背徳の恋のあとで

ひかり芽衣

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24:バトル①

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それからというもの、アリーナは一日中母について仕事を習った。
母ティーナは、本心ではスカイとうまくいって欲しいと思っていたし、スカイと婚約をして嫁ぐ準備に励んでほしいと思っていた。
しかし、何も言わなかった。
少し前の無気力なアリーナに比べれば、今の意欲的なアリーナを見ることでホッとできたからだ。



ある日、母のお遣いで王都へ行くついでに、母に図書館で本を借りてきて欲しいと頼まれた。
必要だと言われたため断れないが、母に本を頼まれたのは初めてで、アリーナは少し沈黙の後押し(圧)を感じるのだった……


「こんにちは」

スカイからプロポーズを受けて2週間、久しぶりの対面だったがスカイは拍子抜けするほどいつも通りだった。

「……こんにちは……」

(私の勘違いで、なかったことになっているのかしら?)

なんて考えながら”ジーッ”とスカイを見ていると、視線に耐えられなくなったスカイが小声で呟いた。

「わざと自然にしているのです」

スカイの耳が赤くなったのに気づき、アリーナもつられて頬を染める。

「あ、あの。この本を母に頼まれて……」

「ああ、これならこちらですよ」

アリーナの差し出したメモを見ると、スカイは仕事人の顔になる。
スカイの後ろをついて行きながら、アリーナは少し胸の鼓動がいつもより早いのを感じていた……




「ではお気をつけて。あまり間をあけずに、またいらして下さいね」

図書館の外まで見送ってくれたスカイは、少し恥ずかしそうに控え目にそう言った。
釣られて少し羞恥心を感じながら、アリーナが返事をしようとした次の瞬間……

「アリーナ!!!」

呼ばれて振り返ると、そこには画家がいた。
顔色が悪く、少し頬がこけている。
少しやつれた、切羽詰まった様子にアリーナは息を飲む。

咄嗟にアリーナの前に立ちはだかったスカイが、小声でアリーナに問う。

「つけ回されているのですか?」

「……はい。暫く見なかったのですけど……」

そう、最近は姿を見なかったため(もう諦めたのか)とアリーナは油断していた。

「私が話をつけてもいいですか?」

「……いいえ、私が話をします。場所を貸していただけますか?」

二人のこそこそ話と、男がアリーナの盾となったことで、画家は更に表情が強張っている。

「アリーナ、2人で話そう!!!」

またしてもアリーナの名前と共に大声で叫ぶ画家。
その声で人が少しずつ集まって来ている。
馬車の前では侍女もあたふたとしているのが見えた。

「こんにちは。インジャー画伯、何か絵画購入に伴うトラブルが発生しているようですね。相手はこのようなか弱い女性です。そのような態度では恐怖心を植え付けてしまいますよ? 私が話し合いの場所を提供いたします。どうぞこちらへいらして下さい」

スカイの巧みな言葉に、アリーナはホッとする。

(それと同時に”インジャー画伯”か……。私はずっとつい名前を出すことのないように、名前を呼ばない様にしていたのに……)

人目もはばからずアリーナに話し掛けるだけではなく、アリーナの名前を大声で叫ぶその行為は、少なくとも好意を寄せている相手にするものではない。

「アリーナ様、私も同席するのが場所を提供する条件です」

「なっ……二人で話を!」

応接室までは素直について来た画家だが、2人きりではないと知り語気を強めた。

「画家様、彼はここの図書館管理者でとても信頼できる方です。そして、私たちの事情も知っています」

「えっ……? 話したのかい?」

妻子のいる自分のことを心配して、自分との不倫関係が他人に知られない様にと気を付けていたアリーナの行動に、画家は驚いた顔をする。

「あなたにとやかく言われる筋合いはありません。先ほども、あれほど人前で私の名前を大声で叫んでいておいて……」

画家と向かい合わせに座ったアリーナは、少しムッとした顔で言う。
ドアの前に立っているスカイは黙っている。

「あ……すまない。つい、夢中で……」

「何故、それほど冷静さに欠けているのですか?」

淡々としたアリーナの態度に、画家は少し冷静になりつつ肩を落としていく。

「……俺は今、地獄だよ。”不倫相手と幸せになるなんて許さない、絶対に別れない”と妻には罵られ、子供にも一緒にいたいと泣かれて……」

「……それで?」

「……かけおちしよう」

アリーナはスカイの表情が気になったが、入り口に背を向けて座っているアリーナは、スカイの様子を伺うことはできなかった。

「……あなたがあの日、来なかったのではありませんか」

”ガタッ”

ドアの方で音がしてアリーナが振り返ると、スカイが少し動いていた。
どうやら、態勢を崩してしまったようだ。
スカイは少し驚いた顔をしている。

(そう言えば駆け落ちのことは、スカイ様には話してはいなかったわね……)

スカイがいてくれるおかげか、アリーナはとても冷静だった。







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