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コヨタ

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第3話 仲直りの報告

第3話・3 やっぱり仲直りできてない

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 重たい霧が地表を這うように広がり、岩肌は露出し、踏みしめるたびに細かな砂が靴に絡み付く。

「……反応、無いね。数値も……変動無し」

 レイラは通信端末を確認しながら呟いた。
 静かな谷底には、今のところの気配は無かった。

 リルも無言で周囲を見回している。
 口元を覆う高い襟の奥から、呼吸音だけが僅かに漏れていた。

「……油断しない方がいい」

「うん、わかってる……」

 霧の密度が濃く、視界はおよそ10メートル先が限界。
 谷の裂け目は不規則に続き、足場も決して良くはなかった。

 そのとき──。

「……ん」

 リルが足を止めた。

「この岩、変じゃね」

「……え?」

 訝しげに近づくレイラ。
 すると──。

(……動いてる!?)

 リルの足元にあった岩が、ほんの僅かに“呼吸”しているように動いた。

「ッ、……下がれッ……!」

 リルが警告すると同時に、地面の下から──。

 何かが、爆ぜた。

「わっ、な、なに……!?」

 地面が割れ、岩の隙間から巨大な何かの骨のようなものが飛び出す。
 だが骨ではない、それは“龍の殻”──言わば抜け殻だった。

 しかし、ただの化石ではない。
 そこから吹き上がったが、周囲の霧と混ざり合って狂ったように拡散していく。

「毒性反応……!? 強いッ……!」

 レイラは端末をかざすが、既に機器の警告音アラートが鳴り止まない。

「マズい、こいつ……生きてるかもしれねえ」

「えっ!? 抜け殻、じゃなくて?! なんで……!?」

 レイラの問いには答えずリルは即座にマントを振り上げ、赤黒い翼のような布地でレイラの前に立ち塞がる。

「下がれ、今吸ったらお前──」

「平気……! 解析フィルター、装備してるから……!」

 レイラもフードを深く被り、内側のフィルターが起動する。

(こんな形で来るなんて……!)

 何もいないかもしれないはずだった調査任務。
 
 そのはずが、龍の死骸から漏れ出した未知の瘴気により、この地自体が既に目覚めつつある何かの巣である可能性が浮かび上がってきた。

「リル……どうするの!?」

「……迷ってる場合かよ」

 リルの目が細く鋭くなる。

「……ぞ。この地に龍がいないって証明するには、まず目の前の異常をぶっ潰すしかねえ」

「……っ、了解」

 ふたりの視線が揃った瞬間、風が舞った。
 霧と瘴気を裂いて、ふたりの影が走り出す。

「……ッ!!」

 地響きが鳴る。
 は殻を割るように膨らみ、瘴気の塊を吐き出しながら隆起していく。

「まだ殻だってのに……生きてるみたいに動くとか、ふざけんなよ……」

 リルは唸りながら地面に足を打ちつけ、龍化りゅうかの力を解放した。

「……!!」

 元々伸びていた黒い爪が一際鋭くなり、細い瞳孔は更に細く縦に裂ける。
 その視線が怪異に向けられた瞬間、空気が震えた。

「レイラ、カバー頼む。近づいて一気に潰すッ……!」

「り、了解……!」

 レイラは即座にフードを深く被り、地を滑るように横へ展開。
 足音はまるで獣のように軽く、黒いフードが霧の中で翻る。

 冷静に距離を詰めると──。

「こっちが隙ってわけか……!」

 一瞬だけ跳び上がる。

 足元の岩を蹴りつけて空中へ。そしてそのまま、異形の殻の脇へと蹴り込む──!

「ッりゃああっ!」

 殻の側面に一撃が炸裂し、噴き出した瘴気。

 だが、それは“本体”の防御反応のようだった。

「──くっ……!」

 レイラが後退しかけた瞬間、横から影が舞う。

「下がれ、オレが行く」

 リルの低い声が風を裂き、瘴気をも貫くように腕を振る。
 龍化の力を一時的に宿した一撃が、異形のらしき部位へ叩き込まれた。

「……沈め……ッ……!!」

 ──ギィ゙イ゙イィィィ……!!

 と、奇妙な音を残して、殻が崩れる。

 中から出たのは、灰のような粉と、微かな赤黒い光の粒子。

 ──しばらくして、霧が、ほんの少しだけ薄くなった気がした。

「リル……これは……?」

「いや、わかんねえ。……けど、ひとまず第一異常反応は処理完了、ってとこだろ」

 呼吸を整えるリル。
 襟の奥から白い息が漏れる程、体は熱を帯びていた。

 レイラはその背中を見ながら──ほんの少しだけ、呟く。

「……リル、ありがと。助かった」

「…………」

 僅かに見開かれたリルの目。

「……べつに……オレが勝手にやっただけだ」

「……ふふ」

 マント越しに見えたリルの肩が一瞬だけ、照れたように揺れた気がした。


 ◇


 霧が晴れた一角で、ふたりは一度息を整えている。

 周囲は崩れた岩と瘴気の残骸だけ。風の音すら無く、谷の静寂が際立っていた。

 レイラはふと、視線を横に向ける。
 
「…………」
 
 リルの右手から覗く爪が、先程の一撃の影響か、更に大きく変質しているのがはっきり見えた。

(……爪……だよね……?)

 鋭く、赤黒く、まるで獣のような、龍のようなその形。

「ッ!!」

(あれ……、人間の……爪なの……?)

「……リル、それ……」

 無意識のまま、声が漏れた。

 リルはピクリと肩を揺らし、こちらを見ずに低く答える。

「……気にすんじゃねえ」

 ──短く、遮るように。
 その声に、レイラは何も返せない。

(……気にするなって……)

 けど、気にしないわけがなかった。

 見てはいけないものを見てしまったような感覚。
 
 だが、それ以上に──。

 なにか大切なことを自分だけが知らないようなざわめきが、胸の奥でじわじわと広がっていた。

 リルは無言のまま歩き出す。

 使い古されたようなボロボロのマント。赤黒い裾が霧を割るように揺れる。

「……行くぞ」

「……う、ん……」

 レイラはその背中を見つめながら、歩き出す。
 谷の地形は、そこから先──更に入り組んでいた。


 ◇


 鋭角な崖の裂け目。
 下層へと続く、人工的な加工跡すらある“旧観測通路”。

「……ここ、前に誰か入ってた?」

「古い……調査痕跡か。機関の初期探索隊かもしれねえな」

「でも、こんなところにまで……」

 レイラが手で壁を撫でると、ざらりと岩肌に焦げ跡のようなものが浮かび上がる。

(……何かが暴れた……?)

 そのとき。

「──待て」

 リルが腕を広げてレイラを制した。

「瘴気……ニオイがする。再発生してる……」

「え?」

「下層から……来るぞ」

 次の瞬間、地の底からゴゴゴ……と音がした。

 骨の擦れるような、低く蠢く音。
 それは明らかに、証。

「警戒しろ。……今度のは、さっきの抜け殻じゃねえ」

「……また、来る……!?」

 霧の中、再び空気が凍りついていく。

 ──“ふたり一緒の初任務”は、まだ終わっていない。

 音が迫る。
 骨の軋むような、ぬるりとした蠢きが霧の奥から這い出てくる気配。

「……来るぞッ!」

 リルが咄嗟にマントを翻し、レイラの前に出る。

 そしてそれは──現れた。

「……!!」

 霧を裂いて出現した“異形の龍殻体”。

 死して久しいはずの龍の骨格に、黒い瘴気が凝り固まり、まるで人型と獣型を混ぜたような不自然な形に蠢いている。

「なっ……なにあれ、死んでるんじゃなかったの……!?」

ちげぇ……! これは屍喰しかばねぐいかもしれねえ」

「しかばねぐい……?」

「憑依してるんじゃなくて龍の死骸にして動かしてる。本体は……中だ」

 リルが叫ぶそのタイミングで、異形の巨体が咆哮と共に飛びかかってきた。

「──グォ゙オ゙ォォオ゙オオオオッッ……!!!」

「……う、うわ……っ……!」

「ッく──レイラ、下がれ!」

 先陣を切り、リルは龍化した腕で迎え撃つ。

 ──ガキィィン……ッ!

 金属のような音を立て、鋭い爪と怪物の前脚がぶつかった。

 レイラは後方で支援態勢に入り、解析装置を起動しつつも──。

(なんなのあれ……! それにリル、あの体勢じゃ……!)

 そして咄嗟に霧の裏から飛来した尻尾の一撃。

「──リルッ!!」

 レイラの叫びと同時──。
 リルの腹部に、槍のような骨の一撃が深々と突き刺さる。

「うッ……!!」

 レイラの胸がドクンと音を立てるほど、噴き出した血が霧に混ざるのが見えた。

「……り、リル……!!!」

 それはレイラが見ても明らかに──。

(……そんな……!! あ、あんなの──)

 だが。
 
「…………え……っ……?」

 リルは、倒れなかった。

 そのまま一歩、二歩と後退し、口元の血を拭うようにマントの端を握りしめる。

「……チッ……いてえ……思ったより深く入ったな……」

 リルの腹部からは血が流れ続けているが、気にする素振りを見せない。

「な、なに……? リル……?」

「いいから下がってろ……今、修復してる」

(……修復……?)

 見ると、傷口が──。

 まるで時を巻き戻すように、じわじわと閉じ始めていた。

「……!!?」

 出血は止まり、深く開いていた肉の裂け目が、みるみると塞がっていく。

「う、そ……」

 レイラの手が震える。
 自分の目の前で起きている現実に、脳の処理速度が追いつかない。

(あんなの、人間が受けていい傷じゃない……のに、治って……!?)

(なに……!? “治癒”じゃない、“再生”……!?)

「……もう驚いたのかよ?」

 口元だけで笑うように言うリルの瞳は、既に戦う覚悟だけで満たされていた。

「オレは……こういう体になった。だから、行ける。まだ動ける」

 レイラの瞳が見開かれ、揺れ動く。

「で……でも!」

「『でも』じゃねえ。敵に集中しろ」

 再び前に出るリル。
 その姿は──傷つきながらも立ち上がる異端の戦士のよう。

 レイラの胸に、言いようのないざわめきが広がる。

 それは、恐怖か。
 
 それとも──。

(私には、わからない。だけど……)

「リル……!」

 一歩、リルの隣に立つレイラ。
 その視線の先には、再び咆哮を上げる異形。

 ふたりの影が並ぶ。
 
 この戦いは、ただの調査では終わらない。
 リルを知るための──最初の戦いだった。

 異形の咆哮が、岩を砕くように谷底に響く。頭部らしき部位が持ち上がり、骨と瘴気が混ざった巨大な尾が地を裂いた。

「レイラ、右から回って包囲──」

「……っ!」

 リルのその声に、レイラは僅かに反応が遅れた。

(さっきの……あの傷……)

 頭では理解しようとしている。

 リルのは、明らかに人間のものではなかった。
 致命傷のはずだったのに、笑って立っていた。

 まるで──死なない体だ。

(私とは……違う)

 ──私は、ただ少し反応が速くて、ちょっと力があるだけ。
 人並み以上、というだけで……異能なんか、持っていない。

(なのに……)

「レイラ!! おい、聞いてんのかッ!!」

 リルの怒鳴り声が響いた。

「ッ!!」

 気がつけば、目の前には化け物の咆哮。
 横合いからの尾の一撃が迫ってきている。

「うわっ──!!」

 咄嗟に跳んで避ける。
 土煙の中、距離は開いたが──ギリギリだった。

「集中しろっつってんだろ!!」

「……っ、ご、ごめん……!」

(こんなときに、私……何考えてるの……)

 だけど、止まらない。

(そ……そういえば……)

(私はこの施設に来てから、一度も、大怪我をしたことがない……)

 任務は慎重に組まれていると思っていた。

 でも──。
 
 それはたぶん、違うんだ。

(私は、強い敵に向かわされてなかったんだ)

 代わりに。

(きっとリルが……、向かわされていた)

(……だから、あの日……あんなふうに……)

 ──『テメェ、調子に乗ってるんじゃねえだろうな』……。

 その一言が、今になって胸を抉る。

「……くっ……!!」

 言葉にならない思考が渦巻く。

「…………っ……!」

 霧の中で呼吸がうまく整わない。足が思うように動かない。

「……あ゙ァ……?」

 リルはそんなレイラの様子を見て、苛立ったように舌打ちする。

「チッ……やっぱガキじゃねえかよ!!」

 鋭く吐き捨てるように言い捨てると、リルはそのまま単独で突っ込んでいった。

「あっ、リル、待って──!!」

 制止の声は届かない。

 赤黒い翼のようなマントの布地が揺れ、霧を切り裂いて進む。

 その後ろ姿が、どこかに見えた。

(……違う……)

(違うのに……)

 レイラは立ち尽くす。
 自分の無力さと、何も知らなかったことへの恐怖に、ただただ、立ち尽くすしかなかった。


 ◇


 龍発生峡谷帯・異常反応領域・最深部手前。

 ──リルはひとり、霧の中を駆けている。

「ッらぁああッ!!」

 咆哮と共に跳び上がり、龍化した爪で異形の顎を切り裂く。

 しかし、それでも敵の動きは止まらない。

「ざけんなよクソが……ッ……!!」

 刹那、龍の尾がしなり──。

「ッ!!」

 ──ドゴォッ!!

「ぐッ、ぅ……!!!」

 横合いから激突した。

 腹部に鈍い衝撃──。
 攻撃に集中したせいで再生が追いついていない傷が開き、大量の血が舞う。

「……ッは……!!」

(……まずい……)

 頭が重い。呼吸が乱れる。

 だがリルは止まらない。

 ──止まることなど、許されない。


 ◇


 その頃──。
 龍調査機関・作戦中継モニター室。

 その部屋でセセラは端末越しに戦闘データを見ていた。
 レイラの身体数値、リルの再生係数、瘴気濃度の推移。

 だが、そのうちのひとつの数値が異常に跳ね上がった。

(……リル、出血量、……過多……)

 映像フィードが切り替わる。

 霧の中、技術班が操作するドローン型偵察用カメラが捉えたリルの姿。
 その腹部からは、

「…………!」

 濡れた足跡が、黒い地面に赤く続いていた。

「…………ゔッ……!!」

 セセラは咄嗟に口元を手で押さえ、思わず画面から目を逸らす。

「…………ッ…………!!!」

(……危なっ……、やべえ……吐くとこだった)

 苦虫を噛んだような顔。涙が目に溜まる。
 手元の端末を握る手に、僅かな震え。

(……やっぱり、あいつのアレは、見てらんねえ……)

 声に出さず、そう思う。
 だが、見なければならない。

「…………っ……」

 セセラは──血が苦手なのだ。

(レイラのときの血の量なんか……比じゃねえんだよ……)

 口をきゅっと結び、再び画面へと目を戻す。

(くそ……こんな状態で、突っ込むとか……)

「レイラ……何してんだ! そろそろお前も──」

 ──そう無線で呼びかけた瞬間。

「……!!」

 映像の中で、リルの体が再び跳ね飛ばされた。



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