【超不定期更新】【超不定期更新】アラフォー女は異世界で「幸せ」を再履修します。〜猫と一緒にスローライフ?を満喫中〜

猫石

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10章 野外演習と失われた王国

5)遺跡とライネ水と……

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 全方向と足元を慎重に確認しながら、一歩、また一歩確認しながら前に進むアル君と私、それからビオラネッタ様を抱きかかえたマーカス様という順番で遺跡に向かって足を進める。

 先ほどまで生えていたであろう低木の折れたあたりだとおもって注意深く見てみれば、何かの強い衝撃で折れたり、根こそぎ取り去られたりしていて、この今の状況がただ事ではない状況だと嫌でも理解させられる。

 少しずつ近づいてくる遺跡は、私がイメージする遺跡とは全く違って、どちらかと言えば石棺? 古墳? のような、本当に白っぽい大きな石がいくつも積み重なった感じのものだった。

「遺跡って言ってたからもっとこう、神殿的な物を想像してましたけど……これですか?」

「あぁ、ところどころ石が落ちている場所があるけど前に見たことがあるから間違いない。」

 本当にこれ? という私の問いかけにマーカス様が頷いたからそうなんだと思うことにするけれど……まったく信じられない。

 どの角度から見ても『遺跡』と言われるにふさわしい建築物には見えない、巨石の山だけがそこにあった。

 その巨石の置き方に規則性も秩序的な物も感じられないず、お世辞にも建築物には絶対に見えない。

「これ、王家管理の遺跡というからには重要な物なんでしょうけれど、いったい何のためにあって、何処から入るんですか?」

 唯一これを見たことがあるマーカス様に問いかけるがすぐに首を振られる。

「王家に封印されている場所だからな、ここまで近づいたことがないから俺にはわからない……。 でもフィランが言う通りどこからも入れそうにないな。 ただ、もしかしたらさっきの地響きで入り口が崩れた可能性もある。 十分に気を付けて確認しよう。」

 あぁ、確かに少し崩れてるからこの形になったってわけでもなさそうだけど、可能性はあるよね……。

 言われたとおり、今にも崩れそうな石の積み方は傍目に見ても危険そうなので、あと10歩、のところまででそれ以上近づかず、アル君と一緒に遠巻きにそれを確認する。

「誰かいましたか?」

「いや、誰もいない……さっきのは見間違いだったか……?」

 ひとまず目に見える範囲には誰もいなくて、そう答えたアル君は大きくため息をついた。

「すまない、緊張して見間違えたのかもしれない。」

 私達に謝ったアル君の袖から手をはなし、目の前にそびえる崩れた遺跡の奥の方を少しだけのぞき見ながら、私は2人を振り返った。

「見間違いでよかったのでは? ほら、誰もいないんだったらみんなちゃんと逃げられたってことだから……いいことだよね?」

「そうだと願いたいがな……。」

 眉間にしわを寄せて重い息を吐くようにそうつぶやいたのはマーカス様。

「聖騎士や、保安要員の騎士もいないというのはいささか……。 いや、すまない。 気にしないでくれ。 俺も緊張で弱気になっているようだ。」

 一瞬、私はたちは沈黙してしまった。

 マーカス様の心配はもっともなのだ。

「きっと、重症者か何かがいて、そっちが優先されちゃったのかも?」

 慌てて私が口を開くが、重い空気は変わらない。

 聖騎士様が聖女のビオラネッタ様を置き去りにするような事態とは何なのか。

 本当に置き去りにされたのか。

 腕の中のビオラネッタ様は顔色は悪くないけれど、気を失ったままで目を覚ます気配はない。

 はっきりしない以上は、私達も、すぐにでも脱出したいところだ。

「中はともかく、一応遺跡の周りを一周、見てくるよ。 僕一人で行ってくるからフィランとマーカスはここに。 一周回ってきて誰もいなければゲートに向かおう、すぐに帰ってくる。」

「あぁ、そうだな。 アルフレッド、気を付けて。」

「アル君、気を付けてね。」

 気を取り直すように私たちは頷きあい、アル君を見送った。

 アル君を見送った後は、マーカス様は近くにあったしっかりした岩に腰を下ろし、膝の上でビオラネッタ様の体勢を腕の中でなおしながら、ふぅっと息を吐いていた。

「マーカス様、どうぞ。」

 水袋からカップに水を注ぎ入れてマーカス様に渡した。

「ありがとう。 だが、フィランの分はあるのか?」

「大丈夫です、さっき11階層に降りる前に補充してましたから。」

 自分の分を見せてグイッと飲み干すと、ようやく彼もカップに口を付けた。

 驚きと痛みと緊張感でひりついていた喉に、ライネの果汁を少し入れてあったお水はすっきりとのどを潤してくれた。

 思っていた以上に、喉は乾ききっていたらしい。 それは彼も一緒だったようだ。

「アルフレッドが帰ってきたら、すぐに緊急退避用のゲートに向かおう。 もし使えなくなっていたら通常ゲートを使うしかないけれど……。」

 ライネ水を飲み干し、言葉と共に深く息を吐いたマーカス様の顔色は疲れが見える。

 しょうがない。 だってまだ彼らは、子供なのだ。

 私の中の人がアラフォーなだけで、実は皆15歳だからね? なんでこんなに落ち着いて行動しているの? って考えてしまうけれど、ものすごい精神力。 緊張感だけで今、心を保ってるのかもしれない。

 アラフォーの私だって、正直、かなり、めいいっぱいっ!

 本当にいっぱいいっぱいだからねっ!

「そうですね。 ビオラネッタ様も早くちゃんとお医者様に見ていただきたいですし、すぐに動けるようにしなきゃですね。」

 ビオラネッタ様がいくら華奢だからってずっとお姫様抱っこして歩いているマーカス様は私達の中で一番疲労しているだろうし……。

 ん? お姫様抱っこ?

 腰、もだけど腕と背中、かなり辛くない?

「マーカス様、背負った方が負担が少ないんじゃないですか?」

「ん?」

 私の顔を見たマーカス様。

「あぁ、そうだな、だが洋服が……」

 あぁ、ワンピースだから抱えると肌を出してしまうと考えているのだろう。

「大丈夫です、ちゃんと走れるような準備もなさっていましたし、マントで腰回りを覆えば肌が見えることはないと思います。 そもそもそんなこと気にしている場合じゃないですしね!」

 握りこぶしを作って力説したら、一瞬きょとんとしたマーカス様、盛大に噴出した。

「あはは、そうだな、フィランの言うとおりだ。 そんなこと言ってる場合じゃない、体の負担を減らさなきゃな。」

「そうですよ、早く退避したいですからね!」

 力いっぱい言った私に、もう一度笑ったマーカス様。

「ちょっと肩の力が抜けたよ。 ありがとう、フィラン。」

「至って真面目に言っているので、笑われる意味が解りませんが、お役に立ててよかったですよ。」

 心外だけどな!

 とまでは言わないまでも、不本意なことはきっちり伝えて、もう一度二人で笑った。

「そうと決まればアルフレッドが帰ってきたら、ビオラネッタ嬢を背負うのを手伝ってくれ。 出来る限りの配慮はしたいからね。」

「はい、もちろんですよ。」

 うんうん、と頷いて……気づいた。

「アル君、遅くないですか?」

「言われれば……少し遅いな……。」

 目に見える範囲では、そんなに大きくない遺跡なのに、いまだに帰ってこないアル君。

「もしかしてものすごく奥に長いとか……まさか中に入っちゃったとか?」

「フィランじゃないから、それはないだろう。」

「そうですね。」

 マーカス様の返答に、うんと頷いてから気が付いた。

「待ってください、ちょっと酷くないですか?」

「いやぁ、フィランは何か見かけたら後先考えず突っ込みそうだからな。」

「さすがに緊急事態では、そんなことしませんよ?」

「そうだな、すまん。」

 むーっ と、怒る私にマーカス様が笑った。

 そんな時、だった。



「――――――――――っ!」



「なんだ!?」

「アル君の声!?」

 声にならないつんざくような悲鳴が聞こえて、私は立ち上がった。

「マーカス様はビオラネッタ様と一緒にいてください。 見てきます。」

 マーカス様の方を向いて、私は言う。

「いや、だめだ、フィランにまで何かあったらどうするんだ。」

「遠巻きに見るだけです、無理は絶対にしません。 それから、救助が必要な状況ならお名前を呼びます。 ビオラネッタ様を一人にはできないでしょう?」

 マーカス様の言うことももっともだけど、聖女様の保護優先順位は高いっぽいし、お貴族様のマーカス様も同じだろう。

 成り行きで貴族籍持っちゃったの私とは違うし、今は誰も出てきてくれないから魔法がうまくいかないっぽいけど、一応短刀も持ってるし、やばそうなら逃げられる。

 逆にマーカス様が確認に行って、私とビオラネッタ様でここにいる方が危ない気がする。

「ビオラネッタ様をお願いします。」

「……わかった。 すぐに逃げるか、呼ぶんだぞ!」

「大丈夫ですっ!」

 私はそのままアル君の消えていった遺跡の裏に向かって走った。

 念のために周囲や足元を見るが、土が掘り返っていたりしている程度で大きく地面に支障がないことから、走るのは楽だった。

 遺跡の終わりが見えて振り返ればまだ二人が見えるほど近いところで、奥行きはやはりそんなになかったようだと思いながら、くるっと曲がって先に進む。

 その先も、変わりはなかった。

 後ろも何の変りもない。

 おかしいことに、見える範囲にアル君も、人影も物陰もない。

「アルくーんっ!?」

 速度を落として周りを見回しながら遺跡の裏を歩く。

 木が生えていた、岩があったかもしれない、と言った掘り返された形跡はあっても、人がいた形跡はどこにもない。

「アルくーん。 どこー!?」

 遺跡の岩陰かな? と、人が入り込めそうなうろのある所はのぞき込んで見るが、それらしき形跡はまるでない。

「えぇ……どこにいっちゃったの?」

 そろそろ遺跡の反対端につく。

 本当に、遺跡なのかな? この石のかたまり。

 そう思いながら、さすがにこの先にいるのかな? と、角を曲がろうとした時だった。

「へ?」

 ずるん、と、何かが私の手首に絡まった。

 それがなにか、確認しようと振り返る暇もなく、私はそのまま引きずられて落ちていった。
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