最愛の番に殺された獣王妃

望月 或

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26.偶然の出会い ※視点切替あり

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(よく分からないけれど、取り敢えず危機は去ったって事でいいのかしら?)


 私は大きく安堵の息をつくと、ユークを見た。
 彼は片膝をつき、俯いたままでいる。


「ユーク、動けそう?」
「……くそっ、まだ……ダメだ……」
「詠唱は出来そう? 変身してウサギになれる? 私が部屋まで連れて行くから」
「……あぁ、それなら……何とか……。チッ、カッコわりぃな、オレ……」
「そんな事ないわ。あの時の台詞格好良かったわよ。そう言ってくれて嬉しかったわ」
「…………」


 ユークが更に下を向いて顔を隠す。
 表情は見えないけれど、耳朶が赤くなっている。どうやら照れているようだ。
 私は心の中でクスリと微笑んだ。


「――さ、早く。あんまり遅くなったらメイド長が心配するわ」
「……あぁ、分かったよ……」


 再びウサギに変身したユークをモフリと抱きかかえ、私は町に戻ると店主さんに預けていた荷物を持って急いで屋敷に帰った。
 遅くなった事をメイド長に謝り、自分の部屋に入る。

 ユークをポフンとベッドの上に降ろすと、私は擦りむいた部分の手当てを始めた。
 どれも浅い傷で、数日もしないうちに治りそうだ。


「……大丈夫か?」
「え? ――あぁ、平気よ。掠り傷だから大した事ないわ。気にしないで」
「そうか。……その……悪かったな。それに助かった。ありがとな」


 ユークが顔を伏せながらボソリと礼を言う。
 喋り方がいつものように戻っていた。麻痺は殆ど消えたようだ。


「いいのよ、本当に気にしないで。その代わり、貴方の事を教えてもらいたいわ。もう関わってしまったんだもの」
「……アンタを巻き込みたくはなかったんだが……」
「もう遅いわよ? 観念しなさい」
「……アンタの事だ、オレが話すまでウザってぇくらいに言い続けるんだろ」
「あら? 分かってるじゃない」
「……チッ、分かったよ。オレ話すのあんま上手くねぇし、聞きづれぇと思うけど」
「大丈夫よ。今日はもう仕事はないし、ゆっくり話して」


 私は微笑むと、ベッドの端に腰を下ろし、ユークを膝の上に乗せる。
 そして、優しくその体を撫でた。
 ユークはそれに気持ち良さそうに目を瞑り、ポツリポツリと話し始めたのだった――




。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 オレとアイツ――クローザムは、魔術師のお袋と呪術具師の親父の間に双子として産まれた。
 アイツが兄で、オレが弟だ。

 オレとクローザムは、赤ん坊の頃からずっと一緒にいた。
 双子だからか、お互いの気持ちが何となく分かって楽だったし、アイツといると余計な気使わなくていいし、居心地が良かった。


 お袋の血を継いだのか、オレは魔力を持って産まれ、魔術の才能があった。興味もあったし、オレはガキん頃からお袋に魔術を習ってた。
 反対にクローザムは魔力はなかったが、親父の血を継いだようで呪力があり手先が器用だった。
 アイツも親父の仕事に興味を持って、親父の仕事場にちょこちょこ顔を出して【呪術具】の作り方を習ってたんだ。


 ――あぁ、アンタは【呪術具】にあんま馴染みはねぇよな。アンタの国じゃソレは珍しかっただろ。
 【呪術具】は呪力を込めた道具や武器防具の事だ。呪力によって特殊な効果を持ち、呪術師が使ってその効力を発揮する。魔術師は使えないって代物さ。

 親父は呪術具師でもあり、高位呪術師でもあったんだ。ちなみにお袋は魔物退治専門の高位魔術師だ。
 今思えばとんでもねぇ二人が結ばれたもんだな。


 家族仲はいい方だったと思うぜ。他に兄弟はいなかったし、四人で仲良く暮らしてた。
 ただ、クローザムはオレと違って内気な性格でオドオドしててな。そこら辺も親父に似たんだな。
 何かあるとすぐに泣くから、それを面白がった周りのガキどもがアイツをイジメてたんだ。

 目の色が左右違うってのもからかいの原因になってた。そんなんオレ達の所為じゃねぇのにさ。腹立つよな。


 オレが一緒にいる時はそんなガキどもをボコボコにしてたんだが、ソイツらさ、オレがいない時を見計らってアイツをイジメるようになってさ。ホントクズだよな?

 そん時もオレがいない間にアイツをイジメてて、オレが駆けつけた時、一人の女子が泣いてるアイツの前に立って庇ってたんだ。


「ちょっとあなた達! 弱い者イジメをしたら、必ず自分に不幸が返ってくるんだよ! それにすっごく格好悪い! とーってもダサい! 恥を知りなよ恥を! 女の子全員に嫌われること確定だよ!」


 それを聞いて、ガキどもは真っ赤な顔で向こうに走っていきやがった。
 なぁ、気付いたか? アンタがアイツに言った台詞とほぼ同じなんだよ。まぁ偶然だとは思うが……。

 ……アイツは思い出しちまったんだろうな、きっと。


 その女子の名は『ティール』。最近オレ達の町に引っ越してきたと言っていた。
 オレ達はすぐに彼女と仲良くなった。ハキハキものを言う真っ直ぐな性格がオレ達と合ったんだ。

 クローザムは助けてもらった事もあってか、そんな彼女にゾッコンでさ。
 彼女の放った言葉のお蔭で、アイツはガキどもからイジメられなくなったし。


 それからオレ達は三人でよくつるんで遊んでた。
 そうして平穏な日々が続いてたんだ。

 けどオレ達が十二の時、両親がとある魔物の退治を任された。
 その魔物は国災級の最悪最凶と恐れられてて、長い間封印されて眠ってたけど、何らかの拍子でソレが解けて起きてしまったらしい。
 王国一の屈強な兵士でも太刀打ち出来ないソイツに困った国王は、魔物退治で大きな成果を挙げてるオレ達の親に討伐を頼んだんだ。


 結果は……相打ちだった。両親は自分の命と引き換えに、魔物を完璧に打ち滅ぼしたんだ。


 魔物の脅威は去ったが、両親を失ったオレ達の心はズタズタだ。
 命を賭して国を守ってくれた功績として、毎月オレ達のもとに多額の特別弔慰金が入ってきて生活には困らなくなったけど、身寄りのなくなったオレ達は途方に暮れてさ。

 二人で生きていこうと心に決めた矢先、そんなオレ達をティールの両親が引き取ってくれたんだ。
 ティールもオレ達を懸命に励ましてくれてさ。それでクローザムのヤツ、ますます彼女に惚れ込んだみたいだ。


 クローザムは一途に彼女を想い続けて、オレもそんなアイツを応援してた。
 消極的なアイツの背中を押しまくって、十五の時にようやくアイツ、彼女に告ったんだ。それに彼女も頷いてさ。あの時のアイツの喜びようったらなかったな。

 あぁ、そうだ。アイツらホント仲睦まじかったぜ。こっちが砂吐いちまうくらいにな。
 ……あ? 羨ましくなかったのかって? いや全っ然。
 勘違いすんなよ、別に強がりじゃねぇぜ? オレ、女に全く興味なかったし。クローザムに心配されたけど、魔術を覚えたりその技術を高める方がずっと楽しくてな。

 お袋には、「母さんの尻ばっか追っかけてないで、別の女の子の尻追っかけな!」って怒られたっけ。
 あん時の一番の目標は『高位魔術師のお袋を超える』だったからさ、しょうがねーじゃん。


 話が逸れたな。そんで、クローザムとティールは家族公認の婚約者同士になった。
 オレは魔物退治専門の魔術師として、クローザムは呪術具師として手に職をつけていたから生計には困らなかったし、二人はそのまま結婚して幸せになると誰もが思っていた。



 オレ達が二十三の時、ヤツが……オレ達の住むコバルテリナ王国のクソクズ王子が現れるまではな。



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