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幼少期
04 レナへの告白
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「マックス、事の顛末を聞いておきたい」
馬車に俺とレナが乗ると、父親がそう話しかけてきた。
まあ、当主としては婚約での醜聞は把握しておかないと、他貴族との交流の際に命取りになるからな。
「ほぼほぼ、応接室でお話しした通りです。お父様と別れた後、客間へと案内され、カタリナ嬢を待っていると、執事の格好をした男と腕を組んだ女性がやってきて、婚約するわけがないと言い放たれました」
「ふむ、その後は?」
「一言断りを入れて部屋を出、侍従にカタリナ嬢であると確認をしてから応接室まで行きました」
「マックス、お前はどう見る?」
言葉を端折っているが、おそらくはミネッティ伯爵家全体での暴挙か、カタリナ嬢の独断かということだろうな。
「おそらくはカタリナ嬢の独断でしょう。ミネッティ伯爵のうろたえようは演技をしていたとは到底思えませんでしたし、侍従も顔を青くしていました」
「ふむ」
「ですが、お父様の娘との意思疎通すらできない貴族家と誼を結ぶつもりがないというのも、もっともです。あのような暴挙に及ぶ人間を家に入れれば何をされるかわかりません」
「しかしなぁ、陛下からの依頼をどうすれば……」
俺としてもシナリオ通りに進まないのは困るのだが、ヒロインがあの状態というか、あんな性格になっている以上、シナリオ通りというのは無理だしな。
「お父様、陛下からの依頼は国王派の団結。でしたら、王家派や貴族派の付け入る隙のない婚約をするのでも良いのでは?」
「ふむ、派閥の強化か」
「王家派や貴族派へのけん制や監視は必要ですが、そのあたりは我々がしなければならないわけでもないでしょう。国王派の派閥を強化するだけでも他の派閥は動きづらくなるかと」
「すると、候補は辺境伯家か」
「いえ、自派閥を強化するのなら身内から婚約者を用意するのが良いかと。辺境伯家は外敵と接している家、こちらに嫁いでもらっても連携は難しいでしょう」
この国の辺境伯家は辺境にある伯爵家が、外敵を退けた際に与えらえる。
北東、北西、西、南西の4辺境伯家があるが、交流のある北東は今のところ男児のみ、南西はゲルハルディ伯爵家と縁があったが、現在はほぼ没交渉、西と北西は王都を経由しなければならないから、連絡も容易ではない。
「……つまり」
「はい、よろしいですか?」
「はぁ、こうなってしまっては仕方ないだろうな」
「では……レナ……いや、レナ・フォン・バルディ嬢、私、マックス・フォン・ゲルハルディとどうか婚約していただけないでしょうか?」
「は、はい!? 若!?」
「若ではなく、マックスと呼んでほしいものだが。いろいろと言い訳も重ねたが、俺はお互いを尊重できない人間と婚約を結ぶつもりはない。レナは俺がバカをやった時も、勉学や武術に励んでいるときも支えてくれた。だから、レナとならお互いを尊重しながら過ごしていけると思っているんだ」
「もったいないお言葉です。ですが、バルディ家はゲルハルディ伯爵家の影で」
「影だというなら、婚約者などまさにうってつけではないか」
父親が援護射撃のつもりなのか、茶々を入れてくる。
「ですが、爵位も釣り合いませんし」
「貴族家の婚姻については同格か、1つ上下する程度。伯爵家に対して男爵家は釣り合っていないわけではあるまい」
ここで、この国の爵位についての解説だが、この国では領地持ちの爵位と、実務だけの爵位に分けられていて、領地持ちは公爵→辺境伯→伯爵→男爵となっている。
実務だけは王家→侯爵→子爵→士爵・騎士爵の順番だが、要するに伯爵家なら同格の伯爵、あるいは子爵、1つ上下の辺境伯、男爵、侯爵、士爵、騎士爵のどれかなら問題ない。
まあ、なるべく同格というのが暗黙の了解だし、上に嫁げば大変、下を迎えれば侮られるということはあるが、同派閥、同地域ならそこまで問題にはならない。
「ですが、若にはわたしよりももっと相応しい方が!」
「いやいや、その本人である俺がレナに婚約してほしいとお願いしてるんだが」
「ダメです! ゲルハルディ家が男爵家の娘を娶るなど侮られます!」
「たかが地方領主だぞ、うちは! そんなことで侮られてもどうでもいいだろ!」
「まあまあ2人とも落ち着け。少し急だったからな、領地に戻るまでゆっくり考えればいい。結局レナの父親でもあるテオとも話し合わなければ決められんしな」
「……ああ、そうですね。国王派の監視がなくなれば貴族学園に初等部から通う必要もないし、あと10年は領地にいられますしね」
「ああ、確かにそうですね。若はわざわざ増量しましたのに……」
「マックス、領地に戻ったら減量だな」
「はぁ、王都の貴族に合わせて増量したのが無駄になりましたね」
この国では武官は引き締まった肉体を誇示するが、文官、特に王都にいる貴族は太っていれば太っているほど良いとされている。
簡単に言うとふくよかなのは富の象徴で男性は太っていろと言う価値観で、女性は装飾品を飾り立てて豊かなことを表すんだよな。
で、今回の婚約が成立すれば貴族学園に初等部から通うことになっていたから、侮られない程度には増量したわけだが、完全にそれが無駄になった。
ちなみにマックスはゲーム内では色白で太っている、それを揶揄して雑誌やネットでは白豚悪役令息と呼ばれていたな。
馬車に俺とレナが乗ると、父親がそう話しかけてきた。
まあ、当主としては婚約での醜聞は把握しておかないと、他貴族との交流の際に命取りになるからな。
「ほぼほぼ、応接室でお話しした通りです。お父様と別れた後、客間へと案内され、カタリナ嬢を待っていると、執事の格好をした男と腕を組んだ女性がやってきて、婚約するわけがないと言い放たれました」
「ふむ、その後は?」
「一言断りを入れて部屋を出、侍従にカタリナ嬢であると確認をしてから応接室まで行きました」
「マックス、お前はどう見る?」
言葉を端折っているが、おそらくはミネッティ伯爵家全体での暴挙か、カタリナ嬢の独断かということだろうな。
「おそらくはカタリナ嬢の独断でしょう。ミネッティ伯爵のうろたえようは演技をしていたとは到底思えませんでしたし、侍従も顔を青くしていました」
「ふむ」
「ですが、お父様の娘との意思疎通すらできない貴族家と誼を結ぶつもりがないというのも、もっともです。あのような暴挙に及ぶ人間を家に入れれば何をされるかわかりません」
「しかしなぁ、陛下からの依頼をどうすれば……」
俺としてもシナリオ通りに進まないのは困るのだが、ヒロインがあの状態というか、あんな性格になっている以上、シナリオ通りというのは無理だしな。
「お父様、陛下からの依頼は国王派の団結。でしたら、王家派や貴族派の付け入る隙のない婚約をするのでも良いのでは?」
「ふむ、派閥の強化か」
「王家派や貴族派へのけん制や監視は必要ですが、そのあたりは我々がしなければならないわけでもないでしょう。国王派の派閥を強化するだけでも他の派閥は動きづらくなるかと」
「すると、候補は辺境伯家か」
「いえ、自派閥を強化するのなら身内から婚約者を用意するのが良いかと。辺境伯家は外敵と接している家、こちらに嫁いでもらっても連携は難しいでしょう」
この国の辺境伯家は辺境にある伯爵家が、外敵を退けた際に与えらえる。
北東、北西、西、南西の4辺境伯家があるが、交流のある北東は今のところ男児のみ、南西はゲルハルディ伯爵家と縁があったが、現在はほぼ没交渉、西と北西は王都を経由しなければならないから、連絡も容易ではない。
「……つまり」
「はい、よろしいですか?」
「はぁ、こうなってしまっては仕方ないだろうな」
「では……レナ……いや、レナ・フォン・バルディ嬢、私、マックス・フォン・ゲルハルディとどうか婚約していただけないでしょうか?」
「は、はい!? 若!?」
「若ではなく、マックスと呼んでほしいものだが。いろいろと言い訳も重ねたが、俺はお互いを尊重できない人間と婚約を結ぶつもりはない。レナは俺がバカをやった時も、勉学や武術に励んでいるときも支えてくれた。だから、レナとならお互いを尊重しながら過ごしていけると思っているんだ」
「もったいないお言葉です。ですが、バルディ家はゲルハルディ伯爵家の影で」
「影だというなら、婚約者などまさにうってつけではないか」
父親が援護射撃のつもりなのか、茶々を入れてくる。
「ですが、爵位も釣り合いませんし」
「貴族家の婚姻については同格か、1つ上下する程度。伯爵家に対して男爵家は釣り合っていないわけではあるまい」
ここで、この国の爵位についての解説だが、この国では領地持ちの爵位と、実務だけの爵位に分けられていて、領地持ちは公爵→辺境伯→伯爵→男爵となっている。
実務だけは王家→侯爵→子爵→士爵・騎士爵の順番だが、要するに伯爵家なら同格の伯爵、あるいは子爵、1つ上下の辺境伯、男爵、侯爵、士爵、騎士爵のどれかなら問題ない。
まあ、なるべく同格というのが暗黙の了解だし、上に嫁げば大変、下を迎えれば侮られるということはあるが、同派閥、同地域ならそこまで問題にはならない。
「ですが、若にはわたしよりももっと相応しい方が!」
「いやいや、その本人である俺がレナに婚約してほしいとお願いしてるんだが」
「ダメです! ゲルハルディ家が男爵家の娘を娶るなど侮られます!」
「たかが地方領主だぞ、うちは! そんなことで侮られてもどうでもいいだろ!」
「まあまあ2人とも落ち着け。少し急だったからな、領地に戻るまでゆっくり考えればいい。結局レナの父親でもあるテオとも話し合わなければ決められんしな」
「……ああ、そうですね。国王派の監視がなくなれば貴族学園に初等部から通う必要もないし、あと10年は領地にいられますしね」
「ああ、確かにそうですね。若はわざわざ増量しましたのに……」
「マックス、領地に戻ったら減量だな」
「はぁ、王都の貴族に合わせて増量したのが無駄になりましたね」
この国では武官は引き締まった肉体を誇示するが、文官、特に王都にいる貴族は太っていれば太っているほど良いとされている。
簡単に言うとふくよかなのは富の象徴で男性は太っていろと言う価値観で、女性は装飾品を飾り立てて豊かなことを表すんだよな。
で、今回の婚約が成立すれば貴族学園に初等部から通うことになっていたから、侮られない程度には増量したわけだが、完全にそれが無駄になった。
ちなみにマックスはゲーム内では色白で太っている、それを揶揄して雑誌やネットでは白豚悪役令息と呼ばれていたな。
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