29 / 140
幼少期
29 主との出会い(クルト視点)
しおりを挟む
私が住むゲルハルディ領には2人の英雄が存在する。
前伯爵で海戦で並みいる賊を討ち取ったヨアヒム・フォン・ゲルハルディ様と、陸戦で敵なしと称される現伯爵クラウス・フォン・ゲルハルディ様だ。
ゲルハルディ領で育つ子供たちは2人の英雄譚を聞かされて育ったからか、騎士団に憧れる子供が多く、斯くいう私もそのうちの1人だ。
騎士団に入ったはいいものの、2人のようにというより、先輩騎士たちにすら敵わず、同期達には花がないとバカにされていた。
それでも努力するしかないと、いろいろな人に剣術を教えてもらう毎日だったが、そんな私の前に次期領主マックス・フォン・ゲルハルディ様がやってきた。
次期領主として剣術を学ぶために騎士団を訪れたマックス様は、私なんかに剣術を教えてほしいと言い出した。
正直、私は騎士団の中でも下から数えたほうがいいほどの腕前で、他のベテラン団員から教わった方が良いと思ったのだがマックス様は私が良いと。
曰く、ベテランたちは癖がありすぎる、あんな化け物にはなれない、などと散々な評価だったが、花がないという私の剣術を褒めてくれたのは嬉しかった。
マックス様は初めて剣術に触れたとは思えないほどの吸収速度で、様々なこと学んでいくが、それを鼻にかけることもなく、私の教え方が良いと。
それを証明するように、マックス様に教える毎日を過ごすうちに私の実力もメキメキと伸びていき、マックス様が7歳になるころにはベテラン団員とも引き分けられるようになった。
「クルト、実は領内をまわることになってな。そのたびに同行してほしいんだ」
「旅……ですか?」
「ああ、と言っても領内の地理と領民の生活の把握が目的だからな、1年も2年もかかる旅じゃなくて……そうだなぁ、1ヶ月くらいかな?」
「ふむ、2人旅ですか?」
「流石に父上に止められたよ、小隊くらいの人数は連れて行けって……本当は1人で行くつもりだったのに」
本当にマックス様は常識があるのに突飛なところがあって目が離せない。
次期領主が1人旅なんて認められるわけがない……あの英傑、ヨアヒム様でさえ中隊を連れての周辺領巡りだというのに。
「小隊ですか……小隊長は誰に?」
「だから、クルトに」
「?」
「だから、クルトを小隊長にするよ」
「……私を!? すでにいる小隊長にお願いするのではないのですか!?」
「父上が育てた小隊長を勝手に連れてはいけないでしょ……それにベテランだと俺が自由に動けん」
「私が小隊長になってもマックス様から目は離しませんよ」
「わかってるわかってる。……ただ、ベテランにとっては俺は領主の息子でちびっ子だからさ。ちょっとした危険……俺が乗り越えられるもので過保護に反応しそうなんだよ」
「……確かに」
ベテラン団員と話していると可愛らしい子供という印象を受けるが、実際にはマックス様は騎士団の中でも半分より上の実力を持ち、同年代では負けなしだろう。
7歳の子供がショートソードとはいえ、疲れも見せずに振り回し、大人の振るったロングソードをラウンドシールドではじくんだからな。
「ってわけで、クルトに同行を頼みたいんだけど、流石に意思を無視して連れていくのはないから、聞きに来た。一緒に旅をしてくれるか?」
「わかりました。……ただし! 小隊から離れない! 気になることがあっても小隊を撒かない! これが絶対条件です!」
「はいはい、わかってるよ。あ、小隊のメンバーはクルトが適当に選んで。馬に乗れれば新人で良いって話だし」
「それは助かります。領都しか知らない同期や後輩もいますので、そちらから選抜しましょう。もちろん、最低限の腕前は求めますが」
「うんうん、出発は1週間後だから荷物とかもろもろ準備しといてね」
まったく、本当にマックス様は行動が読めないのに周囲への気配りも忘れない。
これでメンバーがベテランだったりしたら、私が小隊長になっても言うことを聞いてもらえないだろうが、メンバーが自由ならば気の合う人と組める。
ま、マックス様を止めるのは私の役目になりそうなのが心配だが、マックス様は不用意に危険は犯さない方だから大丈夫か。
なんて、思っていたら旅も半分を過ぎたあたりでマックス様がやらかしてくれた。
数日前に泊まった町で何やらポーションやアイテムを買い込んでいるなぁ、とは思っていたのだが野宿の準備中に周囲を探索してくると言ってダンジョンを発見してしまうとは。
しかも、自分1人で攻略する!? 確かに発見者が攻略するのは権利だが、マックス様は自分が次期領主だとわかっているのか!?
いや、わかっている。これはきっとマックス様にとっては必要なことなのだ。
だから、私は心配しながらもマックス様についていくのだ。
ま、それはそれとして、このことはクラウス様やペトラ様に報告して叱っていただかないとな。
マックス様もご両親に叱られれば、少しは堪えるだろう。
前伯爵で海戦で並みいる賊を討ち取ったヨアヒム・フォン・ゲルハルディ様と、陸戦で敵なしと称される現伯爵クラウス・フォン・ゲルハルディ様だ。
ゲルハルディ領で育つ子供たちは2人の英雄譚を聞かされて育ったからか、騎士団に憧れる子供が多く、斯くいう私もそのうちの1人だ。
騎士団に入ったはいいものの、2人のようにというより、先輩騎士たちにすら敵わず、同期達には花がないとバカにされていた。
それでも努力するしかないと、いろいろな人に剣術を教えてもらう毎日だったが、そんな私の前に次期領主マックス・フォン・ゲルハルディ様がやってきた。
次期領主として剣術を学ぶために騎士団を訪れたマックス様は、私なんかに剣術を教えてほしいと言い出した。
正直、私は騎士団の中でも下から数えたほうがいいほどの腕前で、他のベテラン団員から教わった方が良いと思ったのだがマックス様は私が良いと。
曰く、ベテランたちは癖がありすぎる、あんな化け物にはなれない、などと散々な評価だったが、花がないという私の剣術を褒めてくれたのは嬉しかった。
マックス様は初めて剣術に触れたとは思えないほどの吸収速度で、様々なこと学んでいくが、それを鼻にかけることもなく、私の教え方が良いと。
それを証明するように、マックス様に教える毎日を過ごすうちに私の実力もメキメキと伸びていき、マックス様が7歳になるころにはベテラン団員とも引き分けられるようになった。
「クルト、実は領内をまわることになってな。そのたびに同行してほしいんだ」
「旅……ですか?」
「ああ、と言っても領内の地理と領民の生活の把握が目的だからな、1年も2年もかかる旅じゃなくて……そうだなぁ、1ヶ月くらいかな?」
「ふむ、2人旅ですか?」
「流石に父上に止められたよ、小隊くらいの人数は連れて行けって……本当は1人で行くつもりだったのに」
本当にマックス様は常識があるのに突飛なところがあって目が離せない。
次期領主が1人旅なんて認められるわけがない……あの英傑、ヨアヒム様でさえ中隊を連れての周辺領巡りだというのに。
「小隊ですか……小隊長は誰に?」
「だから、クルトに」
「?」
「だから、クルトを小隊長にするよ」
「……私を!? すでにいる小隊長にお願いするのではないのですか!?」
「父上が育てた小隊長を勝手に連れてはいけないでしょ……それにベテランだと俺が自由に動けん」
「私が小隊長になってもマックス様から目は離しませんよ」
「わかってるわかってる。……ただ、ベテランにとっては俺は領主の息子でちびっ子だからさ。ちょっとした危険……俺が乗り越えられるもので過保護に反応しそうなんだよ」
「……確かに」
ベテラン団員と話していると可愛らしい子供という印象を受けるが、実際にはマックス様は騎士団の中でも半分より上の実力を持ち、同年代では負けなしだろう。
7歳の子供がショートソードとはいえ、疲れも見せずに振り回し、大人の振るったロングソードをラウンドシールドではじくんだからな。
「ってわけで、クルトに同行を頼みたいんだけど、流石に意思を無視して連れていくのはないから、聞きに来た。一緒に旅をしてくれるか?」
「わかりました。……ただし! 小隊から離れない! 気になることがあっても小隊を撒かない! これが絶対条件です!」
「はいはい、わかってるよ。あ、小隊のメンバーはクルトが適当に選んで。馬に乗れれば新人で良いって話だし」
「それは助かります。領都しか知らない同期や後輩もいますので、そちらから選抜しましょう。もちろん、最低限の腕前は求めますが」
「うんうん、出発は1週間後だから荷物とかもろもろ準備しといてね」
まったく、本当にマックス様は行動が読めないのに周囲への気配りも忘れない。
これでメンバーがベテランだったりしたら、私が小隊長になっても言うことを聞いてもらえないだろうが、メンバーが自由ならば気の合う人と組める。
ま、マックス様を止めるのは私の役目になりそうなのが心配だが、マックス様は不用意に危険は犯さない方だから大丈夫か。
なんて、思っていたら旅も半分を過ぎたあたりでマックス様がやらかしてくれた。
数日前に泊まった町で何やらポーションやアイテムを買い込んでいるなぁ、とは思っていたのだが野宿の準備中に周囲を探索してくると言ってダンジョンを発見してしまうとは。
しかも、自分1人で攻略する!? 確かに発見者が攻略するのは権利だが、マックス様は自分が次期領主だとわかっているのか!?
いや、わかっている。これはきっとマックス様にとっては必要なことなのだ。
だから、私は心配しながらもマックス様についていくのだ。
ま、それはそれとして、このことはクラウス様やペトラ様に報告して叱っていただかないとな。
マックス様もご両親に叱られれば、少しは堪えるだろう。
188
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す
金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。
「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」
魅了魔法? なんだそれは?
その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。
R15は死のシーンがあるための保険です。
独自の異世界の物語です。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる