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第七章 すれ違い
3:キャサリンとスターリン(sideキャサリン)
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リリカがウィリアムを訪ねているのと同じ頃、キャサリンはスターリンを訪ねていた。
オーグナー公爵邸の庭を二人で散歩しながら、キャサリンは隣を歩くスターリンを見る。
「スターリン様、お帰りなさいませ。ご無事で何よりでございます」
「ああ、ありがとう。キャサリンも元気そうでよかった。今日は訪ねて来てくれてありがとう。報告やらで中々訪ねて行く時間を取ることが出来ずにいたのだ」
スターリンは無表情ながら、少し申し訳なさを滲ませている。
「いいえ、お気になさらないで下さい。お忙しいことは重々承知しております」
「それで結婚についてだが……まずは父上へ改めて挨拶をしに行って、許しを貰わねばならないな。まあ、問題ないとは思うが」
以前通りのキャサリンに”ホッ”としながら、スターリンは少し微笑んでいる。
彼のその表情に、キャサリンは胸が締め付けられ、”ギュッ”と奥歯を噛み締めて立ち止まった。
「……スターリン様、本日は謝罪に参りました。訳あって結婚出来なくなりました。申し訳ありません」
いっきに言い終えると、キャサリンはスターリンに向けて深く頭を下げた。
キャサリンの頭頂部を見つめながら、一瞬の間の後、スターリンは冷静に言う。
「……理由を聞かせてくれ」
「全財産を身内に盗まれ、我が伯爵家と領地は困窮する事態となっております。嫁入りの支度金を準備出来ないのはもちろん、迷惑を掛けてしまう可能性があります。私は婚姻を結んでも、メリットどころかデメリットしかない女となってしまいました」
頭を下げたままで言うキャサリンを見ながら、スターリンは驚いた顔をしている。
「そのようなことになっていたのか……。父上は知っているのか? 父上に援助を求めたら良い!」
「……それは最後の手段です。返済のあてもないのに借金は極力したくないので、今は何とか自分たちで打開する方法を模索している状況です」
「そうか……。……キャサリンは何も気にせず、身一つで嫁いで来てくれたら良いのだが」
「そう言ってくださると思っていました。しかし、それでは私の気が済まないのです。今回のことは、私にも責任があるのです……。今のレッドフィールド伯爵家と領地領民を見捨てることは出来ません」
「……」
「微力ながら、姉と力を合わせて父を支えられたらと、考えております」
スターリンは食い気味に口を開けた。
「ウィリアム達を無事に連れ帰った今回の報酬が、もうすぐ手に入る。それに、父上にも頼んで援助してもらうおう。金は後でゆっくり返せば良いではないか」
頭を上げて"ジッ"とスターリンを見るキャサリンは、ずっと真顔だ。
スターリンが、取り敢えずの借金を提案することは予想通りであったため、キャサリンは驚かなかった。
真面目で責任感の強いスターリンなら、何か提案をしてくれるだろうと思っていた。
そのため、『何を言われても動じない』と心に決めて、今日は訪問して来たのだ。
「先程も申し上げましたが、借金は最後の手段です。まずは、自分達で頑張ってみます」
「……」
真顔を崩さないキャサリンに固い決意を感じ、スターリンは眉間に皺を寄せる。
「つい先日、私の醜い嫉妬からあの様なことがあったばかりにも関わらず、立て続けに申し訳ありません。……スターリン様の幸せを、心よりお祈りしております」
キャサリンは、油断したらすぐに涙腺が緩みそうなため、意識的に真顔を貫いていた。
「俺はキャサリンと共に幸せになると、幼い頃からずっと決めているのだが……」
スターリンのこの言葉は、キャサリンの胸に突き刺さった。
(その台詞は狡いわ。私が必死で我慢しているというのに……)
キャサリンはふと油断してしまう。
すると、キャサリンの大きくて綺麗な目にはあっという間に涙が溜まり、すぐに一杯になった涙がハラハラと溢れ出してしまう。
「……私は私で頑張ってみます。スターリン様は、私のことは気にせずに幸せになって下さい! 失礼いたします!!!」
これ以上はこの場にいられないと、キャサリンは走り出す。
……しかしすぐに、スターリンに捕まる。
スターリンの胸の中にスッポリとおさまったキャサリンは、初めての抱擁に頭の中が真っ白になった。
「……頼むから、そのような突き放すことを言わないでくれ。俺に出来ることは何かないのか?」
頭の上から降ってくるスターリンの言葉に、キャサリンは涙が止まらない。
(この温もりを失いたくないわ。でもいつ解決出来るかわからないのに、スターリン様を縛ることは出来ないわ。もちろん、私だけが幸せになることも……)
キャサリンは、スターリンの胸に置いた両腕を思いっきり突っ張り、抱擁から逃げ出した。
無理強いするつもりのないスターリンは、すぐに腕の力を緩める。
キャサリンの拒絶にショックを受けながら……
「……何もありません」
キャサリンはそれだけを言うと、走り去った。
今度は、走り去ることが出来た……
リリカもキャサリンも、待っていて欲しいことは伝えなかった。
それは相手を縛ることになるからと……
オーグナー公爵邸の庭を二人で散歩しながら、キャサリンは隣を歩くスターリンを見る。
「スターリン様、お帰りなさいませ。ご無事で何よりでございます」
「ああ、ありがとう。キャサリンも元気そうでよかった。今日は訪ねて来てくれてありがとう。報告やらで中々訪ねて行く時間を取ることが出来ずにいたのだ」
スターリンは無表情ながら、少し申し訳なさを滲ませている。
「いいえ、お気になさらないで下さい。お忙しいことは重々承知しております」
「それで結婚についてだが……まずは父上へ改めて挨拶をしに行って、許しを貰わねばならないな。まあ、問題ないとは思うが」
以前通りのキャサリンに”ホッ”としながら、スターリンは少し微笑んでいる。
彼のその表情に、キャサリンは胸が締め付けられ、”ギュッ”と奥歯を噛み締めて立ち止まった。
「……スターリン様、本日は謝罪に参りました。訳あって結婚出来なくなりました。申し訳ありません」
いっきに言い終えると、キャサリンはスターリンに向けて深く頭を下げた。
キャサリンの頭頂部を見つめながら、一瞬の間の後、スターリンは冷静に言う。
「……理由を聞かせてくれ」
「全財産を身内に盗まれ、我が伯爵家と領地は困窮する事態となっております。嫁入りの支度金を準備出来ないのはもちろん、迷惑を掛けてしまう可能性があります。私は婚姻を結んでも、メリットどころかデメリットしかない女となってしまいました」
頭を下げたままで言うキャサリンを見ながら、スターリンは驚いた顔をしている。
「そのようなことになっていたのか……。父上は知っているのか? 父上に援助を求めたら良い!」
「……それは最後の手段です。返済のあてもないのに借金は極力したくないので、今は何とか自分たちで打開する方法を模索している状況です」
「そうか……。……キャサリンは何も気にせず、身一つで嫁いで来てくれたら良いのだが」
「そう言ってくださると思っていました。しかし、それでは私の気が済まないのです。今回のことは、私にも責任があるのです……。今のレッドフィールド伯爵家と領地領民を見捨てることは出来ません」
「……」
「微力ながら、姉と力を合わせて父を支えられたらと、考えております」
スターリンは食い気味に口を開けた。
「ウィリアム達を無事に連れ帰った今回の報酬が、もうすぐ手に入る。それに、父上にも頼んで援助してもらうおう。金は後でゆっくり返せば良いではないか」
頭を上げて"ジッ"とスターリンを見るキャサリンは、ずっと真顔だ。
スターリンが、取り敢えずの借金を提案することは予想通りであったため、キャサリンは驚かなかった。
真面目で責任感の強いスターリンなら、何か提案をしてくれるだろうと思っていた。
そのため、『何を言われても動じない』と心に決めて、今日は訪問して来たのだ。
「先程も申し上げましたが、借金は最後の手段です。まずは、自分達で頑張ってみます」
「……」
真顔を崩さないキャサリンに固い決意を感じ、スターリンは眉間に皺を寄せる。
「つい先日、私の醜い嫉妬からあの様なことがあったばかりにも関わらず、立て続けに申し訳ありません。……スターリン様の幸せを、心よりお祈りしております」
キャサリンは、油断したらすぐに涙腺が緩みそうなため、意識的に真顔を貫いていた。
「俺はキャサリンと共に幸せになると、幼い頃からずっと決めているのだが……」
スターリンのこの言葉は、キャサリンの胸に突き刺さった。
(その台詞は狡いわ。私が必死で我慢しているというのに……)
キャサリンはふと油断してしまう。
すると、キャサリンの大きくて綺麗な目にはあっという間に涙が溜まり、すぐに一杯になった涙がハラハラと溢れ出してしまう。
「……私は私で頑張ってみます。スターリン様は、私のことは気にせずに幸せになって下さい! 失礼いたします!!!」
これ以上はこの場にいられないと、キャサリンは走り出す。
……しかしすぐに、スターリンに捕まる。
スターリンの胸の中にスッポリとおさまったキャサリンは、初めての抱擁に頭の中が真っ白になった。
「……頼むから、そのような突き放すことを言わないでくれ。俺に出来ることは何かないのか?」
頭の上から降ってくるスターリンの言葉に、キャサリンは涙が止まらない。
(この温もりを失いたくないわ。でもいつ解決出来るかわからないのに、スターリン様を縛ることは出来ないわ。もちろん、私だけが幸せになることも……)
キャサリンは、スターリンの胸に置いた両腕を思いっきり突っ張り、抱擁から逃げ出した。
無理強いするつもりのないスターリンは、すぐに腕の力を緩める。
キャサリンの拒絶にショックを受けながら……
「……何もありません」
キャサリンはそれだけを言うと、走り去った。
今度は、走り去ることが出来た……
リリカもキャサリンも、待っていて欲しいことは伝えなかった。
それは相手を縛ることになるからと……
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