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第三章 決意と変化
4:目から鱗
しおりを挟む「キャサリン!」
リリカは勢いそのままに、キャサリンの部屋を訪れた。
キャサリンは、ノックをすると同時に開けられたドアに驚きながら、入って来た人物を見て更に驚いている。
キャサリンの隣で呆れた顔でリリカを見ているローズが、先に口を開けた。
「リリカ、一体何だというの!?」
「……あ、勢い余ってしまい、申し訳ありません……。キャサリンに話が……」
「キャサリンに何の話があると言うの!?」
リリカの言葉はローズによって遮られ、高圧的に押さえつけられる。
リリカは(ああ、また……)と心の中でため息をついた。
「キャサリンと2人で話をさせて……」
リリカが口答えをしようとしたその時、ニッコリと笑顔を顔に浮かべたキャサリンがローズへ言う。
「お母様、お姉様は本が好きでとても物知りなの。この間の夜会の馬車の中で、私は質問をしたのです。調べてまた教えてくれると言っていたので、そのことだと思います」
「そうなの?」
キャサリンの笑顔にローズの怒りは一気に鎮まる。
しかしそこへ居残るローズに、キャサリンは更に笑顔で言う。
「昨日お母様が作って下さったケーキがとても美味しかったので、今からまた戴きたいです。まだ残っているのですよね? 持って来て下さいますか?」
「あら、そう? 喜んでもらえて嬉しいわ。なら少し席を外して、すぐに持って来るわね」
そう言うとローズは、上機嫌で部屋を出て行った。
あっという間に、部屋にはリリカとキャサリンの2人になった。
リリカが、キャサリンの華麗なローズ操縦に呆気に取られていると、キャサリンは真顔でリリカを見て言う。
「あまり時間はないわ」
「ええ、ありがとう……」
「お姉様が私の部屋を訪ねて来るなんて、大きくなってからは初めてですもの……」
キャサリンは苦笑いを浮かべる。
そんなキャサリンの表情に、リリカは少し胸がチクッとした。
「……キャサリンが後押しをしてくれたおかげで、勇気を出すことが出来たの」
「えっ……」
神妙な顔で言うリリカに、キャサリンは愛くるしい瞳を丸くする。
「でも、また失恋してしまったわ……」
「そう……」
一瞬輝いたキャサリンの瞳は、すぐに落胆の色を見せる。
その様子から、キャサリンがリリカのことを本当に心配してくれているのが伝わって来る。
リリカはギュッと拳を握って覚悟を決め、思い切って言った。
「それでね、私、決めたの。自分のことを好きになるって」
最後にリリカへ人生のヒントをくれたウィリアムの言葉は、リリカの心にしっかりと残っていた。
キャサリンは目を見開いた後、微笑んだ。
「そう……ふふっ。とても素晴らしいと思うわ!」
「それでね、アドバイスが欲しくて……。自分を好きになるって、どうしたら良いのかしら?」
そう、目標は決まったものの漠然とし過ぎていて、リリカにはどうしたら良いのか見当もつかなかったのだ。
「自分を好きになる……。お姉様は何故、自分が嫌い……自分に自信がないの?」
「えっ……それは、私はキャサリンみたいに可愛くないし細くないし……」
リリカは少しおどおどしながら、そう口にする。
「あら、もう答えは出たじゃない!」
「えっ?」
「自分を好きになるためには、自分に自信を持つことよ。そのために手っ取り早く出来ることは、その自信を持つことの出来ない原因を取り除くことではないかしら?」
キャサリンのその言葉は、リリカにとっては目から鱗だった……
「キャサリン、お待たせ! あら、リリカまだいたの? 用が済んだならさっさと行きなさい」
ケーキを持って登場したローズは、いっきに2人の間に割り込んで来た。
因みに、もちろんリリカの分のケーキはない。
しかし、リリカの視界にローズは入ってはいなかった。
「キャサリン、ありがとう! 頑張ってみるわ!」
そう言うとリリカは、走ってキャサリンの部屋を後にした。
そのリリカの後ろ姿を、キャサリンは見送る。
密かに、(頑張って、お姉様)そうエールを送りながら……
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