背徳の恋のあとで

ひかり芽衣

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40:嬉しくて悲しい

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言葉にならない、驚いた顔で国王を見るアリーナとスカイの顔を見て、国王は吹き出して笑う。

「ははっ。アリーナ嬢、私は幼い頃からスカイを知っているのだ。そのスカイが最近不穏な動きをしていると思ったら、理由がこれとはな。どうやらスカイは君に相当入れ込んでいるようだ。どうか結婚してやってくれ」

「えっ……」

驚くアリーナの横で、スカイは少し頬を赤らめている。

「最近やたらと私の耳にスライトス男爵領の話が入って来ていたのだ。男爵は何年もずっと家に帰らずに愛人の所に入り浸っている、領地を守っているのは夫人と一人娘だとね」

「あっ!!!」

アリーナがスカイの言っていた”布石”という言葉を思い出していると、スカイがコホンと咳ばらいをした。

「陛下、そのことは私たちに任せていただけると幸いです」

国王はニヤニヤしながらスカイを見ている。
アリーナは、そんなおどけた国王の顔を戸惑いながら見ていた。

「はいはい、そうっとしておいてやるかな。で、私は罪を犯した者だけを罰する国王だ。父親と共謀していた訳でも協力していた訳でもないのだから、アリーナ嬢や母上を処罰するつもりはないから安心しろ。それで、褒美は何が良い?」

アリーナは"ゴクリ"と大きく唾を飲み込んだ。

「我が国の大切な資源を、国外へ勝手に流出されていたことを教えてくれたのだ。褒美をつかわそう。何なりと言ってみろ」

国王の言葉にスカイを見ると、スカイは微笑みを浮かべて頷く。

「……私がスライトス男爵家を継ぎ、領主となることを許可してはいただけませんか?」

その言葉に、国王は初めて驚いた顔をした。

「ほうっ……。スカイも賛成なのか?」

「はい」

「良いのか?」

国王はスカイに畳み掛けて質問する。
王は驚いた顔を隠さない。
婚姻が難しくなるからだ。
スカイは公爵家の三男なのだ……

「はい」

スカイの迷いのない返事を聞いた国王は、真面目な顔となり一瞬考えた後で頷いた。

「残念な気持ちもあるが……。わかった、認めよう」

アリーナは"ホッ"と胸を撫でおろした。
しかし同時に"チクッ"と胸に痛みが走るのも感じた。

(スカイ様は、私との結婚をすっかり諦めたということね……。当然のことだけれど……)

自分が断っておいて勝手なのはわかっているが、スカイが言っていた”うまくいった暁の褒美”はアリーナとのことを希望するのではないかと、何となく思っていたのだ。
アリーナは、そんな自意識過剰な自分が急に恥ずかしくなった。

泣きたい気分になっていると、国王の声が耳に届く。

「いつも安定した食糧供給を行い国を支えてくれているスライトス男爵領だ。ノウハウを熟知した者にこれからも管理をして貰いたい。アリーナ嬢、よろしく頼むぞ」

「はい!!!」

アリーナは滲む目を上げ、しっかりと国王を見て返事をした。

返事をすると同時に、アリーナの目から涙がポロポロと溢れ落ちる。
スカイも国王も、アリーナが嬉しくて泣いているのだと思っただろう。

勿論嬉しいし、責任を感じて身が引き締まる思いだ。
しかしアリーナは今、悲しくて泣いていた……

(明日から頑張るから、今日だけは許して……)

アリーナは挨拶を終えて国王の部屋を出た後もずっと、涙が止まらなかった。
スカイの屋敷へ戻る途中の馬車の中も、戻ってからも。

スカイは何も言わずに、アリーナの涙が人目につかないように配慮をしてくれ、そしてただずっとそばにいてくれた……

何も言わずに……







※『お詫び』の投稿を削除したので、栞が変なことになった方がいたらすみません!
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