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コヨタ

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第19話 風邪引きたちの騒動

第19話・4 潜む少年と少女

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 夜。機関内の特別保管庫では、風邪龍の核の欠片が厳重に保管されていた。

 そして、蛍光灯が静かに灯る資料室では、端末の光がセセラの横顔を照らしている。

(……駿河キイ、再調査)

 セセラは端末上に残る僅かなアクセス記録を追っていた。
 既に“個人情報”の大半は抹消され、足取りも不明。

 だが──。

(……やっぱり、あいつ……ただの転校生じゃなかったよな)

 机の上には、オバケ龍の出現記録、風邪龍の解析データ、どちらにも共通する“霧状の龍因子の構造パターン”が重ねて表示されていた。

(あれはだ。偶然じゃない。……なのに、本人はそのまま消える)

(あんな器用な真似、普通の人間じゃ無理だ)

 隣では、分析班の若手職員が肩を寄せて画面を覗き込む。

「薊野さん。これ……見てください。風邪龍とオバケ龍、それぞれの“胞子型龍因子”に含まれてた添加因子……すごく珍しいものです。自然発生じゃなくて、に見えます」

「……合成? つまり“調整された個体”ってことか?」

「はい。誰かが、作ったのような……」

 その言葉に、セセラの眉が一際鋭く寄る。

(……調整された龍、学校という実験場)

(そして、生徒として入り込み、終わったら消えた少年)

 全てが、偶然では済まされない。

「……こりゃ、そろそろ上に報告すべきかもな」

 セセラは椅子を離れ、資料を手に廊下へと歩き出す。

 だが、扉を開ける前、ふと足を止めた。

(……でも、レイラには……まだ、言えねえな)

 レイラのあの笑顔。
 初めての友達だと口にしたときの、あの心からの嬉しそうな表情。

 それを壊すような言葉は、まだ投げられない。

「……くそ、こういうときだけが邪魔すんのな……」

 苦笑混じりに呟いて、セセラは歩みを再開した。


 ◇


 ──時は進み、深夜の情報解析室。

(……またアクセス痕跡、あったな)

 セセラは静かに画面をスクロールさせながら、都市監視カメラのログを解析していた。

 不自然な動きが、いくつかの地点で確認されている。

 映像の中には、フードを被った小柄な人物の姿──。

(……歩き方、クセがある。あの時のあいつと同じだ)

 セセラの指が画面の一点で止まった。
 そこには、深夜の高層ビルへと入り込むひとつの人影。

 このビルは『霞都第八セントラルタワー』と呼ばれる、殆どが空きテナントの閑散とした建物。

(表の出入り履歴はゼロ。だが……こっち。搬入出用通路、非常階段、定期的に使われてる……)

 フロアの一角、現在未使用の区画に不定期な通電と微弱なネット接続。

(……住んでる……いや……、棲んでやがるな、これ)

 キッと鋭くなるセセラの目。

(逃げても無駄だ。記録は薄くても、気配までは消えねえんだよ……駿河キイ)

 通信機に手を伸ばしかけるが、そこで一瞬だけ躊躇う。

「…………」

 セセラは自然と、端末の記録ではなく、あの時レイラが見せた表情を思い出していた。

 ──『キイ、元気してるかな』……。

「…………ッ……」

 思わず、舌打ちを打つ。

(だから嫌なんだよ。こういうのは……)

 それでもセセラは白衣を脱ぐと代わりに黒いジャケットを羽織り、情報を端末にまとめながら立ち上がった。

(俺が行く。会って、話して……それでもまだ逃げるってんなら、確保対象だ)

 その足音が、静まり返った廊下に消えていく。

 そして歩みの先には──既に人の出入りを拒む、高層ビルの空きのはずのフロアが息を潜めていた。


 ◇


 ──霞都第八セントラルタワー、最上階の空きテナント。

 物音ひとつしない静けさの中、微かに埃を纏った空調の匂いと、微弱な電源の残光だけが“誰かの生活の痕跡”を物語っていた。

(……なんだここ、廃墟みてえだ)

 セセラは鍵のかかっていない非常階段を上がりきり、足音を消してビル内の奥へと進む。

「…………」

 古い事務所のような間取りを抜けた先──その一室に、独特の気配があった。

 メンテナンスが行き届いていなく、もはやボロボロの扉。鍵も無い。

(……ここだな)

 ──カツッ、カツッ……

 今度は逆に軽やかな足音を響かせながら、セセラは堂々と入室しその姿を見せる。

「……あれ!? キイくん、こんばんはぁ~! 久しぶり~! てか何してんのそこでぇ~? ねえ先生のこと覚えてるぅ~?」

 突如放ったその声は、いつものあざといせんせぇ調子。
 底抜けに明るく、無邪気で、人懐こい。

 ──だが、その目は笑っていても心だけは一瞬たりとも笑っていなかった。

「ねえ、何してんのそこで?」

 部屋の中央、窓の外を見下ろしていた少年が──。

「…………ッ」

 その声にようやく、ゆっくりと振り向く。

 ──かつての地味な学生姿とはまるで違う。

 淡く揺れる紫から水色へのグラデーションの髪。
 左目は透き通るような青、右目は水晶のような白。

 それでも、セセラは目の前の少年がキイだと確信していた。

「……あの時の、先生……」

 キイの唇が僅かに動く。

「なぜ……? ハハ……偶然ですか? 奇遇だなあ……」

 笑っているのに、どこか哀しそうな、虚ろな、けれど確実に毒を含んだ笑み。
 それを目にした瞬間、セセラの気配が変わった。

「あのねぇ、君にちょっと……聞きたいことがあってぇ~」

 とろけるような笑みを保ったまま、セセラは一歩、また一歩と間合いを詰めていく。

「…………」

 キイは軽く身を引くが、背後は壁。
 逃げ場は既に、無い。

「……やっぱり、隠れてたねぇ。君ぃ」

「ボクは別に……隠れてるつもりじゃなかったんですけど」

「そっかそっか~……じゃあ、話は早いねぇ?」

 その瞬間だった。

 ──ド ン ッ !!!

 セセラは片足を壁に向けて強く蹴りつけ、キイのすぐ横にその足を突き立てた。

 振動と共に、古い壁材が僅かに軋む。

「……機関ウチのしつこさをナメんじゃねえよ」

 その声は低く、冷たく、鋭い。
 瞳に宿るのは肉食獣のような狩る者の眼光。笑顔は完全に消えていた。

「お前が何者かは知らねえ。でも、人間の皮を被って、俺たちの前で好き勝手やって逃げて、今度は龍を持ち込んだ疑いまである……」

「……ッ……」

 キイは驚いたように目を瞬かせたが、すぐに小さく笑った。

「……ふふ。やっぱり、先生ってだったんですね。ボク、すっかり騙されてたな」

「黙れ。テメェの言葉遊びにはもう乗らねえ。ここで吐かせる」

「…………」

「さもなきゃ連行だ。どっちがいい?」

 息が詰まりそうなほどの威圧。
 それでも、キイは壁際に追い詰められながらも、微かに肩を揺らした。

「……どっちを選んでも、ラクにはさせてくれないんでしょうね。ボクに」

「そうだな。選べるうちに選んどけよ。俺が優しいうちにな」

 この瞬間、ふたりの空気が完全に切り替わった。
 かつての学校でのすれ違いはもう無い。

 これは明確な、対話と捜査の境界線だった。

「…………」

 足1本分の距離で壁際に追い詰められたキイは、顔も体もセセラの方へ向けている。

「……学校で発生した2種の龍、お前が持ち込んだものだろ?」

 セセラのその問いに、キイは僅かな逡巡すら無く──。

「はい。ボクです」

 あっさりと、認めた。

「…………!」

 セセラの目が一瞬だけ細くなる。
 想定よりも遥かに軽い返答に、一拍の面食らい。

「……悪びれる気は、ねえんだな?」

「ありませんよ? だって……正しいかどうかじゃなくて、必要かどうかで動いたんです」

「……何の『必要』だよ。何で龍を持ち込んだ」

 するとキイは、ふっと肩の力を抜いて笑った。

「……試したかったんです」

「あ? 試したかった?」

 ピクッと跳ねるセセラの眉。

 キイは視線を外さぬまま、静かに言葉を続ける。

「あなたたちが……どう動くのかが、気になったんです。オバケも風邪も、どちらも巻き込まれる形だったでしょう。そういう状況で、あなたたちはどう判断して、どう守るのかなって」

 まるで、観察者のような言い方だった。

 セセラの目が据わる。

「……それはお前だけの好奇心か?」

 キイはゆっくりと──。
 極僅かに、首を横に振った。

「ボクの好奇心でもあるけど……その“好奇心”は、ボクだけのモノではないんです」

 それは一見、意味不明な返答。
 だが、セセラの表情に微かな影が差す。

「……ああ、なんとなくわかったわ。お前ひとりの問題じゃねえってことね」

 次の瞬間。

 ──ド カ ッッ !!!

