気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
116 / 140
閑話

116 滞在中のマティアス殿下

しおりを挟む
「あ~、やっぱり辺境は王都と違って自由で良いな~」

「マティアス殿下……王都の貴族が聞いたら怒り出しますよ」

「怒る奴は何言っても怒るって。それに知ってるか? 王都にある商品の半分以上は辺境由来の物なんだぞ? 辺境からそっぽを向かれたら困るのは王都だってのに、あいつらなんであんな偉そうなんだ?」

「気持ちはわかりますが、王都はヴァイセンベルク王国の中心地ですからね。王宮の仕事をやってくれている貴族にはある程度の敬意は感じていますよ」

 王都から出たことがないマティアス殿下は初めて見る辺境に感動しているようだが、辺境にだっていやなところやダメなところはたくさんある。
 そもそも辺境伯を含め、辺境の人間はヴァイセンベルク王国全体ではなく自領の利益を優先している。
 もちろん税などで王国全体に還元もされるが、自領の利益にならないのに王国全体のことを考えて動く貴族は皆無だ。

 そういう意味では王都の貴族が辺境の人間を蔑むのもわかる……要するに自分たちのことばかり考えて、王国全体のことは考えていないように見えるわけだからな。
 ま、王都の貴族の中にも私腹を肥やすことしか考えていないような奴もいれば、職務に忠実でまじめな奴もいるし、ひとくくりに王都貴族っていうのもどうかと思うがな。

「ところで、マックスは夫人以外にもいい人がいると聞いたが……」

「誰が話したんですか……。まあ、いますよ」

 本当に誰が話したんだ。……まあ十中八九、母上だろうが、多分アイリーンがマティアス殿下にちょっかいかけられないようにけん制したんだろうな。

「ん? 私は夫人から聞いたよ」

「母上のことですよね?」

「いや、君の夫人だよ。レナ嬢……だっけ?」

「ん!?」

「それも、2人もいるそうじゃないか。お爺様の時代には珍しくなかったらしいけど、父上が母上一筋だから今じゃ珍しいんだよね」

「ちょ、ちょっと待ってください。レナから聞いたのですか?」

「そうだよ。フィッシャー商会の令嬢とメーリング領の嫡子を紹介されたよ。マックスの第二、第三夫人だから気を付けてください、とね」

「はぁっ~~~!?」

 ちょっと待て……いや、レナの懸念点は分かるよ。万が一にもアイリーン嬢に手を出されないように立ち回ったんだろうけど……メーリング領の嫡子??
 バル嬢のことだよな? 確かにメーリング領の将来のことを考えれば領主一族をゲルハルディ家が庇護していると対外的に示すのは有効だ。
 だが、そもそも俺とバル嬢の間にそういう感情はないし……少なくとも俺はない……本人からも周りからもそういった相談はされてない。

「いや~、私も早くいい人を見つけないといけないんだけどな~。……そういえば、マックスには妹が2人いるんだよね?」

「妹は王家に嫁には出しませんよ」

「いやいや、そこをなんとか。辺境との繋がりも大事だろう?」

「辺境伯は国王派筆頭で、これ以上の繋がりは必要ないでしょう。繋がりを作るのなら、王家派に引き込まれそうな王都貴族の侯爵家にしてください」

「王都貴族はギラギラしてて苦手なんだよぉ。上昇志向が強いっていうかさ、こっちを虎視眈々と狙ってきてるわけよ」

「そのくらいの方が王家には似合っていますよ。下手にのほほんとしている人間が王妃になったら、国が立ちゆきませんよ」

 国内のことだけを考えるのなら、のほほんとしていても良いんだが、王妃ともなれば友好国へ外交に赴くこともあるからな。
 そういう場では国内の利益を真っ先に考えて、強気に交渉できないとヴァイセンベルク王国全体が困ってしまうからな。
 まあ一番は可愛い妹を魑魅魍魎の住まう王宮にやらせたくないという、兄心であることも否定はしないが。

「本人が望んでもダメかい?」

「望むことはないでしょうが、ダメです。……ま、辺境伯全員が許可を出したなら考えますよ」

「不可能じゃないか~」

 俺の考えは国王派としてはまっとうなものなので、他の辺境伯が賛成することはない。
 辺境伯会議でも次期国王筆頭のマティアス殿下には、国王派、あるいは王家派の侯爵家から王妃を迎えてもらって、派閥を安定させるか拡大してもらうと結論付けてある。
 そもそも、他の辺境伯にとってもウチの妹たちは王家にとられるくらいなら、自分たちの陣営に欲しい人材だしな。
 とにもかくにも、辺境伯家は婚姻できる家が少なすぎる……上は王家と王家派の侯爵家だから、同格の侯爵家か、傘下の伯爵家・子爵家くらいしか選択肢がないんだ。

「ではマティアス殿下、くれぐれもウチの妹たちにちょっかいは出さないように」

「りょうか~い。マックスは今日はどうするんだい?」

「私はレナと話し合うことができたので、今日は夫婦でお話し合いです」

「う、うん。まあ、あまり責めないようにな」

 マティアス殿下には釘を刺しておいたし、レナと話し合わないとな。
 アイリーンのことはともかく、バル嬢を巻き込んだことに関してはきちんと聞いておかないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...