30 / 46
30:希望②
しおりを挟む
「……しかし……」
いつも通りの毅然としているスカイに、アリーナは迷いながら続ける。
「そう上手くいくでしょうか? 母や私も同罪で罰せられるのでは……」
「普通に伝えるだけではその可能性もありますね。そこは、布石を敷いておきます」
(布石……?)
迷いのないスカイを見ていると、スカイの言うように上手くいく気がしてくる。
しかし、うまくいかなければアリーナや母、お腹の子も破滅する。
けれど、父親と思いたくもないスライトス男爵の悪事を暴き、今まで好き勝手に生きて来たツケを払わせたいとも思う。
それに何より、悪事を見て見ぬふりをするような母親にはなりたくはない。
子供に胸の張れる母親になりたい、そうありたい。
アリーナが頭の中でグルグルと考えを巡らせていると、ふと声がした。
「アリーナ、話しに乗りましょう」
ドアから入って来たのは、母ティーナだった。
「アリーナ様、すまない。外で聞いていてもらったんだ。母上想いの君が、自分の一存では決められないだろうと思って」
申し訳なさそうなスカイの顔を見た後でティーナを見ると、そこには決意漲る領主の顔があった。
(もうここの実質的な領主はお母様よ。お父様ではないわ)
アリーナも決意を決め、勢いよく立ち上がる。
「ええ。この領地をいただきましょう! これ以上スライトス男爵の好きにされたら堪らないわ!」
それを聞いたスカイも立ち上がった。
「全力で手伝わせてもらいます」
スカイのその言葉に、アリーナはハッと我に返る。
「あ、あの……スカイ様には何の得もありません……」
「私の仕事は先程伝えたはずです。ついでに、この家紋を助ける手助けをするだけのことです」
”なんてことない”と言う顔で言うスカイに、ティーナは深々と頭を下げる。
「娘を助けて貰った上に今度は家紋まで……感謝してもしきれません。この度のことが成功した暁には、精一杯のお礼をさせていただきます」
「気持ちだけで結構です。先ほども言ったように、仕事の一環ですので」
「しかし……」
食い下がるティーナに、スカイは苦笑いする。
「……ではうまくいった暁には、私の願いを叶えて頂ければ嬉しく思います」
「はい、喜んで!」
ティーナは微笑む。
凛々しいスカイの姿がアリーナは眩しい。
(この人は、どこまで私を助けてくれたら気が済むのかしら……?)
そんな無粋な思考を抱いてしまうほど、うぬぼれてしまうほど、スカイの気持ちを感じる。
しかし領主を目指すということは、お腹の子の問題がなくてもスカイとは一緒になれないということだ。
スカイは今回の手助けが最後のつもりなのかもしれない、とアリーナは思った。
胸がギューッと締め付けられるのを感じる。
アリーナはスカイから目を逸をらし、胸のときめきに気づかないフリをするしかなかった。
「では、作戦会議をしましょう!!!」
アリーナは大きな声でふっきるように、はっきりとそう宣言したのだった。
いつも通りの毅然としているスカイに、アリーナは迷いながら続ける。
「そう上手くいくでしょうか? 母や私も同罪で罰せられるのでは……」
「普通に伝えるだけではその可能性もありますね。そこは、布石を敷いておきます」
(布石……?)
迷いのないスカイを見ていると、スカイの言うように上手くいく気がしてくる。
しかし、うまくいかなければアリーナや母、お腹の子も破滅する。
けれど、父親と思いたくもないスライトス男爵の悪事を暴き、今まで好き勝手に生きて来たツケを払わせたいとも思う。
それに何より、悪事を見て見ぬふりをするような母親にはなりたくはない。
子供に胸の張れる母親になりたい、そうありたい。
アリーナが頭の中でグルグルと考えを巡らせていると、ふと声がした。
「アリーナ、話しに乗りましょう」
ドアから入って来たのは、母ティーナだった。
「アリーナ様、すまない。外で聞いていてもらったんだ。母上想いの君が、自分の一存では決められないだろうと思って」
申し訳なさそうなスカイの顔を見た後でティーナを見ると、そこには決意漲る領主の顔があった。
(もうここの実質的な領主はお母様よ。お父様ではないわ)
アリーナも決意を決め、勢いよく立ち上がる。
「ええ。この領地をいただきましょう! これ以上スライトス男爵の好きにされたら堪らないわ!」
それを聞いたスカイも立ち上がった。
「全力で手伝わせてもらいます」
スカイのその言葉に、アリーナはハッと我に返る。
「あ、あの……スカイ様には何の得もありません……」
「私の仕事は先程伝えたはずです。ついでに、この家紋を助ける手助けをするだけのことです」
”なんてことない”と言う顔で言うスカイに、ティーナは深々と頭を下げる。
「娘を助けて貰った上に今度は家紋まで……感謝してもしきれません。この度のことが成功した暁には、精一杯のお礼をさせていただきます」
「気持ちだけで結構です。先ほども言ったように、仕事の一環ですので」
「しかし……」
食い下がるティーナに、スカイは苦笑いする。
「……ではうまくいった暁には、私の願いを叶えて頂ければ嬉しく思います」
「はい、喜んで!」
ティーナは微笑む。
凛々しいスカイの姿がアリーナは眩しい。
(この人は、どこまで私を助けてくれたら気が済むのかしら……?)
そんな無粋な思考を抱いてしまうほど、うぬぼれてしまうほど、スカイの気持ちを感じる。
しかし領主を目指すということは、お腹の子の問題がなくてもスカイとは一緒になれないということだ。
スカイは今回の手助けが最後のつもりなのかもしれない、とアリーナは思った。
胸がギューッと締め付けられるのを感じる。
アリーナはスカイから目を逸をらし、胸のときめきに気づかないフリをするしかなかった。
「では、作戦会議をしましょう!!!」
アリーナは大きな声でふっきるように、はっきりとそう宣言したのだった。
26
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【完結】時計台の約束
とっくり
恋愛
あの日、彼は約束の場所に現れなかった。
それは裏切りではなく、永遠の別れの始まりだった――。
孤児院で出会い、時を経て再び交わった二人の絆は、すれ違いと痛みの中で静かに崩れていく。
偽りの事故が奪ったのは、未来への希望さえも。
それでも、彼を想い続ける少女の胸には、小さな命と共に新しい未来が灯る。
中世異世界を舞台に紡がれる、愛と喪失の切ない物語。
※短編から長編に変更いたしました。
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
伝える前に振られてしまった私の恋
喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
第二部:ジュディスの恋
王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。
周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。
「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」
誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。
第三章:王太子の想い
友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。
ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。
すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。
コベット国のふたりの王子たちの恋模様
【完結】冷徹公爵、婚約者の思い描く未来に自分がいないことに気づく
22時完結
恋愛
冷徹な公爵アルトゥールは、婚約者セシリアを深く愛していた。しかし、ある日、セシリアが描く未来に自分がいないことに気づき、彼女の心が別の人物に向かっていることを知る。動揺したアルトゥールは、彼女の愛を取り戻すために全力を尽くす決意を固める。
白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。
健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。
父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。
白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる