72 / 94
〖第72話〗
しおりを挟む「あっちのお家、荷物ないならなら掃除は要らないね。あのさ、真波。感情がつまったものを無理に捨てるのは、必ずしもいいことではないよ」
私は言いたいことと逆のことを言う。私の苦手で嫌いな言葉の駆け引き。素直に『何が入ってるの?』と訊けばいいのに。
「大丈夫。へこむ物ではないから。昔の人関係じゃないよ。明日、見せるよ。やましいものではないし。美雨さん、今日、抱いて良い?何か不安で、怖いんだ。触れてないと幸せが逃げていってしまいそうで。ごめんね。こんなデカい図体して、ノミみたいな心臓で」
そう、真波は言い、一緒にシャワーを浴びた。
「頭洗ってあげるよ」
少し恥ずかしい。ちゃんと染めてるけど白髪とか、ないかな。そんなことばかり考える。
「ありがとう」
「俺も洗っちゃお」
しゃばしゃばと、真波も髪を洗う。短い髪が泡立って、もこもこの白いアフロみたいで可愛い。
「真波、座って」
小さい風呂椅子に真波をかけさせ泡を流していく。真波は顔を濡れた手で拭いて、髪をかき揚げた。
「やっぱり美雨さんは、コーギーじゃないな。瞳はコーギーに似てるけど、やっぱり長毛種の猫だ。おはぎとだいふくの親みたいな、可愛いロングコートのタキシード猫だよ。髪、つやつやしていい匂い」
私は親にはなれないから。あの子たちの親と真波に言われて本当に嬉しかった。もう、年だもの。それに、仕事に穴は開けられない。私の生きてきた証のようなものだから。
──────────
フリマアプリの取引は滞りなく終わった。中々すごい額のポイントが貯まった。真波に感謝だ。そして、真波の荷物の仕分け。と言っても、
「俺のものは少ないし、仕分けても面白くないよ」
「そっか。でも、気になるな。真波の私物」
「んじゃ、俺の手伝って。大したものじゃないけど」
無理させて、笑わせている。気を遣わせていると感じた。たこ焼き器は壊れるまで、壊れたら修理しても使いたいと思った。ダウンコートはいる。黒のクラシックなコートも、いる。何かに貰ったけれど誰だかわからない、そう困った顔をされて出されたのは高級ブランドの趣味の良い香水。送り主は多分昔の彼女だと思った。センスの良さに微笑む。いる。
真波のコレクション。クラシックのCD。リパッティとバックハウスが好きみたいだ。いる。他は最低限の区分けした衣服。真波に聞いたら「これで全部だよ」とのことだった。
0
あなたにおすすめの小説
メイウッド家の双子の姉妹
柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…?
※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。
辺境伯と幼妻の秘め事
睡眠不足
恋愛
父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。
途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。
*元の話を読まなくても全く問題ありません。
*15歳で成人となる世界です。
*異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。
*なかなか本番にいきません
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
【完結】雨の日に会えるあなたに恋をした。 第7回ほっこりじんわり大賞奨励賞受賞
衿乃 光希
恋愛
同僚と合わず3年勤めた仕事を退職した彩綺(さいき)。縁があって私設植物園に併設されている喫茶店でアルバイトを始める。そこに雨の日にだけやってくる男性がいた。彼はスタッフの間で『雨の君』と呼ばれているようで、彩綺はミステリアスな彼が気になって・・・。初めての恋に戸惑いながら、本をきっかけに彼との距離を縮めていく。初恋のどきどきをお楽しみください。 第7回ほっこり・じんわり大賞奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる