【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣

文字の大きさ
42 / 63
第五章 キャサリンとスターリン

6:素直になって

しおりを挟む
「キャサリン!」

リリカはキャサリンの部屋を訪ねるも、そこにはローズもいた。
キャサリンの情緒不安定が露呈してからは、ローズがさらにべったりと、キャサリンのそばにいるようになっていた。
キャサリンは無気力な上にずっと無表情で、ローズの声掛けにも返事をしない。

リリカは、そこにいるローズのことは気にも留めずに、キャサリンの目の前に立ち、真っ直ぐに見て言う。

「キャサリン! スターリン様が、ウィリアム様たちを連れ戻しに行かれるわ! 内乱の起きている危険な隣国へ行くのよ! すぐに会いに行かないと、出発をしてしまうわよ!」

キャサリンは驚きに目を見開いて、リリカを見た。
しかしまた、フッと視線を逸らす。

「あら、ウィリアムが無事に帰れると良いわね! それにしてもリリカ、キャサリンに対して偉そうな物言いね。わきまえなさい! 主役はいつもキャサリンなのよ!」

このローズの言葉に、リリカは一瞬傷付いた顔をしてしまった。
しかしすぐに、”ふっ”と笑みを零す。

(主役はいつもキャサリン……か。確かにそうかもしれないわね。でも、私の物語の主役は私よ! どんな人生だろうと、自分の人生に誰も責任は持ってはくれないのよ!)

リリカはキリッと顔を引き締めて、キャサリンを再び真っ直ぐに見る。

「キャサリン! いい加減にしなさい! ムキになっている場合ではないわ! 本当は分かっているのでしょう? あなたに誤解をさせる行動をとって悪かったわ。あなたの想い人であり許婚とのことだもの、きちんとあなたにも報告をしておくべきだったわ。配慮が足らなかった。本当にごめんなさい」

リリカは心からの謝罪をし、頭を下げた。

(ウィリアム様にフラれた時、私の背中を押してくれたのはキャサリンだったのよ。キャサリン、お願い。後悔するようなことはしないで……)

リリカが顔を上げると、ショックを受けているキャサリンと目が合った。
そしてリリカは、スターリンからの手紙をキャサリンに手渡す。
震える手で受け取ったキャサリンは、スターリンの文字に涙を浮かべる。

「……スターリン様が、戦争の起きている国へ行くの……?」

数日前スターリンが来た日以来に聞いた、キャサリンの声だった。
キャサリンのか細い声は震えている。

「ええ、そうよ。スターリン様のキャサリンを想う心は、何も変わっていないわよ? キャサリンは、本当にこのままで良いの?」

「……」

「もうニ度と会えないかもしれないのよ? このような別れ方で、本当に良いの!?」

「……良くない」

”ボソッ”と呟かれたキャサリンの言葉に、リリカは”ホッ”とした表情を浮かべて大きく頷いた。

「ちょっと、何を言っているの? キャサリンはウィリアムと結婚するのよ?」

ローズはキャサリンを抱きしめて言う。
キャサリンはそんなローズの手をそっと外し、真正面からローズを見た。
馬車の中でリリカのことを叱ってくれた、あの時のキャサリンと同じ目をしている。

(ああ、キャサリンはきっともう大丈夫だわ……)

リリカは直観でそう思った。

「お母様、今回は振り回してしまってごめんなさい。でも私は、お母様の人形ではないわ。私で自分の承認欲求を満たそうとするのは、もう止めて」

キャサリンはローズへ冷静にそう言い放ってから、足早に部屋をあとにした。

「……キャサリンは間に合いますように……」

リリカは、心からそう願った。

そして、あと一歩のところで間に合わずに、ウィリアムに会うことが出来なかったあの日の自分を思い出す。
リリカはウィリアムの無事を願って、胸が苦しくなったのだった……





しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

【完結】あなたの瞳に映るのは

今川みらい
恋愛
命を救える筈の友を、俺は無慈悲に見捨てた。 全てはあなたを手に入れるために。 長年の片想いが、ティアラの婚約破棄をきっかけに動き出す。 ★完結保証★ 全19話執筆済み。4万字程度です。 前半がティアラside、後半がアイラスsideになります。 表紙画像は作中で登場するサンブリテニアです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...