石炭と水晶

小稲荷一照

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百万丁の花嫁

狼虎庵 共和国協定千四百四十六年夏至

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 夏至。
 機関小銃の納品が通算で百万丁を超えた。
 銃弾は年内年の瀬を待たず十二億発にまもなく達する。
 マジンが納品の受け取りの控えの束を示しリザに結婚を申し出ると、彼女は控えを確かめもせずにあっさりと結婚の申し出を受け入れた。
 子供をふたりも作っておいてなにをいまさらという世間的な話もあったが、そんなところよりも結婚の条件に百万丁の機関小銃を共和国軍に納品すること、という条件があったことはローゼンヘン工業ではもちろん知らない者はいなかった。
 とうとうそれが達成されたということで、会社の実績という意味でも社主の身代という意味でも全くおめでたい意味があった。
 二人の顔が並んだ機関小銃百万丁納入記念メダルが社員全員に配られていた。
 それは重さ二タレル――相場二ダカートの金で、つまり銀貨とほぼ同じ大きさの金のメダルだった。
 大きいというわけではない。
 だが、一ダカート金貨がうっかり無くしそうな大きさであることを思えば立派な金貨の大きさとも云える。
 百万丁の機関小銃が軍に納入されたということは、およそ似た数字の兵隊が共和国軍にいるということで、当初五十万といっていた共和国軍がおよそ倍になっただろうということでもある。
 実を云えば右から左に軍需倉庫に送られたものも二十万丁近くあって、納品されたもののどこにゆくか定まっていないものも十万丁ほどあり、戦場でおよそ五万丁が失われ、横流し他で失われたものも五万丁近くあったが、それでも六十万近くが兵隊の手にある勘定になる。
 ともかく、東部戦線に機関小銃がおよそ三十万丁あつまっていたということは、現場の兵隊としてはおよそそれだけ兵隊がいて、他に旧式の後装小銃やマスケットを備えている砲兵や義勇兵という者たちもいた。
 つまり。戦争が始まってほぼ十年でようやく共和国軍は帝国軍の本隊とほぼ同規模の――なお劣勢ながら――軍勢を揃えることができた。
 そして、先月のうちに滑り込むようにアタンズまで開通した鉄道は、急速に共和国の兵站状況を回復させた。
 それは、あたかも機関小銃が劇的に戦場を変えたように、共和国軍の兵站状況を一変させた。
 単に線路がアタンズまで伸びただけで様々な整えはこれからで鉄道は未だ、運用開始、と云うには程遠い状態だったが、それでも来月のうちには鉄道軍団の前衛本部が完成し、前線拠点に向けて線路を延ばすつもりでいる。
 現場の人員兵力を増やせば戦力が増える、戦況が有利になることは軍人ならずとも容易に想像がついた。
 だが、これまでの数年間、実際にそれをおこなうことはできなかった。
 なぜなら物資の生産力が不足していたからだ。
 それを運ぶこともできなかった。
 共和国の輸送力を含む流通実勢――兵站実力が全く足りなかった。
 馬匹は膨大な飼葉を必要としてその糧秣の量だけで街道を塞いでしまうからだ。
 アタンズにはかろうじて水路があったが、それでさえ不足していた。
 ヌモウズからの川の流れは急で船やいかだは殆ど使い捨てにするしかない。
 山をひとつふたつ丸裸にしたところで木材を運ぶ手間が水路を使う利を上回った。
 その後は機関船を持ち込むまで水路は応急的な用途に使うしかなかった。
 どうあっても広大な共和国をつなぐ輸送力が足りなかった。
 日に通うおよそ千両の軍の大行李は替え馬や護衛の騎兵を含めれば、一万頭をわずかに欠ける馬匹を必要とする。
 それは事実上アタンズの糧秣のほとんど全てを馬に与えるに等しかった。
 軍都周辺の穀倉であるトーンを発して運ばれるおよそ六万ストンのうち、道々の集落で糧秣を足してなお、およそ四万ストンをかけるほどを馬が食らう。
 武器や装具或いは食料や日用品として届くものはおよそ二万ストンを僅かに超える量になる。
 だが日に三百グレノルに達することはほぼない。
 それはもちろん大した量ではあったのだが、つまりがそこが限界ということでもあった。
 不思議な事にどれほど馬匹による行李の往来を増やしてもあるところから急激に伸び幅は縮み始め、例えば行李を三倍にしても二倍に達することはなかった。
 そして往来のための糧秣は四倍を超えた。
 理由は様々に想像できるのだが、馬もヒトも休息を必要とし、共和国の多くの土地が荒れ野も同然といっても、どこでも人馬が休息を取れるわけではなかったし、馬の休息にはそれなりの水場か草地が必要だった。
 ゲリエ卿が鉄道建設に先立って作ったような、私有を示すために風車による用水井戸のような気の利いた仕掛けを、特に定めて通う者のない土地に労を投じて整備をしよう、という考えは共和国の風土にはなかったし、これまでの戦争でここまで地域を超えた輸送を必要とする局面は起こっていなかった。
 街道の利用もある程度の規模の行李を通そうとすると、それなりに分散させる必要があるのだが、荒れ野も同然という土地であっても、輜重を期限通りに着かせようと急げば大きく街道を離れるわけにもゆかない、道普請をするだけの掛かりも費えもない、ということであれば相応に限界もあった。
 つまりは馬と人とが道の結節で澱みを作り動きが悪くなる。
 道の動きが悪くなっても時が経てば生き物は飢え乾き、なおあてがなければ痩せて死ぬ。
 そういうわけで人の十倍も物を食らう馬は、道端に豊かな草があればともかく荒れた街道では無理をさせられなかった。
 街道の整備の程度が輜重の規模に関わらず輸送できる物資、ひいては補給連絡を維持できる人員兵力に関係していることは予てから知られてはいたし、およその軍制兵站学上の常識として見当をもついてもいたが、知っていることと、分かっていることと、出来ることはそれぞれ違う、という実例を改めて東部戦線までの道程は示していた。


 二十万の捕虜と八万ほどのアタンズの住民を飢えさせずおよそ八万の中部軍団の軍勢に十分な食料を回すためには、およそ日に百グレノルの食料が必要であったから、二百グレノルあまりの資材というものは、命をつなぐには十分といえる量だったが、木材や石材セメントなどを運ぼうと思えば或いは軍団のためにアタンズから進発させる行李の馬匹に飼葉を余計に与えようとすれば、フワリと吹き飛ぶような危うい数字でもあった。
 そしてより重要なのは、馬匹による往復に足りるだけの糧秣を積めるほどに後方からの輜重には余裕がなかった。
 アタンズもペイテルもようやく立ち直り始めてはいたが、自分たちの食べる分で精一杯で余計な馬匹の分まで手が回るような生産力はまだ発揮できていない。
 合わせておよそ五万グレノルの様々な糧食となる農作物をようやく生産できるようになっていたから、後先なく家畜を捌かなくてはいけない状況はなんとか脱したが、かつてのように送り出す全てに十分な糧秣を与えるということはできなくなっていた。
 もちろん五万グレノルという数字は食べられる様々を含んだもので全てが穀物というわけではない。
 農作業に使っている牛馬には藁やそこいらの刈草を与え、それでようやくなんとか釣り合っているということだ。
 それでどうするかと云えば、帰りは馬を行李から解き裸馬で引き返す。
 或いは途中まで糧秣だけを積んだ大行李を空にして途中で引き返させる。という方法でなんとかしのいでいた。
 裸馬で無理をさせない、と云っても毎日一万頭の腹を空かせた馬が通う街道周辺はみるみる荒れていった。
 そしておよそ百五十リーグの道のりの上には約五十万頭の馬が往来していた。
 糧秣を制限された馬たちをできるだけ殺さないためには歩みを緩めるしかなかったが、それによってますます街道は荒れていった。
 複数の道がトーンからアタンズまでは伸びていたが、それにしてもそこらじゅうが馬だらけという状況だった。
 あちこちに鉄道から降ろした糧秣を蓄えた基地を作ったが、そうすることによって自動車はとうとう街道を往来する行き場を失った。
 速度の違いすぎる自動車と人馬とを同じ道で往復させることが出来ないほどに、ときに土地に住まう人々の生活が破綻し集落が消えるほどに、道の上を馬が軍用行李が圧していた。
 ペイテルも似たような数字、似たような状況であったから、補給流通の維持という意味では前線を支える街は疲れきっていることは明らかだった。
 鉄道が街道から離れて敷かれている理由は様々にあったが、重機の運用を考えて面倒があっても馬匹の移動に面倒がない土地であれば、いずれ人が居着くことになり或いは既にこの戦争のうちに幾つもの集落が出来上がっていて、またそれが微妙な面倒な問題に絡んでいるのだが、ともかくそういう様々を回避するために幾らか街道から離れ、そしてまた少し寄りということを繰り返していた。
 この五年あまりのうちに様々の技術や機材が一揃いしてきたローゼンヘン工業鉄道部にとって、アミザムからアタンズまでの地形は面倒や技巧という意味で特殊な要件は何一つなかった。
 もちろん現場作業に想定外の事件事故は当然に起こるものだが、対処不能な要件ではありえなかったし、計画全体のうちで云えば調整予算の範囲内の出来事ばかりであった。
 大本営兵站本部からの要請は、可及的速やかに、の一点張りであったが、機械整備や資材の集結運用点検整備移送などという大規模な計画においては、事前のダイヤグラムの伸び代の範囲内で急いだり或いは遅らせたりということをしないと、ある意味で計画自体に破綻をきたすことは兵站本部隷下の鉄道軍団のほぼ全員が把握していたし、アミザムで起きた管理事故の殆どが能力見積もりを無視した、可及的速やか、という抽象的命令の無意味さと有害さが産んだとさえ云えた。
 それは、常識の地平が揺らいだ、パラダイムシフトというべき出来事なわけだが、帝国が仕掛けた今次の戦争は全く徹頭共和国の常識と限界を試し続けるような出来事が続いていた。
 自動車聯隊が如何に危険なものであったかということは、現場前線ではわかりにくいが、アタンズを往来する馬車の荷物の変化を眺めれば、兵站参謀幕僚が威力と戦果とを見せつけられながら、なぜ彼らが或いは大本営の軍令本部までもたったふたつの聯隊で良しとしたのかがすぐさま理解できる。
 それほどに危うい状況だった。
 そういう状況を鉄道は一気に覆した。
 鉄道は物資の輸送を劇的に変えた。
 アミザムとアタンズをほぼ半日で結ぶ運行距離二百三十五リーグの軍用列車は一便でおよそ千グレノルの物資を運び、それが一日四便から六便往復する。他に民間用の列車が一日二十往復ほどとローゼンヘン工業の物資便が一日二往復。感覚の上では日中に一時間二便がアタンズを出入りしていた。
 それはつまり、数百倍の荷車がおよそ五倍の速さでアタンズを出入りしだしたということであった。
 単線運行からほぼ半月で複線化が完了したのはローゼンヘン工業鉄道部の計画本部の疑念を知りつつ敢えて事案をすりあわせ時間を削るように運行の隙を縫うように計画を立てた鉄道軍団の戦意士気によるものだった。
 もちろん彼らの計画の最良日程は驚くべきことにローゼンヘン工業鉄道部の単線到着三日前に鉄道軍団の線路がアタンズに伸びるというどこをどう考えても笑い話のようなスケジュールであったのだが、それはもちろん様々な理由で不可能だった。ローゼンヘン工業鉄道部の計画も設備完成は日程通りだったが、線路の到着という意味ではおよそ十日遅れだったし、設備運用も二日遅れになっていた。
 現場でおよそ四千名、関係部署は数万人という巨大な計画は当然に人々の生活の懸かるそして戦争の帰趨の懸かる戦場でもあった。
 鉄道軍団は大本営のヌルリとした襟元にまとわりつく汗のような緊張感とも前線陣地の口を歪めるような緊張感とも全く異なる緊張感を孕んだままに、時計と暦と計画書を親の敵のように睨みつけ、いちいち自分のやっていることを他人に叫ぶようにしながら走り回る現場になっていた。
 それは何か文明の使徒というよりは時計の奴隷のような有様であったが、考えても見ればそこまで信用できる時計というものは共和国にはそれまで実は存在しておらず、その時計を支えていたものは電話局の基準時計によるものだった。
 そして全体の計画を調整する役割は、電話による或いはそこに接続したテレタイプや電算機網による会計や資材在庫の管理支援が欠かせないものだった。
 様々にある物事の多くは、人と物が融通できればなんとかなる、というのが全く当たり前のことではあったが、そのアタリマエをおこなうためには事前の調整と現場における調整と部署間の協調がそれぞれ重要で、それぞれにどちらがと争うことには意味がない。
 どれほど細やかに調整をしても現場のことは完全に予想することは不可能であると考えたほうが計画は立てやすいものだったし、事前に全てを準備することが出来ないと考えて現場にいる方が現場で嘆くことも少ない。
 という、建前はおよそ軍人なら誰もがわかっていることだったし、軍人ならずとも自分で活計を立てている市井の者たちならば幾度も痛い目を見て知っていることだった。
 そして、電話の存在はそして誰もが覗き込める予定表の周知は単なる罵声と悲嘆をそれよりは多少有意義な討議の機会に変えるはずだった。
 そして幸運な例外によって実際に討議がなされ、より良い次善策が模索され、更に稀なる幸運によって次善策が実施され状況を切り開いた。
 つまりは、その計画と現場をいかに素早く整合させるかということが事業実施の肝であって、ローゼンヘン工業が肥大化と巨大化の狭間を揺れ動くように或いは共和国軍の前史を教訓に、鉄道軍団はまさに軍団という戦力単位として作戦計画に挑んでいた。
 もちろん既に先達があってなお険しい道のりだった。
 そして、鉄道軍団の努力は刮目すべき成果へと結実した。
 東部戦線の中心が移ったものの疲れ果てていたアタンズを文字通りケタ違いの巨大な輸送力と的確な物流で支え立て直したのは鉄道軍団だった。
 鉄道運行と建設に関わる物資を除いてなお、ほぼ二万グレノルの物資をアタンズ経由で戦線後方と大本営を結ぶという事業は、これまでの馬車輸送と比べ単純な輸送力の上でおよそ四十倍を超えるもので、しかし現在の鉄道全体の状況を考えればアタンズの能力と容量を考えたやや控えめなもので、鉄道運行上はまだある程度の拡大の余地はあったから、今は見事に前線を支えた街の苦労を慰めるためにも、アミザムでの手痛い失敗を教訓にしつつ鉄道軍団はアタンズを拠点にした輜重基地の建設を急いでいた。
 もちろんそれでも尚手痛い失敗失態というべき事件は起き、共和国軍兵站本部鉄道軍団はこの僅かな期間に既に機材資材人命を失う様々な数多くの失敗をしていて、もちろんこの後も幾つかの失態を繰り広げることを宿命付けられていたが、そうであってもアタンズの鉄道基地は強力に共和国軍の兵站運行を支援した。
 人のやることの無力と無惨を嘆く暇で機械の手当を整え機会をすり合わせることで、鉄道軍団は迅速適切に事態の修正立て直しを不断に繰り返し続けた。
 わかりやすく決定的だったのは捕虜の後送事業を徹底なさしめたことだった。
 アタンズまで伸びた鉄道は領域にいたおよそ二十万の捕虜を二日でエンドアの捕虜収容施設に送り出した。
 そして、鉄道基地を得たアタンズは急速に軍事拠点としての体裁を再整備し、辛うじて人々を飢えさせなかっただけの土地は必要な物資を揃え、捕虜を汲み出したことで再び生産拠点としての機能をも回復した。
 そして、七月の中頃までにはペイテルからも二十五万の捕虜がエンドアに向けて送り出される計画が立てられている。
 前線からおよそ五十万人の捕虜がいなくなる、ということは、全く単純にそれだけの食い扶持と管理のための労力がなくなったということで、中部軍団の兵站の負担が軽くなったということでもある。
 それがなにを意味するかといえば、その分の増援の兵隊を前線に回せるということでもあるし、ペイテルやアタンズの人々が幾分気楽に生活をできる、ということでもあった。
 特に後者ペイテルとアタンズの市民の気分、というものは全く単純に街の生産力や流通という兵站の根拠を支える様々を左右していて、大雑把な話として兵隊の食事や着る物或いは気晴らしの世話をしてくれる人々のやる気が出てきたということでもある。
 昨日の今日で様々が好転するはずもなかったが、圧倒的な鉄道の輸送余力を背景に後方の他の街からの品々が軍の口利きで安く手に入ることで東部戦線の拠点の町は、更に十万の兵隊を受け入れるべく急速に準備を整えていた。
 物資の補給に目処が立たないことから一時期下がっていた幾つかの師団がそして増援を中止して待機していた幾つかの聯隊が再び鉄道を介して姿を表したことで、人々はとうとうに共和国軍の勝利への準備が整い始めたことを実感した。
 それは如何にも鬱屈した人々の頭の上の重石が瞬間に蒸発したかのような、ポポンっとついうっかり人々が跳ねまわってしまうような変化だった。
 鉄道機関車の警笛やら駅の発車ベルやらという新時代の先触れのような、けたたましくも目の覚める騒がしさによってアタンズは長い鬱屈から覚めようとしていた。
 全てはローゼンヘン工業がというよりも、ゲリエマキシマジンという人物が婚約の結納品代わりに百万丁の機関小銃を共和国軍に納入するために起こした事業の余波だった。


 リザが百万丁の機関小銃を求めたのはそれほどに深い考えがあっての結果ではない。
 単に百万の帝国軍に立ち向かうのに、より優秀な武器を持った同じ数の兵隊が必要だ、という程度の感覚に過ぎなかった。
 彼女の理解は大本営を駆けまわる参謀の限界を僅かにでもはみ出したものではなかった。
 確かに彼女は他人よりも作戦戦術或いは戦略においても直感的な或いは構想的に優れたところがあったかもしれないが、つまりはそれは優秀と呼ばれる人々ならば普通に煌めかせる宝石の輝きであって、空に煌く星の火のようなものではなかった。
 だが、それを為すための準備、事業としての整合を共和国の人々、そして最初にリザ自身が直接に無理を云った相手であるゲリエマキシマジンによって物語としての整合を支えられた。
 結婚も今となってはリザに嫌も応もあるはずがなかった。
 女のわがままと云うにはあまりに突飛な言葉を真に受けたまま、彼女の十年来の恋人は百万丁の機関小銃の納品に関わる一切を全く些細な出来事であるかのように準備を整え、しかしやはり世間の常識の壁、と云うか軍の予算と実務の壁に十年待たされることになったものの、見事に彼女の要求を達成した。
 途中二年間、様々に現実の限界を感じていた共和国軍が機関小銃の大規模な配備を見送った時には、リザが自分で結婚を申し出たほうがいいのだろうかとすら考えるほどだったが、結局のところ見送って時を過ごし、この年この時期になった。
 エリスとアウロラにとって両親ふたりが仲が良いことは全く自然なことで、それが目に余るかというと、母は父といると機嫌が良かったし、父と合わないでふたつきもすると奇妙に元気がなくなったりするので、なんだかともかく必要なのだろうと感じていた。
 エリスにとって良くわからないのは、母が奇妙に父に愛されているという確信があるということと、父に他に子供を生ませた女がいるということを、ともに全く普通に受け入れていて、それで全く構わないらしいということだった。
 確かに十年も婚約のままでその間に母のねだるままに様々を与える父は、母を愛している、というかひどく甘やかしている様子で、彼女の求めるものを投げるように与えていた。
 小銃も鉄道も自動車も戦車も鎧兜もそうだった。
 奇妙に武器武具に偏っているようにも感じるが、戦時下の軍人が求めるものは男女問わずどうしても偏ることになるのだろう。
 世にいる金持ちというものと母の婚約者で自分の父でもあるマジンはどうも少し違うらしいということをエリスが理解したのはわりと最近、学志館に通い始めてからだった。
 どうやら学者でもあるらしい会社の他にも色々仕事をしているらしいということはなんとなく知ってはいたが、それがどういう意味を持っているのか、軍都にいる間はエリスには全くわからなかったが、学志館とローゼンヘン館を往復するようになってようやくなんだかわかってきたような気がする、というところだった。
 アーシュラは自分の父だから当たり前である。
 と、ふんぞり返っていたが、ソラとユエにしてみると、ちょっとばかり違う意見で私達のせいかもしれない、と二人の姉が言った言葉がエリスには印象的だった。つまり、ソラとユエがかつてエリスが生まれる前に父にリザと結婚してはいかがか、と提案したことが彼の行動を決めているのかもしれない、ということだった。
 もちろん別段ソラとユエがそれを深刻に考える必要がある謂れの言葉ではないのだが、そう考えるくらいにはソラとユエに甘いところのある父親でもあった。それが十何年もかかってしまえばまるで意味もないことだが、当時はリザがマジンの妻に収まってソラとユエの母に収まるのはなんとなく素敵なことに思えたものだった。
 そう考えれば、リザがソラとユエを気にかける気分もアルジェンとアウルムを頼りにする気分もエリスにはなんとなく分かる気がした。
 と云って子供たちから見た父親としてマジンに特になにか求めるところがあるかというと、あまり思いつかない割合と普通の親で、殴られたり打たれたりという折檻の記憶もあまりないし、飢えたり痛かったりという記憶もエリスやその下の子供達にはあまりない。
 ローゼンヘン館に居着く以前の記憶のあるアルジェンとアウルムは別として、ソラとユエも大きな寂しいローゼンヘン館がいつの間にかどんどん賑わいで行くのを知っている、という位の事で、強いてあげれば狼虎庵とローゼンヘン館はとても遠い、今でもだいぶ遠いという印象しかない。
 鉄道が通った今ではヴィンゼまでようやく小一時間という距離に収まっているが、子供が馬車や当時ようやく馬より早く途中で休む必要が無い、という程度の機関車で通うような道のりではありえなかった。
 それでもアルジェンもアウルムもソラもユエも父のために子供ながら頑張った。
 なんというか、年長の四人にとってあの時期が殆ど唯一父親に文句が言いたい時期だった。
 そのあと段々とあちこちから人が来て狼虎庵に大人が入るようになってからは、別段なにがあるというわけでもない。
 今にして思えば、子供四人で狼虎庵を切り回すなぞどうやっていたんだろうと、結婚の披露宴の会場であるソラとユエは狼虎庵を見て驚いていた。
 アルジェンとアウルムは今は中庭の片隅に小さく来客応対と警備の人員のために使われている小さな離れになった建物をながめて懐かしく少し寂しく感じていた。


 狼虎庵は四人の記憶にある小さな製氷倉庫と寒くないままお風呂に入れるのが取り柄のあまり大きくない母屋と馬を預かれるだけの馬舎と納屋というちょっと殺風景なものから、上下水道を備えた百人規模の隊商が複数泊まれる旅籠を経て、今は敷地をぐるりと囲う城壁のような商館づくりの馬舎とその上に百の客室を備えた四階建ての立派な商館になっていた。
 ともかくも、ゲリエ家のヴィンゼにおける貢献はひとかたならぬものがあって、だだっ広く水があちこち出るだけの凶風吹きすさぶなすすべもない土地だったヴィンゼを、人界の文明の砦までにしたゲリエ家の当主であるマジンと、街が興る前からの住人の生き残りであるリザの結婚はヴィンゼにおけるおめでたいことであった。
 ヴィンゼの街は八千人をちょっと超えたところで人口の爆発的な増加は止まったが、それでもまだゆるやかに増加していた。
 誰もが自動車を持つというほどに裕福でもなかったし、そもそもに牛馬も余るほどにいるというわけでない土地であったが、それでもこの十五年でおよそ街の発展というものを意識しない者達はいなかった。
 今や、特段の技量がなくとも日払いの手間働きを役場が手配することは難しくなくなっていて、農業協同組合が機能を始めると農民の時節の手間はなくなりはしなかったが、随分とやるべきことは分かりやすくなった。
 大黒柱が怪我や病気で動けなくなっても、すぐに家族が飢えるということもだいぶ減った。
 数千の兵隊に囲まれるくらいのことは慣れているはずのリザではあったが、こうも見知らぬ農夫たち老翁老婆の群れ為す光景はなかなか初めてで、十年ぶりに家の敷地から出たというような話を聞くと、弱りながらも照れくさく花嫁に向けられる慣例的な褒め言葉にも顔をほころばすしかなかった。
 共和国の結婚制度というものは結局は財産権や親権が男女一組によって統合された、権利においてふたりは同一である、という確認でしかなく、離婚においては元本の別なく誠意を持って公平に分配されることがなされた、という確認でしかない。
 一般的な話の流れとして二人の財産を寄せあっても一人分がやっとというような結婚もあれば、王様の輿入れのような結婚もあり、中には晴れがましいものも碌でもない結婚もいくらもあり、そう考えればマジンとリザの結婚は、少なくとも街の繁栄と共和国の戦争の勝利をもたらした結婚である、とは云え旦那の女癖の悪さは気の毒な新妻に任せる、というところで誰もが前途を祝した。
 千人も連れ子がいる男と結婚しようという女は苦労することも間違いないが、わざわざ離婚するまでもない生活になるだろう、と下世話にたかを括ってもいた。
 デカートでは重婚は禁じられていたが、内縁関係というものは農村一般がそうであるように気にされていなかったし、妾とか愛人というものを抱えていない元老というものも全く例外的であったから、道徳倫理と法哲学の境界の曖昧さについて考えないではなかったが、そういう秩序に対する暴力や逸脱を無害な形で示すことが元老の機能であると嘯く者たちもいて、そういう人々と同類視されることはマジンにとっては遺憾でもあったが、事実関係を説明できない以上、沈黙のまま認めざるを得なかった。
 ヴィンゼで丸五日、ローゼンヘン館でもう三日結婚披露の祝宴はおこなわれ、会流れでヴィンゼの町の酒場はどこも賑わっていた。
 ヴィンゼの街の端から端まで馬で動こうと思うと片道丸一日では少し足りない、つまりは来て帰って次の客を連れてくる、というくらいが結婚式の期間というところで世間で認知される家格からは、もう二三日やれ、という言葉も多かった。
 だが、花嫁が現役の将校で部隊をいままさに鍛えて戦場に赴くという話であれば、やむを得ずというところでもあったし、出屋敷や狼虎庵では祝祭の後も祝の挨拶や訪問の歓迎を家人がおこなっていたから、本人たちに面識のないものたちが文句を言う筋合いでもなく落ち着いていた。


 結婚初夜と云って、別段いまさらふたりでイチャイチャと過ごすのも初めてというわけでもなく飽きるというわけでもなく、狼虎庵の上の階の南向きの部屋にリザとふたりで帰ってきたマジンは寝床が膨れているのに気がついた。
「おかえりなさい」
 寝床からバラバラと挨拶をしたのはセラムとファラリエラとマリールだった。
「そんな顔しないの。あなた」
「いや、まぁご主人の気分は分かる。と云うかリザ。こういうのは日を改めたほうがいいと思うんだ」
「セラム。あなたね。いまさらなに云ってるのよ。第一もう脱いでるじゃないの。裸で蹴りだすわよ」
「これは無理やり脱がされたんだ」
「そんなこと云って、セラム姉さまもおとなしく待ってたじゃないですか」
 ファラリエラがいじわるげに言った。
「リザ、説明を。たのむ。説明を」
 リザは鼻歌交じりにマジンの服を脱がせ始めていた。
「説明をって言って、初夜よ、初夜。なんかふたりも子供産んでおいて今更だけど、年越しとか新年のご挨拶みたいなものよ」
「結婚したのはお前とだろ」
 散歩の途中で座り込んだ犬に向けるような目でリザが溜息をついた。
「なに言ってんのよ。子供まで生ませた女を差別するのは良くないわ」
「それはお前……。話の順番というか」
「話の順番ってなによ。時々あなた変に常識にこだわるけど、あなたの常識なんかもう誰も期待していないんですからね。まぁ本当はセントーラも呼び出すべきなのかもしれないけど、あの人はお屋敷から出てきたがらないでしょ」
「いや、私はリザには常識をわきまえることをもう少し期待しているぞ」
 困ったような声でセラムが割り込んだ。
「セラム。ちょっと黙って。男の子産んだっていい気になってるんじゃないわよ。ルミナス超いい子だから、あの子がこの人の後を継ぐってなら心配しないけど、この人にはこの際ちゃんと考えてもらわないと困るの。この人が千人も子供を庶子として認知した段階で、もう常識的にどうかなってるんだから常識なんか期待しないで」
 リザが奇妙に鋭い調子で断言した。
「いや、男の子産んだからいい気にって、君ね」
「男の子はいいですよね。お嫁いけとか云われないし」
 ファラリエラが口にした。
「リザ、ボクがお前以外に子供を生ませたってのは、まぁ常識はずれでそれはわかったが、説明をしろ。こいつら皆と結婚しろっていうんじゃないだろうな」
 マジンが改めて確認した。
「こいつら皆と結婚しろ。そのとおりよ。少なくとも私の前でそう約束しなさい。アレだったらセントーラもシェラルザードもショアトアもその他、お屋敷にいる女全員、他にもまだいるならその人達とも結婚しなさい。でも、アタシが責任を求めるのはここの三人だけね。皆と結婚しなさい」
 リザは服を引っぺがす手を止めてマジンに命令した。
「子供の事なら間違いなく面倒見るし、怪我しても退役しても年取っても、もちろん面倒見るよ。その先もできるなら計画を立てておく」
「誓いのくちづけを証人に見えるように」
「なんだ、本当に結婚式みたいだな」
「そう言ってるじゃないの」
 リザが早くやれというように顎で示す。
「おまえな、もうちょっと話の流れを、雰囲気というものを整える努力をしろよ」
「思いつかなかったのよ」
 不貞腐れたようにリザが言った。
「ベールとかドレスとか欲しかったですね」
「ああ、それですね。邦ではわりと花嫁さんがふたりとか三人ってのもあるんで、服とか結構いい加減なんですが、やっぱり着飾りたいですよね。まぁそれは戦争勝ってから帰ってきてやりましょう」
 よねー。とファラリエラとマリールは奇妙に盛り上がっている。
「そんなに言うなら電話して家の女の分全部作るか」
「いいですねぇ。最初に捕まえたヒトが結婚する、とかそんな感じですかね」
 マジンが話から逃げるように振ったのにファラリエラが乗った。
「ファラ。話を進めよう。リザ。やっぱり服を脱いで初夜の床でする話じゃないよ」
 白けたようにセラムが言った。
「じゃぁいつどこがいいのよ」
「まぁ、他の人達がいないところなら、どこでも良かったんだろうが、服を脱いで盛り上がる話じゃない」
 困ったように頭を掻きながらセラムが言った。
「それで、リザはボクに彼女たちと子供たちの責任をとれ、ということを約束させたかったんだな」
「そうよ。なんか、私結婚するって戦争も終わってないのに子供二人も作っちゃって、あなたにこの娘たち紹介して、そしたら本当に子供作っちゃうしさ。私また戦場にゆくのよ。この娘たちも。そしたら戦死するかもしれないんだよ。わかっているの、そのこと」
 リザは自分の中の様々整理されていない感情を形にして吐き出したい気分を説明した。
「まぁ、男が出征するときもわりと駆け込みで結婚するよな」
「それは家に子供を残すためでしょ。男はそれでいいのよ。女は子供腹に抱えるのよ」
 真剣な顔でリザが確信していることにマジンは不思議に感じた。
「なんだ。お前、妊娠するかもって思ってるのか」
 呆れと心配とがどうしても乗ってしまったマジンの言葉にリザが口をとがらせた。
「思ってるわよ。今日なんかあなたと朝までぐちゃぐちゃ突き回して遊んでたら直撃よ」
「なんだ。まさか、それで私達を慌てて呼んだのか」
 リザの悲鳴のような言葉にセラムが呆れたように言った。
「お姉様も避妊具で栓してもらえばいいのに。ちゃんと月のものもありますし、妊娠もしないみたいですよ。結構いいです。っていうか月のものがないほうが気楽なのかもですが」
「ファラ、試したのか」
 驚いたようにセラムが尋ねた。
 マジンも尋ねたくはあったが、どう云っていいのかどんな声を出せばわからなかった。
「そりゃまぁ、何度か。射精感があるのとないのではやっぱり。マッサージと張型でいいって言う人も多いですけど、私は張型よりは男性のほうがいいかなと」
 ファラリエラは実にあっさりと浮気の内容について語る。
「病気には気をつけろよ」
 浮気と云っていいのか悪いのかわからないままに、セラムはそれだけ言った。
「公営男娼ですよ。部下の娘達も男慣れしてるってわけじゃないから、適当にお店連れてったりもしてますよ。でも、あんまりデカートはそういうの多くないし、男娼は数も質も良くないですね。女にはお硬い土地柄です」
 水商売相手が浮気になるのかならないのか、ファラリエラがあっさりと認めた。十三年目の初夜の夜に子供を生ませた女の生々しい話を聞いてマジンの顔が苦る。どうマシなのかを尋ねたほうがいいのかどうかも迷う。
「子供は欲しいのよ。でも戦争も行くの」
 話の中心から離れたことに駄々をこねるようにリザが言った。
「時々お前本当に子供みたいになるな」
 マジンはリザの声にホッとしたように言った。
「あなたも避妊すればいいじゃないか。話通りなら栓は簡単に抜けるんだろう。まだ抜いたことはないが。入れる時もなんか恥ずかしいばかりで痛くもなかった。まぁちょっとゴリッとはきたが」
 セラムが居心地悪そうな顔のままリザに言った。
 理屈の上では子宮口の内側に引っかかっている金具を紐で引っ掛けて引き出せば良いだけなので、避妊具を取り出すことはそう難しくない、という説明をセラムは受けていた。
「どっちかというと、膣口開いて変なところに風が当たるほうが辛いですよね。しばらくおならみたいな感じの音出るし。でもだいぶ入れっぱなしだけど、そのせいでどっか痒くなったりってこともないみたいですし、軍務の途中で妊娠するんじゃぁとかも考えないでいいし、随分楽ですよ」
「私つぎ妊娠したら任務中でも退役しますよ」
「マリール。……まぁ連絡参謀はそれでもいいか」
 セラムが呆れたように言った。
「ん、あぁ、で、なんだ。つまりボクはお前の代わりに彼女たちと初夜を楽しめとそういうことか」
「まぁ、……そう。そうなる」
「で、お前はどこで寝るんだ」
「いいじゃないのよ。一緒に寝てもどうせ四人でも五人でも寝れるじゃない。ここの寝床は一段床上げただけみたいなものなんだし」
「混ざるとか云うんじゃないだろうな」
「仲間はずれってこともないじゃない。そりゃ混ざるわよ」
「妊娠したくないんだろ。だいぶまじめに体調と暦を確認していたみたいだが」
「そりゃそうよ。作戦発起のこの時期に妊娠とか最悪だわ」
「基本的に準備なしに避妊をする完璧な方法はないぞ。体温や排卵周期の管理も運動や食事の状態で変わるし、突然の興奮や精神的肉体的な変調で排卵することもある。強姦被害者の妊娠率が高いのはまぐれとか後処置の問題だけじゃない」
 セラムが確認するように言った。
「別に最後までやらなければいいじゃない」
 不貞腐れたようにリザが言った。
「どうしてもやりたければ肛門と口腔性交にしておけ。男性の精液の白っぽい部分は別段精子というわけじゃない。アレは卵の黄身のようなものだ」
 セラムの忠告にリザは口を尖らかせた。
「卵の黄身ならどうだって言うのよ」
「卵の黄身はヒヨコになるための栄養で、あそこはヒヨコにならないんですよ」
「そうなの」
 ファラリエラの説明に驚いたようにリザは目を丸くした。
「まぁ、発生学的にはそんなところだが、ああ、まぁそうするとなんだ。やっぱり戦争が終わってから落ち着いて仕切りなおしたほうがいいか。出征してなんだかの作戦があるんだろう。戦争がと云わず、その作戦の結果を見てから」
 なんだか面倒くさくなってきてしまったマジンが尋ねた。
「ダメよ。どうあっても死ぬかもしれないんだから。生き残ったら子供たちとメデタシメデタシって云うためにもちゃんと約束するの。結婚ってそういう意味でしょ」
「なんかそれはアレだな、武侠物の桃源の契とかそういう感じの雰囲気だな」
 マジンの提案をあっさり却下したリザの言葉にセラムが笑った。
「竿姉妹の契りってあんまり重くしないくらいがいいですけど、旦那様の事業の様子じゃあんまり軽々しくやると却って周りにご迷惑かもしれませんね」
 ファラリエラの感想にセラムが困った顔で目を向けた。
「もう本当にうちの邑に引っ越しちゃいましょうよ。別に四五千女子供引き連れて我が君が越してきても気にしませんよ。十人嫁を抱えて一人前とかそんなこと言ってる年寄りもいるくらいですから、普段使っていないお城とか砦とかあちこちありますから手入れして住んだらむしろ喜ぶと思いますよ」
 我ながらいい案だというように自信満々にマリールが提案した。
「男女がそんな変な偏りをしている土地なのか」
「そんなわけないですけど、戦いに出ると男減るから、帝国がちょっかいをかけて来ていた昔はわりとそういうこともあったみたいです。でもそう言ってるお年寄りもむしろ十人に介護されているって感じで、抱えているってよりはお世話されているって感じですね。奥様方も年齢の幅はあっても高齢ですし」
 マリールが自分の郷の話を口にしたのに、セラムが納得したような顔になった。
「ああ、なるほどそういう結婚の関係もあるのか」
 もう話の流れをどうにか変えたいという様子のセラムがマリールの言葉に乗った。
「怪我してもお屋敷だったらわりとなんとか苦しまずに過ごせそうですね。私もなんか急に旦那様と結婚したくなりました」
「私もバキバキにされたときはもっと大変なのかと思ってましたけど、意外と平気でしたね。次は腕切って繋いでいただくくらいしていただいても良いかなと思いました」
 セラムの言葉にファラリエラとマリールが奇妙に家具か農具の売り込みか何かのように言った。マジンは困った顔になる。
「なんか、いやな言い方だな」
「とっても大事なことですよ。軍人なんて健康と元気がなくなったら置物にも使ってもらえない商売なんですから」
 ファラリエラが冗談とも本音ともつかないように笑って言う。
「まぁアレだ。今更ご主人が子供たちを蹴りだしたり、怪我をしたくらいで私達を見捨てるとも思っていないが、死んだり身動きできない、ただ死を待つような状態になることは大いに考えられる。目を潰されたシェラルザードの扱いを考えればそれほどに懸念をしているわけではないが、あんなのはまだマシな方で、顔が焼けて皮が溶け鼻がなくなり醜い有様になることは考えられなくもない。まぁなんというか、そうなったときに耐えられなくなるのはご主人よりも先に多分自分なわけだろうがね。それでも愛してくれるとなれば、この身の光栄、とは思うよ」
「百まで生きて皺々になっても裸で褥についてお漏らしの世話をしてもらえるなら、別段十分幸せでしょうね」
「んぁ、ふたりとも随分具体的だな。なんか、そういう夢でも見たか」
 夢と云うには禍々しい将来を描いたセラムとファラリエラにマジンは嫌な顔をする。
「夢というか、まぁ普通にありえることだからね。死んだほうが生きたほうがどっちが幸せかわからないというのは、戦場ではわりとその日その場で入れ替わる。忙しければ付き合ってもいられないが、平和になればそういうのと折り合う必要もあるさ。起こってもないことで責め立てるのは筋違いでもあるんだが、覚悟はしておいて欲しい。……リザ。やっぱりさ、こういうのって裸で初夜の床でする話じゃないよ。なんか、これ脅迫してるみたいじゃないか」
 云うだけ云って後悔したようにセラムが口にした。
「いいのよ。本当に脅迫してるんだから。どのみちこの十年のうちに退役しなかったアタシたちが戦争にケリがつくまで退役するはずないんだから」
 寒そうに胸元に上掛けを寄せて後ろめたげに言ったセラムにリザに文句を言った。
「私は妊娠したら退役しますよ。だってもう、勝ったも同然じゃないですか」
 リザの言葉に心外というようにマリールが言った。
「なに言ってんのよ。マリール」
「連絡参謀は最も気楽な軍務のひとつなのですよ。共和国軍では将軍の炊事係の次にえらいのです」
「なにバカなこと言ってるの」
「リザ姉さまも今更なに言ってるんですか。そんなに我が君とお床入するのが嫌なら、その分たっぷりアタシが頂きます。……なんかアレですね。これまで間女とか愛人とかって自覚も印象も全然なかったんですけど、なんか、こんな感じでグダグダしていると、変な風に盛り上がりますね。……ねぇ、あなた」
 言いながらマリールが寝床から這い出してきて、既に服を向かれて裸になっていたマジンに体を絡ませ、唇から舌を吸い出し押し倒しつながった。
「ちょ、ちょっとマリール。離れなさいよ」
「あ、なんか、結構こういうのもいいかも。愛人とか妾とか云われててもチイともそういう嫉妬めいたものがなくてどうかなぁって思ってたけど、ちょっと優越感。え、ははっねぇ、我が君。なんか全然前戯なくても燃えますよね。うひひっ」
 マリールはリザに小突かれながらもまんざらでもない様子で体を揺すり擦りつけていた。ぼんやりとそれっぽく出来上がっていたマリールは、やはり中途半端な状態だったマジンをあっさり受け入れると、リザが喚くのに合わせて互いの体をたしかめるようにとろかせていった。子供を産んだ体と子供を生ませた体が馴染むのはそれほど時間がかからなかったし、気分の上でも互いに中途半端なまま乾いてくすぶっていたから本気になるのはもっと早かった。別段マリールにとっては最初からどうでもいいことだったし、マジンにとっても不意を突かれた出来事だった。
 茶番に飽きたふたりが見せつけるようにまぐわうのを、三人の女はそれぞれに唖然と見物することになった。
 他の女を炊きつけた花嫁をほっぽり出して花婿が間女とまぐわっているのに目を泳がせたリザはセラムに助けを求めるようにした。
「お風呂でも入っておいで。マリールも満足したら落ち着くだろ」
 セラムが脱出路を示すようにリザに告げた。
 そのセラムの悲鳴が上がったのは、風呂の中でリザの頭が一旦冷え、そして他にやはりあまり取るべき方法が見つからないことにリザが諦めを感じて、自己肯定し始めていた頃のことだった。
 慌ててリザが飛び出してみるとセラムが床の上にマリールとファラリエラによって抑え付けられ、マジンが股ぐらに屈みこんでいた。
「なにやってんのよ。あんたたち」
 セラムの上半身を押さえつけていたマリールをリザがぞんざいに蹴り転がす。
「お。かかった」
「ちょっと。っく」
「花嫁無視してなにやってるのよ」
「ん。ああ。栓を抜いてた」
 セラムの股間から顔を上げたマジンがセラムの子宮に収まっていた避妊具を手の中に見せる。
「リザ姉様がグダグダ言ってるのはつまり妊娠が怖いからかなぁと皆で妊娠しちゃえば、逆に文句も出ないかなという結論になりまして」
 セラムの腹の上にまたがり足を抑えていたファラリエラが微笑みながら説明した。
「ああ、もう。本当に私たちは自動車聯隊の幹部なんだぞ、いきなり妊娠で配置転換なんて責任放棄にも程がある。話の順番からすればリザに避妊具を入れるほうがよっぽど順当じゃないか」
 抑え付けられていたセラムが自分の頭の上に覆いかぶさっているマリールを押しのけながら文句を言った。
「――大体ね、リザ。こういうぞんざいな話の流れになったのは、アナタがご主人とキチンと日頃から話をしていないからよ。私も子供を産んでこの歳になって今更他の男と付き合って結婚とか考えちゃいないけど、あんまりそういう態度ならさっさと離縁しなさい。エリスもアウロラも私がちゃんと面倒見るから、心置きなく軍務に邁進すればいいわ。幹部が四人もいきなり妊娠して後方配置とか、功績を上げたい士官なんて本部にいくらでもいるでしょうから、訓練も装備も整った部隊となれば大喜びで飛びつくでしょうね。私は妊娠したらおとなしく戦果を楽しみに軍都にでも配置してもらうことにするわ。さすがに鍛えた部隊の行く末くらいは見届けるまで家に入れないからそれまで結婚もしないけど、リザはさっさと離縁しときなさい。私がこの人と結婚することにするわ。それでヴィーナって子供に名前つけるわ。男でも女でもどの道かわいい賢い子供になるだろうけど、戦争で勝ちそこなったなぁって思うのよ。ほらアナタも突っ込みなさい。どうせ精液で濡れてるけど、ちゃんと妊娠することにしたわ」
 ヤケクソのようにセラムがマジンの腰をまたぎつながった。
「コレって事後には効果がないものなんですか」
 ファラリエラが自分の中に入っていた避妊具を興味深げに眺めながら尋ねた。
「実はボクが設計したものじゃないから、きちんと効果がわかっているわけではないけど、予想される機能からすれば、受精してても一日二日なら効果があるはずだよ」
「そしたら明日みんなでお屋敷に帰ったらいれてもらいましょ。もちろんマリール姉様も」
「ええ、私もなの。私妊娠とか全然望むところなんだけど」
「ダメです。マリール姉様が余計なこと言い出してやりだしたから、リザ姉様がいじけたんです。責任をとってください。次の作戦が終わるまでおめでたなんて羨ましいことは許しません。私達の戦争にお付き合いいただきます」
「ファラ、アナタひょっとして最初からそのつもりだったのね」
 マリールが呆れたように尋ねた。
「え、前に聞いた説明だと、この避妊具、事後でも効くかも~。って話があったから、まぁいいかなぁって感じでした。皆さん聞いてましたよね」
「なにそれ、あなたひょっとして帰ったらいれてもらうつもりだったの」
 マジンの腰の上で悲壮な顔で腰を使っていたセラムが素に返った。
「帰ったらというか、もう、今日このあとには入れてもらうつもりでした。さすがに作戦ほっぽり出して妊娠とか聯隊幕僚のやることじゃないですよ。私もレオナニコラの次の子産んでもいいかなあと思ってますけど、今は戦争終わりにできたら私達英雄になるチャンスですよ。ちょっとありえないですからね。セラム姉様じゃないけどこんな機会逃したら、子供の顔見て思わず文句言っちゃいますよ。勲章もらいそこなったぁって」
 ケラケラとファラリエラが笑った。それを聞いて苛立たしげにセラムが乱暴に腰を使い始めた。
「ご主人。あなたもそういうことならリザを押さえつけてでも避妊具押し込んでやりたまえよ。もう、ふたりとも子供じゃないんだからくだらない事で気を揉ませるなよ。戦時下で私達全員、戦争の先行きの大事に関わってるんだからさぁ。もっと責任をもって行動してよね」
 セラムが乱暴に腰を使うのにしごかれマジンの陰茎は引き抜かれるような削られるような痛みもある。セラムの躰は相変わらず張りがあって狭い。
「そんな乱暴にして痛くないのか」
「痛いわよ。でもいいの、いろいろバカバカしくなったんだから。少し付き合いなさい」
 セラムが乱暴に命じるように言った。
「こんなんで避妊できちゃうんですねぇ。不思議」
 マリールがセラムの胎内から出てきた、金と銅のごく簡単な細工物を不思議そうに眺めて言った。
 それは親指の爪の上に乗るほどの銅の三叉の先端に金の玉をかぶせただけのもので、セントーラの子宮に入っていたものを複製した物だった。栓と云うよりは掻き出し器のようなものだが、電気化学的な解釈で女の体に負担をかけないままに妊娠を阻害する避妊具だった。
「ちょっと私も信じられないんですけど、まぁ実績あるし多分大丈夫じゃないかなぁ、と。ダメだったら本部でお留守番してます」
 ファラリエラがあっけらかんとした様子で言った。
「つまりどういうものなの。痛くはないの」
「ちゃんと私もわかってないんですけど、電池と鉱毒みたいな機能をごく弱く発揮するみたいです。お腹ん中にあったわりに錆びてないんでホッとしました。一度見てみたかったんですよね。レオナニコラ産んだあと何年も入れてたから。痛くはないですけど、子宮に入れるからゴリっときますね。子供産んでないと辛いかも」
 興味深げに金属細工を眺めるマリールにファラリエラがわかっているところを説明した。
「セラム。ちょっと。もう満足したでしょ。代わりなさいよ」
「駄目だ。リザは妊娠しちゃうからダメだ。少なくとも屋敷に帰って避妊具を入れるまでやらせない。……ああ。もう、なんかいろいろ面倒くさくなってきたから、本当に妊娠しちゃおうかって思うわ。ホント、リザ、アナタ本当は結婚したくないならさっさとそう言ってね。私結構いい奥さんになると思うから。……アナタも、避妊具入れるの忘れちゃったら、それでもいいわよ。なんかちょっと予定と違うけど、ルミナスの次の子そろそろいてもいいかなって思うようになってきたところだし」
 セラムがリザの恨みがましげな目を気持ちよさそうに受けながらことさらにマジンに甘えてみせた。
 朝やけが終わったあとの柔らかげな日差しの中、眠るこけているセラムとファラリエラの股間を覗き込み避妊具を子宮に嵌め入れたマジンをリザは恨みがましげな目で見た。リザは四人に離れの片付けをさせるとプリプリとふくれっ面で先導しながら館への帰路についた。
 四人のご乱上を自分の始末のように掃除をするものに思われてはかなわないという言い草だったが、要するに八つ当たりじみた用事を申し付けただけで、花嫁の手引を棚に上げた始末で花婿としては首をひねる顛末でもあったが、結婚までの顛末に人員十万を超える会社を立ち上げることになった騒ぎに比べれば、全くその場が面倒なだけで可愛いものだった。


 ローゼンヘン館での結婚披露宴は軍の関係者やヴィンゼでの宴席に間に合わなかった者達や或いは会流れでそのまま連日の者たちなどでやはり賑わって大盛況だった。
 だが、さすがに町中から離れているローゼンヘン館のことであったから全体に親密な者たちが多く、景気付けの銃声や剣舞剣劇の類はなかった。
 せいぜいが森に放している鶏や山羊が幾羽幾頭か犠牲になっただけだった。
 ローゼンヘン館では二日の披露宴があって、ともあれ結婚の祝宴はひとまず終了した。
 だが全く田舎の結婚ではありがちなことだが、披露宴の本会が明けたあともしばらくバラバラと客が訪れ、マジンは仕事を諦めてゲリエ村の出屋敷で生活をすることになった。
 すっかりと有名人であるゲリエ卿にお目通りの機会ということで鉄道も敷かれたことと、およそ三日遅れで各地の新聞がローゼンヘン工業の社主の結婚を報じたこととで、来客も引きも切らない毎日を無碍に払うのも難しくあった。 
 ゲリエ村の学校の並びに作られた出屋敷は元が城塞のような目的のローゼンヘン館に比べれば、或いは私設の交易所兼宿泊施設である狼虎庵と比べるとだいぶ小さい建物だったが、作りは新しく建築の研究の実験の成果も取り入れられていて、隊商を相手にするような建物ではないが、大きすぎないことで手頃で帰って過ごしやすい建物だった。
 小さいと言って、百を超える馬丁を相手にするような商館とは違うというだけで、四つの応接間と八つの客間がある建物はヴィンゼでは十分大きな建物だったし、敷地という意味で言えばデカートの商館の多くよりも贅沢な土地の使い方であった。
 街を前に森を背景にそれなりに開けていてまた静かであったから、大枠を設計したエイザーの周囲を借景できる絵のように風景を見た建築を作れる芸術的センスを感じさせる建物に仕上がっていた。
 むやみに大きくせず山に向かって広がる森の木々の梢を部屋の窓の目の高さに意識した建物は絶妙にローゼンヘン館を隠し、コレこそがローゼンヘン館であると知らない者を納得させるような作りと十分な機能を使いやすく備えた建物になっていた。
 ゲリエ村は鉄道工事にともなって次第しだいにヴィンゼの港側に伸びていて、川沿いの広がりを持っておよそ三千人が暮らす集落になっていた。
 荒れ野側の工場地帯と森側の宅地は鉄道の他には小さな船着があって、通勤時間には往来便が準備されるようになっていた。
 川向かいにある遠くからも威容が眺められる巨大な工場倉庫群と小さくとも開けた街はある意味で人々の望んでいるローゼンヘン工業の姿であったから、出屋敷で歓待を受けると多くは疑問もなく満足して帰った。
 実のところ客が多いと言っても、多くは物見遊山でせいぜいが仕事の口利きかその日の食事を求めての事だったから、荒事の腕が立って人の裏を見るのに明るいマミーズミに出屋敷の接客を任せておけばおよそのところはケリが付いたし、会社の人事担当がいれば更にそれ以上の面倒もあるわけではなかった。
 途中でマミーズミがロゼッタの警護に引きぬかれ、マレリウヌとゴルシュの二人に任せることになったことは多少心配でもあったが問題もなかった。
 マジンが日中出屋敷に住まう意味はつまりは結婚式目当てのたかりが多すぎて、客かそうでないかの区別がだんだん怪しくなっていたということがひとつあって、しだいにはっきりと悪意のある者と欲得尽くで隙を狙う者が増えていた。
 欲得尽くのたかりと云っても多くは食うに困った者達ということで、幾らかいる詐欺師と物取りを除けば仕事の口を求めてのことであったから、結婚披露宴の後に二千人余りも会社の新人が増えたことは驚くべきことかどうかは微妙なところだったが、常に人間が足りない会社としては助かるところでもあった。
 有り体に親戚縁者のあるはずのない二人の結婚であったから、オジだのオバだのと言う人物や、とうに絶えてしまったローゼンヘン卿の縁者やらという五組ばかりの人たちには司法に全て応対をお願いした。デカート州元老としては全く当然の処置でもあって、迂闊な彼らは重大な身分詐称を咎められることになった。
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