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8話 町の様子
しおりを挟むウルフさんに同行してもらい、城下町にやってきた。
警官は中世ヨーロッパ風で、活気があって賑やかな町だ。これが平和な国でなければ、この世に平和な国なんか存在しないかもしれないほど。
美術館で見る絵画のように綺麗な町の様子になごんでいると、お婆さんが声をかけてきた。
『転生者様、ごきげんいかがかな?』
「今のところ元気に過ごしていますよ」
『王子のおかげで我々は魔王の脅威から守られているんじゃよ』
『おにーさん転生者様なのー?』
『スキル! スキル使って!』
『こらこら転生者様を困らせるんじゃない』
子供に懐かれたらいいところを見せたくなる。それに今の俺ならできると【かき氷】を出してみせた。
目を輝かせた少年たちだったがかき氷というものが何なのかどうにも理解していない様子だった。ウルフさんに聞けば、なんでもこの国には冷蔵庫の技術がなく、保冷用に氷を買うことはあれど食べることがないらしい。
「買えはするの?」
「氷塊は15cm×15cmが一つ2000マルだ」
「値段がピンとこない」
「3時間も働けば買えはするだろうがパン10個買えるぞ」
「まぁまぁ高いってことだけは分かるな」
それより気になることがあった。確かに町は平和そのものなのだが、台詞がおかしいというか……違和感がある。具体的にどうおかしいとは言いづらいのだが。
『カミノのために今日も働かなくちゃ』
『なんて幸福なのかしら』
『転生者様が来てくださるのは幸福じゃなぁ』
町の人々がゲームでいうNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)の台詞じみていて気味が悪い。
しかし国民全員が善人などという国があるはずもない。市井のトラブルはカミノ王国にだってあるはずだ。兵士であるウルフさんに聞いてみることにした。
もしも泥棒とかに遭ったらどこにいけばいいのか? という素朴な疑問。
「窃盗が起きたら大事件なので王子の耳に入れて欲しい」
「でも大きな国だし、泥棒ぐらいひとりぐらいは」
「いないだろうな」
「何で?」
「国民全員が〈カミノ十か条〉を守るからだ」
「泥棒しないことと関係ある?」
「そんなことしたら国に不利益を産む。嫌悪しかない」
『泥棒なんてする人いるわけないのにね?』
『不思議よねぇ』
『人のもの盗るぐらいなら魔物と戦ったほうがよっぽどマシ』
この世界にはこの世界の価値観があるにはあるとしみじみと感じた。
でも異世界に転生したのだし、これぐらいの違いは俺に迷惑がかかるわけでもないし放置。
ポジティブに考えることにして、出店でジュースを買って飲むとフルーツの味わいがなんとも美味しくさわやかだった。
「ウルフさんも飲めばいいのに」
「俺は甘い物が苦手でな」
「お勧めの店とか連れていってくんない?」
ウルフさんの案内でやってきたのは魔物肉を扱う店―――焼肉屋だ。二人で肉を頬張りながら話と聞かせてもらうことにした。
今のレイニーは魔王討伐隊には加わるつもりがないのだという。魔王を倒すのは世界中に散らばるスキル持ちに任せることした。できれば俺にも、魔王と戦う討伐隊のメンバーになって欲しいと思っていると。
「レイニーも俺も魔王には仲間を何人も殺されている。無理にとは言わん」
「炎のスキルでも使えたら、俺が勇者だー! って喜び勇んで参加していたけれど」
「お前のスキルブックとやらの厚みからして、戦闘のスキルもいずれ見つかると俺は思う」
「【スキル:泡だて器 電動泡だて器が召喚可能】みたいなスキルばかり並んでいるのに?」
「スキルよりも勇気だ。お前に勇気さえあるなら参加してほしい」
「俺に!?」
「〈スキルカード〉を使えばいい。後方でサポートに回ってくれるメンバーがほしくてな」
俺の心は踊っていた。
これぞ異世界転生の醍醐味である。活躍をとてもしたい。
辛い旅とかそういうのもあるかもしれないが魔王を倒すパーティーの補助。
レッドではないにせよ戦隊もののレギュラーメンバーになれた時ぐらいの嬉しさ。
「俺で良ければ魔王討伐に力を貸します!」
「そして一番はレイニーの傍にいてやってほしい」
「ん?」
「引きこもってしまって、他の転生者たちが心配しているのだ」
薄々思っていたことだけど、レイニーってやっぱり引きこもりなんだな。
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