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〖第45話〗
しおりを挟む「明後日で、会社での仕事は終わりなの。今日、明日は忙しくなるわね。帰りに直樹と会うから遅くなるよ。あとする仕事はリモートだから、ずっとお家だよ。真波の方の絵はどう? 進んでる?」
「ひとまず描く予定してたのは、応募する絵が一点、プレゼント用が二点、予定通りだよ。他はこれから個展目指して描きためるつもり」
「そう言えば私、真波の絵、少しだけど見たよ。SNSで。緻密よね」
朝ご飯の会話。濃い飴色の奈良漬け。ご飯、ホウレン草のお浸し、豆腐とオクラの和え物、ナメコと豆腐の味噌汁。焼き鮭。お昼のお弁当の残り物の、だし巻きと、竹輪の磯辺揚げ。唐揚げ。
真波には隠し事はしたくなかった。直樹が昔の彼だったのも伝えてある。
今腐れ縁の友達みたいなもので『エリちゃん』っていう二周り若い彼女がいる。若い子だから、欲しいものとかが解らない。あと、お金持ちみたいだから余計にクリスマスプレゼントで悩んでる。
そんな恋愛相談にのってあげてる、と。相談料として五千円巻き上げてることも言ってある。そして、私には自慢の恋人がいて同棲していることも。嘘はつきたくなかった。けれど、そう言い終わった時、真波の顔に影がさした。
「美雨さん、正直だけが正解じゃないよ。俺は上手に嘘をついて欲しかった。会ってお酒を飲むのが男ならどんな状況下であれ、もう友達であっても、嫉妬するし不安になる。怖いんだ。美雨さんを失うのが」
真波は切なそうに私を見る。嫉妬だけには見えなかった。
「不安になることなんてないのに。私の心は真波しかいないから。あなたに嘘はつきたくないの。嘘は嘘のためにまた嘘をつく、嘘だるまになるわ」
私は席を立ち、真波にしなだれかかる。いつも香る画材の匂いの他に、嗅ぎ慣れない女物の香水がふわりと香った気がした。
「俺、自信ない。美雨さんを繋ぎ止めておく自信がないんだ。だから必死で絵を描くよ。ただの思い出にならないように。それはね、絵を描く原動力にはなるよ。でも不安なんだよ。怖いんだよ。友達は、皆、馬鹿にして言う。遊ばれてるだけだって。こんな年上のお姉さんがお前のこと本気になるはずがないって」
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