28 / 63
第四章 会えない時間
2:流行病と手紙
しおりを挟む
隣国で、昨年の冬に流行り多くの死者を出した謎の病が、今年の冬も隣国で猛威を奮い始めていた。
そして12月、ついにリリカ達の暮らすグリーンヒル大国でも感染者が確認され、現在急速に拡大しているのだ。
気軽に他の領地へ行くどころか、近所への外出もままならなくなってしまった。
そのためリリカは、ウィリアムに会いに行くどころではなくなってしまったのだ……
(やっと会いに行く準備が出来たというのに……どうしましょう……そうだ!)
リリカはせめてもと、手紙を書くことにした。
『ウィリアム様へ
お久しぶりです。突然のお手紙を失礼いたします。
最近は、いかがお過ごしでしょうか?
もう半年もお会いしておりませんね。
この半年で、私には随分と変化がありました。
だいぶ前向きな性格になることが出来たと思います。
(すぐにマイナス思考になりがちな元の性格は、まだまだ気を付けなければなりませんが……)
感染症の流行が落ち着いたら、是非一度お茶をご一緒させていただければと思っております。
それでは、お会いできる日を楽しみにしています。
12/25 リリカ』
リリカはその手紙を送ってから、毎日毎日、返事を待ち侘びた。
(年を越してしまったわ……読んで下さったかしら?)
そのような不安が生じるほど、見事に音沙汰はなかった。
やっと待ち詫びた手紙が届いた時、リリカは手紙を握りしめて自室へ走った。
「ふう……」
手紙の封を切ると、息を整えながら一枚の紙を封筒から取り出し、ゆっくりと開く。
心臓が激しく鼓動していて、煩かった。
『リリカへ
新年明けましておめでとう。
今年がリリカにとって良い年となりますように。
1/10 ウィリアム』
素っ気ない手紙の内容が、ウィリアムの気持ちをよく表している。
「……気持ちは変わっていないと伝えたいのね……」
リリカは悲しい気持ちになるが、変に期待を持たせないことがウィリアムの優しさだとも、きちんとわかっていた。
そして、気づくとリリカの目からは涙が溢れていた……
「ふふっ。久しぶりのウィリアム様の字だわ……」
リリカは、思わず文字を指でなぞった。
新年の挨拶のみだが、リリカが手紙を出さなければ貰うことのなかったであろう手紙だ。
立派な返信であり、ウィリアムの健在を伝えてくれるものでもあった。
(拒絶はされなかった……)
それは、リリカが最も恐れていたことだった。
はなから拒絶をされたならば、もう頑張りようがない。
それはただの、独りよがりで自分勝手な行動になってしまう。
従って、挨拶だけだろうと拒絶のない返事を受け取ったことが、リリカにとっては大きな意味があるのだ。
『ウィリアム様へ
こんにちは。寒い日が続きますが、風邪をひかれてはいませんか?
最近、研究は順調ですか?
もう国立研究所を退職されたのでしょうか?
質問ばかりになってしまい申し訳ありません。
ウィリアム様の研究がうまくいくことを、いつも願っております。
1/11 リリカ』
リリカは我慢できずに、すぐに次の手紙を書いてしまった。
(これほどすぐに返事を書いたら、鬱陶しく思われるかしら……? もし次も返事を戴けたら、この次は少し日にちをあけるようにしましょう……)
隣の領地のため、さほど配達時間は要しないのだ。
リリカはそんな反省の気持ちを抱きつつ、考えすぎないようにいつもの暮らしを心がけて過ごした。
そうしないと、来るか来ないのか分からない、ウィリアムからの手紙のことばかり考えてしまう。
そして数週間後、再びウィリアムから手紙が届いた。
喜んだリリカだったが、手紙の内容に落胆することとなる……
『リリカへ
研究内容のキリが悪く、まだ国立研究所にいる。
研究がこれから忙しくなることもあり、返事をもう書くことは出来ない。
リリカの幸せを祈っている。
さようなら
2/1 ウィリアム』
待ちわびた手紙の内容に、リリカは絶望を抱く。
(……またふられてしまったわ)
手紙を握りしめて呆然としているリリカは、珍しい人物から声を掛けられた。
リリカは部屋まで待てずに、廊下で手紙を読んでいたのだ。
「お姉様、こんな所でどうされたの? ……手紙?」
そして12月、ついにリリカ達の暮らすグリーンヒル大国でも感染者が確認され、現在急速に拡大しているのだ。
気軽に他の領地へ行くどころか、近所への外出もままならなくなってしまった。
そのためリリカは、ウィリアムに会いに行くどころではなくなってしまったのだ……
(やっと会いに行く準備が出来たというのに……どうしましょう……そうだ!)
リリカはせめてもと、手紙を書くことにした。
『ウィリアム様へ
お久しぶりです。突然のお手紙を失礼いたします。
最近は、いかがお過ごしでしょうか?
もう半年もお会いしておりませんね。
この半年で、私には随分と変化がありました。
だいぶ前向きな性格になることが出来たと思います。
(すぐにマイナス思考になりがちな元の性格は、まだまだ気を付けなければなりませんが……)
感染症の流行が落ち着いたら、是非一度お茶をご一緒させていただければと思っております。
それでは、お会いできる日を楽しみにしています。
12/25 リリカ』
リリカはその手紙を送ってから、毎日毎日、返事を待ち侘びた。
(年を越してしまったわ……読んで下さったかしら?)
そのような不安が生じるほど、見事に音沙汰はなかった。
やっと待ち詫びた手紙が届いた時、リリカは手紙を握りしめて自室へ走った。
「ふう……」
手紙の封を切ると、息を整えながら一枚の紙を封筒から取り出し、ゆっくりと開く。
心臓が激しく鼓動していて、煩かった。
『リリカへ
新年明けましておめでとう。
今年がリリカにとって良い年となりますように。
1/10 ウィリアム』
素っ気ない手紙の内容が、ウィリアムの気持ちをよく表している。
「……気持ちは変わっていないと伝えたいのね……」
リリカは悲しい気持ちになるが、変に期待を持たせないことがウィリアムの優しさだとも、きちんとわかっていた。
そして、気づくとリリカの目からは涙が溢れていた……
「ふふっ。久しぶりのウィリアム様の字だわ……」
リリカは、思わず文字を指でなぞった。
新年の挨拶のみだが、リリカが手紙を出さなければ貰うことのなかったであろう手紙だ。
立派な返信であり、ウィリアムの健在を伝えてくれるものでもあった。
(拒絶はされなかった……)
それは、リリカが最も恐れていたことだった。
はなから拒絶をされたならば、もう頑張りようがない。
それはただの、独りよがりで自分勝手な行動になってしまう。
従って、挨拶だけだろうと拒絶のない返事を受け取ったことが、リリカにとっては大きな意味があるのだ。
『ウィリアム様へ
こんにちは。寒い日が続きますが、風邪をひかれてはいませんか?
最近、研究は順調ですか?
もう国立研究所を退職されたのでしょうか?
質問ばかりになってしまい申し訳ありません。
ウィリアム様の研究がうまくいくことを、いつも願っております。
1/11 リリカ』
リリカは我慢できずに、すぐに次の手紙を書いてしまった。
(これほどすぐに返事を書いたら、鬱陶しく思われるかしら……? もし次も返事を戴けたら、この次は少し日にちをあけるようにしましょう……)
隣の領地のため、さほど配達時間は要しないのだ。
リリカはそんな反省の気持ちを抱きつつ、考えすぎないようにいつもの暮らしを心がけて過ごした。
そうしないと、来るか来ないのか分からない、ウィリアムからの手紙のことばかり考えてしまう。
そして数週間後、再びウィリアムから手紙が届いた。
喜んだリリカだったが、手紙の内容に落胆することとなる……
『リリカへ
研究内容のキリが悪く、まだ国立研究所にいる。
研究がこれから忙しくなることもあり、返事をもう書くことは出来ない。
リリカの幸せを祈っている。
さようなら
2/1 ウィリアム』
待ちわびた手紙の内容に、リリカは絶望を抱く。
(……またふられてしまったわ)
手紙を握りしめて呆然としているリリカは、珍しい人物から声を掛けられた。
リリカは部屋まで待てずに、廊下で手紙を読んでいたのだ。
「お姉様、こんな所でどうされたの? ……手紙?」
83
あなたにおすすめの小説
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
【完結】あなたの瞳に映るのは
今川みらい
恋愛
命を救える筈の友を、俺は無慈悲に見捨てた。
全てはあなたを手に入れるために。
長年の片想いが、ティアラの婚約破棄をきっかけに動き出す。
★完結保証★
全19話執筆済み。4万字程度です。
前半がティアラside、後半がアイラスsideになります。
表紙画像は作中で登場するサンブリテニアです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる