58 / 94
〖第58話〗
しおりを挟む勝手な憶測だけど、真波は誰か無意識に愛していた人を描いているのではないか。恋という感情にさえ気づけなかった切ない恋。誰かは解らないけど、私くらいの年齢。引きずり続ける人。誰だろうか。
私は歪んだ鏡でありたくなかった。だから私は昔発表した、真波の絵を、インターネットで見られる絵は全部見た。家にある絵と同じだった。描いてある人は違くても、基になる人は何処か共通項があった。私と同じ表情。何処かで見たことがある、瞳。
認めたくなかったけれど、行き着いた答えは、前にパスケースで見せてもらった真波の家族写真にあった。真波の『母親』そのものだった。答えが出るのにあまり時間はかからなかった。
『最期のお別れもできなかった』と彼は私にそう言ったが、真波は、本当は『見た』のかもしれない。母親の最期の悲しい姿を。そして、それを解った上で、綺麗な昔の姿の母親を描き起こしているのではないか。甦らせているのではないか。
キャンバスの中で、真波に微笑みかけ、真波だけを愛し続ける母親を真波は描き続けている。
私は母親なの? 真波。そう真波に訊きたい。それが真実なら、現実はあまりにも残酷だ。私が調べたのは、他にもある。過去の真波が交際歴がある女性と発表した絵の共通項。皆、猫を二匹飼っている年上の女性だった。私と猫との繋がりが、出逢ったばかりで何故解るか。それはスマートフォンの待ち受け画面だ。おはぎとだいふくのツーショット。
あの時、私が共通項に入らなかったら、カラス避けネットに雪に埋もれていた無様な私に見向きもしなかった?私はあなたの人生にいらなかった?
確かに家族の話をする時、ほとんど真波は母親の話をする。いつでも、必ず母親が割り込む。ここまで調べていくと、今、寝室にある絵は、真波の母親のように感じる。まるで、情事まで姑に監視されてるみたいだ。
寝室に行くのが嫌で、リビングのソファで寝る。真波は何も言わない。上部だけになりつつある関係に辟易する。
何を食べても美味しくない。味がしない。いつの間にか体重が三キロ落ちた。真波は洗面所で歯を磨く痩せこけた私を鏡越しに見て無表情に言った。
「美雨さん。誰でも触れられて嫌なところはあるでしょ?」
0
あなたにおすすめの小説
メイウッド家の双子の姉妹
柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…?
※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。
辺境伯と幼妻の秘め事
睡眠不足
恋愛
父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。
途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。
*元の話を読まなくても全く問題ありません。
*15歳で成人となる世界です。
*異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。
*なかなか本番にいきません
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
【完結】雨の日に会えるあなたに恋をした。 第7回ほっこりじんわり大賞奨励賞受賞
衿乃 光希
恋愛
同僚と合わず3年勤めた仕事を退職した彩綺(さいき)。縁があって私設植物園に併設されている喫茶店でアルバイトを始める。そこに雨の日にだけやってくる男性がいた。彼はスタッフの間で『雨の君』と呼ばれているようで、彩綺はミステリアスな彼が気になって・・・。初めての恋に戸惑いながら、本をきっかけに彼との距離を縮めていく。初恋のどきどきをお楽しみください。 第7回ほっこり・じんわり大賞奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる