気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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幼少期

85 海戦

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 バルディ領の港から続々と兵士や騎士、領民で編制された船が出港していく。
 操船するのは熟練の漁師で、いざという時には戦力として数えるが、基本的には騎士と兵士で制圧する算段だ。

「おーおー、あれが大型船か。……距離があるとはいえ、周りの船が嫌に小さく見えるな」

「バルディ男爵が言うには、周りにいるのはこちらと同程度の船だそうですよ」

「マジかよ? 軽く見積もって周りの船の三倍以上の大きさがあるぞ、あの大型船」

「それくらいなければ、体当たりでこちらの漁船を航行不能にするのは不可能でしょう」

 ま、クルトの言い分も確かだな。
 簡単に言えば、こちらの船や大型船の周囲の船は数十人が乗れる規模、大型船は軽く見積もっても数百人は乗れる大きさだ。
 この世界では火薬も石油も石炭もないことから、移動は人力か風力に頼ることになる。
 海上戦闘も大砲や鉄砲ではなく、弓矢や魔法の打ち合い、取りついての近接戦が主流となる。

「さーてっと、どうするかな」

「マックス様の秘策がどういうものかはわかりませんが、現実は見えましたか?」

「いや、このまま事前の指示通りに行くぞ」

「マックス様!?」

「あの大きさじゃ取りつくだけでも相当の被害が出る。戦力的にはこちらの方が上だが、普通に戦えばこちらも壊滅に近い結果になるだろう」

「……」

「俺たちはバルディ領の被害を減らすために打って出ている。ここで被害を出すのなら、大人しく港にこもって陸戦を行った方がマシだろ?」

「そう……ですね」

 敵が海上からやってくる以上、増援には時間がかかる。
 バルディ領の交易港を中心に兵士や騎士を展開し、陸に攻め入ってきた相手と対峙する方が簡単だ。
 だが、それをすれば街に抜けた敵兵士は街を攻撃するだろうし、港はボロボロになり使用は難しくなる。
 そんな事態を避けるために海戦なのに、兵士や騎士に多大な損害が出るなら意味がない。

「さあ、作戦海域に近づいてきたぞ。俺たち以外の船は停船しているか?」

「はっ!」

 さて、ここからが腕の見せ所だ。
 俺たちの乗る船が大型船の100m手前くらいで停船した瞬間に、詠唱を始める。
 まずは風に水を加える合成魔法から。
 これは泥濘魔法とは違い100m先に始点を決め、始点を中心に50m四方が魔法の射程となる。

「合成魔法:暴風」

 泥濘魔法と同じく、この魔法も詠唱には1分間かかるのだが、その間、敵大型船の甲板には責任者らしき人物が現れこちらに対して降伏勧告をしてきた。
 戦力差や技術差などについて、べらべらと喋っていたが、こちらとしても詠唱中は動くことができないから聞いているしかない。
 傍で聞いているレナは貴族らしくまるで反応もしなかったが、クルトは耐え難いのか怒りの表情を向けている。

「ハリケーン!」

 クルトの血管が切れるんじゃないかと思った瞬間、俺の詠唱が完成する。
 敵大型船を中心に巨大なハリケーンが出没し、巻き上げられた海水によって船は水浸し、マストも何本も折れている。
 だが、これで終わりではない。

「合成魔法:氷雪」

「マックス様?」

「しっ! クルト……マックス様の攻撃はまだ終わっていません」

 敵船には多大な被害を与えたが、まだまだ航行不能にはほど遠い。
 俺は暴風魔法に続いて、水に風を加える合成魔法を続いて唱える。
 合成魔法はごっそりと魔力を消費するが、マックスのMPは悪ノリした俺の友人たちがレベル30時点でカンストに設定していたために全く負担にならない。

「アイスストーム!」

 暴風魔法のハリケーンが消滅してから、詠唱を始めたのでたっぷり1分は経っているのだが、敵船は未だに混乱の渦中だ。
 そこに今度は敵大型船を中心に半径50mの円状に、暴風雪が巻き起こる。
 ハリケーンによって水浸しとなった船は見る見るうちに凍り付き、乗船している船員たちも服や髪を中心に凍り付いていく。

「今だ!」

「総員、突撃!」

 拡声器を用いたクルトの怒声が海上に響いた瞬間、こちらの船団が次々に敵船へと取りついていく。
 あらかじめ敵の首魁は生きたまま捕らえるように指示してあるが、大丈夫だろうか。

「マックス様、この船は指揮船としてここに待機です」

「ああ、流石に近接戦にまで参加させろとは言わんよ」

「で、先ほどのは?」

「あー、俺の秘密兵器だ。周囲に勘繰られたときにはダンジョン産のアーティファクトってことにするから、口裏合わせ、よろしく」

「……はあ。マックス様が自信満々な理由がわかりました。あのような魔法が使えれば、それは自信にもなりますよね」

「は? 俺の自信の根源はゲルハルディ領だけど? 陸戦最強の父上が居て、海戦最強の爺様がいる。さらにはその2人に鍛えられた精兵ばかりがそろってるんだぞ?」

 俺の言い分にクルトは一瞬ポカンとしていたが、ゲルハルディの騎士たちに比べれば俺の合成魔法など木っ端もいいとこだ。
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