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〖第61話〗
しおりを挟む私は肩に手を置こうとした真波の手を振り払った。
「どうしてこんなことしたのよ!モデルになって、すました顔で『笑って』『こっち見て』って、そんなあなたの言葉が嬉しかった。冴えない私が映画のヒロインになったみたいな気がしてた。馬鹿にしてたの? 浮かれて澄ました顔の私は面白かった? 何でお母さんの絵が必要だったの?」
真波のポケットからカサカサ音がする。
「真波、ポケット、何?」
「──」
「真波!」
ごめんね、美雨さん。そう言い真波はポケットからスマートフォンを取り出した。
「聴いたよな、美雨さんの声。俺の勝ち。上がってきなよ」
固い早口な真波の意味ありげな言葉。スマートフォンでのその一言を最後に、真波は苦い顔をして、黙った。長い沈黙が続いた。窓の外は雪になった。氷雨から雪になると、いいことはない。いつもさよならが待っていることが多かった。真波は私に頭を下げた。
「ごめんなさい。美雨さん。ごめんなさい。まさか美雨さんが、こんなに傷つくとは思わなかったんだ。別れたくないよ。別れたくない」
そう言いしゃがみこみ、真波は私の脚に縋った。
「ごめんなさい。許して………下さい」
そう真波は繰り返した。
「どうして私に縋るような、謝るようなことをしたの?」
「──賭けだったんだ、悪趣味な、美雨さんを一番傷つけるような、賭けをしてたんだ」
暫くしてインターフォンが鳴る。真波の美大の友達という三人を部屋に通して、真波と美大の友達という三人の会話で私はことの真意をようやく理解した。やって来た三人に言った。
「歯、くいしばって。舌噛むから」
三人の頬を張り、真波の頬は手加減無しで思い切りひっぱたいた。彼は私にしがみつき声を殺して震えて泣いた。
「何で私が真波をひっぱたいたか解る?」
潤んだ声をした私を、頬を赤くした真波が、涙目で私を見つめる。
「美雨さんじゃない、人を描いた。騙すようなこと、した。ごめん、なさい。許して。だから、嫌いにならないで。美雨さん、嫌いにならないで。美雨さんは、やっと出来た、好きな人なんだ。捨てないで。お願い、お願いだから、ここに置いて。それに──」
「それに?」
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