氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

文字の大きさ
66 / 94

〖第66話〗

しおりを挟む

「ブランドの紅茶カップなんて見栄張っちゃった。普段、飾ってばっかりで使わないのに。でも、綺麗だから良いよね。お茶、飲んで。ビスケット、美味しいのよ、シナモン大丈夫?」

 私は三人の視線にたえきれず、ため息をつき、あっさり白状した。

「見栄張って、虚勢を張って。ここは会社じゃないのにね。結局本当のこと言うんだからおまぬけよね」

「そう言う風に思って見てたんじゃないっすよ。相手に気を遣わせないように、彼氏の友達の俺たちにまで、気配りして。しかも相手は失礼なことして、俺なら一秒も一緒に居たくないくらい嫌な奴です。それでも気を遣ってくれたところが、美雨さんの格好いいとこっすよ。社会人って、すごい職業ですよ」

 一樹がそう言うと、小さい声で敬二が言った。

「正直って難しいです。人を傷つけてしまうことも多いし、しかも気遣いと正直って同居しない場合が多いじゃないですか。美雨さんは正直なのに優しく気遣ってくれる珍しい人です。僕も彼女を作るなら美雨さんみたいな人がいいです」

 ありがと。そう言い私は個包装のビスケットを口に運んだ。私を食べたのを皮切りに皆がお茶や、ビスケットに手を伸ばす。

「あ、美味しい。敬一兄、美味しいよ。今度買おう。美雨さん、何処で売ってたんですか? ビスケット」

 駅の輸入食品扱ってるとこ。安いのよ。珈琲も合うよ。私は自然と笑っていた。不思議だと思った。初対面の、しかも男の子。私は自然と話をして、心の底からこの時間を愉しんでいる。

──────────

 冬晴れが続いた。仕事は片付き、年末は慌ただしいので早めの大掃除だ。もともと、私の家には荷物が多くなかったが、少量、とも言えない量の服やアイテムがクローゼットの肥やしになっている。

「アヤから服とかもらうんだけど、ちょっと私、あの子より体型がね。鍛えてはいるんだけど」

 空き時間のストレッチのルーティンを加えた私に、

「やりすぎだよ。大丈夫なの?」

 真波は心配していた。

「活性酸素をためないくらいよ」

 あなたの隣を歩くから、若くて綺麗でいたいのよ、そう真波に思ってしまう私は少しだけ切なくなる。理由が解らない真波のせいではない、全部私のエゴだ。『年なんて関係ない』何て言わないで。

 明日私が六十のおばあちゃんになっていても、あなたは私を愛してくれる?あなたはきっとそんな私を慈しんでくれても、もう私を抱くことはない。私はいくつになっても真波の前では女でいたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

メイウッド家の双子の姉妹

柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…? ※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

【完結】雨の日に会えるあなたに恋をした。 第7回ほっこりじんわり大賞奨励賞受賞

衿乃 光希
恋愛
同僚と合わず3年勤めた仕事を退職した彩綺(さいき)。縁があって私設植物園に併設されている喫茶店でアルバイトを始める。そこに雨の日にだけやってくる男性がいた。彼はスタッフの間で『雨の君』と呼ばれているようで、彩綺はミステリアスな彼が気になって・・・。初めての恋に戸惑いながら、本をきっかけに彼との距離を縮めていく。初恋のどきどきをお楽しみください。 第7回ほっこり・じんわり大賞奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました。                                

処理中です...