背徳の恋のあとで

ひかり芽衣

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44:エール

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ーーー2日後。


領地の早急に対処すべく問題は、ティーナと相談をして方向性を決めた。
それを済ませたアリーナは、すぐに馬車へ乗った。
スカイの屋敷へ迎うために……




「やあ、アリーナ様。もう会いに来て下さるなんて光栄です。何か問題がありましたか?」

「はい、大きな問題があったので参りました」

穏やかに出迎えてくれたスカイだったが、アリーナの笑みのない様子に苦笑いする。

「……伺いましょう」

アリーナは一口お茶を啜って心を落ち着けてから、口を開く。

「何故母にあのようなことを言ったのですか?」

「……あのようなこと?」

「私のお腹にいる子は自分の子で、これから結婚するつもりだと」

やや起った様子のアリーナに、スカイは更に苦笑いを深くした。

「いけませんでしたか?」

「いけないに決まっています!!!」

「何故ですか?」

「私と一緒になってもスカイ様にとってデメリットばかりでメリットが一切なく、幸せにはなれないからです」

アリーナは迷いなく、一気に言う。

「私にとってはメリットだらけなのですが?」

「そんな訳ないに決まっています!」

スカイは”はあっ”と、ひとつ大きな溜め息をついた。
アリーナは”ビクッ”と身体を震わせる。

「あなたは何もわかっていない。私がどれだけあなたのことを想っているのか。あなたと一緒にいられるだけで、どれだけ幸せなのか」

「えっ?」

あまりに大きな溜め息で(呆れられた)と思ったアリーナは、驚く。

「この屋敷で一緒に過ごせて、更に確信しました。そして、諦めないと決めました」

スカイは微笑む。

「お願いなので、私の幸せを勝手に決めないで下さい。自分の幸せは自分で決めます」

アリーナは緊張の糸が解けたように、涙が溢れる。

「……私と一緒にいて幸せになれるのですか?」

「はい、間違いなく」

「でもっ……」

アリーナは続きを口にすることが出来ない。
両手で顔を覆い、泣く事しか出来ずにいると、スカイは立ち上がってアリーナの側に来た。

そして、そっとアリーナの身体を包み込んだ。

「続きをどうぞ?」

アリーナをそっと抱きしめながら言うスカイに、アリーナは涙がどんどん溢れて来る。

「……他の人との子供がいるのに……」

そう言った瞬間……



”ポコッ”



「えっ!???」

アリーナは急に大きな声をあげた。

「どうしましたか!?」

「い……今、お腹が蹴られて……初めて……」

驚きに一瞬涙が止まったアリーナだが、今度は嬉し涙を流し始める。

「この子、一生懸命生きているわ……。邪魔者みたいに言うから怒ったのかもしれないわ……。ふふっ」

アリーナの泣き笑いを愛おしそうに見つめていたスカイは、ポケットからハンカチを出してそっとアリーナの涙を拭った。
そしてもう一度、先程よりももう少し強い力でアリーナを抱きしめる。

「きっと違いますよ。お腹の子からのエールではないでしょうか? ”ママ頑張れ”って」

「”ママ頑張れ”?」

「はい、そうです。”怖がっていないで飛び込んでごらんよ”って」

微笑みながら言うスカイに、スカイの胸の中でアリーナは思わず笑ってしまう。

「……随分と都合の良い解釈ですね」

「はい。何でも良いように解釈しておけば良いのですよ」

「……」

雰囲気にのまれそうになったアリーナは、一度スカイから目を逸らす。

「アリーナ様、私は子供が好きです。是非とも子供は欲しいと思っています。しかし、子供に恵まれない家庭も多いと聞きます。なので、このように最初から子供に恵まれていて嬉しいです」

「でも……」

「そりゃ、今はあのお方への嫉妬心はとてもあります。けれど大丈夫です。これからアリーナ様とお腹の子と一緒に人生を歩むのは私なのですから。アリーナ様の中での一番になってみせます」

「……」

あまりに真面目な声色に、アリーナが再びスカイを見上げると、とても真面目な表情をしている。

「あっ……子供の次なのは我慢します」

「……ふふっ」

真面目な顔のままでそう言うので、思わずアリーナは笑ってしまった。
そして、暖かくて安らぐスカイの胸の中で、スカイへの愛おしさが今にも爆発しそうだ。
いや……爆発した。

スカイのことが、愛おしくて愛おしくて愛おしくて……

アリーナはどう伝えれば良いのかわからなかった。
だから、本能に任せることにした。

(お腹の子も後押ししてくれたみたいだしね……)

そんな言い訳かつ"都合の良い解釈"も心の中でしながら、アリーナはスカイに口づけをしたのだった……ーーー









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