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20:2月1日と手紙
しおりを挟む2月1日の朝4時。
アリーナは、画家の指定した場所には行かず、その場所が見える屋根裏の物置の窓から眺めていた。
ーーーしかし、彼は来なかった。
5時がすぎても、空が明るくなり始めても、彼は姿を現さなかった。
「やっぱり口だけだったわね……」
来なかった安堵と少し混じる複雑な気持ち。
自分が本当に想われていた訳ではないということを実感し、どうしても悲しい気持ちになってしまう。
「これで良かったのよ! 彼は彼の場所で、私は私の場所で頑張るのが1番良いのよ!」
こそこそすることなく、堂々と居られる場所でーーー
アリーナがスッキリした気持ちでいると、一週間後に画家から一通の手紙が届いた。
思いの丈がつらつらと連ねられた、分厚い手紙だった。
要約すると、
"知人に先日の図書館前の騒動を目撃されており、疑った妻に問いただされて愛人の存在を認めてしまった。
相手がアリーナだとは知られていない。
離婚を切り出したが認めてくれない。
妻と子を置いて家を出ようとしたが、子供に嫌だと泣いて縋られて出来なかった”
この様な内容だった。
(結局"子ども"なのね)
子供のことは好きじゃないとずっと言っていた彼だが、自分の子は可愛いようだ。
(今まで子どものことは気にしていない素ぶりだったのに、ここに来て子どもを出して来るなんて卑怯ね。子どもを理由にしたら全て許されるとでも思っているのかしら?)
アリーナは少し"イラッ"とはしたが、大して気にはしていなかった。
もうどうでも良かったのだ。
アリーナを一番苛立たせたのは、最後のメッセージだった。
"一年後には必ず離縁して迎えに行くから、待っていて欲しい"
これを読んだ瞬間、虫唾がはしった。
自分の行っていた行為がよくないことだということはわかっている。
妻子への罪悪感もある。
けれど、画家への罪悪感も未練も、もうなかった。
(奥様ごめんなさい。でも、その夫を選んだのはあなたです。私は去るのでどうぞ思うようになさって下さい)
アリーナは画家を幸せにはできないし、画家もアリーナを幸せにはできない。
2人が一緒にいて、明るい未来は来ない。
それを確信しているアリーナに迷いはなかった。
手紙を燃やすと部屋を出て、母の仕事を手伝いに執務室へ向かったのだった……
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