【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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打倒!元実家!

79 最高に暖かい冬

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 季節は移ろい、この国でも寒さはやって来る。

「……くしゅん!」

 辣腕のギアナはくしゃみをした。寒いのは苦手だった。

「リトー」

「あ、ギアナ様おはようございます」

 学園が休みの日。リトは早くから工房に籠ってガラス細工を作っている。楽しくて楽しくてしょうがないらしい。

「色々な機材も揃ってるし。たくさん作ってもギアナ様が売ってくれるから、置く場所が無くなることもないし」

「そういう心配なのか?」

 するりと、後ろから抱きついてリトの首筋に顔を埋めた。好きな匂いがする。

「あはは!くすぐったいです。もうギアナ様は寒がりなんだから!」

「……そうなんだ、俺は寒がりだからな」

 寒がりだから、ガラスが燃えて熱いくらいのリトの工房に来るんだ。寒がりだからリトにくっ付くんだ。
 みーんな、寒いせいだ。ぜんぶ寒いのが悪いんだ。

……俺が執着してるんじゃねーぞ?

 でもすぐに自分の言葉を否定する。

いや、執着してる。くっ付いていると、とても安心する。少し離れただけでイライラする。視界にリトがいるのといないのでは気分が全然違う。

「火傷しても知りませんからねー?」

 リトももう慣れたもので、俺をくっ付けたまま細工をしてる。火傷なんて俺は一度もした事ないぞ?

 リトの能力は作れば作るほど上がっているようで、今はガラスで出来たバラのペンダントヘッドを作っている。あの折り重なった花びらを何枚も重ねているんだ、信じられないだろ?
 色は中心部が濃く、先端に行くほど薄くなる。物凄く細かい仕事だ。よく見ると、花弁にはほんのり筋が通っている細やかさ。

美しい。芸術の域に達している。それを鼻歌を歌いながら仕上げている。

 ガラスの花は空中でクルクルと舞う。リトは気がついて居ないが、花が浮いているのだ。
 多分全方位からよく見ようと、知らず知らずのうちにやっているのだろうけど、ふわりと空中に浮いている。

 リトは本当にガラスの魔術師なんだ。

「上手だな」

「えへへ……嬉しいです」

 次の限定にこれは駄目だな。素晴らしすぎる。宝飾部で売ろう。隣国の王妃なら言い値で全色買うだろう。赤、青、黄、緑……。

「リト、紫は無いのか?」

「すぐ出来ますよー」

 ははっ!流石だな!

「それのもう少し大きいのと小さいのを並べて頭に乗せるやつと、耳のと3点セットで赤と青と紫を作ってくれてないか?」

「簡単ですよー」

 簡単って言ったか!この非常識職人め!こんなもん誰も作れねぇぞ!

「たくさん作った方がいいですか?」

「価値が崩れるから、20ほどで止めておいてくれ」

 はーい。事もなげに言う俺の可愛い伴侶。なんて可愛いんだろうか!誰にも見せたくないが、リト自身この工房に引きこもるのは苦にならないらしいから、余計な嫉妬をしなくて済む。
 ガラスの熱は危ないから小さな兄弟達も来ないように言ってあるしな!

 リトの兄弟に嫉妬するのかって?……多少な!本当に多少だぞ!?

「リトぉほんまにヘーキなんかぁ?」

 ガラスを溶かしている炉の中からサラやんが顔だけ出した。

「え?何が??」

「……いや、ええんや。リトがヘーキならええんや」

 こっちを見たな!サラやん。何か言いたい事があるのか?ん?んん??

「……わいに嫉妬すんのやめやぁ……敵わんなぁ、ベロベロやんか」

「……炭の生産が始まったぞ、サラやん」

「お!やったで!わい、アレ好きなんやー!」

 ウキウキとお邪魔トカゲは炉に帰って行った。

「ふふ、ギアナ様どうしたんですか?」

 腕に力を入れてリトの腰を少しだけ引き寄せる。

「寒いなと思ってね?」

「冬になりますもんね」

 去年まではあまり寒くないバチュールで過ごしていたが、比べるとやはりウィシュバーグは寒いが……。

「リトにくっ付いていると暖かいな」

「じゃあ冬はくっ付いて過ごしましょうか?」

 最高に暖かい冬になりそうだ!

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