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15:真っ黒な心
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クリスマスも年越しも、今年もいつも通り父親は帰って来なかった。
例年通り、母といつもより豪華な食事をしただけだった。
食事が済むとアリーナは部屋へ引きこもる。
母と執事が逢瀬を行いやすいように……
部屋の窓から夜空を見上げていると悲しくなった。
目が涙で滲んでいると、なにか白いものを感じる。
涙を拭って見てみると、雪がパラパラと降り始めていた。
今年は例年より暖かかったため、初雪だ。
「雪……」
画家も家族と初雪を見ているのだろうか?
笑顔で……
アリーナは胸が苦しくて苦しくて仕方がなかった。
(誰か助けて……)
勿論”誰か”なんていない。
画家とのことは誰にも言っていないのだ。
それなりに”悪いことをしている”という意識はあった。
他人に後ろ指を指されるのも嫌だった。
アリーナはただ、画家に恋をしているだけだから……
アリーナはふと、思い出した。
机の引き出しから一通の手紙を取り出す。
以前、画家に妻子がいることをしって病んだ時に、スカイがくれた手紙だ。
アリーナはその手紙を握り締め、外套を持つと外へ駆けだした。
この時間は御者が馬の世話をしているはずだ。
そっと誰にも会わない様に行くと、予想通りだった。
「お嬢様、せめて侍女をお連れ下さい」
「皆今日はクリスマスを楽しんでいるわ。侍女にも今日は仕事を早く切り上げて良いと伝えているの。だから
お願い」
御者はしぶしぶ馬を出してくれた。
(いないならそれでいい。ただジッとしていられないの……)
図書館の閉館時間は確か18時だったはずだ。
馬を飛ばしても到着は22時過ぎだろうから、当然開いていない。
誰もいるはずはない。
それでいい。
自分が孤独だと思い知るだけでもいい。
悲劇のヒロインぶっているのかもしれないが、今は全く心に余裕はない。
図書館へ向かうつもりだったが、ふと思い立って画家の家に寄った。
灯りが灯り、煙突からは煙が出ている。
馬車を少し遠くに停め、そっと歩いて近づき窓から中を覗いた。
小さな家だ。
そこが家族団欒の部屋だということはすぐにわかった。
予想通り、画家と妻、女の子が食卓を囲んでいる。
予想通りではなかったことは、思っていた以上に楽しそうな空気だったことと、思っていた以上に娘が画家ににていたこと、そして思っていた以上に妻が美人で優しそうな人だったことだ。
次にアリーナは、アトリエに寄った。
真っ暗な部屋。
”トントン”
ノックをしてみるも、当然音沙汰はない。
そして最後に、アリーナは図書館へ寄った。
扉は勿論閉まっている。図書館は真っ暗だ。
「当たり前よね……」
アリーナは孤独をさらに実感しただけだった。
(私には、イベントを一緒に祝う人すらいないのね……)
アリーナは馬車へ戻り帰路へつこうとしたその時、図書館の2階の奥の部屋の灯りが灯っていることに気付く。
(誰かいる……)
アリーナは急激に気持ちが昂るのを感じた。
”一人じゃない”
そう感じたのだ。
馬車を降りると、庭から灯りが付いている部屋の下に回り込んだ。
「こんばんわ!」
大きな声を一度上げてみるも、辺りは静まり返ったままだ。
そこで、地面にある小石をそっとその窓に向かって投げてみた。
窓に見事命中したが、音沙汰なし。
「もうっ!」
二度目はもう少し多きな石を、今度は思いっきり投げた。
”パリーンッッッ!!!!!!”
今度は近隣にも聞こえるのではないかと言う程、大きな音がした。
(しまった!!!)
アリーナが顔面蒼白で固まっていると、部屋から声がした。
「誰だ?!」
スカイの声だった。
アリーナは驚く程に自分がホッとしたのを感じた。
「……アリーナです……」
弱々しく、しかし届く程度の大きさで、アリーナは名乗った。
すると、ガシャガシャとガラスを踏む音がした後、割れた窓からスカイが顔を覗かせる。
スカイの顔を見た瞬間に信じられない安堵感に襲われ、アリーナはその場に座り込んでしまった。
「アリーナ様!!!」
驚いた顔をしたスカイはその窓からすぐに姿を消し、数分後に庭から現れた。
「アリーナ様、大丈夫ですか!?」
座り込んでいるアリーナのもとに駆け寄って膝をつき、心配そうに顔を覗き込んで来る。
そんなスカイを見て、アリーナは真っ黒な心が灰色へと少し色が薄くなるのを感じた。
そして次の瞬間、一気に罪悪感と自己嫌悪が押し寄せて来た……
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「……窓を割ったことですか? ……それとも、他のことですか?」
真顔だが優しい瞳でそう言うスカイに、アリーナは涙が溢れて止まらなかった……
例年通り、母といつもより豪華な食事をしただけだった。
食事が済むとアリーナは部屋へ引きこもる。
母と執事が逢瀬を行いやすいように……
部屋の窓から夜空を見上げていると悲しくなった。
目が涙で滲んでいると、なにか白いものを感じる。
涙を拭って見てみると、雪がパラパラと降り始めていた。
今年は例年より暖かかったため、初雪だ。
「雪……」
画家も家族と初雪を見ているのだろうか?
笑顔で……
アリーナは胸が苦しくて苦しくて仕方がなかった。
(誰か助けて……)
勿論”誰か”なんていない。
画家とのことは誰にも言っていないのだ。
それなりに”悪いことをしている”という意識はあった。
他人に後ろ指を指されるのも嫌だった。
アリーナはただ、画家に恋をしているだけだから……
アリーナはふと、思い出した。
机の引き出しから一通の手紙を取り出す。
以前、画家に妻子がいることをしって病んだ時に、スカイがくれた手紙だ。
アリーナはその手紙を握り締め、外套を持つと外へ駆けだした。
この時間は御者が馬の世話をしているはずだ。
そっと誰にも会わない様に行くと、予想通りだった。
「お嬢様、せめて侍女をお連れ下さい」
「皆今日はクリスマスを楽しんでいるわ。侍女にも今日は仕事を早く切り上げて良いと伝えているの。だから
お願い」
御者はしぶしぶ馬を出してくれた。
(いないならそれでいい。ただジッとしていられないの……)
図書館の閉館時間は確か18時だったはずだ。
馬を飛ばしても到着は22時過ぎだろうから、当然開いていない。
誰もいるはずはない。
それでいい。
自分が孤独だと思い知るだけでもいい。
悲劇のヒロインぶっているのかもしれないが、今は全く心に余裕はない。
図書館へ向かうつもりだったが、ふと思い立って画家の家に寄った。
灯りが灯り、煙突からは煙が出ている。
馬車を少し遠くに停め、そっと歩いて近づき窓から中を覗いた。
小さな家だ。
そこが家族団欒の部屋だということはすぐにわかった。
予想通り、画家と妻、女の子が食卓を囲んでいる。
予想通りではなかったことは、思っていた以上に楽しそうな空気だったことと、思っていた以上に娘が画家ににていたこと、そして思っていた以上に妻が美人で優しそうな人だったことだ。
次にアリーナは、アトリエに寄った。
真っ暗な部屋。
”トントン”
ノックをしてみるも、当然音沙汰はない。
そして最後に、アリーナは図書館へ寄った。
扉は勿論閉まっている。図書館は真っ暗だ。
「当たり前よね……」
アリーナは孤独をさらに実感しただけだった。
(私には、イベントを一緒に祝う人すらいないのね……)
アリーナは馬車へ戻り帰路へつこうとしたその時、図書館の2階の奥の部屋の灯りが灯っていることに気付く。
(誰かいる……)
アリーナは急激に気持ちが昂るのを感じた。
”一人じゃない”
そう感じたのだ。
馬車を降りると、庭から灯りが付いている部屋の下に回り込んだ。
「こんばんわ!」
大きな声を一度上げてみるも、辺りは静まり返ったままだ。
そこで、地面にある小石をそっとその窓に向かって投げてみた。
窓に見事命中したが、音沙汰なし。
「もうっ!」
二度目はもう少し多きな石を、今度は思いっきり投げた。
”パリーンッッッ!!!!!!”
今度は近隣にも聞こえるのではないかと言う程、大きな音がした。
(しまった!!!)
アリーナが顔面蒼白で固まっていると、部屋から声がした。
「誰だ?!」
スカイの声だった。
アリーナは驚く程に自分がホッとしたのを感じた。
「……アリーナです……」
弱々しく、しかし届く程度の大きさで、アリーナは名乗った。
すると、ガシャガシャとガラスを踏む音がした後、割れた窓からスカイが顔を覗かせる。
スカイの顔を見た瞬間に信じられない安堵感に襲われ、アリーナはその場に座り込んでしまった。
「アリーナ様!!!」
驚いた顔をしたスカイはその窓からすぐに姿を消し、数分後に庭から現れた。
「アリーナ様、大丈夫ですか!?」
座り込んでいるアリーナのもとに駆け寄って膝をつき、心配そうに顔を覗き込んで来る。
そんなスカイを見て、アリーナは真っ黒な心が灰色へと少し色が薄くなるのを感じた。
そして次の瞬間、一気に罪悪感と自己嫌悪が押し寄せて来た……
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「……窓を割ったことですか? ……それとも、他のことですか?」
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