 一瞬足を引いたかと思えば、セセラはその勢いのままキイの腹部を横から思い切り蹴り飛ばした。

「──ッ、は……ッ!!」

 軽い体が横滑りし、古びた床の上をゴロゴロと転がる。

 キイは咳き込みながら、床に手をついた。

「……げほっ、う……ひどい……」

 それでも──目は笑っていた。

「先生が生徒にそんなことしていいんですか? 懲戒免職どころじゃ済まないですよ……?」

 セセラは無言のまま、キイへと歩み寄る。
 その表情は、怒りというよりも確信。

「……もう転校してんだろ。それに俺はあそこじゃ偽モンなんだよ。だから関係ねえ」

 その言葉と同時にキイのすぐ傍に立ち、冷たく見下ろす。

「……テメェ、龍だな?」

 キイの肩が、微かに揺れた。

「…………」

 笑っているのか、否定するのかすら曖昧な、得体の知れない沈黙。

 セセラの瞳はその沈黙の奥にある真実を、逃さず見据えていた。
 無言で見下ろされながらキイは静かに笑う。

「……ふふ。あーあ、やっぱり出番になっちゃったかあ」

「……あ?」

 セセラの眉が僅かに動いた、その瞬間。

 キイは小さく、しかしはっきりと声を放った。

「……トワ!!」

 どこから現れたのか、音もなく“それ”は姿を見せた。

「……!!」

 扉も、窓も、動いていない。

 ただ、空気の隙間に染み出るように。

 ユラリ……と。

 まるで月明かりの下で影が伸びるように、ひとりの少女が現れた。

「……………………」

 水色から紫のストレートヘア、黒衣。
 両手を覆うほど大きなアームカバーが異様さを演出する。

 ジト……とした目は生気が無い。

 それでも、ただそこにいるだけで空気が変わった。

 セセラの背筋に、ゾクリと冷たいものが走る。

(……なんだ? ……どこから……)

 視線が合った瞬間、得体の知れなさが襟元から冷気のように流れ込んだ。

「……コレ、やっつける人?」

 無表情に、まるでそれが仕事かのように、少女──トワはキイに問いかけた。

「やっつけないで。それは困るから」

 キイは、軽い口調で続ける。

「でも……くらいのことはして。ね?」

「……わかった。……やってみる」

 その言葉と同時に。

 ──ド ン ッ !!!

 トワの姿が一瞬、掠れるように消えた。

「……ッ!?」

 少し遠くにいたはずのトワは既にセセラの目前にいて、次の瞬間には胸元を両手で叩きつけるように押し込まれていた。

「ゔッ……!!」

 セセラの体が床に叩きつけられる。
 硬い床に背中を打ちつけた衝撃で、一瞬息が止まりそうになった。

「くっ……なん……だ、テメェ……!!」

 その小柄な体格からは想像できないほどの重量感と圧。
 腕を振り上げようとしても、まるで上から巨大な岩を乗せられたかのように動かない。

 セセラに跨りながら胸を押さえつけているトワ。
 そのアームカバーの隙間からチラリと覗いたのは──。

「……!!」

 禍々しく、黒く変異した龍の手。

 まるでリルが龍化したときのような、だがそれ以上に異形な、生まれつき龍であることを示すかのような手の造形。

 セセラは歯を食いしばり、喉の奥から唸るような声を漏らした。

「っぐ……、ぁ゙……! クソがッ……!!」

 先程とは逆に見下ろす側になったキイの目が、まるで試すように細められる。

「セセラせんせぇ……。動けますか?」

 その声は、どこまでも無邪気で。

 ──どこまでも、悪意に満ちていた。

「…………ッ……!!!」

「……動けなさそうだね」

 キイは、先ほど蹴り飛ばされた痛みなど存在しなかったかのように、スッと身の埃を払う。
 そして軽やかに歩き出しながら、壁際のコートを手に取った。

「じゃ、ボクは行かなきゃいけない所があるので。……またね、セセラせんせぇ」

 セセラは必死に力を込め、トワに押さえつけられた体を動かそうとする。

「……待てッ……この……ッ……!!」

 喉を震わせ、全身の筋肉を奮い立たせても、まるで鋼で押さえ込まれているように一切動かせない。

 指1本、腕1本、重圧がまるで命綱を奪うようにのしかかる。

「…………」

 すると、無表情のトワがぽそっと口を開いた。

「……これ、止めておくの……いつまで……?」

 セセラの耳が、その一言を聞き逃すはずがなかった。

「……ッ、いつまででもねえ……っ、今離せ……ッ!!」

「今離せって、何」

 トワは、生気の無いジト目顔のまま小さく首を傾げる。

「止めておいてって言われた……。ボク、……離せまでは命令されてない」

 会話が通じない。
 いや、通じているのに噛み合わない。

 セセラの視界が徐々に滲む。
 背中に伝う汗、苦しさで震える喉、そして胸を抑える手の圧が更に強まっていく。

「…………ッ……!!!」

(……呼吸……やべえ……。マジで……これは)

 トワの目が、ふと宙を泳いだ。

「……ずっと止めておくって、やっつければ……いいんじゃ?」

 キイにやっつけないでと言われていたのを忘れたのか、それとも最初から理解していなかったのか。

 トワの両手に、殺意が籠った。

 ──グッ……!!!

「ッ……、は……っ……、……!!!」

 まるで胴体ごと握り潰されるような重苦しさ。
 肺が収縮し、喉からは呻き声すら出ない。

 骨が軋む。

 内臓が悲鳴を上げる。

「…………ッ…………、…………!!」

(……あ、これ……マジで……)

 目の奥に暗さが迫る──。

 そのときだった。

「待って~!!」

 軽やかで、柔らかくて、しかしトワと同じような声がどこかから響き渡る。



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