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9章 アカデミーと野外演習
7)思いがけない所からのフラグ回収……え?!まじで?!
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「兄さまぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ばぁん!
力いっぱいお店の扉を開けると、カウンターの向こうで棚の掃除をしている兄さま。
「いらっしゃいませ……って、おかえり、フィラン。 随分元気だね。」
私お手製のエプロンを付けて、私お手製の高いところをパタパタして埃を落とすあれを手にしてお掃除してたであろう姿はとっても可愛いですけど、そんなことはどうだってよろしい!
「兄さま!」
「どうしたんだい? そんなに慌てて。 お客さんがいなかったからよかったけれど、お客さんがいたらびっくりして……」
「それも大事だけど、もっと大変なことがあるんですよ! 兄さま!」
そこまで言い切ると、私は一度お店の外に出て店の外に立てかけている看板を中に入れ、シャッとカーテンの代わりの布を窓とドアにかけて、そのままの勢いでお店のカウンターに力いっぱい両手を叩きつけた。
「私がお嫁にいってたっ!」
少し間が開いて、兄さまの手からぽろっとパタパタが落ちた。
カラン、と、パタパタが床に落ちた乾いた音と兄さまの声が、私の可愛い可愛いお店に響いた。
「……なんだって?」
「落ち着いたかい? フィラン。」
「落ち着かない!」
台所の食卓に座らされ、はちみつたっぷりミルクティの入ったマグカップとデニッシュのような生地に果実のジャムと、最近開発された念願の! チョコソースがたっぷりかかった特別な時に出してくれるお菓子を私の目の置きながら、兄さまは困惑顔で優しくそう言ってくれたが、私の怒りは収まらなくってじっと兄さまをにらみつけた。
「いったいどうしてそんなに怒っているんだい?」
さっぱりわからない、という顔の兄さまだがっ!
「もうだまされない! 昼行燈怖い! 兄さまの馬鹿!」
わしっと、手が汚れるのもかまわずにお菓子を鷲掴みにした私。
「なんで! 私が! ロギイ様の婚約者になってるの!?」
そう叫んでお菓子を口の中に突っ込んだ。
がつがつがつがつ!
もぐもぐもぐもぐ!
ごくごくごくごく!
ごっくん!
「おかわり!」
「あ、あぁ。 うん、おかわりはいくらでもいいんだけど……婚約者?」
湯気を立てたヒタラ……前世で言うところのコーヒーを入れた自分のマグカップをテーブルに置き、私が平らげたお菓子をもう3つ、袋から取り出して小皿に用意してくれた兄さまは、もう一杯私のマグカップにミルクティも用意してくれると椅子に座りながら首をかしげた。
「ロギイがフィランの? なんでそんな話になっているんだい?」
そんなすっとぼけた表情も素敵だけど、なに寝ぼけたこと言ってんじゃい!
寝言は寝て言えやっ!
と思いつつ、どん! と握りこぶしをテーブルに叩きつける。
「私が知りたい!」
「まぁそうだろうけど、私も知らないんだけど……。」
う~ん、と両手を組み、右手であごを支えて考え込んだ兄さま。
「あいつに後ろ盾になってもらっただけなんだけど、なんだってそんな話に?」
「その! 後ろ盾ブローチが!」
これこれ、と、私は自分の制服のブローチを引っ張りながら叫ぶ。
「これが! 元凶! これのせいで!! っていうか私お嫁に行くの!? 貴族様に!? やだ!」
「や、だからちょっと待ってくれるかい? ほら、制服が傷むから引っ張らない。」
まぁまぁ、と私の手をブローチから離してお菓子を持たせ、やっぱり首をかしげる兄さま。
「なんでそんなことに?」
「ブローチ! 婚約者か配偶者にしか渡さないものなんだって! だから、私がロギイ様の婚約者だって噂になってるのっ!」
そこまで言って、手に持たされたお菓子を力いっぱい噛み砕いて飲み込む。
「私みたいなツルペタの小娘が相手なんて、ロギイさまに申し訳ない!」
「うんう……ん? なんだって?」
兄さまが間の抜けた声を出す中、私は、はぁ~っと息を吐いて力説する。
「ロギイ様には、私みたいなツルペタの小娘じゃなくって、豊満なおっぱ……いや、こう女性的なお体の、ギルマスさんみたいな大人の女がいいですよ! 私なんかが隣にいても見栄えがしない! あんな素敵なイケマッチョな獣人は国宝! ちょっと私の好みからは外れているので推しにはならないですけど! 国宝! あの素敵な体格に、キュートなお耳と尻尾をお持ちの! イケメン! 超絶イケメン! 私なんかじゃもったいない!」
どん! と、チョコレートで汚れた拳をテーブルに叩きつけて、私が叫んだところで、「そこかい?」と、ため息をついて濡れ布巾で私の手を拭き始めた兄さま。
「まぁまぁ、フィラン、まずは落ち着いて。」
優しい笑顔のまま、チョコまみれの私の手を拭いてくれる兄さま。
あれ? これに似た光景どっかで見たかも?
なんて思いながら深呼吸をして、綺麗になった手に渡されたミルクティを飲むと、兄さまがやれやれ、とため息をついた。
「たかがブローチひとつでそんな噂が立つとは思わなかったな……。 確かに後ろ盾の一つとしてブローチを与えるのは一般的だが、だからと言って婚約者や配偶者にだけ与えるものではない。 現に家族は皆持っているし、支援者が他に手を付けられないために、支援を与える相手に、渡すということもあるのだから、そんな慣例はないはずだ。 現に上位貴族は自身の家格を誇りに思っているから結婚後も実家の物を私物に使用している者が多い。 ……それにね?」
「ん?」
私の手を拭き終わった兄さまは、コーヒーを飲みながらそれはもう、意地悪そうな笑顔を浮かべた。
「私的なことだから、公にされていないのだけれど、ロギイにはちゃんと相思相愛の相手がいるんだよ。 あんまりにも情けない話だから、騎士団の上層部だけがそれを知っているというか、噂が広がらないように奔走しているんだけど。 だから、フィランが婚約者という噂は明日には消えていると思うけど……。 まぁ、みんなの努力が今回はそれが裏目に出てしまったなぁ。」
珍しい顔をしている兄さまにも興味があるんだけど、ちょっと待って、今言った言葉を掘り下げたい。
「相思相愛の相手? ロギイ様の?」
「気になるかい?」
うんうん、と力いっぱい頷いた私の頭をなでた兄さま。
「ロギィの相手は同じ獣人で、それはそれは美しい白虎族の女性だよ。 戦火で焼けた辺境の村からロギイが助け出した女性なんだけど……今でもはっきりと思い出せるよ。 あいつが恋に落ちた瞬間。 絵に書いたような一目惚れだったんだ。 公になっていないのは、相手に愛を乞うている最中だから、彼女に迷惑をかけないためなんだよ。」
「……口説いている最中なの?」
「あぁ、かれこれ50年近く。」
「はぁ?」
50年も口説いてるの?
それはもう、相思相愛の前の段階で、しかもかなりしつこいのではないだろうか?
ストーカーって言われてもしょうがなくない?
……そして兄さまは言葉選びが大変にへたくそなんじゃないだろうか?
「それは相思相愛と言わないのでは?」
と、とりあえず正論を言ってみると、あははと笑った兄さま。
「愛を乞うている最中とはいっても、ロギイの片思いではないんだ。 相手もロギイの事が端から見てわかるくらいには大好きだからね。 ただ、ロギイが女心がわからないというか、鈍いというか、鈍感というか……」
「それ、どれも意味は一緒ですが?」
そうかい? と笑った兄さま。
「周りはずっと見守っているんだけど、ロギイの必死の求愛行動に相手はかなり前から求婚を受ける合図を送っているんだよ。 だけど、ロギイはそれに気が付かずにずっと求愛行動をしているというか……。 それが見ていて面白いというか、もう、こうなったらいつ気づくか相手の女性とも賭けてるんだよね……」
おいおい、相手の女性も一緒に賭けとるんかい。
でもそこまでってことは、本当に周りはもう、こいつら早くくっつけばいいのにって思ってるってことですよね?
そしてそれを見守っているという体で、面白がっているんですよね?
一国の将軍の恋なのに。
「……兄さま、思ったこと言ってもいい? 不敬にならないかな?」
「うん、みんな思っていることだと思うから、言ってもいいよ。」
「ロギイ様、馬鹿じゃん? それから、周りの人は意地悪すぎ。」
「馬鹿だし、意地悪なんだけどね……本人が気が付かないものを周りが囃し立てるっていうのもおかしな話だからつい、ね。」
ついじゃねぇよ。 早くくっつけてあげなよ。 相手の人も可哀想じゃん。
そう思った私は優しいと思う。 うん、アカデミーからすっごい勢いで走って帰ってきた疲労も全部ぶっとんだ。 これ、私が何とかするしかない!
ミルクティーを飲みながら握りこぶしを作った私に、兄さまはフフッと笑った。
「それにしてもフィランの婚約者か……まぁ確かに、貴族の中ではフィランくらいの年なら高位貴族はほぼ婚約者が決まっているね。」
「あ、そうなんですね? お貴族様は大変だなぁ。」
「政略的なことや、以前にも話しただろう? 貴族は貴族名簿で厳格に管理されている。 そのことも関わってくるから、貴族の結婚は陛下の許可もいるんだ。 力のバランスも考えて、かなり念入りに決められているようだよ。」
「へぇ~。 じゃあクラスメイトの皆様もみんな決まった相手がいるのか……。」
なるほどね、とみんなの顔を思い浮かべて納得する。
「そういえばそうだね。 フィランのクラス名簿を見た限りだと、決まっていないのはフィランとモルガン君だけじゃないかな?」
「おおおぉぉぉぉ、ビオラネッタ様も婚約者がいるんだ……。」
「ビオラネッタ……あぁ、ガトランマサザー公爵令嬢か。 彼女はアカデミーの4年にいる公爵家の嫡男と婚姻予定だな。」
「兄さま、よく知ってるね。」
「恋バナ好きのルナークから聞くからね。」
なるほど。
確かに好きそうな気がする、と思いながらミルクティを飲んで……ふと、気が付いた。
「そういえば兄さまは、婚約者いないんですか?」
「いないね。」
「なんで?」
「必要なかったから、かな?」
「兄さまなら昼行燈でも侯爵家の当主様なんだから、もてそうなのに。」
「そうだねぇ。 定期的にそういう物は届いているようだけど……面倒くさくてね。 受け取りを拒否しているんだけども、本当にしつこくて困っているんだ。」
あ、兄様がものすごくげんなりした顔してる。
ってことは本当にしつこいし、本当に面倒くさいんですね、兄さま。
「婚約者がいるだけで、そういうお話の虫よけになるのに。」
「あぁ、そういえばそうだね。 簡単なことを忘れていたな。」
そういうと、なにやらすごく考え込んだ兄さま。
あ~、本当に忘れてたんですね。
そういうところが抜けてるっていうか、何っていうか。
兄さまらしい。
吹き出すように笑った私。
「よぉし、問題も解決したし、お店閉める準備してこよう! あ! しまった、まだ制服だった。 着替えなきゃ!」
ぬるくなったミルクティを飲み干して席を立ち、大きく背伸びをしてお店に向かおうとした時だった。
「じゃあフィラン、私と婚約しようか。」
「……は……ぃたぁぁぁぁいい!」
言われた言葉にびっくりして変な体勢から振り返った結果、ぐきっと、私の腰が悲鳴を上げたのは、絶対に私のせいでは……
絶対に!!!
ないと思う!!!
ばぁん!
力いっぱいお店の扉を開けると、カウンターの向こうで棚の掃除をしている兄さま。
「いらっしゃいませ……って、おかえり、フィラン。 随分元気だね。」
私お手製のエプロンを付けて、私お手製の高いところをパタパタして埃を落とすあれを手にしてお掃除してたであろう姿はとっても可愛いですけど、そんなことはどうだってよろしい!
「兄さま!」
「どうしたんだい? そんなに慌てて。 お客さんがいなかったからよかったけれど、お客さんがいたらびっくりして……」
「それも大事だけど、もっと大変なことがあるんですよ! 兄さま!」
そこまで言い切ると、私は一度お店の外に出て店の外に立てかけている看板を中に入れ、シャッとカーテンの代わりの布を窓とドアにかけて、そのままの勢いでお店のカウンターに力いっぱい両手を叩きつけた。
「私がお嫁にいってたっ!」
少し間が開いて、兄さまの手からぽろっとパタパタが落ちた。
カラン、と、パタパタが床に落ちた乾いた音と兄さまの声が、私の可愛い可愛いお店に響いた。
「……なんだって?」
「落ち着いたかい? フィラン。」
「落ち着かない!」
台所の食卓に座らされ、はちみつたっぷりミルクティの入ったマグカップとデニッシュのような生地に果実のジャムと、最近開発された念願の! チョコソースがたっぷりかかった特別な時に出してくれるお菓子を私の目の置きながら、兄さまは困惑顔で優しくそう言ってくれたが、私の怒りは収まらなくってじっと兄さまをにらみつけた。
「いったいどうしてそんなに怒っているんだい?」
さっぱりわからない、という顔の兄さまだがっ!
「もうだまされない! 昼行燈怖い! 兄さまの馬鹿!」
わしっと、手が汚れるのもかまわずにお菓子を鷲掴みにした私。
「なんで! 私が! ロギイ様の婚約者になってるの!?」
そう叫んでお菓子を口の中に突っ込んだ。
がつがつがつがつ!
もぐもぐもぐもぐ!
ごくごくごくごく!
ごっくん!
「おかわり!」
「あ、あぁ。 うん、おかわりはいくらでもいいんだけど……婚約者?」
湯気を立てたヒタラ……前世で言うところのコーヒーを入れた自分のマグカップをテーブルに置き、私が平らげたお菓子をもう3つ、袋から取り出して小皿に用意してくれた兄さまは、もう一杯私のマグカップにミルクティも用意してくれると椅子に座りながら首をかしげた。
「ロギイがフィランの? なんでそんな話になっているんだい?」
そんなすっとぼけた表情も素敵だけど、なに寝ぼけたこと言ってんじゃい!
寝言は寝て言えやっ!
と思いつつ、どん! と握りこぶしをテーブルに叩きつける。
「私が知りたい!」
「まぁそうだろうけど、私も知らないんだけど……。」
う~ん、と両手を組み、右手であごを支えて考え込んだ兄さま。
「あいつに後ろ盾になってもらっただけなんだけど、なんだってそんな話に?」
「その! 後ろ盾ブローチが!」
これこれ、と、私は自分の制服のブローチを引っ張りながら叫ぶ。
「これが! 元凶! これのせいで!! っていうか私お嫁に行くの!? 貴族様に!? やだ!」
「や、だからちょっと待ってくれるかい? ほら、制服が傷むから引っ張らない。」
まぁまぁ、と私の手をブローチから離してお菓子を持たせ、やっぱり首をかしげる兄さま。
「なんでそんなことに?」
「ブローチ! 婚約者か配偶者にしか渡さないものなんだって! だから、私がロギイ様の婚約者だって噂になってるのっ!」
そこまで言って、手に持たされたお菓子を力いっぱい噛み砕いて飲み込む。
「私みたいなツルペタの小娘が相手なんて、ロギイさまに申し訳ない!」
「うんう……ん? なんだって?」
兄さまが間の抜けた声を出す中、私は、はぁ~っと息を吐いて力説する。
「ロギイ様には、私みたいなツルペタの小娘じゃなくって、豊満なおっぱ……いや、こう女性的なお体の、ギルマスさんみたいな大人の女がいいですよ! 私なんかが隣にいても見栄えがしない! あんな素敵なイケマッチョな獣人は国宝! ちょっと私の好みからは外れているので推しにはならないですけど! 国宝! あの素敵な体格に、キュートなお耳と尻尾をお持ちの! イケメン! 超絶イケメン! 私なんかじゃもったいない!」
どん! と、チョコレートで汚れた拳をテーブルに叩きつけて、私が叫んだところで、「そこかい?」と、ため息をついて濡れ布巾で私の手を拭き始めた兄さま。
「まぁまぁ、フィラン、まずは落ち着いて。」
優しい笑顔のまま、チョコまみれの私の手を拭いてくれる兄さま。
あれ? これに似た光景どっかで見たかも?
なんて思いながら深呼吸をして、綺麗になった手に渡されたミルクティを飲むと、兄さまがやれやれ、とため息をついた。
「たかがブローチひとつでそんな噂が立つとは思わなかったな……。 確かに後ろ盾の一つとしてブローチを与えるのは一般的だが、だからと言って婚約者や配偶者にだけ与えるものではない。 現に家族は皆持っているし、支援者が他に手を付けられないために、支援を与える相手に、渡すということもあるのだから、そんな慣例はないはずだ。 現に上位貴族は自身の家格を誇りに思っているから結婚後も実家の物を私物に使用している者が多い。 ……それにね?」
「ん?」
私の手を拭き終わった兄さまは、コーヒーを飲みながらそれはもう、意地悪そうな笑顔を浮かべた。
「私的なことだから、公にされていないのだけれど、ロギイにはちゃんと相思相愛の相手がいるんだよ。 あんまりにも情けない話だから、騎士団の上層部だけがそれを知っているというか、噂が広がらないように奔走しているんだけど。 だから、フィランが婚約者という噂は明日には消えていると思うけど……。 まぁ、みんなの努力が今回はそれが裏目に出てしまったなぁ。」
珍しい顔をしている兄さまにも興味があるんだけど、ちょっと待って、今言った言葉を掘り下げたい。
「相思相愛の相手? ロギイ様の?」
「気になるかい?」
うんうん、と力いっぱい頷いた私の頭をなでた兄さま。
「ロギィの相手は同じ獣人で、それはそれは美しい白虎族の女性だよ。 戦火で焼けた辺境の村からロギイが助け出した女性なんだけど……今でもはっきりと思い出せるよ。 あいつが恋に落ちた瞬間。 絵に書いたような一目惚れだったんだ。 公になっていないのは、相手に愛を乞うている最中だから、彼女に迷惑をかけないためなんだよ。」
「……口説いている最中なの?」
「あぁ、かれこれ50年近く。」
「はぁ?」
50年も口説いてるの?
それはもう、相思相愛の前の段階で、しかもかなりしつこいのではないだろうか?
ストーカーって言われてもしょうがなくない?
……そして兄さまは言葉選びが大変にへたくそなんじゃないだろうか?
「それは相思相愛と言わないのでは?」
と、とりあえず正論を言ってみると、あははと笑った兄さま。
「愛を乞うている最中とはいっても、ロギイの片思いではないんだ。 相手もロギイの事が端から見てわかるくらいには大好きだからね。 ただ、ロギイが女心がわからないというか、鈍いというか、鈍感というか……」
「それ、どれも意味は一緒ですが?」
そうかい? と笑った兄さま。
「周りはずっと見守っているんだけど、ロギイの必死の求愛行動に相手はかなり前から求婚を受ける合図を送っているんだよ。 だけど、ロギイはそれに気が付かずにずっと求愛行動をしているというか……。 それが見ていて面白いというか、もう、こうなったらいつ気づくか相手の女性とも賭けてるんだよね……」
おいおい、相手の女性も一緒に賭けとるんかい。
でもそこまでってことは、本当に周りはもう、こいつら早くくっつけばいいのにって思ってるってことですよね?
そしてそれを見守っているという体で、面白がっているんですよね?
一国の将軍の恋なのに。
「……兄さま、思ったこと言ってもいい? 不敬にならないかな?」
「うん、みんな思っていることだと思うから、言ってもいいよ。」
「ロギイ様、馬鹿じゃん? それから、周りの人は意地悪すぎ。」
「馬鹿だし、意地悪なんだけどね……本人が気が付かないものを周りが囃し立てるっていうのもおかしな話だからつい、ね。」
ついじゃねぇよ。 早くくっつけてあげなよ。 相手の人も可哀想じゃん。
そう思った私は優しいと思う。 うん、アカデミーからすっごい勢いで走って帰ってきた疲労も全部ぶっとんだ。 これ、私が何とかするしかない!
ミルクティーを飲みながら握りこぶしを作った私に、兄さまはフフッと笑った。
「それにしてもフィランの婚約者か……まぁ確かに、貴族の中ではフィランくらいの年なら高位貴族はほぼ婚約者が決まっているね。」
「あ、そうなんですね? お貴族様は大変だなぁ。」
「政略的なことや、以前にも話しただろう? 貴族は貴族名簿で厳格に管理されている。 そのことも関わってくるから、貴族の結婚は陛下の許可もいるんだ。 力のバランスも考えて、かなり念入りに決められているようだよ。」
「へぇ~。 じゃあクラスメイトの皆様もみんな決まった相手がいるのか……。」
なるほどね、とみんなの顔を思い浮かべて納得する。
「そういえばそうだね。 フィランのクラス名簿を見た限りだと、決まっていないのはフィランとモルガン君だけじゃないかな?」
「おおおぉぉぉぉ、ビオラネッタ様も婚約者がいるんだ……。」
「ビオラネッタ……あぁ、ガトランマサザー公爵令嬢か。 彼女はアカデミーの4年にいる公爵家の嫡男と婚姻予定だな。」
「兄さま、よく知ってるね。」
「恋バナ好きのルナークから聞くからね。」
なるほど。
確かに好きそうな気がする、と思いながらミルクティを飲んで……ふと、気が付いた。
「そういえば兄さまは、婚約者いないんですか?」
「いないね。」
「なんで?」
「必要なかったから、かな?」
「兄さまなら昼行燈でも侯爵家の当主様なんだから、もてそうなのに。」
「そうだねぇ。 定期的にそういう物は届いているようだけど……面倒くさくてね。 受け取りを拒否しているんだけども、本当にしつこくて困っているんだ。」
あ、兄様がものすごくげんなりした顔してる。
ってことは本当にしつこいし、本当に面倒くさいんですね、兄さま。
「婚約者がいるだけで、そういうお話の虫よけになるのに。」
「あぁ、そういえばそうだね。 簡単なことを忘れていたな。」
そういうと、なにやらすごく考え込んだ兄さま。
あ~、本当に忘れてたんですね。
そういうところが抜けてるっていうか、何っていうか。
兄さまらしい。
吹き出すように笑った私。
「よぉし、問題も解決したし、お店閉める準備してこよう! あ! しまった、まだ制服だった。 着替えなきゃ!」
ぬるくなったミルクティを飲み干して席を立ち、大きく背伸びをしてお店に向かおうとした時だった。
「じゃあフィラン、私と婚約しようか。」
「……は……ぃたぁぁぁぁいい!」
言われた言葉にびっくりして変な体勢から振り返った結果、ぐきっと、私の腰が悲鳴を上げたのは、絶対に私のせいでは……
絶対に!!!
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