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第19話 選択
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「……帰還の魔法式が、完成しました」
ユリウスさんがそう告げたのは、夕焼けが差し込む図書室だった。
私は開きかけた本をぱたんと閉じて、顔を上げた。
「帰還……って、あの、元の世界へ?」
「はい。条件つきですが、そちらへ帰ることができます」
この異世界に来てから初めて、あっちへ戻るという可能性を目の前に突きつけられて……正直、私は混乱していた。
「でも、どうして今になって……?」
「実は、こはるさんの記録映像が向こうで広まったとき、あちらの世界の座標情報の一部が反応していたんです。魔法的な残留情報というか……」
「……SNSって、こわい」
思わずつぶやくと、ユリウスさんが苦笑した。
「ともかく、帰還は可能です。ただし、座標は常に動いているので、この魔法陣が使えるのは長くてもあと三日程度でしょう。……そして、再び帰ってこられるかどうかは、わかりません」
三日間だけ。
そのあいだに、一生ここにいるか、帰るか、選ばなければならない。
「……そんな、突然言われても……」
目の前がぼやけた。
「帰れる」と聞いたはずなのに、胸の奥が、ひりひり痛んだ。
◇
その日の夜、私は子供たちと静かな時間を過ごしていた。
セナくんは私の膝の上で絵本を読み、エミリアちゃんや双子たちはクッションに埋もれて夢の中。
ガルドさんの子たちも、すっかり安心しきった顔で寝息を立てていた。
(もし、私がこのままいなくなったら……この子たち、どう思うんだろう)
そんな考えが、頭の中をぐるぐるとめぐる。
「戻るべき場所」って、いったいどこなんだろう。
「私らしさ」って、どこにあるんだろう。
ふと、セナくんがぽつりと呟いた。
「おねえちゃん、……いっちゃうの?」
答えられなかった。
けれど、そっと彼の頭を撫でると、セナくんはきゅっと私の服を握りしめた。
「ぼく、またひとりになるの、やだよ」
その声が、胸の奥に真っ直ぐ突き刺さった。
私は――もう、分かっていたのかもしれない。
◇
三日後。
帰還のための魔法陣は、王宮の転移室にまだ残っていた。
ユリウスさん、レオンさん、ガルドさん、シリル様――そして子供たち全員が見守る中、私はそっと一歩、魔法陣の方へ足を進めた。
「決断の時だ」
シリル様が静かに言う。
「こはる。無理するな。俺たちは、どんな選択でも――」
「……ううん。決めました」
私はみんなの顔を、ひとりひとり見渡した。
不安そうなセナくん。唇をかむエミリアちゃん。心配げな大人たち。
そして、胸を張って言った。
「私は――ここに残ります」
その瞬間、魔法陣がふっと静かに光を失い、床の模様が消えていく。
「ここが、私の居場所です。子供たちが待ってくれる場所、大人たちが信じてくれる場所。……私が、私として生きていける場所です」
それは、初めて「自分の意志」で選んだ未来だった。
涙を浮かべて駆け寄ってきた子供たちを抱きしめながら、私はようやく心から思った。
――私は、この世界に必要とされている。
だから、もう迷わない。
ここで、私らしく、生きていく。
ユリウスさんがそう告げたのは、夕焼けが差し込む図書室だった。
私は開きかけた本をぱたんと閉じて、顔を上げた。
「帰還……って、あの、元の世界へ?」
「はい。条件つきですが、そちらへ帰ることができます」
この異世界に来てから初めて、あっちへ戻るという可能性を目の前に突きつけられて……正直、私は混乱していた。
「でも、どうして今になって……?」
「実は、こはるさんの記録映像が向こうで広まったとき、あちらの世界の座標情報の一部が反応していたんです。魔法的な残留情報というか……」
「……SNSって、こわい」
思わずつぶやくと、ユリウスさんが苦笑した。
「ともかく、帰還は可能です。ただし、座標は常に動いているので、この魔法陣が使えるのは長くてもあと三日程度でしょう。……そして、再び帰ってこられるかどうかは、わかりません」
三日間だけ。
そのあいだに、一生ここにいるか、帰るか、選ばなければならない。
「……そんな、突然言われても……」
目の前がぼやけた。
「帰れる」と聞いたはずなのに、胸の奥が、ひりひり痛んだ。
◇
その日の夜、私は子供たちと静かな時間を過ごしていた。
セナくんは私の膝の上で絵本を読み、エミリアちゃんや双子たちはクッションに埋もれて夢の中。
ガルドさんの子たちも、すっかり安心しきった顔で寝息を立てていた。
(もし、私がこのままいなくなったら……この子たち、どう思うんだろう)
そんな考えが、頭の中をぐるぐるとめぐる。
「戻るべき場所」って、いったいどこなんだろう。
「私らしさ」って、どこにあるんだろう。
ふと、セナくんがぽつりと呟いた。
「おねえちゃん、……いっちゃうの?」
答えられなかった。
けれど、そっと彼の頭を撫でると、セナくんはきゅっと私の服を握りしめた。
「ぼく、またひとりになるの、やだよ」
その声が、胸の奥に真っ直ぐ突き刺さった。
私は――もう、分かっていたのかもしれない。
◇
三日後。
帰還のための魔法陣は、王宮の転移室にまだ残っていた。
ユリウスさん、レオンさん、ガルドさん、シリル様――そして子供たち全員が見守る中、私はそっと一歩、魔法陣の方へ足を進めた。
「決断の時だ」
シリル様が静かに言う。
「こはる。無理するな。俺たちは、どんな選択でも――」
「……ううん。決めました」
私はみんなの顔を、ひとりひとり見渡した。
不安そうなセナくん。唇をかむエミリアちゃん。心配げな大人たち。
そして、胸を張って言った。
「私は――ここに残ります」
その瞬間、魔法陣がふっと静かに光を失い、床の模様が消えていく。
「ここが、私の居場所です。子供たちが待ってくれる場所、大人たちが信じてくれる場所。……私が、私として生きていける場所です」
それは、初めて「自分の意志」で選んだ未来だった。
涙を浮かべて駆け寄ってきた子供たちを抱きしめながら、私はようやく心から思った。
――私は、この世界に必要とされている。
だから、もう迷わない。
ここで、私らしく、生きていく。
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