氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第55話〗

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「因みに俺と恵理子とは今は何の関係もないよ。まず、無理。そういう対象じゃないから。それにしてもあいつの悪知恵はすごいね。昨日家に行ったら、とうに関係を切ったのに、何故か俺の家にいて、まずここで驚きだったんだけど、しつこく迫られて、トイレ行っている間に、バッグの中のスマホのロック外して写メ見られた。で、ああなった。というのが俺の見解。ごめんね。誤解させた。美雨さん特製お弁当撮ってあるんだ。隠れて朝夕も写メに入ってる。でも、そこから、情報漏洩したんだよね。ごめんね。嫌な思いさせた」

 真波はため息をついて、ウインナーコーヒーを見つめた。

「誰にも本気にならない俺を見てきたのはあいつだから、俺が一方的に切ったことより、俺が美雨さんにベタ惚れっていうのが、あいつのプライドが許さないんだと思う。だから隠してた合鍵で家に来てた。あいつ金持ちで、暇潰しにパパ活やって男のプライドへし折るの生き甲斐にしてるクズだもん。人の感情なんか金で何とかなると思ってる。俺はああいうの、好きじゃない。美雨さんは、真面目でいつも誠実であろうとしてる。嘘が嫌いで、不器用で、ちょっと頑固で、すごく素敵だと思う。昔の相手をどうこう言うのは趣味じゃないけど、美雨さんに関われば別だよ。ごめん。でも信じて。俺は美雨さんしかいないから」

 真波は私を見て目を細める。彼のこういうところ、好きだ。そして、狡いと思う。心に溜まった真っ黒い靄のような、恵理子と真波の関係を疑う気持ちが霧散する。悲しくて、悲しくて、惨めな自分が溶けていく。全面の信頼を寄せる顔。そして、全面の信頼を欲する顔。

「美雨さんへの想いの証拠はどうしようか?ここで叫ぶ?『美雨さんあいしてるー!』って。恵理子がいつ作ったか解らない合鍵は取り返したし、暫く家には戻らない。あと、それでなんだけど、絵を描くのに、寝室に少しだけスペースを取らして欲しい。俺が居候、いや、同棲………するのにシングル二つくっつけてくれてるけど、セミダブルじゃ駄目かな。くっついて寝たら狭くないよ。だいふくとおはぎには絵の具とか、誤食があっちゃいけないから、寝室用に柵買わなきゃならないことになるから可哀想だけど。もちろん、すぐ絵を描くのに使ったものはすぐ片付けるから、片づけ終わったら皆で寝よう?」
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