【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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それからの俺たち

100 受け入れるべき変化

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 俺たちは変わりなく過ごした。シェルブールのお爺様とお婆様は王都を満喫してから領地に戻って行った。領地には腕利きの商人をつけてやったので、上手く回してくれるだろうと言う事だ。

「継ぐのはまだ誰か決めていませんが、大丈夫、任せてください」

「ああ、頼もしいな、私達の息子は」

 そうお爺様は言い、お婆様は

「また来ても良いわよね!」

「もちろんですとも」

 お母様と微笑み合い、家族全員と抱き合って帰って行った。

「いつか遊びに行きたいね」

「もちろん行くさ。向こうの店の視察もしなきゃならんしな!」

 流石です!

 主人が変わったディライト領は物の行き来は滞りなくなったが、一度壊れた物はなかなか戻らない。

「ある程度の家は壊してしまう。思い出や、戻って来たい者には申し訳ないがね」

 街を整えて、道路を引く。公爵領は広い。もし、戦争になったら弱いだろうが、道はまっすぐ作った。

「商人の街になるからな」

 戦争になった時用に逃げる所を用意する予定だそうだ。

「何せ俺がしばらくは領主だからね」

 ギアナ様はギアナ・ディライト公爵になっていた。



「貴方のせいで!シュマリエ様は学園を追われ、片田舎で寂しく暮らさねばならなくなったのよ!」

 俺は三年生と一年生の女子三人、計四人の女子に校舎の裏で囲まれていた。

「何か言ったらどうなの?!平民のくせに!」

 一年生の女子が俺に平手を打って来る。バチン!大きな音がしたし、痛みもあるが、大したものではない。
 一方女子は手が痛かったのか、自分の手をさすっている。

 久しぶりに聞いたな、平民の癖にって。

 冷静に考えていた。どの女子も名前と顔は一致している。高い爵位にあればある程、貴族の顔は覚えておかなければならない。特産物は何なのか、どんな人柄なのか、横の繋がりは、とか。
 家族でウンウン唸りながら必死で覚えたっけな。

 四人とも旧ディライト家の子飼いの子爵家と男爵家の令嬢だ。ギアナ様が、リリー商会が潰した旧ディライト家。ギアナ様のディライト家になり、上手く擦り寄れなかった出来の悪い家の子供達だ。

 前の俺なら、謝ってこの場を収めただろう。でも、もうそれは違うって知っているんだ。ギアナ様と一緒にいるために、俺も変わったんだ。

「先に拳を振り上げたのはあちらだ。これでもかなり譲歩したのに。あなた方に殴られる理由が分からないな」

 言い返されてカッとしたのか、もう一度、手を振り上げた。

「このっ!平民が!」

 俺はその腕を掴む。元々木こりの息子の俺は、貴族の女子に負ける運動神経も筋力も持ち合わせていない。最初の一発は殴られたという実績作りだ。

「では、シュマリエ嬢を山の中に追い立てましょう。そして何時間も傭兵に追わせるんです。最後には追いついて肩から胸までばっさり斬ります。そして、左手は、こう、斬り落とします」

 空いていた左手を目の前に突きつける。黒い手袋をずっとはめているが、欠けている事は一目瞭然だ。

「それから川に捨てます。それからなら、恨み言も聞きましょう。さあ、シュマリエ嬢を連れてきてください。それともあなた方が代わりになりますか?」

「ひっ!」

「義憤にかられたのでしょう?シュマリエ嬢が受けた仕打ちは不当だと。ですから、不当なく公正で行きましょう。やられた事をやり返す。分かりやすいじゃないですか」

 その時、少し離れた所からロザリー様が走って来る。

「人が!」

「ルシリア様だわ!」

「まずいわ、逃げましょう」

 逃げ腰になるので、手を離してやるが

「カミル男爵令嬢、コルサル子爵令嬢、キシュール子爵令嬢、セアラシル子爵令嬢。少し貴族としての嗜みにかけるようですね。平民の私でもやらない事をしていては、家名に泥を塗りますよ」

「あ、貴方……知っていて」

「知らない方が不思議ですが?」

 彼女達は逃げて行き、入れ違いにロザリー様が到着する。

「リト!頬が!」

「大丈夫です。わざと叩かれたんです。こうすべきなんでしょ?」

 にっこり笑うと、ロザリー様も厳しい表情を崩した。

「そうね、それで良いわ。あなた達はただの平民で居られなくなってしまったものね。良く頑張ったわ。さあ、冷やしながら帰りましょう。顔が腫れていてはギアナが何て問い詰めるか怖すぎるわ」

「あはは、怖いですね。きっと大丈夫じゃないだろうなーあの子達の家」

「仕方がないわ。公爵家の人間を殴ったんですもの。だから切られるのに、何故こんな事をするか分からないわね」

 ロザリー様はハンカチをくれた。

「済まない!遅れた!うおっ!リト殴られちまったか!避けろよ!いてーだろ!」

 次に走ってきたのはウォルフさん。最近知ったんだけど、俺の平和な学園生活は、このウォルフさんとレナさんやロザリー様のおかげで成り立っていたんだって。
 そしてその事を俺は気づいていないフリをしないと行けないんだ。

「ふふ、大丈夫ですよ!俺、元々木こりの息子なんですから!」

「そうだったな!」

「あらやだ!リトったら、私、でしょ?」

「あっ、しまった」

 親しくしている人の間ではつい素が出てしまう!俺もまだまだなんだ!

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