気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
31 / 140
幼少期

31 疾風の指輪の検証

しおりを挟む
 この旅の目的自体は達成したから伯爵邸に帰ってもいいんだけど、まだやるべきことがあるんだよな。
 それは、疾風の指輪の能力の確認。
 ゲームでは1ターンに2回行動できるという能力のアクセサリーだったんだけど、現実世界には1ターンなんて存在しない。
 だから、どうなっているのか確認しなきゃいけないんだけど……うーん、クルトたちの前で試していいものだろうか?

「マックス様、何かお悩みですか?」

「ああ、クルト。……お前たちは俺が不思議なことをしても驚かないか?」

「マックス様が不思議なことをするのは日常ですが?」

「……日常って」

 いやいや、そこまでじゃないだろ……ないよな?
 確かに貴族の嫡男が調理室に入っていって料理をしたり、騎士団長や父親じゃなくてただの団員に剣を習っていたり、普通とは違う自覚はある。
 でも、どれも必要なことだったし、やるべきことだった。

「で、マックス様は何をなさるのですか?」

「ああ、攻略報酬の確認だな」

「攻略報酬……アーティファクトですか?」

「アクセサリー型のものだった。この手のものは誰でも装備可能なはずだから能力の確認をな」

 攻略報酬は回復アイテムだったり、装備品だったりといろいろな種類があるが、いくつかの装備品には制限がかかっている。
 この辺はゲーム的なシステムの話になるが、昔の手記などから確認した限りでは過去にも女性にしか着られないドレス、男性の中でも一部にしか持てない剣などがあったらしい。
 今回ゲットした疾風の指輪はゲーム内でも装備制限なし、主人公パーティーの誰でも装備可能で、DLCで一部の敵をプレイアブル化する準備のために敵でも装備可能になっている。
 この装備制限が俺が疾風の指輪とマナの指輪以外の攻略報酬に興味がない理由で、ゲルハルディ領内のダンジョンの攻略報酬は勇者の剣だの、紺碧のドレスだの主人公パーティーの誰かにしか装備できないものばかりだからだ。

「危険なのですか?」

「使ってないからな。危険かもしれないし、危険じゃないかもしれない。どんなことが起こるかわからないからな」

「……伯爵邸に戻ってからの方が良いのでは? クラウス様とヨアヒム様がいらっしゃるときに試した方が」

「ああ、それは俺も考えたんだ。父上や爺様がいたほうが何かあった時の対処は楽だろうなって。……ただ、そうすると母上とレナも傍にいるわけだろ?」

「……騎士団の訓練場を使うにしても伯爵邸は目と鼻の先ですからね」

「そうなんだよなぁ。父上や爺様は当然として、騎士団の連中も何が起こっても自衛はできるだろうけど、伯爵邸にいる母上やレナ、使用人たちは違うだろ?」

「……そう、ですね。確かにこちらで試した方が良いかもしれません」

「ま、あとはここなら近隣の町や村からも遠いから何か起きても誰にもバレんが、伯爵邸でやったら街の住人にバレそうだしな」

「確かに、アーティファクトの情報は無暗に公開するものではありませんね。冒険者組合にも秘匿すると言ってしまっていますし」

「ってわけで、ここで試そうと思ったんだが、何も相談せずにやって問題が起きたら怒られそうだし、事前に聞いたってわけだ」

「はい、わかりました。……では、小隊の者にも伝えてきますので、しばしお待ちを」

 言うなり、クルトは冒険者組合の人を見送っていた小隊のところまで走っていった。
 小隊のメンバーに疾風の指輪の効果を見せるのは賭けだが、ゲームとは全く違う効果が出て暴走したら危ないからな。
 伯爵邸に戻る前に確認は必須だろう。

「若様~、何かやるんですか~?」

「マックス様に対してぞんざいすぎるぞ。……マックス様、こちらの準備は出来ております」

「オッケー、じゃちゃちゃっと試すかね。あと、クルト、伯爵邸ならいざ知らず旅の間はもっと軽くていいんだって」

「そういうわけにはまいりませんので」

「ま、それもクルトの味かな」

 過去の手記によるとアーティファクトの特殊能力の使用条件は大体が装備し、念じること。
 中には装備した瞬間から発動し続けるものもあるが、疾風の指輪は前者だろう。
 1ターン2回行動……普通に考えたら装備者の素早さを上げるもので、常時素早さが上がり続けていたら危険すぎるからな。

「……うーん、何か変わったか?」

「……発動……したのですか?」

 装備して、発動したはずなのだが、特に変わりがない。
 うーん、1ターン2回行動っていうのは当然だけど、戦闘中だけのことだし、戦闘中以外には効果がない……とか?

「クルト、構えてくれ」

「……はっ!?」

「アーティファクトの中には装備者が危機的状況にならないと効果が発動しないものもあると聞く。これがそうかもしれないからな。切りかかってくる必要はない、構えてくれ」

「…………わかりました」

 流石に自分の主人の息子相手に訓練でもないのに剣を向けるのは嫌なのか、しぶしぶと言った感じでクルトが俺と相対する。
 ……ん? なんか、構えた瞬間からクルトの動きが鈍くなったような……なんだ? いやいやだからか?

「……えっ!?」

 試しに構えているクルトの背後を取るように動いてみれば、クルトも他の小隊員も俺の動きを目で追うことができていない。
 いきなり眼前から消え、背後に現れた俺に驚いているようだ。

「ああ、なんとなくわかった」

「マックス様?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...