認済みだった。マジンも一昨年のうちに威力を確かめている。今は推進部分の調整と製造工程の設計がおこなわれている。弓矢やタコの足のような長い尾を引かせると空中姿勢が安定することはわかっているのだが、そうすると速度の損失も大きく、もともと弾体の直径が威力に大きく関係することからゆるくやまなりな弾道を描きがちでひどく狙いにくいことや射手やその後方に向かって吹き出すガスなどの大元のところで多少調整が必要でいくつか方向性を示せる見本を準備している段階だった。
試験の都合を考えれば荒れ野の鉄道警備隊と後備聯隊ということになる。
線路や電線を狙った窃盗団などもあり、機動力のある戦力が必要であることは間違いないのだが、今の段階で戦車が必要だった敵はワイルでの装甲車を相手にした戦闘以外では発生していない。
鉄道線路の脇には舗装された保線路が広がる以上、常識的判断からすれば装軌車両である必要もなく、装甲自動車の発展はともかく戦車は不要だった。
「ああ。アレねぇ。夏頃の話では、本当なら年の暮か年明けにも軍の誰だかが納品状況の確認に来るはずだったんだよね。見込みでは七十両。まぁその時に鉄道部のも合わせて引き取ってもらうはずだったんだ。流石に二十両は今はいらない」
どうも軍の中で色々あった様子で戦車というか様々に様子が二転三転している。
機関小銃の時もあったことなので、他に用事の多い今はまだ手を打っていないが、どうしたものかというところでもある
「また裏の原で訓練のはずだったんですかね」
「今度はどこだかわからないけど、そうしてくれるとウチとしては助かるとは言っておいた。誰がどうやっても最初のふたつきみつきは無茶をして壊すし、壊さないと覚えない。それに人目のあるところでカッコ悪いところを見せないですむだろう」
裏の原という鉄道線の北側の荒れ地の通称はどこの裏か表かという話はあるが、次第に定着を始めている土地の名前でクラウク村でもそういうふうに呼ばれている。
「まぁ、アタシらも知らない山ん中に助けに行くよりは気楽ですな」
「そうは言っておいたんだけど、なんかいろいろ変わったみたいだな」
諦めるようため息を吐いた。
「そういえば戦車って見ていない」
「軍学校でも話題にはなってた。なんか大砲を積んだ自動車って感じの話だったけど」
「ああ。今なら新品ピカピカのが並んでますや。――あ、アタシはこれで。お嬢。それじゃまた晩飯の時にでも」
しかけていた機械が一仕事を終えたのを見てウェッソンが雑談から抜けた。
自転車で軽くゲリエ村まで足を伸ばし自動車工場設備の中の特殊車輌倉庫を開くとそこは大小様々な重機械が並んでいる。その中ほどのごちゃごちゃとした一角に戦車と装甲車が並んでいた。
「これかぁ。こっちの小さい方はともかく、大きい方はかっこいいけど乗り心地は悪そうだね」
アウルムが軽く言った。
「まぁ、どうだろう。やかましいのは確かだけど、石畳と舗装路以外では普通の馬車よりはマシだと思う。大抵の道で大きいから思ったほど悪くないという感じかな。ただ、大きいから突然事故になりやすい。装甲車の方は機関銃に耐えられるだけの丈夫さとちょっと大きめの銃を積んでいる普通の自動車だよ。鉄道強盗を追い払うための自動車だ」
「大砲で撃たれたらひっくり返らないの」
アウルムが尋ねた。
「走っているところを距離千キュビットで十パウン砲を横から撃たれたら転ぶ。正面からだと大丈夫。戦車の方は攻城砲以外では履帯と大砲と潜望鏡くらいかな。壊れる可能性があるのは。ただどちらも運転視界が悪いから、調子に乗って走っていると交通事故は起こす。そうすると簡単に大砲や履帯は折れたりちぎれたりするし、裏返ることもある。石の上や氷の上ではクルクルツルツル回るよ。まぁ雪の上なら戦車は割と普通に走る。かなり流れるのは車と一緒だけど」
「こんなに長い大砲、意味があるの」
「実を言えばあまり意味がなかった。けど、役には立った」
「どういうこと」
「音速の六倍で弾丸を打ち出す。山なりに撃つと射程で五十リーグを余裕で超える。弾丸の丸みと地球の丸みのせいで真空中平面の計算よりも射程がだいぶ伸びるんだ。どれだけ伸びるかは方位地形や風向きも関係するからなかなかわからないし、そんな遠くじゃ狙うどころじゃないわけだが上手く使ったみたいだ」
「新聞で読んだ新兵器って、この大砲のことだったのね。意味があったってことでしょ」
「戦車に積む意味はあまりなかった。この大砲は一キュビット半の鋼鈑を撃ち抜く性能があるけど、そんな城塞はないわけだし」
「陣地とかを吹き飛ばすのにはつかえるんじゃないの」
