133 / 140
貴族学園
133 喧嘩を売られる
しおりを挟む
「だから、アルフレートも訓練に参加させなさいって言ってるのよ!」
問題ってのはこんなに連続しておこるものだったか?
俺の転生話を打ち明けた翌日、学園に戻って領主・騎士科の剣術授業を受けていると、不意にミネッティ伯爵令嬢が現れて教師を恫喝し始めた。
曰く、自分の従者……ゲーム内の主人公だな……を剣術授業に参加させろと。
「ミネッティ伯爵が貴女をどのように教育したのかはわかりませんが、そのような特別待遇は致しかねます」
「はぁっ!? アルフレートはこの世界を救う勇者なのよ!」
ミネッティ伯爵令嬢の言葉に驚いている人間が半数、何言ってんだこいつって目線を送っているのが半数。
前者の人間はおそらく陛下が勇者の称号を廃止したことを知らない、後者は陛下の言を翻すような発言を一介の伯爵令嬢ごときが行ったことを咎めているのだろう。
もちろん俺もクリスタも後者だ。
「たとえ勇者と呼ばれるほどの人間であろうと、学園に入学していない人間を授業に参加させるなど出来ようはずがありません」
ミネッティ伯爵令嬢の言い分には教師がピシャリとノーを突き付ける。
貴族学園では王族よりも教師の方が身分が上というルールがあるから、教師のこの対応は正解だ。
「アルフレートがここにいる誰よりも強いと証明すればいいんでしょ!? アルフレート、やって!」
自棄になったのか、ミネッティ伯爵令嬢がそう叫ぶと、傍にいた主人公が持っていた長剣をすらりと抜く。
主人公が剣を構えた瞬間、俺を含めて辺境育ちの学生連中は戦慄した。
明らかに鍛えていないであろう肉体であるのに、その構えは自然でありながら理想的であったからだ。
「……確かに筋は良さそうですな。ですが、それとこれとは別の話。どのような実力をお持ちであろうと、学生ですらない者を授業に参加はさせられません」
「はぁっ!?」
「ですが、それではミネッティ伯爵令嬢も納得できないでしょう……どうだ? ゲルハルディ。この青年と模擬戦をやってみては」
教師が俺を指名したのは当然で、この中で既に爵位を得ているのが俺だけ……しかも俺は辺境伯で伯爵令嬢とは身分の差があるからだな。
まあ剣術の腕でも俺は学年でトップクラスではあるから、その点も考慮されたのかもしれないが。
「ふんっ、悪役令息になんか負けるはずないじゃない!」
「はあ、わざわざ相手をすることもないとは思いますが、あちらはそれでは納得しないでしょうね」
本当は俺が相手をすることもないんだが、主人公の力量を知りたいという興味もあるし、相手をすることにする。
しかし、素振りを見るだけでも剣の振るい方の理想を見ているだけで感動を覚える……いや、なんかだんだん腹が立ってきたな。
主人公だから何もしなくても剣くらい振れますってか? こちとら数年単位で剣の訓練をしてるってのに、主人公様にかかればその努力も無駄ですってか?
「両者ともに大怪我をさせないようにしろ。あまりにも酷ければ介入するからな」
この辺の言葉は両者に……というよりも主人公とミネッティ伯爵令嬢に言っている。
当然だが、これは剣術の授業なのであって実戦ではないからな、相手に怪我をさせないのは最低限の事項だ。
「はじめっ!」
「うおおおっ」
教師の合図と同時に主人公が叫びながら、俺に向かってくる。
剣の振り方は天才の一言だったが、戦いとなるとまるで素人。
剣を頭の上に振り上げたまま……いわゆる上段の構えのままで突っ込んでくる。
「はあっ!!」
気合一閃、上段から剣を振りぬくが、先ほど見た素振りほどの剣の冴えはない。
剣を合わせるまでもないので軽く横に避けるが、やはり剣だけで見れば主人公級の動きだが、体の使い方はまるで素人。
そういえばゲーム内の主人公は主であるローズマリー嬢が公爵の私設騎士団で訓練させていた……ミネッティ伯爵令嬢はどうしていたか知らんが、伯爵家と公爵家では騎士団の練度も違うだろう。
……いや、この動きの悪さは騎士団で訓練などさせていないのだろう。
その後も主人公の剣は俺にあたらず、逆に主人公は俺の剣をかろうじて弾くという展開が続く。
ミネッティ伯爵令嬢は怒声というか奇声を上げているが、学生連中は冷めた目で攻防を見守っている。
教師からも早く終わらせろというメッセージをアイコンタクトで受け取ったので、主人公の剣を弾いて終わらせる。
「はあっはあっはあっ……」
「剣の腕は悪くないが、動きは素人だな。鍛えたいなら冒険者ギルドの剣術学校にでも通えばいい」
「はあっ!? だから、ここで授業を受けさせなさいって言ってるのよっ!」
「まるでわかってないな。ここは貴族学園の領主・騎士科。……つまり領地、領民、国を守るための技術を学ぶ場。貴族ですらない……貴族になろうともしない人間が通えるところではない」
ミネッティ伯爵令嬢が嚙みついてきたので、わかりやすいように諭してやる。
貴族学園では領地や領民の守り方を学ぶのが主で、主人公のように自分、あるいは仲間を守るための戦い方は学べない。
剣術の授業もあるにはあるが、これは最悪の事態に備えたもので強くなるということよりも死なないための技術を学ぶ場だ。
「身分で差別するつもりねっ!」
「冒険者ギルドでは平民も受け入れている。貴族ですらないのなら、そちらに行けというのが差別だと思うのならそうなのだろうな」
これに関しては平行線だろう。教師の方もこれ以上は無駄だと思ったのか、実力行使に出てミネッティ伯爵令嬢と主人公を訓練場から追い出す。
領主・騎士科には男子生徒も女子生徒もいるので、教師も男女がそろっていたのが幸いだったな。
問題ってのはこんなに連続しておこるものだったか?
俺の転生話を打ち明けた翌日、学園に戻って領主・騎士科の剣術授業を受けていると、不意にミネッティ伯爵令嬢が現れて教師を恫喝し始めた。
曰く、自分の従者……ゲーム内の主人公だな……を剣術授業に参加させろと。
「ミネッティ伯爵が貴女をどのように教育したのかはわかりませんが、そのような特別待遇は致しかねます」
「はぁっ!? アルフレートはこの世界を救う勇者なのよ!」
ミネッティ伯爵令嬢の言葉に驚いている人間が半数、何言ってんだこいつって目線を送っているのが半数。
前者の人間はおそらく陛下が勇者の称号を廃止したことを知らない、後者は陛下の言を翻すような発言を一介の伯爵令嬢ごときが行ったことを咎めているのだろう。
もちろん俺もクリスタも後者だ。
「たとえ勇者と呼ばれるほどの人間であろうと、学園に入学していない人間を授業に参加させるなど出来ようはずがありません」
ミネッティ伯爵令嬢の言い分には教師がピシャリとノーを突き付ける。
貴族学園では王族よりも教師の方が身分が上というルールがあるから、教師のこの対応は正解だ。
「アルフレートがここにいる誰よりも強いと証明すればいいんでしょ!? アルフレート、やって!」
自棄になったのか、ミネッティ伯爵令嬢がそう叫ぶと、傍にいた主人公が持っていた長剣をすらりと抜く。
主人公が剣を構えた瞬間、俺を含めて辺境育ちの学生連中は戦慄した。
明らかに鍛えていないであろう肉体であるのに、その構えは自然でありながら理想的であったからだ。
「……確かに筋は良さそうですな。ですが、それとこれとは別の話。どのような実力をお持ちであろうと、学生ですらない者を授業に参加はさせられません」
「はぁっ!?」
「ですが、それではミネッティ伯爵令嬢も納得できないでしょう……どうだ? ゲルハルディ。この青年と模擬戦をやってみては」
教師が俺を指名したのは当然で、この中で既に爵位を得ているのが俺だけ……しかも俺は辺境伯で伯爵令嬢とは身分の差があるからだな。
まあ剣術の腕でも俺は学年でトップクラスではあるから、その点も考慮されたのかもしれないが。
「ふんっ、悪役令息になんか負けるはずないじゃない!」
「はあ、わざわざ相手をすることもないとは思いますが、あちらはそれでは納得しないでしょうね」
本当は俺が相手をすることもないんだが、主人公の力量を知りたいという興味もあるし、相手をすることにする。
しかし、素振りを見るだけでも剣の振るい方の理想を見ているだけで感動を覚える……いや、なんかだんだん腹が立ってきたな。
主人公だから何もしなくても剣くらい振れますってか? こちとら数年単位で剣の訓練をしてるってのに、主人公様にかかればその努力も無駄ですってか?
「両者ともに大怪我をさせないようにしろ。あまりにも酷ければ介入するからな」
この辺の言葉は両者に……というよりも主人公とミネッティ伯爵令嬢に言っている。
当然だが、これは剣術の授業なのであって実戦ではないからな、相手に怪我をさせないのは最低限の事項だ。
「はじめっ!」
「うおおおっ」
教師の合図と同時に主人公が叫びながら、俺に向かってくる。
剣の振り方は天才の一言だったが、戦いとなるとまるで素人。
剣を頭の上に振り上げたまま……いわゆる上段の構えのままで突っ込んでくる。
「はあっ!!」
気合一閃、上段から剣を振りぬくが、先ほど見た素振りほどの剣の冴えはない。
剣を合わせるまでもないので軽く横に避けるが、やはり剣だけで見れば主人公級の動きだが、体の使い方はまるで素人。
そういえばゲーム内の主人公は主であるローズマリー嬢が公爵の私設騎士団で訓練させていた……ミネッティ伯爵令嬢はどうしていたか知らんが、伯爵家と公爵家では騎士団の練度も違うだろう。
……いや、この動きの悪さは騎士団で訓練などさせていないのだろう。
その後も主人公の剣は俺にあたらず、逆に主人公は俺の剣をかろうじて弾くという展開が続く。
ミネッティ伯爵令嬢は怒声というか奇声を上げているが、学生連中は冷めた目で攻防を見守っている。
教師からも早く終わらせろというメッセージをアイコンタクトで受け取ったので、主人公の剣を弾いて終わらせる。
「はあっはあっはあっ……」
「剣の腕は悪くないが、動きは素人だな。鍛えたいなら冒険者ギルドの剣術学校にでも通えばいい」
「はあっ!? だから、ここで授業を受けさせなさいって言ってるのよっ!」
「まるでわかってないな。ここは貴族学園の領主・騎士科。……つまり領地、領民、国を守るための技術を学ぶ場。貴族ですらない……貴族になろうともしない人間が通えるところではない」
ミネッティ伯爵令嬢が嚙みついてきたので、わかりやすいように諭してやる。
貴族学園では領地や領民の守り方を学ぶのが主で、主人公のように自分、あるいは仲間を守るための戦い方は学べない。
剣術の授業もあるにはあるが、これは最悪の事態に備えたもので強くなるということよりも死なないための技術を学ぶ場だ。
「身分で差別するつもりねっ!」
「冒険者ギルドでは平民も受け入れている。貴族ですらないのなら、そちらに行けというのが差別だと思うのならそうなのだろうな」
これに関しては平行線だろう。教師の方もこれ以上は無駄だと思ったのか、実力行使に出てミネッティ伯爵令嬢と主人公を訓練場から追い出す。
領主・騎士科には男子生徒も女子生徒もいるので、教師も男女がそろっていたのが幸いだったな。
109
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す
金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。
「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」
魅了魔法? なんだそれは?
その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。
R15は死のシーンがあるための保険です。
独自の異世界の物語です。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる