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「アリーナ、”図書館管理者様”ってお方を知っている?」
信じても良いものか悩んでいる様子のティーナに話を聞いたアリーナは、驚く。
手紙をもらった後に体調を崩して会いに行くことが出来なかったため、その旨の手紙を書いたのだ。
心は大丈夫なことと、体調が中々回復しないことを。
「ええ、知っております。更にその方は体調が悪いこともご存じです。信用できる方です」
それを聞いたティーナは満面の笑みとなり、医者を呼んでくるように侍女へ指示している。
「そのお方、何者なの?」
「知りません。私が良くいく王都の中央図書館を管理している方だとしか……」
今のアリーナには、スカイのことをじっくりと考える余裕はなかった。
唾液がすぐにたまり嚥下ができないため話しにくい。
この苦痛を誰か取り除いてくれるのであれば、誰でも良い。
とにかく苦痛で、どうにかして欲しかった。
罰なのかもしれないが……
「では、動くと危険なため頭を押さえておいて下さい」
前もって当領地内の医者から状態を引き継いでいたため、治療方針を決めていたようだ。
医者は、診察するなりアリーナの身体と頭を押さえつけるように言う。
「アリーナ、耐えるのよ! さあ皆、しっかりと抑えて!」
ティーナの指示のもと、アリーナは4人の侍女に体と頭を押さえつけられている。
「では、いきますね」
医者が注射針のついた注射器を口の中に入れると、口腔内にちくっと痛みが走った。
少しの時間のあと、医者は針を抜いて注射器を見せてくれる。
そこにはクリーム色の膿のようなものが5㏄ほどたまっている。
「扁桃炎が酷くなって周囲に膿瘍がたまっていたんですよ。注射器で吸い取ったのでもう大丈夫ですよ。念のため抗生剤は5日ほど内服して下さいね」
はははっと大きく笑う医者に、アリーナはホッとする。
口腔内に違和感は残っているが、唾液を飲み込めるのだ。
我が領地の医者は小心者だった。
口の中に注射針を刺すなんて行為は出来なかっただろう。
(またスカイに助けられたわね)
それから三日後、すっかり元気になったアリーナは、図書館を訪れた。
ドアを開けて図書館へ入るとすぐにスカイはいて、アリーナを見るとホッとした表情をした。
スカイが会釈をしただけで言葉を発しないため、他に利用者がいることをアリーナは察して会釈を返した。
本を読む気にはなれなくて何となくボーッと室内を歩いていると、あの窓に辿り着いた。
アリーナが画家を見付けた窓だ。
画家がいるかどうか確認したい気持ちと、確認したくない気持ちが同時に芽生え、アリーナはその場に固まってしまう。
「お久しぶりです。体調はどうですか?」
後ろから話しかけられ、アリーナは後ろを振り返る。
「かなり良くなりました。食事も食べられるようになりましたし」
「かなり痩せられましたね」
痩せたのは病気のせいだけではないが、アリーナは特に言及はしなかった。
「この度は王都のお医者様を手配して下さり、本当にありがとうございました。それで、あの……おいくらでしたか? お支払いをさせて下さい」
「私が勝手にやったことなのに、お金なんていただけませんよ」
「しかし……」
「多少は責任を感じているのです。間違っていたとは思いませんが、あなたを傷つけたことは間違いないので。これで私の気が済むと思って、好きにさせて下さい」
はっきりとは言わなかったが、スカイが画家のことを言っていることはすぐにわかった。
「……」
アリーナが複雑な表情で何も言えずにスカイを見ていると、スカイはニッと笑った。
「心の整理がついたことを願っています」
”チリンチリン”
利用者が来たため、アリーナの返事を待たずにスカイは行ってしまう。
アリーアは、スカイの後ろ姿を見送りながら思う。
(……私は、心の整理はついたのかしら?)
信じても良いものか悩んでいる様子のティーナに話を聞いたアリーナは、驚く。
手紙をもらった後に体調を崩して会いに行くことが出来なかったため、その旨の手紙を書いたのだ。
心は大丈夫なことと、体調が中々回復しないことを。
「ええ、知っております。更にその方は体調が悪いこともご存じです。信用できる方です」
それを聞いたティーナは満面の笑みとなり、医者を呼んでくるように侍女へ指示している。
「そのお方、何者なの?」
「知りません。私が良くいく王都の中央図書館を管理している方だとしか……」
今のアリーナには、スカイのことをじっくりと考える余裕はなかった。
唾液がすぐにたまり嚥下ができないため話しにくい。
この苦痛を誰か取り除いてくれるのであれば、誰でも良い。
とにかく苦痛で、どうにかして欲しかった。
罰なのかもしれないが……
「では、動くと危険なため頭を押さえておいて下さい」
前もって当領地内の医者から状態を引き継いでいたため、治療方針を決めていたようだ。
医者は、診察するなりアリーナの身体と頭を押さえつけるように言う。
「アリーナ、耐えるのよ! さあ皆、しっかりと抑えて!」
ティーナの指示のもと、アリーナは4人の侍女に体と頭を押さえつけられている。
「では、いきますね」
医者が注射針のついた注射器を口の中に入れると、口腔内にちくっと痛みが走った。
少しの時間のあと、医者は針を抜いて注射器を見せてくれる。
そこにはクリーム色の膿のようなものが5㏄ほどたまっている。
「扁桃炎が酷くなって周囲に膿瘍がたまっていたんですよ。注射器で吸い取ったのでもう大丈夫ですよ。念のため抗生剤は5日ほど内服して下さいね」
はははっと大きく笑う医者に、アリーナはホッとする。
口腔内に違和感は残っているが、唾液を飲み込めるのだ。
我が領地の医者は小心者だった。
口の中に注射針を刺すなんて行為は出来なかっただろう。
(またスカイに助けられたわね)
それから三日後、すっかり元気になったアリーナは、図書館を訪れた。
ドアを開けて図書館へ入るとすぐにスカイはいて、アリーナを見るとホッとした表情をした。
スカイが会釈をしただけで言葉を発しないため、他に利用者がいることをアリーナは察して会釈を返した。
本を読む気にはなれなくて何となくボーッと室内を歩いていると、あの窓に辿り着いた。
アリーナが画家を見付けた窓だ。
画家がいるかどうか確認したい気持ちと、確認したくない気持ちが同時に芽生え、アリーナはその場に固まってしまう。
「お久しぶりです。体調はどうですか?」
後ろから話しかけられ、アリーナは後ろを振り返る。
「かなり良くなりました。食事も食べられるようになりましたし」
「かなり痩せられましたね」
痩せたのは病気のせいだけではないが、アリーナは特に言及はしなかった。
「この度は王都のお医者様を手配して下さり、本当にありがとうございました。それで、あの……おいくらでしたか? お支払いをさせて下さい」
「私が勝手にやったことなのに、お金なんていただけませんよ」
「しかし……」
「多少は責任を感じているのです。間違っていたとは思いませんが、あなたを傷つけたことは間違いないので。これで私の気が済むと思って、好きにさせて下さい」
はっきりとは言わなかったが、スカイが画家のことを言っていることはすぐにわかった。
「……」
アリーナが複雑な表情で何も言えずにスカイを見ていると、スカイはニッと笑った。
「心の整理がついたことを願っています」
”チリンチリン”
利用者が来たため、アリーナの返事を待たずにスカイは行ってしまう。
アリーアは、スカイの後ろ姿を見送りながら思う。
(……私は、心の整理はついたのかしら?)
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