【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ

文字の大きさ
23 / 25

シシリー視点 お姉様

しおりを挟む
 卒業式の当日、パーティーに向かう馬車を待っている間にお兄様に話しかけられます。

「シシリー、話があるんだが」
「?お兄様、どうしたのですか?」
「今日、パーティーが終わったら、アリシアを連れて帰ってきてほしい」
「?シアお姉様を?わかりましたわ」

 お兄様が私に話しかけてくる8割?9割くらいは全部シアお姉様関係のお話です。ですが、連れて帰ってきて欲しいと頼まれたのは初めてですね。今日、何かあるのでしょうか。

 私は問題がないので、返事をしておきます。ですが、お兄様の顔をみていると、思い悩んでいるようでした。本来、お兄様は無表情で、普段は何を考えているのか私には一切わかりません。お母様はわかりやすいとおっしゃるのですがそんなことはないと思います。けれども、私でもお兄様が何を考えているのかがわかる時があります。それが、シアお姉様のことを考えている時です。
 
 お兄様が今考えていることは、シアお姉様がお兄様に不満を持っていないか心配になったとというようなところでしょうか?

「ふふっ、お兄様は本当にシアお姉様がお好きなのですね」
「…」
「どうしてわかったのか?という顔をしていますよ。お兄様はシアお姉様のことになると、本当に顔に出やすいのですね」
「…だめか?」
「いいえ、そんなことありませんわ。ですが一つだけ」
「?」
「シアお姉様がお兄様を嫌っているというようなことは絶対にありませんから。それだけは特別にお兄様に教えてあげます」
「それは「お嬢様、馬車の準備ができました」」
「ありがとう。それではお兄様行ってきますね」

 たぶん、お姉様が昔のお兄様を覚えていなかったことを今でも気にしているのでしょうが、私からお兄様に言うのはやめておきましょう。

 馬車に乗り込み、動き出してからも、お兄様は家の前でポツンと立っているのが見えます。私が言ったことを考えているのでしょうか。

「本当にお兄様はシアお姉様が好きなのですね」

 お兄様はいつも淡々と行動しているので、あんな風に悩んでいるのは初めて見ました。

「悩んでいるお兄様に言って上げてもいいのですけどね…」

 思い出すのはシアお姉様との初めて会った日のことです。

「このドレスはもうボロボロなので、新しいものを用意しましょう」
「ちょ、ちょっと待ってもらえませんか!」
「どうしたのですか?」
「そのドレスは特別なものなんです。だから、洗っていただけるだけで…」

 このドレスはシルバー商会のものです。ご両親の形見という訳ではないと思うのですが…

「何か理由があるのですか?」
「…はい。顔や名前はまだ出てこないのですが、ある男の子が私のためにって、見繕ってくれたものなんです。それがとても嬉しくて…だから、その…、ご迷惑でないならば、それは置いておいて欲しいのですが…」
「ええ、それなら置いておきましょうか。さあ、お風呂に入りましょう」

 この方がお兄様が一目惚れになった方でしたか。どおりでお兄様が必死になって探す訳です。なるほど、そうでしたか。

「アリシア様は、その服を見繕ってくれた殿方のことをどう思っているのですか?」
「えっ、殿方のことですか?すいません、そこまで本当に覚えていないのです。ですが…」
「ですが?」
「…ですが、その殿方と一緒に家族が笑っていた記憶はあります。私を彼が着飾ってくれて、それをお父様やお母様が褒めてくれるのです。彼は少し無表情で何を考えているのか最初はわかりませんでしたが、私が嬉しそうにしているのを見て、笑った顔が印象的でした。それを見て、お…父様もおか…さまも、みんなで…わら…て…」

 そう言いながら、アリシア様が泣いてしまわれました。今思えば、これは私の配慮が足りていませんでしたね。傍目に見て元気そうだと思っていたので、目の前で両親がなくなっていることを失念していました。当時は私も8歳だったので、許してください。

 ですが、あの時、私と同じ年齢なのにも関わらず、気丈に振舞っているアリシア様をみて、友人として、また、将来の姉になって欲しいと思い、私の部屋では強引に迫ってしまいました。
 それに、夕食の後にお母様から聞かされたことを私の部屋で理解したらしく、シアお姉様が言っていた彼のことがお兄様だと知った時の慌てふためいていた姿は、とても可愛らしいお姿でした。
 
「お嬢様、お城に到着しました」

 私は馬車からおり、パーティー会場であるお城を眺めます。私たちの国では、学園を卒業式の日、パーティーは学園では行わず、お城で行います。これは今回に限ったことではなく、伝統として行われているそうです。理由としては、これから自分たちが尽くす場所をよく知ることができるようにでしょうか?理由は知られていません。もしかしたら、王族の方が城でやろうと最初に言い出したからかもしれませんね。

「シシリー様、ごきげんよう」
「あっ、シアお姉様ごきげんよう」

 シアお姉様ったら、シシリーと呼んでくださいと言ってあるのに、自主的にあまり呼んでくださらないのです。ですが、今日はお兄様にも呼ばれているので、帰りの馬車ではきっちりと呼び捨てで呼んでもらえるようにしましょう。

 ふふっ、帰る時が楽しみです。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

捨てられた騎士団長と相思相愛です

京月
恋愛
3年前、当時帝国騎士団で最強の呼び声が上がっていた「帝国の美剣」ことマクトリーラ伯爵家令息サラド・マクトリーラ様に私ルルロ侯爵令嬢ミルネ・ルルロは恋をした。しかし、サラド様には婚約者がおり、私の恋は叶うことは無いと知る。ある日、とある戦場でサラド様は全身を火傷する大怪我を負ってしまった。命に別状はないもののその火傷が残る顔を見て誰もが彼を割け、婚約者は彼を化け物と呼んで人里離れた山で療養と言う名の隔離、そのまま婚約を破棄した。そのチャンスを私は逃さなかった。「サラド様!私と婚約しましょう!!火傷?心配いりません!私回復魔法の博士号を取得してますから!!」

婚約を破棄して妹と結婚?実は私もう結婚してるんです。

京月
恋愛
グレーテルは平凡だ。しかし妹は本当に同じ血が流れているのかと疑いが出るほど美人で有名だった。ある日婚約者から一言「俺はお前との婚約を破棄してお前の妹と結婚する」→「ごめんなさい、実は私もう結婚しているんです」

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

裏切られ追放されたけど…精霊様がついてきました。

京月
恋愛
 精霊の力を宿したペンダント。  アンネは婚約者のジーク、商人のカマダル、友人のパナに裏切られ、ペンダントを奪われ、追放されてしまった。  1人で泣いているアンネ。 「どうして泣いているの?」  あれ?何でここに精霊様がいるの? ※5話完結です。(もう書き終わってます)    

王子に買われた妹と隣国に売られた私

京月
恋愛
スペード王国の公爵家の娘であるリリア・ジョーカーは三歳下の妹ユリ・ジョーカーと私の婚約者であり幼馴染でもあるサリウス・スペードといつも一緒に遊んでいた。 サリウスはリリアに好意があり大きくなったらリリアと結婚すると言っており、ユリもいつも姉さま大好きとリリアを慕っていた。 リリアが十八歳になったある日スペード王国で反乱がおきその首謀者として父と母が処刑されてしまう。姉妹は王様のいる玉座の間で手を後ろに縛られたまま床に頭をつけ王様からそして処刑を言い渡された。 それに異議を唱えながら玉座の間に入って来たのはサリウスだった。 サリウスは王様に向かい上奏する。 「父上、どうか"ユリ・ジョーカー"の処刑を取りやめにし俺に身柄をくださいませんか」 リリアはユリが不敵に笑っているのが見えた。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ

リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。 先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。 エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹? 「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」 はて、そこでヤスミーンは思案する。 何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。 また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。 最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。 するとある変化が……。 ゆるふわ設定ざまああり?です。

処理中です...