【超不定期更新】【超不定期更新】アラフォー女は異世界で「幸せ」を再履修します。〜猫と一緒にスローライフ?を満喫中〜

猫石

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8.5 みんなの視点から6

セディ兄さまを見返したい!(子ども扱いすんな、馬鹿!)後篇

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「なぁんだ、シルフィードにお願いすればこんなに快適なんだ!」

 元々は空大猫であるコタロウである。 風に乗って飛ぶのが上手いわけだが、風の精霊であるシルフィードの力を借りて風に乗れば、猫特有の動きである『駆ける』時の体幹のアップダウンがなく、さらに安定したしなやかな動きで風を滑り駆けられるようで滅茶苦茶快適な空の旅となった。

 しかもシルフィードの力なのか、顔に直接当たる風の抵抗もかなり軽減されていて、これはもう快適すぎる。

 こうなれば、後はお尻の快適さを求めたい……猫の背中は背骨がしっかりまるまってるせいか、かなり安定感悪い。

「座り心地ってどうすればいいのかな? ロギイさんに聞いてみようかな?」

 今までとは段違いの快適さが嬉しく、さらに改善を求めて考えていると、フィラン、フィラ~ン、とシルフィードが名前を呼んだ。

「なぁに?」

 顔を上げてシルフィードを見ると、ニコッと笑ってくれるシルフィード。

『ほら、見えてきたよ~。』

「すごーい!」

 コタロウを先導するように風に乗ったシルフィードが指さした先は、金色の湖のようだった。

 眼下には、力強く花開いたジャイアントダンデリオンの黄色の花が、風にゆれて漣のように揺れている。

 時折、白波のように弾けて白を散らすのはジャイアントダンデリオンの花が綿毛になった部分。

 ジャイアントダンデリオンは前世の世界でもよく見たあのタンポポにとある一点を除き、見た目そっくりな花なのだ。

『とうちゃーく!』

「おおおおおお、でっかーい!」

 でかさ以外は。

 コタロウから降りたフィランの背丈(150cmくらい)をゆうに越したところにある黄色の花は、フィランの両手を広げたのと同じくらい。

 綿毛の一つにつかまって風に乗れば、子供ならば一緒に空に飛べるのだ。

「……アブラムシが付いてなくてよかったぁ……。」

 想像しないでほしいのだが、ジャイアントダンデリオンにつくアブラムシも同じくデカい。

 例外なく、フィランは茎に密集するでかいアブラムシの列を初めて見た時、危うく花ごと燃やしてしまうところだった。

 病害虫駆除はやり方を間違えれば大火事でである。

「野生種でも見た目はあんまり変わらないね。」

 下から見上げれば、しっかり伸びたガクの部分はみずみずしく、花茎に触れば水が通るような音がする。

 地球のたんぽぽと、こちらのジャイアントダンデリオンの真の違いはそこにある。

 こちらのジャイアントダンデリオンは筒状である花茎に大量の水を多く含む。

 宮廷魔術師長アケロスからのアカデミー入学試験対策講座で初めてこれを見たフィランは、水道管じゃなの? と疑ったくらいだ。

 そしてその講義の中で、茎の中の水分は旅をする際にはどこでも手に入りやすいため、飲料水として旅人から昔から重宝されていると聞いた。

 その際、

「え? それは本当に飲んでもいい水なんですか? 旅人が重宝するのもですが、こぞってみんなで飲むとか、麻薬でも入っているのでは?」

 と気になって口にしてしまい、まさかそんな、と言いながらも少し焦ったアケロウスと共に成分分析をしたのだ。

 結果は真っ白。 どころの話ではなかった。

 麻薬ではなく、僅かにではあるものの、病魔や状態異常を改善させるうえ、こちらもわずかではあるが体力と魔力の回復と、次いでに免疫増強力を含むことがわかったため、この水でフィランがポーションの実験台を作ることになり、現在では王立研究所や王立病院の研究材料にもなっている。

 フィランの庭にあるのはその為だ。

 なお、余談ではあるが、この発見でもフィランは褒章をもらった(再び爵位を押し付けられそうになったので、そこだけは断固拒否したが、二階層では育ててはいけないポーション作成に必要な薬草・毒草類の栽培用として宮廷魔術師の畑に自分専用エリアをもらった)。

 たぶん、この辺の経緯があり、アカデミーの薬学科で栽培実習に使用することにしたのだろう。

 事前予習してたというか、研究対象増やしたことになるんだなぁ、と思わなくもない。

「よし、じゃあ少し貰って帰ろうか!」

 収納カバンの中から、土仕事をしてもいいようにエプロンとスコップを取りだし、準備が出来たところで地面にしゃがみ、花頭がまだ着いたままの発芽したばかりの根の周りを丁寧に掘り起こす。

 土の精霊・グノームに手伝ってもらい、根を丁寧に丸めて湿らせた、成長を止める布でつつみこみながら首をかしげる。

「でもなんで野生種なんだろうねぇ。 園芸店でも売ってるのに。」

「茎の中の水分の魔力含有量が、畑で発芽したものに比べて段違いに多かっただろう? だから研究をするなら野生種で、ということになったらしい。」

「へぇ、そうなんだぁ。 シルフィードは物知りだねぇ!」

 感心しながらスコップを動かしていたフィランに、花の上で風を浴びていたシルフィードは笑った。

『俺じゃないよぅ~。』

「え?」

 スコップを持つ手を止めた。

「じゃあグノーム?」

 横を見ると、自分ではないと首を振る可愛い女の子。

「え? じゃあ私、誰と話をして……」

 その時、自分のうしろから、日差しが陰っていくのがわかった。

 人型の影が後ろから伸びている。

 ジャイアントダンデリオンの苗を両手に抱えたまま、油の切れた機械人形のように振り返った先……。

「……ひっ!」

「フィラン……あれだけ言ったのにやっぱり約束を破ったね……」

 お日様の光を浴びた綺麗な赤髪が怒髪天を衝きそうなほどのオーラを放ちながら、笑顔で仁王立ちするセディがそこに立っていた。





「まぁ、フィランが約束を守るとは思っていなかったけれどね、それでもあれだけ言ったからもしかしたらと思ったんだけど……。 私はただ心配しているんだよ。 フィランは本当に自分の立ち位置がわかっていないというか、今までどれだけいろんなものんを巻き込んで巻き込まれてきたか自覚していないかというか、自分の行動に責任を持てとは、まだ成人前の子供だから言わな……いや、言わなきゃいけないんだけど、危険に巻き込まれたり、自分から危険に巻き込まれていったり厄介ごとを持って帰ってきたり……突拍子もないことをするのは本当にやめなさいと言っているんだ。 わかるかい?」

「……じゅ……」

 わぁ~ワンブレスで言った、とか、反論とかは、もう、正論すぎてこれっぽっちも出てこない。

「重々存じ上げております、お兄様……。」

『フィランだけ怒らないでぇ、僕たちもお手伝いしたからぁ!』

 獣人族であったなら、耳がぺショッとなっているだろうくらいにうなだれて涙目になっているフィランと、その周りで泣きながらフィランをかばうシルフィードとグノームを見て、セディは額に手を当ててため息を深く吐いた。

「次はないからね、次は本気で怒るよっ。」

 甘い! 生クリームたっぷりのケーキにハチミツとチョコレートと砂糖をぶちまけたように甘い、そしてちょろい! ちょろいんだよなぁ……と、アケロスあたりがいたらセディも説教を食らっていただろうが、何分ここにはフィランに甘い人間しかいない上、突っ込み不在である。

「『ごめんなさいぃ~。』」

「ぐ……じゃあ、次からは本当に気を付けるように。」

 歯を食いしばって何かをかみしめているセディはもう一度溜息をついた。

 ジャイアントダンデリオンの群生地の中でも、少し開けたところでお説教していたのだが、半泣きのフィランと大泣きの精霊に怒る気もうせてしまった。

 何なら怒ってる自分が悪い気までしてくる。

「……はぁ。 わかったならもういいよ。 さて、せっかくここまで来たんだし、フィランもアカデミーの準備や錬金調薬頑張っていたから……今日はこのままここでピクニックでもしようか……。 休息も必要だもんな。」

 その言葉にぱっと顔を上げて笑顔になったフィラン。

「あのね! サンドイッチとかお菓子、持ってきてるよ!」

 と、万能収納籠を取り出した。

「じゃあ、この上に座って、お茶にしよう。」

 セディは、自分の付けていたローブを広げてフィランを座らせると、籠を受け取り用意を始めたのだが……。

「……サンドイッチに……ジャム……ポーションに乾燥肉? フィラン、採集にどこまで行くつもりだったんだい?」

「え? 準備万端で行くつもりで……。」

「これは採集じゃなくてピクニックか家出するような荷物だな。」

 広げたローブの上にサンドイッチと、ポーションを置きながらあきれたように笑ったセディは、取り出したカップに程よく温めた体力回復ポーションを入れて渡した。

「ありがとう……ごめんなさい、兄さま。」

 カップを受け取りながら謝ったフィランの頭をなでる。

「私こそ、怒りすぎてごめん。 最近頑張ってたから、ご褒美で一緒に出てもよかったんだよな……。」

 その時、二人の間をふわっと、柔らかい風が吹いた。

「気持ちいい~。」

「あぁ、いい天気だな。」

 フィランの横に座ってカップに口を付けたセディは、ほっとしたような息を吐いた。

「こんなのんびりした日も、たまにはいいものだ。」

「今度は、元気になった姉さまとも来ようね、兄さま。」

 ふふっと笑って言うフィランに少しだけ目を開いて、それから笑う。

「あぁ、そうだな。」

 ここに彼女がいたら、心配をかけたフィランをいっぱい怒った後、いっぱい抱きしめて泣いて、それからいっぱい甘やかすだろう。

 そんな日がいつか本当にくればいいと、セディは目を伏せた。
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