40 / 46
40:嬉しくて悲しい
しおりを挟む
言葉にならない、驚いた顔で国王を見るアリーナとスカイの顔を見て、国王は吹き出して笑う。
「ははっ。アリーナ嬢、私は幼い頃からスカイを知っているのだ。そのスカイが最近不穏な動きをしていると思ったら、理由がこれとはな。どうやらスカイは君に相当入れ込んでいるようだ。どうか結婚してやってくれ」
「えっ……」
驚くアリーナの横で、スカイは少し頬を赤らめている。
「最近やたらと私の耳にスライトス男爵領の話が入って来ていたのだ。男爵は何年もずっと家に帰らずに愛人の所に入り浸っている、領地を守っているのは夫人と一人娘だとね」
「あっ!!!」
アリーナがスカイの言っていた”布石”という言葉を思い出していると、スカイがコホンと咳ばらいをした。
「陛下、そのことは私たちに任せていただけると幸いです」
国王はニヤニヤしながらスカイを見ている。
アリーナは、そんなおどけた国王の顔を戸惑いながら見ていた。
「はいはい、そうっとしておいてやるかな。で、私は罪を犯した者だけを罰する国王だ。父親と共謀していた訳でも協力していた訳でもないのだから、アリーナ嬢や母上を処罰するつもりはないから安心しろ。それで、褒美は何が良い?」
アリーナは"ゴクリ"と大きく唾を飲み込んだ。
「我が国の大切な資源を、国外へ勝手に流出されていたことを教えてくれたのだ。褒美をつかわそう。何なりと言ってみろ」
国王の言葉にスカイを見ると、スカイは微笑みを浮かべて頷く。
「……私がスライトス男爵家を継ぎ、領主となることを許可してはいただけませんか?」
その言葉に、国王は初めて驚いた顔をした。
「ほうっ……。スカイも賛成なのか?」
「はい」
「良いのか?」
国王はスカイに畳み掛けて質問する。
王は驚いた顔を隠さない。
婚姻が難しくなるからだ。
スカイは公爵家の三男なのだ……
「はい」
スカイの迷いのない返事を聞いた国王は、真面目な顔となり一瞬考えた後で頷いた。
「残念な気持ちもあるが……。わかった、認めよう」
アリーナは"ホッ"と胸を撫でおろした。
しかし同時に"チクッ"と胸に痛みが走るのも感じた。
(スカイ様は、私との結婚をすっかり諦めたということね……。当然のことだけれど……)
自分が断っておいて勝手なのはわかっているが、スカイが言っていた”うまくいった暁の褒美”はアリーナとのことを希望するのではないかと、何となく思っていたのだ。
アリーナは、そんな自意識過剰な自分が急に恥ずかしくなった。
泣きたい気分になっていると、国王の声が耳に届く。
「いつも安定した食糧供給を行い国を支えてくれているスライトス男爵領だ。ノウハウを熟知した者にこれからも管理をして貰いたい。アリーナ嬢、よろしく頼むぞ」
「はい!!!」
アリーナは滲む目を上げ、しっかりと国王を見て返事をした。
返事をすると同時に、アリーナの目から涙がポロポロと溢れ落ちる。
スカイも国王も、アリーナが嬉しくて泣いているのだと思っただろう。
勿論嬉しいし、責任を感じて身が引き締まる思いだ。
しかしアリーナは今、悲しくて泣いていた……
(明日から頑張るから、今日だけは許して……)
アリーナは挨拶を終えて国王の部屋を出た後もずっと、涙が止まらなかった。
スカイの屋敷へ戻る途中の馬車の中も、戻ってからも。
スカイは何も言わずに、アリーナの涙が人目につかないように配慮をしてくれ、そしてただずっとそばにいてくれた……
何も言わずに……
※『お詫び』の投稿を削除したので、栞が変なことになった方がいたらすみません!
「ははっ。アリーナ嬢、私は幼い頃からスカイを知っているのだ。そのスカイが最近不穏な動きをしていると思ったら、理由がこれとはな。どうやらスカイは君に相当入れ込んでいるようだ。どうか結婚してやってくれ」
「えっ……」
驚くアリーナの横で、スカイは少し頬を赤らめている。
「最近やたらと私の耳にスライトス男爵領の話が入って来ていたのだ。男爵は何年もずっと家に帰らずに愛人の所に入り浸っている、領地を守っているのは夫人と一人娘だとね」
「あっ!!!」
アリーナがスカイの言っていた”布石”という言葉を思い出していると、スカイがコホンと咳ばらいをした。
「陛下、そのことは私たちに任せていただけると幸いです」
国王はニヤニヤしながらスカイを見ている。
アリーナは、そんなおどけた国王の顔を戸惑いながら見ていた。
「はいはい、そうっとしておいてやるかな。で、私は罪を犯した者だけを罰する国王だ。父親と共謀していた訳でも協力していた訳でもないのだから、アリーナ嬢や母上を処罰するつもりはないから安心しろ。それで、褒美は何が良い?」
アリーナは"ゴクリ"と大きく唾を飲み込んだ。
「我が国の大切な資源を、国外へ勝手に流出されていたことを教えてくれたのだ。褒美をつかわそう。何なりと言ってみろ」
国王の言葉にスカイを見ると、スカイは微笑みを浮かべて頷く。
「……私がスライトス男爵家を継ぎ、領主となることを許可してはいただけませんか?」
その言葉に、国王は初めて驚いた顔をした。
「ほうっ……。スカイも賛成なのか?」
「はい」
「良いのか?」
国王はスカイに畳み掛けて質問する。
王は驚いた顔を隠さない。
婚姻が難しくなるからだ。
スカイは公爵家の三男なのだ……
「はい」
スカイの迷いのない返事を聞いた国王は、真面目な顔となり一瞬考えた後で頷いた。
「残念な気持ちもあるが……。わかった、認めよう」
アリーナは"ホッ"と胸を撫でおろした。
しかし同時に"チクッ"と胸に痛みが走るのも感じた。
(スカイ様は、私との結婚をすっかり諦めたということね……。当然のことだけれど……)
自分が断っておいて勝手なのはわかっているが、スカイが言っていた”うまくいった暁の褒美”はアリーナとのことを希望するのではないかと、何となく思っていたのだ。
アリーナは、そんな自意識過剰な自分が急に恥ずかしくなった。
泣きたい気分になっていると、国王の声が耳に届く。
「いつも安定した食糧供給を行い国を支えてくれているスライトス男爵領だ。ノウハウを熟知した者にこれからも管理をして貰いたい。アリーナ嬢、よろしく頼むぞ」
「はい!!!」
アリーナは滲む目を上げ、しっかりと国王を見て返事をした。
返事をすると同時に、アリーナの目から涙がポロポロと溢れ落ちる。
スカイも国王も、アリーナが嬉しくて泣いているのだと思っただろう。
勿論嬉しいし、責任を感じて身が引き締まる思いだ。
しかしアリーナは今、悲しくて泣いていた……
(明日から頑張るから、今日だけは許して……)
アリーナは挨拶を終えて国王の部屋を出た後もずっと、涙が止まらなかった。
スカイの屋敷へ戻る途中の馬車の中も、戻ってからも。
スカイは何も言わずに、アリーナの涙が人目につかないように配慮をしてくれ、そしてただずっとそばにいてくれた……
何も言わずに……
※『お詫び』の投稿を削除したので、栞が変なことになった方がいたらすみません!
10
あなたにおすすめの小説
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
私との婚約は、選択ミスだったらしい
柚木ゆず
恋愛
※5月23日、ケヴィン編が完結いたしました。明日よりリナス編(第2のざまぁ)が始まり、そちらが完結後、エマとルシアンのお話を投稿させていただきます。
幼馴染のリナスが誰よりも愛しくなった――。リナスと結婚したいから別れてくれ――。
ランドル侯爵家のケヴィン様と婚約をしてから、僅か1週間後の事。彼が突然やってきてそう言い出し、私は呆れ果てて即婚約を解消した。
この人は私との婚約は『選択ミス』だと言っていたし、真の愛を見つけたと言っているから黙っていたけど――。
貴方の幼馴染のリナスは、ものすごく猫を被ってるの。
だから結婚後にとても苦労することになると思うけど、頑張って。
あなたを愛する心は珠の中
れもんぴーる
恋愛
侯爵令嬢のアリエルは仲の良い婚約者セドリックと、両親と幸せに暮らしていたが、父の事故死をきっかけに次々と不幸に見舞われる。
母は行方不明、侯爵家は叔父が継承し、セドリックまで留学生と仲良くし、学院の中でも四面楚歌。
アリエルの味方は侍従兼護衛のクロウだけになってしまった。
傷ついた心を癒すために、神秘の国ドラゴナ神国に行くが、そこでアリエルはシャルルという王族に出会い、衝撃の事実を知る。
ドラゴナ神国王家の一族と判明したアリエルだったが、ある事件がきっかけでアリエルのセドリックを想う気持ちは、珠の中に封じ込められた。
記憶を失ったアリエルに縋りつくセドリックだが、アリエルは婚約解消を望む。
アリエルを襲った様々な不幸は偶然なのか?アリエルを大切に思うシャルルとクロウが動き出す。
アリエルは珠に封じられた恋心を忘れたまま新しい恋に向かうのか。それとも恋心を取り戻すのか。
*なろう様、カクヨム様にも投稿を予定しております
【完】真実の愛
酒酔拳
恋愛
シャーロットは、3歳のときに、父親を亡くす。父親は優秀な騎士団長。父親を亡くしたシャーロットは、母と家を守るために、自ら騎士団へと入隊する。彼女は強い意志と人並外れた反射神経と素早さを持っている。
シャーロットは、幼き時からの婚約者がいた。昔からのシャーロットの幼馴染。しかし、婚約者のアルフレッドは、シャーロットのような強い女性を好まなかった。王宮にやってきた歌劇団のアーニャの虜になってしまい、シャーロットは婚約を破棄される。
【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。
忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──
【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない
天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。
だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。
【完結】赤い薔薇なんて、いらない。
花草青依
恋愛
婚約者であるニコラスに婚約の解消を促されたレイチェル。彼女はニコラスを愛しているがゆえに、それを拒否した。自己嫌悪に苛まれながらもレイチェルは、彼に想いを伝えようとするが・・・・・・。 ■《夢見る乙女のメモリアルシリーズ》1作目の外伝 ■拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』のスピンオフ作品。続編ではありません。
■「第18回恋愛小説大賞」の参加作品です ■画像は生成AI(ChatGPT)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる