【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣

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第四章 会えない時間

2:流行病と手紙

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隣国で、昨年の冬に流行り多くの死者を出した謎の病が、今年の冬も隣国で猛威を奮い始めていた。
そして12月、ついにリリカ達の暮らすグリーンヒル大国でも感染者が確認され、現在急速に拡大しているのだ。

気軽に他の領地へ行くどころか、近所への外出もままならなくなってしまった。
そのためリリカは、ウィリアムに会いに行くどころではなくなってしまったのだ……

(やっと会いに行く準備が出来たというのに……どうしましょう……そうだ!)

リリカはせめてもと、手紙を書くことにした。



『ウィリアム様へ
お久しぶりです。突然のお手紙を失礼いたします。
最近は、いかがお過ごしでしょうか?
もう半年もお会いしておりませんね。
この半年で、私には随分と変化がありました。
だいぶ前向きな性格になることが出来たと思います。
(すぐにマイナス思考になりがちな元の性格は、まだまだ気を付けなければなりませんが……)
感染症の流行が落ち着いたら、是非一度お茶をご一緒させていただければと思っております。
それでは、お会いできる日を楽しみにしています。
12/25 リリカ』




リリカはその手紙を送ってから、毎日毎日、返事を待ち侘びた。

(年を越してしまったわ……読んで下さったかしら?)

そのような不安が生じるほど、見事に音沙汰はなかった。

やっと待ち詫びた手紙が届いた時、リリカは手紙を握りしめて自室へ走った。

「ふう……」

手紙の封を切ると、息を整えながら一枚の紙を封筒から取り出し、ゆっくりと開く。
心臓が激しく鼓動していて、煩かった。




『リリカへ
新年明けましておめでとう。
今年がリリカにとって良い年となりますように。
1/10 ウィリアム』




素っ気ない手紙の内容が、ウィリアムの気持ちをよく表している。

「……気持ちは変わっていないと伝えたいのね……」

リリカは悲しい気持ちになるが、変に期待を持たせないことがウィリアムの優しさだとも、きちんとわかっていた。

そして、気づくとリリカの目からは涙が溢れていた……

「ふふっ。久しぶりのウィリアム様の字だわ……」

リリカは、思わず文字を指でなぞった。
新年の挨拶のみだが、リリカが手紙を出さなければ貰うことのなかったであろう手紙だ。
立派な返信であり、ウィリアムの健在を伝えてくれるものでもあった。

(拒絶はされなかった……)

それは、リリカが最も恐れていたことだった。
はなから拒絶をされたならば、もう頑張りようがない。
それはただの、独りよがりで自分勝手な行動になってしまう。
従って、挨拶だけだろうと拒絶のない返事を受け取ったことが、リリカにとっては大きな意味があるのだ。




『ウィリアム様へ
こんにちは。寒い日が続きますが、風邪をひかれてはいませんか?
最近、研究は順調ですか?
もう国立研究所を退職されたのでしょうか?
質問ばかりになってしまい申し訳ありません。
ウィリアム様の研究がうまくいくことを、いつも願っております。
1/11 リリカ』




リリカは我慢できずに、すぐに次の手紙を書いてしまった。

(これほどすぐに返事を書いたら、鬱陶しく思われるかしら……? もし次も返事を戴けたら、この次は少し日にちをあけるようにしましょう……)

隣の領地のため、さほど配達時間は要しないのだ。
リリカはそんな反省の気持ちを抱きつつ、考えすぎないようにいつもの暮らしを心がけて過ごした。
そうしないと、来るか来ないのか分からない、ウィリアムからの手紙のことばかり考えてしまう。




そして数週間後、再びウィリアムから手紙が届いた。
喜んだリリカだったが、手紙の内容に落胆することとなる……




『リリカへ
研究内容のキリが悪く、まだ国立研究所にいる。
研究がこれから忙しくなることもあり、返事をもう書くことは出来ない。
リリカの幸せを祈っている。
さようなら
2/1 ウィリアム』




待ちわびた手紙の内容に、リリカは絶望を抱く。

(……またふられてしまったわ)

手紙を握りしめて呆然としているリリカは、珍しい人物から声を掛けられた。
リリカは部屋まで待てずに、廊下で手紙を読んでいたのだ。

「お姉様、こんな所でどうされたの? ……手紙?」
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