22 / 46
22:プロポーズ
しおりを挟む
時間が止まった。
……と感じるほど、一瞬全ての時が止まったようにアリーナは感じた。
それほどスカイの発言は、アリーナにとって突拍子もないものだった。
「……今、有りえないことが聞こえました」
「何と聞こえましたか?」
「有り得ないこと過ぎて、とてもではありませんが口に出来ません」
目を真ん丸に見開いたまま、アリーナを軽く首を横に振った。
(有り得ないわ!!!)
スカイは苦笑いをする。
「驚かせてしまいましたね。では、もう一度言いますので、今度はしっかりと聞いていて下さいね」
アリーナは再び固まり、目を更に見開く。
スカイは身構えたアリーナの右手をとり、跪く。
そしてその手の甲へ唇をそっとつけ、アリーナを見上げた。
「結婚して下さい」
つい最近まで不倫をしていたアリーナに、まさかこんな小説の中のような完璧なシーンが訪れるなんて、一体だれが誰が想像しただろうか?
この完璧なプロポーズが本物だと理解したアリーナは、顔を真っ赤にして固まった。
「良い返事なら今聞きます。悪い返事なら今は聞きません。少しでも良いので考えて下さい」
「……私は、強い女性になりたいのです。他人に依存するのではなく、自分の足で自分の幸せを掴むことが出来る……」
戸惑いの表情で言うアリーナに、スカイは顔を顰める。
「……いい返事しか今は受け付けていないのですが?」
「……ごめんなさい。でも、今あなたと結婚したら私は成長できません」
真っ直ぐにスカイを見て、アリーナははっきりと言った。
「……」
スカイも真っ直ぐにアリーナの瞳を見つめる。
”ビュッ”
ひとつ大きく風が吹いて、アリーナの髪がバサッと顔にかかった。
髪で一瞬視界が遮られ、その髪を手でよけると再びスカイの顔が目の前にある。
先程とは違う、少し寂しそうな表情で……
「返事は保留ということにしておいて下さい。いつまででも待ちますから。アリーナ様が幸せな結婚をするまでは……」
「何故、そんな……」
「”今はそのタイミングではない”という、その理由だけで諦めるつもりはありません」
「……そうではなく、私に拘る理由はありませんよね?」
「あります。ずっと慕っていました。あなたと初めて会った3年前からずっと。あなたが大人になるのを待っていたら、こんなことに……。とても後悔しました。さっさと婚約にもっていっていれば良かったと。……しかし、あなたと過ごす図書館での穏やかな時間が好きだったのです……。そしてあなたにも、自分から私を想って欲しかった……」
いっきに捲し立てられたスカイの言葉に、アリーナは驚きを隠せない。
「私は後悔しました。なので、もう後悔をしないように外堀を埋めようと思いました。スライトス男爵夫人には許可をいただいております」
「えっ?……あ……」
アリーナはハッとした。
これが、”十分すぎる報酬”か。
スカイは”外堀を埋める”という言い方をしたが、アリーナは嫌な感情は抱かなかった。
スカイには感謝の気持ちの方が大きい。
アリーナにとってスカイは”きちんとした大人”だった。
信頼していた。
そんな人に想いを寄せられて嫌な訳がない。
「以前私が”恋のパワーは凄い”と言ったのを覚えていますか?」
「……はい」
「私はあなたを想う気持ちで、あの図書館を購入しました。あなたとの大切な場所ですから。……あの図書館は書庫を城の図書館へ移して閉館する予定だったのです」
初めて知る事実に、アリーナは驚く。
(私のために、週2日しか開園できないのに買い取ったのね……)
妙に納得しながら、真面目で緊張の色を浮かべているスカイの瞳をジッと見る。
画家の瞳には常に家族を感じていた。
アリーナのことを見ていても、瞳の奥に家族を感じずにはいられなかった。
しかし今、目の前のスカイには自分しか映っていない。
アリーナには、それがとても嬉しかった。
「……わかりました。スカイ様自信をみて、判断させていただきます。そのために本日は一旦保留とさせていただきます」
真剣な表情でそう言うアリーナを見て、スカイはホッとした表情をした。
「ありがとうございます」
それと同時にアリーナは思う、(どうかスカイも冷静な判断をしますように)と。
スカイの気持ちを疑っている訳ではないが、執着しているだけの可能性はある。
”恋は盲目”
叶わない恋ほど、執着してしまう……
そのことを、アリーナはよく知っているのだ。
……と感じるほど、一瞬全ての時が止まったようにアリーナは感じた。
それほどスカイの発言は、アリーナにとって突拍子もないものだった。
「……今、有りえないことが聞こえました」
「何と聞こえましたか?」
「有り得ないこと過ぎて、とてもではありませんが口に出来ません」
目を真ん丸に見開いたまま、アリーナを軽く首を横に振った。
(有り得ないわ!!!)
スカイは苦笑いをする。
「驚かせてしまいましたね。では、もう一度言いますので、今度はしっかりと聞いていて下さいね」
アリーナは再び固まり、目を更に見開く。
スカイは身構えたアリーナの右手をとり、跪く。
そしてその手の甲へ唇をそっとつけ、アリーナを見上げた。
「結婚して下さい」
つい最近まで不倫をしていたアリーナに、まさかこんな小説の中のような完璧なシーンが訪れるなんて、一体だれが誰が想像しただろうか?
この完璧なプロポーズが本物だと理解したアリーナは、顔を真っ赤にして固まった。
「良い返事なら今聞きます。悪い返事なら今は聞きません。少しでも良いので考えて下さい」
「……私は、強い女性になりたいのです。他人に依存するのではなく、自分の足で自分の幸せを掴むことが出来る……」
戸惑いの表情で言うアリーナに、スカイは顔を顰める。
「……いい返事しか今は受け付けていないのですが?」
「……ごめんなさい。でも、今あなたと結婚したら私は成長できません」
真っ直ぐにスカイを見て、アリーナははっきりと言った。
「……」
スカイも真っ直ぐにアリーナの瞳を見つめる。
”ビュッ”
ひとつ大きく風が吹いて、アリーナの髪がバサッと顔にかかった。
髪で一瞬視界が遮られ、その髪を手でよけると再びスカイの顔が目の前にある。
先程とは違う、少し寂しそうな表情で……
「返事は保留ということにしておいて下さい。いつまででも待ちますから。アリーナ様が幸せな結婚をするまでは……」
「何故、そんな……」
「”今はそのタイミングではない”という、その理由だけで諦めるつもりはありません」
「……そうではなく、私に拘る理由はありませんよね?」
「あります。ずっと慕っていました。あなたと初めて会った3年前からずっと。あなたが大人になるのを待っていたら、こんなことに……。とても後悔しました。さっさと婚約にもっていっていれば良かったと。……しかし、あなたと過ごす図書館での穏やかな時間が好きだったのです……。そしてあなたにも、自分から私を想って欲しかった……」
いっきに捲し立てられたスカイの言葉に、アリーナは驚きを隠せない。
「私は後悔しました。なので、もう後悔をしないように外堀を埋めようと思いました。スライトス男爵夫人には許可をいただいております」
「えっ?……あ……」
アリーナはハッとした。
これが、”十分すぎる報酬”か。
スカイは”外堀を埋める”という言い方をしたが、アリーナは嫌な感情は抱かなかった。
スカイには感謝の気持ちの方が大きい。
アリーナにとってスカイは”きちんとした大人”だった。
信頼していた。
そんな人に想いを寄せられて嫌な訳がない。
「以前私が”恋のパワーは凄い”と言ったのを覚えていますか?」
「……はい」
「私はあなたを想う気持ちで、あの図書館を購入しました。あなたとの大切な場所ですから。……あの図書館は書庫を城の図書館へ移して閉館する予定だったのです」
初めて知る事実に、アリーナは驚く。
(私のために、週2日しか開園できないのに買い取ったのね……)
妙に納得しながら、真面目で緊張の色を浮かべているスカイの瞳をジッと見る。
画家の瞳には常に家族を感じていた。
アリーナのことを見ていても、瞳の奥に家族を感じずにはいられなかった。
しかし今、目の前のスカイには自分しか映っていない。
アリーナには、それがとても嬉しかった。
「……わかりました。スカイ様自信をみて、判断させていただきます。そのために本日は一旦保留とさせていただきます」
真剣な表情でそう言うアリーナを見て、スカイはホッとした表情をした。
「ありがとうございます」
それと同時にアリーナは思う、(どうかスカイも冷静な判断をしますように)と。
スカイの気持ちを疑っている訳ではないが、執着しているだけの可能性はある。
”恋は盲目”
叶わない恋ほど、執着してしまう……
そのことを、アリーナはよく知っているのだ。
14
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
『やりたくないからやらないだけ 〜自分のために働かない選択をした元貴族令嬢の静かな失踪〜』
鷹 綾
恋愛
「やりたくないから、やらないだけですわ」
婚約破棄をきっかけに、
貴族としての役割も、評価も、期待も、すべてが“面倒”になった令嬢ファーファ・ノクティス。
彼女が選んだのは、復讐でも、成り上がりでもなく――
働かないという選択。
爵位と領地、屋敷を手放し、
領民の未来だけは守る形で名領主と契約を結んだのち、
彼女はひっそりと姿を消す。
山の奥で始まるのは、
誰にも評価されず、誰にも感謝せず、
それでも不自由のない、静かな日々。
陰謀も、追手も、劇的な再会もない。
あるのは、契約に基づいて淡々と届く物資と、
「何者にもならなくていい」という確かな安心だけ。
働かない。
争わない。
名を残さない。
それでも――
自分の人生を、自分のために選び切る。
これは、
頑張らないことを肯定する物語。
静かに失踪した元貴族令嬢が、
誰にも縛られず生きるまでを描いた、
“何もしない”ことを貫いた、静かな完結譚。
【完結】時計台の約束
とっくり
恋愛
あの日、彼は約束の場所に現れなかった。
それは裏切りではなく、永遠の別れの始まりだった――。
孤児院で出会い、時を経て再び交わった二人の絆は、すれ違いと痛みの中で静かに崩れていく。
偽りの事故が奪ったのは、未来への希望さえも。
それでも、彼を想い続ける少女の胸には、小さな命と共に新しい未来が灯る。
中世異世界を舞台に紡がれる、愛と喪失の切ない物語。
※短編から長編に変更いたしました。
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
恋の締め切りには注意しましょう
石里 唯
恋愛
侯爵令嬢シルヴィアは、ウィンデリア国で2番目に強い魔力の持ち主。
幼馴染の公爵家嫡男セドリックを幼いころから慕っている。成長につれ彼女の魔力が強くなった結果、困った副作用が生じ、魔法学園に入学することになる。
最短で学園を卒業し、再びセドリックと会えるようになったものの、二人の仲に進展は見られない。
そうこうしているうちに、幼い頃にシルヴィアが魔力で命を救った王太子リチャードから、
「あと半年でセドリックを落とせなかったら、自分の婚約者になってもらう」と告げられる。
その後、王太子の暗殺計画が予知されセドリックもシルヴィアも忙殺される中、シルヴィアは半年で想いを成就させられるのか…。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。なろうサイトでは番外編・後日談をシリーズとして投稿しています。
【完結】冷徹公爵、婚約者の思い描く未来に自分がいないことに気づく
22時完結
恋愛
冷徹な公爵アルトゥールは、婚約者セシリアを深く愛していた。しかし、ある日、セシリアが描く未来に自分がいないことに気づき、彼女の心が別の人物に向かっていることを知る。動揺したアルトゥールは、彼女の愛を取り戻すために全力を尽くす決意を固める。
【完結】祈りの果て、君を想う
とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。
騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。
そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、
ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。
愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。
沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。
運命ではなく、想いで人を愛するとき。
その愛は、誰のもとに届くのか──
※短編から長編に変更いたしました。
白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。
健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。
父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。
白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる