背徳の恋のあとで

ひかり芽衣

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39:国王

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「国王陛下、お連れいたしました」

「アリーナ・スライトスでございます」

スカイに促されて一歩前に出たアリーナは、スカイの隣に並んだ。
椅子に座る国王をしっかりと見て、挨拶をする。

先王が病死し現国王が即位してから5年ほどになるが、安定した国益を保っており、国民からとても支持されている若い王だ。

「この度は大変だったようだな。事前に貰った資料には目を通し、スカイから報告も受けている」

薄っすら微笑みを浮かべて言う国王を、アリーナは緊張した顔でみる。

「農業の盛んなスライトス男爵領には、王都含め他の地域でも食糧確保に協力してもらいとても助かっておる。いつもご苦労」

「ありがとうございます」

緊張を崩さず言うアリーナに、国王はひとつ頷く。

「スライトス男爵領とは、各地契約した取り引き方法がある。それにも関わらず、取引の契約を正式に行っていない隣国に、隣国では不作な食物を通常より高値で個人的に販売し丸儲けしていたそうだな」

国王は変わらず穏やかだが威厳が滲み出ている。
変わらない様子で淡々と話す国王に、アリーナは唾を"ゴクリ"と飲み込んだ。

「……はい」

アリーナは国王から目を逸らずに言う。

「いち男爵家が、国家に無断で隣国と取引をしているとは……。当国では許していない行為だな。数年前不作だった年、通常よりも供給量が少なく民が苦しい想いをした年があったな? 資料によるとあの年もだった。許されない行為だ」

国王の表情が変わり、怒りを含んだのを感じた。

「はい……その年に、男爵の不可解な行動に気づきました。しかし証拠を掴めず、男爵に何を言っても知らぬふりをされて無駄でした」

迫力に気おされそうになりながらも、アリーナは勇気を出して口を開く。

「何年も前から知っていたと言うことだな?」

「……はい、そうです。信じていただけるかわかりませんが、私と母は父の行動を疑ってはいましたが、証拠を掴めずにおりました。父とは生活を共にしていないこともあり、私たちには行動を把握することが難しかったのです。しかし、この度スカイ様のお力添えで調べ上げることが出来、過去5年ほどそういった取引を行っていることがわかりました……」

「そうか。だから自分達には罪はないと言いたいのだな? 領主である一家の長がしでかしたことで、しかも知っていたというのに……」

「……っ!」

口を開こうとしたスカイを、アリーナは制した。
アリーナを見下ろす心配そうなスカイの目を見て、アリーナは首を横に振る。
国王が怒ることも、男爵だけではなく一家もろとも許さない可能性も、わかっていたことだ。

(ここまで来られたのはスカイ様のおかげよ。私たちがどうかなっても仕方がないわ)

「……本日ここに立つことが出来ているのはスカイ様のおかげです。スカイ様の力がなければ、真実を明らかにすることができず、私たちも不本意ながら悪事に手を貸す結果になってしまっていたに違いありません。本日このように明らかにすることができ、またその機会を下さり、ありがとうございます。罰は謹んでお受けいたします」

「アリーナ様!?」

スカイはショックを受けた顔でアリーナを見ている。

アリーナは罰を受ける覚悟の出来た顔で、国王をジッと見た。

「はははははっ!!!! そうか、覚悟は出来ているか。では、罰を言い渡す」

「陛下!!!」

スカイは慌てた顔で国王を見る。



「スカイと結婚してやってくれ」
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