「まぁつかえる。一般的な塹壕を支援なしに乗り越える大きさとそれに耐えられる運動能力と、その大きさ構造の範囲内で最大の威力の砲を積んだわけだから、役に立たないというわけではない。けど、そこまでの性能もいらなかったな、というだけだ」
「陣地を吹き飛ばすのには使えないの」
「使えはするけど、砲弾があまり大きくないんだ。硬いものを撃ち抜くのは得意なんだけど、土の掩体に大穴を開けようと思ったら、深く穴を開けるだけじゃダメで周りを大きく発破しなくてはいけない」
「でも強そう」
「強いけど、敵がいない強さってのも、ちょっと扱いに困るだろ」
「無敵ってかっこいいと思うよ。いんびんしぶるーめっしぇーん」
「無敵には違いない。帝国軍が龍猪とか云うのを戦場に出してきても、これで負けるとは思えない」
「戦車同士で撃ちあうとどうなるの」
「正面主要部は守り切れる。ほかはダメだろうと思う。運が良ければ生きていられる作りにはしてあるけど、運が悪ければ死ぬし、運が良くても悪くても戦えない状態にはなるはずだ」
二人はふうんという顔をして少し不思議そうな顔をした。
「よくわからないんだけど、正面の鉄板は一キュビットも厚みがあるの」
「ない。ただ、正面は鉄板よりだいぶ硬い材料を使って三層ずらして重ねている。だから、正面からはまず抜けない。砲口が一番の弱点だ。側面は一層しかないから、よほど運が良くてもダメだろうし、後ろはそういうものはない。弾薬庫になっているから車内の扉が閉まっていれば、爆圧を上に逃がしてくれて助かるかもしれない。とはいえそれは戦車同士の話だ。共和国の普通に使っている武器でこれを撃破しようと思ったら千パウン攻城臼砲を当てるしかない。師団砲兵が持っている五十パウン砲でも無理だ」
「兵隊がやっつけるにはどうすればいいの」
「基本的には動けなくして撃たれないように逃げるか、爆弾の上を通過している時に爆破するか。だろうな。塹壕を通過している時に爆弾をしかけるというのが典型的だけど、速度が早いから実は難しい。それくらいなら塹壕ごと爆破して落とし穴にしたほうがまだ見込みがある。装軌車輌の弱点は履帯だから、ともかく動きを止めることを考えるほうがいい」
「どれぐらい爆薬があればいいの」
「爆薬は仕掛け方で威力が全然変わるからなんとも言えないってのが正直なところだけど、例えば二ストン半火薬が入るワイン樽を二つ重ねて地面に埋めて戦車に樽を踏ませた状態で爆発させると履帯と車輪はもげるし車体もひっくり返るけど、中の物が燃えたりはしない。ちゃんとラックに納めていれば砲弾ももちろん誘爆しない」
「戦車が横転するのは日常的なことみたいな説明があった。対策しているんでしょ」
「もちろんしている。けど、車輪がもがれるような破壊を受ければ、一日二日では直せないし、引きずって持って帰るにも専用の機材が必要になる。仰向けになれば砲塔が無事でも旋回はできないから戦闘は事実上できない」
「火薬五ストンとか大隊の行李のほとんど全部じゃない。それに砲兵向けに小分けされてるよ。大隊の根こそぎを準備して罠が一つか二つじゃ対応できない」
「普通の塹壕の前方か後方に戦車用の罠に対戦車壕を切る必要が出てくる。戦車は見ての通り塹壕を踏み越えるために大きくなりがちだから対戦車壕を塹壕として使うのは使いにくいわけだけど、古いマスケットの銃身を植えて槍代わりに履帯を切るという戦術も帝国軍は生み出していた。戦車の寸法と重量を考えると正直対応が難しい種類の罠だ。もともと貨物車用の対策みたいで、成功率は低いみたいだけどね」
「もうちょっと手軽な方法は」
「一番いいのは同じ大砲で陣地で待ち構えること。戦車は視界が悪いから巧妙に配置された陣地を見通すことは難しい。正面はそれでもいろいろ視界を確保する努力をしているけど、側面や後方は砲塔の上から見回すしか方法がないと言ってもいい状態だ。腹を向けている戦車を狙う。大きく目立つ砲塔は比較的頑強に作ってあるけど、車体特に履帯や車輪といった足回りはどうしても脆弱だ。乗員を殺傷できる可能性が比較的高いのは砲塔後部側面なわけだが、動いている物を狙い撃ちをするのは難しい。見越しでも見通しでも車体側面を狙うことをおすすめする。塹壕や堤体を乗り越えるとき見通しが良くなることが多い。そういう側面を狙うことで撃破率は上がる。ただ、そういう場合でも騎兵砲ぐらいでは撃破は難しいし履帯の切断も運が良くないと出来ない。鉛球や少々の鉄くれを挟んだくらいでは潰されるだけだ。騎兵砲の弾くらいだと踏んづけて爆発させても問題にならないことも多いし、マスケットを二三丁履帯と車輪の間に挟んでも潰してちぎってでおしまいになる。履帯も車輪も戦車が飛び跳ねてもそれだけじゃ千切れないような作りになっているから、部下が爆弾抱えて飛び込んで止めるって言い出したら殴ってでも辞めさせろ。それくらいならさっきも言ったとおりどっかの塹壕を発破して落とし穴にしたほうがマシだし、落とし穴にするような発破は抱えて行って爆発させれば出来るってもんじゃない。鉛球を武器の基本にしている間は戦車は倒せない」
「逃げろってことね」
「ただ逃げるのは難しいから、視界を邪魔したり、足を止めさせたりする必要がある」
「軍に一般的な対策がないことはわかったけど、対策そのものはあるんでしょ」
アウルムが強請るように尋ねるのに、苦笑をするようにマジンは応えた。
「そもそも計算されて作られた障害地形以外の全てを撃破できるような、その場の歩兵の思いつきでは抵抗できないような機械として戦車は作られているし、同等規模の戦車を敵として戦えるように想定されているから、持って歩けるような武器で対処するのは本当に難しいんだ。歩兵ができることで一番効果的なのは多分煙を焚いて煙幕弾を放り込んで視界を奪うことだろう。塹壕のストーブの脇に派手に煙が出るものを用意して、そっちに敵の目が向いている間に逃げろとしか言えない。視界を失った戦車は同士討ちや運転事故を防ぐために慎重に動かざるを得ない。戦車は乗ってみればわかるけど大きく頑丈だから見えないところも結構大きい。一方で射界内に限っては、主砲の性能に見合うくらい遠くまでよく見えるように作ってある。裏手においてある戦車の試験車を元にした重機があるから、それに乗せてあげるよ。乗ってみれば戦車の特徴はすぐ分かる。砲塔の上からの見晴らしは本当にいいし、照準鏡で覗ける範囲はとても良く見える。が、一旦中にはいってしまうと見ているところしか見えないんだ。だから、戦車の車長は敵に身を晒してでも極力周りを見渡す必要がある。危なくないなら運転手も直に外をみたほうがいい。そうやっても大きい乗り物だからごちゃごちゃしたところではあちこちぶつけるが、頑丈に作ってあるものだからそれで戦車が壊れることは殆ど無い。運転手は目をつぶって車長の命令だけ聞いてあちこちぶつけず運転できるようになるのが基本だってことになったみたいだ」
「なんか、斜板された馬みたいな話ね」
「ま、そうだな」
「あの烏帽子みたいに突き出しているのもそういうのなのね」
アウルムが視察潜望鏡を指差して言った。
「まぁそうなんだが。結局望遠鏡だからね。一応一周覗けるんだが、あんまり視界が良いわけではないし、狭い車内では評判も悪かったんだ。頑丈には作ってあるけど、ひっくり返った戦車に耐えられるほどのものじゃないし、壊れる。車内から周りを見る方法は他にも色々準備はしてあるんだけどね。細かな使い勝手の話はセラムかペロドナーのところの誰かに聞くのがいいと思う。色々やったけど評判は良くはない。でもそういう使い勝手とは別に歩兵でやっつけられるかって話は難しいだろうって応えると思う。だから、歩兵ができることって言えば戦車の使い勝手が悪くなるように陣地を整えるのが先じゃないかな」
「陣地を整えるって簡単に言うけど、街を作るのと同じくらい大変だよ」
アウルムが不満に膨れるように言った。
「多分そうだと思う。だけど穴や溝を掘ればそれっぽく使えるから、両軍ともにいろいろ頑張っているわけだよ。帝国軍は堀とか小川とか使うのうまいしな」
「それで土木機械をもたせたのね」
「半分は戦車の生産と訓練が間に合わなかったからなんだ。でも陣地の設定をおこなうことを重視する今の戦争の形式であれば、土木工作を助ける機械は重要だし、それがなければ戦車と歩兵は陣地を抜けられても砲兵と輜重がついてこられない。うちには幸い両方あるから、いま共和国軍に必要なのはどっちなのかを試してもらっている。それは戦車だ~って言い出すとそれはそれで困ったことが起きるけど、まぁあんまり安い値段のものでもないから大丈夫だろう」
アウルムが不思議そうな顔をした。
「結局、使えないの。これ。強そうだけど」
「強い。間違いなく強いんだ。だけど今の共和国軍じゃ使い切れない。それに、ここまでは必要なかった」
マジンがそう言うと二人は納得したような顔になった。
「やり過ぎちゃったのね」
その後二人を試験用の車輌に乗せて辺りをひとっ走りしてみせると、二人は全く無邪気に喜んでくれた。
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