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31:男爵と異母兄弟
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それからというもの、アリーナとティーナは証拠集めや準備を進めた。
自分達では手詰まりだったにも関わらず、スカイの捜査によりあっという間に証拠が出揃った。
アリーナとティーナは、その証拠をより強固なものにする肉付け資料の準備を、過去の帳簿とにらめっこしながら主に行った。
悪阻もおちついてくれたため、アリーナは作業に集中することが出来た。
(悪阻がないと元気に育っているのか心配にはなるけれどね)
そんなふうに思っており、早く胎動が出現するのを楽しみにしていた。
母にはまだ伝えておらず、この度のことが解決したら伝える予定だ。
ひとつ厄介なことは、今までは月に一度程度しか屋敷へ顔を出さなかったスライトス男爵が、しばしば顔を出すようになっていることだ。
そしてある日、ついに例の息子を連れて来た。
それも、大きな荷物と共に……
「こいつが息子のライアンだ」
応接間のアリーナの前に座った男は、不愛想ににこりともせず頭を軽く下げた。
アリーナと、さほど変わらない年に見える。
「ライアンです。ライアン・スライトスにもうすぐなります」
とんでもない自己紹介を真顔でするこの男に、ティーナが固まっているのがわかる。
「はははっ! 相変わらず面白いやつだな! 良い自己紹介だ! だが、事実だからな!」
ゲラゲラと愉快そうに笑っている男爵を視界にいれないようにして、ティーナとアリーナは常識的な自己紹介をした。
「……おいくつですか?」
「今年18になります」
アリーナの問いに淡々と答えるその男は、金髪グリーンの瞳のスライトス男爵とは全くにていない赤毛に茶色の瞳だった。
母親が赤毛に茶色の瞳なのだろうか。
「……私と同じ年……」
母ティーナがアリーナ妊娠中の浮気で出来た子だろうことが、容易に想像できた。
アリーナの冷めた瞳は完全に無視して、スライトス男爵は明るく口を開く。
「そろそろ正式に養子にして、領地経営の勉強をさせようと思うのだ」
「……誰が教えるのですか?」
ティーナも冷めた瞳で淡々と口を開く。
「それは、わしに決まっているだろう!」
ここで初めて男爵は語気を強めた。
遠回しに、普段仕事をしていないことを責められたように感じたのだろう。
「今日からライアンはここに住まわせるからな!」
「……なぜ今なのですか?」
継がせるつもりだったのなら、もっと早く連れて来る道もあったはずだ。
何故今なのかと、ティ―ナは単純に疑問に思った。
「今までは彼女が渋っていたのだ。堅苦しい生活は嫌だと。しかし、そうは言っていられなくなったからな」
「……どうゆうことですか?」
「しらばっくれるな! アリーナはクラーク公爵家の三男のところに嫁ぐのだろう? その際にはライアンを当主として紹介せんとな」
アリーナは開いた口が塞がらなかった。
「そのような話はありません」
「しらばっくれるなと言っているだろう!」
聞く耳を持たないため、放っておくこととした。
それよりももっと、聞き捨てならない発言があったからだ。
「この方の母親、つまりは男爵の浮気相手の方もこの屋敷へお連れになるおつもりですか?」
ここで初めてライアンの表情が変わった。
「母は浮気相手ではありません。本妻です。本気の相手なのですから」
「はは。そうだな! お前の母親はもはや愛人なんかではない、本妻だ。そしてこの女はただの従業員だ」
アリーナとティーナは固まる。
次の瞬間、アリーナは怒りが湧いて来た。
「……お母様のことをただの従業員だなんて……」
するとスッとアリーナの手の上に、ティーナは手を重ねた。
アリーナがそっとティーナを見ると、ティーナは首を横に振る。
(私も男爵様のことをこの建物の所有者としか思っていません)
アリーナは言葉にするのを精一杯堪えて、心の中で思うだけに留めた。
すると、アリーナは背後からの並々ならぬ気配を感じそっと見ると、執事が鬼の形相でライアンと男爵を睨み付けていた。
アリーナは心の中で笑った。
(お母様は想われているわね……。良かったわ……)
そうなると、男爵やどうやら異母兄弟であるらしいこの男のことも、アリーナはとことんどうでもよく思う。
それはティーナも同じようで、ハアッと小さい溜め息をひとつ吐き出してから、口を開く。
「丁度良いですわ。明日私たちは王都へ用事があって出掛けるのです。どうぞ屋敷の案内など有意義にお過ごしください。では、明日の準備がありますので、私たちはこれで……」
そう、明日はついに決行日なのだ。
ライアンをもてなせだのなんだ言っている男爵を無視して、ティーナとアリーナは大切な書類を執務室から自室へすべて移したのだった……
自分達では手詰まりだったにも関わらず、スカイの捜査によりあっという間に証拠が出揃った。
アリーナとティーナは、その証拠をより強固なものにする肉付け資料の準備を、過去の帳簿とにらめっこしながら主に行った。
悪阻もおちついてくれたため、アリーナは作業に集中することが出来た。
(悪阻がないと元気に育っているのか心配にはなるけれどね)
そんなふうに思っており、早く胎動が出現するのを楽しみにしていた。
母にはまだ伝えておらず、この度のことが解決したら伝える予定だ。
ひとつ厄介なことは、今までは月に一度程度しか屋敷へ顔を出さなかったスライトス男爵が、しばしば顔を出すようになっていることだ。
そしてある日、ついに例の息子を連れて来た。
それも、大きな荷物と共に……
「こいつが息子のライアンだ」
応接間のアリーナの前に座った男は、不愛想ににこりともせず頭を軽く下げた。
アリーナと、さほど変わらない年に見える。
「ライアンです。ライアン・スライトスにもうすぐなります」
とんでもない自己紹介を真顔でするこの男に、ティーナが固まっているのがわかる。
「はははっ! 相変わらず面白いやつだな! 良い自己紹介だ! だが、事実だからな!」
ゲラゲラと愉快そうに笑っている男爵を視界にいれないようにして、ティーナとアリーナは常識的な自己紹介をした。
「……おいくつですか?」
「今年18になります」
アリーナの問いに淡々と答えるその男は、金髪グリーンの瞳のスライトス男爵とは全くにていない赤毛に茶色の瞳だった。
母親が赤毛に茶色の瞳なのだろうか。
「……私と同じ年……」
母ティーナがアリーナ妊娠中の浮気で出来た子だろうことが、容易に想像できた。
アリーナの冷めた瞳は完全に無視して、スライトス男爵は明るく口を開く。
「そろそろ正式に養子にして、領地経営の勉強をさせようと思うのだ」
「……誰が教えるのですか?」
ティーナも冷めた瞳で淡々と口を開く。
「それは、わしに決まっているだろう!」
ここで初めて男爵は語気を強めた。
遠回しに、普段仕事をしていないことを責められたように感じたのだろう。
「今日からライアンはここに住まわせるからな!」
「……なぜ今なのですか?」
継がせるつもりだったのなら、もっと早く連れて来る道もあったはずだ。
何故今なのかと、ティ―ナは単純に疑問に思った。
「今までは彼女が渋っていたのだ。堅苦しい生活は嫌だと。しかし、そうは言っていられなくなったからな」
「……どうゆうことですか?」
「しらばっくれるな! アリーナはクラーク公爵家の三男のところに嫁ぐのだろう? その際にはライアンを当主として紹介せんとな」
アリーナは開いた口が塞がらなかった。
「そのような話はありません」
「しらばっくれるなと言っているだろう!」
聞く耳を持たないため、放っておくこととした。
それよりももっと、聞き捨てならない発言があったからだ。
「この方の母親、つまりは男爵の浮気相手の方もこの屋敷へお連れになるおつもりですか?」
ここで初めてライアンの表情が変わった。
「母は浮気相手ではありません。本妻です。本気の相手なのですから」
「はは。そうだな! お前の母親はもはや愛人なんかではない、本妻だ。そしてこの女はただの従業員だ」
アリーナとティーナは固まる。
次の瞬間、アリーナは怒りが湧いて来た。
「……お母様のことをただの従業員だなんて……」
するとスッとアリーナの手の上に、ティーナは手を重ねた。
アリーナがそっとティーナを見ると、ティーナは首を横に振る。
(私も男爵様のことをこの建物の所有者としか思っていません)
アリーナは言葉にするのを精一杯堪えて、心の中で思うだけに留めた。
すると、アリーナは背後からの並々ならぬ気配を感じそっと見ると、執事が鬼の形相でライアンと男爵を睨み付けていた。
アリーナは心の中で笑った。
(お母様は想われているわね……。良かったわ……)
そうなると、男爵やどうやら異母兄弟であるらしいこの男のことも、アリーナはとことんどうでもよく思う。
それはティーナも同じようで、ハアッと小さい溜め息をひとつ吐き出してから、口を開く。
「丁度良いですわ。明日私たちは王都へ用事があって出掛けるのです。どうぞ屋敷の案内など有意義にお過ごしください。では、明日の準備がありますので、私たちはこれで……」
そう、明日はついに決行日なのだ。
ライアンをもてなせだのなんだ言っている男爵を無視して、ティーナとアリーナは大切な書類を執務室から自室へすべて移したのだった……
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