氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖最終話〗

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 氷雨が降る時は、さよならが多い。今、これ以上ない綺麗な氷った雨を見て、さよならしたのは、脱ぎ捨てたかった私だった。これもここに埋めていく。私は真波を見つめた。こんな高い宝石。自己主張もするけれど洗練されたお洒落なデザインだ。

「綺麗ね。指に、はめてくれる?」

 一気に華やいだ左手が出来あがる。泣いたら涙が凍りそうだ。

「きらきらしてる。二月の誕生石、よく知ってたね」

「お店を紹介してくれたのは恵理子なんだ。『直樹さんと仲直りしたいから、どうしたらいいか教えて』って泣きながら電話がかかってきてさ。着拒にしてあるから、誰の電話だか知らない番号でかけてきたからびっくりしたよ。だから『素直になれば?ちゃんと謝って《直樹さんを前にすると、生意気になる。子供に見られたくなかった》とか、どうせそんなとこだろ?素直に謝れよ。間違ったと思ったらすぐ引き返せ。ところで、指輪作りたいんだけど、良い店知らない?』て言ったら美雨さんの生年月日訊かれて、言ったら会員制の店三件紹介されて、私の名前だせば良いようにしとくからって。そして、『美雨さんに謝っておいて』って。『あのお弁当は私の理想だった』って。それからスターサファイアっていうの教えてもらって、お店の人に紹介してもらった。美雨さんが寝てる間にはかったサイズもピッタリで、他も候補をあげて、迷ったよ。かなり。気に入ってもらえた?」

 私は真波の広い背中に手を回す。同じシャンプーと、ほんのり香る私の香水。私は答える変わりに小さく頷き、真波の背中に回した手にぎゅっと力を込めた。

「カラス避けのハンモックで揺れてた美雨さんは可哀想な捨てられた仔猫みたいだった。丸まって身体も冷えて。でも必要以上触れたら、怒って毛を逆立てて、逃げていってしまいそうで。でも、瞳が哀しそうで、一目惚れだった。これでも、一緒にホットケーキを食べた時、ドキドキしてたんだよ」

 そんな風には見えなかった。余裕がある、今風の男の子みたいな感じに見えた。私は泣くのを我慢する。ダイヤモンドダストを背景に私だけを見つめる真波を見ていたかった。

「あなたに見つけてもらえた。私はあの時、自分で自分を捨てたの。生きることをどうでもよく感じてた。あの天気の中酔って寝たら完全に凍死よ。真波、こんな私を助けてくれて、拾ってくれて……ありがとう」

 陽が上がり、ダイヤモンドダストが消えていく。切ないけれど、あまりの美しさに息を飲んだ。消え行く物の独自の美しさ。そして、私は左手を見る。そして、斜め上には真波が照れ臭そうにしている。

 この風景は、私にとっては永遠だ。






──────────【了】
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