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38:新しい人生へ
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全てを話し終えた時、スカイは今までに見たことがない程、苦痛に満ちた表情をしていた。
その表情を見れば、スカイがどれだけアリーナのことを心配してくれているのかよく分かる。
そして、どれだけ想ってくれているのかも……
「アリーナ様、今回の騒動は王都とスライトス男爵領の堺で起きました。街のすぐそばで、私が連れていたクラーク公爵家の家臣を使って対処したこともあり、目立ち民にも知れ渡りました」
「そうなのですね……」
真面目な顔で言うスカイを見ながら、アリーナは複雑な気持ちだ。
(我がスライトス男爵家の評判が下がるわね……)
これからスライトス男爵を告発しようとしていたのだから、遅かれ少なかれそうなっていたのだが、いざそうなるとやはり情けない気持ちが湧いて来る。
「私はよかったと思っています。私が敷いていた布石と今回のスキャンダルが相まって、スライトス男爵の妻と娘への同情は十分に得られ、優位に話を進めることが出来ると思います」
「……」
「民に同情されている妻と子を裁くような、非道な国王陛下ではありませんので。あとは新しい領主として認めて貰えるかどうかです」
「そうですか……」
アリーナはホッとするも、緊張も憶える。
「今後の流れは、アリーナ様の体調が整うのを待って、国王陛下へ事の報告をしに登城ます。それまでは、ここでゆっくり休んで下さい」
「……ここは?」
「私の屋敷です。私はクラーク公爵家を出て、一人でここの屋敷で暮らしているのです。使用人も最低人数で、屋敷も大きすぎず快適で私は気に入っているので、アリーナ様にも気に入って貰えると嬉しいです」
スカイはそう言うと微笑んだ。
アリーナは起き上がろうとしてみたが、身体が全く言うことを聞かない。
「……自分ではどうにも出来そうにないので、お言葉に甘えてさせていただきます」
アリーナの返事を聞いたスカイは、とても嬉しそうな顔をした。
(迷惑を掛けるのに、何故これほど嬉しそうなのかしら?)
アリーナは何とも言えない、胸のときめきともやもやが入り混じった、複雑な気持ちだった。
(スカイ様と結婚することは出来ないのに……)
3日後、アリーナはスカイと共に城へやって来た。
大きな怪我はなかったため、休めばすぐに動けるようにはなった。
あちこち身体中が痛みはするが……
ティーナは男爵とライアンの騒動を聞いてざわついている領地の統制のために、登城するのは断念した。
「今まで集めた資料は前もって国王陛下へは渡し、経過も話しています。勿論、スライトス男爵夫人とアリーナ様が集めて下さった証拠も」
男爵とライアンはアリーナとティーナの集めた書類から盗んだものは、結局は男爵邸の自室に置いていただけだったため、すぐに見つかったのだ。
「……何から何までありがとうございます。……今日が最後ですね。よろしくお願いいたします」
アリーナの言葉にスカイは顔を顰めた。
「最後ではないですよ。今日が始まりとなる日です。アリーナ様と男爵夫人の新たな人生の」
アリーナは目を見開き、スカイを見た。
スカイの微笑みに泣きそうになる。
”この人が好きだ”
そう心から思う。
(今日国王陛下に認められれば、私は領主となって、このお腹の子とお母様と一緒に領地で生きて行くのよ)
「さあ、行きましょう!」
アリーナは自分を鼓舞して入城したのだった……
その表情を見れば、スカイがどれだけアリーナのことを心配してくれているのかよく分かる。
そして、どれだけ想ってくれているのかも……
「アリーナ様、今回の騒動は王都とスライトス男爵領の堺で起きました。街のすぐそばで、私が連れていたクラーク公爵家の家臣を使って対処したこともあり、目立ち民にも知れ渡りました」
「そうなのですね……」
真面目な顔で言うスカイを見ながら、アリーナは複雑な気持ちだ。
(我がスライトス男爵家の評判が下がるわね……)
これからスライトス男爵を告発しようとしていたのだから、遅かれ少なかれそうなっていたのだが、いざそうなるとやはり情けない気持ちが湧いて来る。
「私はよかったと思っています。私が敷いていた布石と今回のスキャンダルが相まって、スライトス男爵の妻と娘への同情は十分に得られ、優位に話を進めることが出来ると思います」
「……」
「民に同情されている妻と子を裁くような、非道な国王陛下ではありませんので。あとは新しい領主として認めて貰えるかどうかです」
「そうですか……」
アリーナはホッとするも、緊張も憶える。
「今後の流れは、アリーナ様の体調が整うのを待って、国王陛下へ事の報告をしに登城ます。それまでは、ここでゆっくり休んで下さい」
「……ここは?」
「私の屋敷です。私はクラーク公爵家を出て、一人でここの屋敷で暮らしているのです。使用人も最低人数で、屋敷も大きすぎず快適で私は気に入っているので、アリーナ様にも気に入って貰えると嬉しいです」
スカイはそう言うと微笑んだ。
アリーナは起き上がろうとしてみたが、身体が全く言うことを聞かない。
「……自分ではどうにも出来そうにないので、お言葉に甘えてさせていただきます」
アリーナの返事を聞いたスカイは、とても嬉しそうな顔をした。
(迷惑を掛けるのに、何故これほど嬉しそうなのかしら?)
アリーナは何とも言えない、胸のときめきともやもやが入り混じった、複雑な気持ちだった。
(スカイ様と結婚することは出来ないのに……)
3日後、アリーナはスカイと共に城へやって来た。
大きな怪我はなかったため、休めばすぐに動けるようにはなった。
あちこち身体中が痛みはするが……
ティーナは男爵とライアンの騒動を聞いてざわついている領地の統制のために、登城するのは断念した。
「今まで集めた資料は前もって国王陛下へは渡し、経過も話しています。勿論、スライトス男爵夫人とアリーナ様が集めて下さった証拠も」
男爵とライアンはアリーナとティーナの集めた書類から盗んだものは、結局は男爵邸の自室に置いていただけだったため、すぐに見つかったのだ。
「……何から何までありがとうございます。……今日が最後ですね。よろしくお願いいたします」
アリーナの言葉にスカイは顔を顰めた。
「最後ではないですよ。今日が始まりとなる日です。アリーナ様と男爵夫人の新たな人生の」
アリーナは目を見開き、スカイを見た。
スカイの微笑みに泣きそうになる。
”この人が好きだ”
そう心から思う。
(今日国王陛下に認められれば、私は領主となって、このお腹の子とお母様と一緒に領地で生きて行くのよ)
「さあ、行きましょう!」
アリーナは自分を鼓舞して入城したのだった……
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