【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣

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第七章 すれ違い

1:リリカとウィリアム 1年8カ月ぶりの再会

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キャサリンと決意を交わした翌日、リリカはウィリアムに会いにブルーム伯爵邸を訪れていた。
自分のけじめと、迷惑を掛けた伯爵に謝罪をするために。

「ウィリアム様、お久しぶりです。ご無事で何よりです」

「ああ、ありがとう。リリカも元気そうで良かった」

約1年8ヶ月ぶりに会うウィリアムは、以前のようなボサボサの姿ではなく、小奇麗な姿だった。
国王への報告など後始末のために頻繁に王城へ行っており、更に帰国パーティーも今夜城で開かれる予定だと聞いている。

「たくさん手紙を貰っていたにも関わらず、返事をせずにすまなかった」

「いいえ。流行病の治療薬開発という、誰にでも出来ない大切な仕事をなさっていたのですから、当然です! 私が勝手に手紙を送りたくて送らせて貰っていただけなので……」

久しぶりに会う二人は、どこかぎこちない。
二人共、なかなか目を合わせられずにいた。

(ウィリアム様の素敵な目を、真正面から見ることが出来ないわ。どうしましょう……)

リリカがそんなことを考えていると、ウィリアムの方が先にリリカの顔を見ながら言った。

「素敵になったね。……以前よりも、更に」

リリカは咄嗟に顔を上げて、ウィリアムを見る。
ウィリアムの瞳と目が合った瞬間、リリカの目からは一粒の涙が溢れた。
それは、誰よりもウィリアムから欲しかった言葉だったのだ……

(そうよ、私は変わったのよ! ウジウジしないの!)

リリカは、自分を鼓舞してキリッとした顔を作り上げ、ウィリアムを真正面から見つめた。

「ウィリアム様、正直に申し上げます。私は今でもウィリアム様をお慕いしておりますし、できれば婚姻を結べたら……と、勝手に考えておりました。伯爵様から伺っているかもしれませんが、私が領地経営を主に行うことでウィリアム様に研究を続けて貰えたらと考え、勉強をするなどもしていました」

リリカはそこで、フウッと大きな息をひとつ吐き出し、涙を拭った。
ウィリアムはジッと、リリカの話を最後まで聞こうとしてくれている。

「……しかし、状況が変わりました。ご存知かもしれませんが、現在我がレッドフィールド伯爵領は困窮しております。我が家族のせいで。父と一緒に領地を立て直す手伝いを、微力ながら行いたいと思っております。今のところ金策の目処もついておらず、いつまでかかるかわかりません。従って、ウィリアム様のことは諦めることにいたしました」

リリカは迷いを見せないように、まっすぐウィリアムを見たまま視線を逸らさずに、はっきりとした口調で一気に言った。

ウィリアムは目を見開いた後、視線を下げる。
考え込んでいるようだ……


一瞬の間の後、ウィリアムは口を開く。

「……今回の流行病治療薬開発及び隣国への派遣、更に思わぬ危険に遭遇したことなどから、上乗せで報酬を貰えることとなっている」

ウィリアムの発言の意図が読めず、リリカはジッとウィリアムを見つめる。

「つまり、援助することが出来る」

ウィリアムは真面目な顔で、真っ直ぐにリリカを見て言う。
今度はリリカが、驚きに目を見開く番だった。

「違います! 私は、そのようなつもりで会いに来たのでありません!!!」

「わかっている! 最後に直接挨拶をしに来てくれたのだろう? しかし、俺が最後にはしたくないのだ!」

ウィリアムのその言葉に、リリカは更に目を見開いて固まる。

「リリカ、結婚しないか?」

リリカは頭の中が真っ白になり、口をポカンとただ開けている。

「……俺から許嫁の話は無しにして欲しいと言い出したのに、勝手なことを言っていることはわかっている。それでも許してくれるのなら……。……俺は、結婚するならリリカが良いのだ……」

少しバツが悪そうにそう言うウィリアムは、リリカの反応を伺う。
しかしリリカは、相変わらず無表情で固まったままである。

「会わない間、少しでも時間が出来るといつも、リリカのことを思い出していた。……リリカが伯爵の仕事を手伝ってくれるのだろう? 君が望んでくれるのなら、俺も細々と研究を続けさせて貰おう」

固まっているリリカに、ウィリアムは畳み掛け続ける。

「……あっ、決して研究が続けられることにつられた訳ではない! リリカが考えてくれたことを父から聞いた時は、リリカの気持ちをとても嬉しく感じた。だから、選択肢の一つだと思っている。どうするかは二人で話し合っていけたらと思う」

ウィリアムは、そう慌てて付け加えた。

ふと我に返ったリリカは、再び涙を流し始める。
今度は大粒の涙をハラハラと……
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