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そして入学へ
40 なければ作るしかないわ
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「ふう……」
マリエルよ。まあスペード家の皆さんが私をヨイショしたくなるのはちょっとした理由があるのよね。
「あ、ああああああ!」
まだ小さかった私はスペードキングとクイーンの昔話を突然思い出したの。それは剣に憧れる二人がスペード家家宝の宝剣を持ち出し……アリアが折ってしまうという悲しいエピソードよ。
女性らしく振る舞う事を強要され続けたアリアは、剣を買ってもらう事以前に、練習さえさせてもらえなくなっていくの。でも剣の道を諦めきれないアリアは……本物の宝剣に触れてみたくなったのよね。そしてデュカスも家宝の剣には興味があって……。二人で持ち出してポッキンと……。
「この事件のせいでスペードエースとキング、クイーン、全員がぎくしゃくしていくんだったわ」
そう、女の子らしくしろと言われ続けて、剣を用意してもらえなかった……それが問題。
「なら先に用意すればいいじゃない」
私、天才か?? だが驚くべきことにお金がなかった……。
「くっ……最近、劇場を大きくしたんだったわ」
そこらへんに置いてある安物なら買える……でも私の愛するスペードクイーンがそこらへんのちゃちな剣を振り回していいものか? 良くない! それに確かデュカスの誕生日もある。確か毎年毎年剣を欲しがるのよね、あの子。何かしらコレクター? ならばしょうがないわ。良きフィギュアは何体あっても良い物ですもの。いっぱい集めたい。
「……打つしか……ないわよね」
なければ作る、それしかないのだわ……。私はその足で職人たちがたくさん住む地域へ突撃したわ。
「頼もう!!」
「帰れ!!」
即追い出されたけど、推しを思う我の心が折れる事能わずッ! しつこさに定評のある私、毎日毎日雨の日も風の日も嵐の日も通う事なんて容易いミッションよ。
「嬢ちゃん……あんたの気迫にゃ負けたぜ……!」
とうとうドワーフの師匠の心を折ってやったわ!! そこから金属との語らいよね。私は腕の力も足りないから魔法で腕力を強化してやったわ。まあ腕力だけじゃ足りなくて全身強化が必要だったわけだけど。その辺、自己バフ系が上手く使えるようになったわよね。ついでに師匠や兄弟子にもかけたら喜ばれた物よ。
「嬢ちゃん……魔法が使えるんだな……? どうだい、付与いけるかい?」
「そういえば、舞台用にキラキラ光るエフェクトのついた剣が欲しかったのですわ。やってみましょう! 師匠!」
まずはお得意のヒールを込めた短剣なんて作ってみたわ。ええそう、アレよ。RPGなんかでお馴染みの「刺さってもダメージを負わずに回復してしまう謎のシステムが組み込まれた回復短剣」よ。え? お馴染みじゃない?……まあそう言うものも世の中にはあるって事よ。
「な、な、な……意味が……意味が分からぬ!!!」
んなこと言ったって出来ちゃったんだからしょうがないでしょう、師匠。
「あ、でもこれ貴族のお嬢さんたちにはいいかも。護身用ってやつね。回復するのは人だけだから、縄を切ったりこけおどしに構えたり……良いわね。デコって売ろうかな?」
「でこ……?」
ふ、やっぱりお年を召した方には女子のキラキラ好きは理解されなかったか……。ま、私自身キラッキラな世界からは遠ざかっていたんだけどね……フン! 推しが幸せならそれでいいのよっ!!
「可愛い装飾とかいっぱいつけるって事です! 女性用なら武骨な剣なんて要りませんでしょ!」
「ん? あ、ああ……まあそうだが……わしらは実用一辺倒だからそんな事考えた事もなかったわい」
ま、冒険にキラキラは要らないわよね。
「でも舞台用の剣も欲しいから……こう、鍔に金色の翼を広げた不死鳥とかつけて……そうだ! 刀身が燃えたらそれっぽいですわね! 師匠! ごっつい指の癖に細かい作業が得意なんですからこう、ちゃちゃっと作ってください!」
「無茶言うな!マリー! ならお前だって早くその剣に炎の付与をつけてみせろ! どうだすぐ出来まいよ!」
「ぐぬぬぬ……ッ!」
まあ、鍛冶の合間に魔法の習得なんてDVD見ながら、チャットしつつ、推しグッズを作り、ついでに会社に出勤することにに比べたら大したことないのですわ。
「出来ましたけど? ドヤァ。師匠はどうですかぁ? え、まだ? まだ細工出来ないんですって? アラアラ師匠の「創り手の指」が泣いてらっしゃるのではなくて? ドヤドヤァ」
「小娘がーーーーッ!! 3日後にまた来やがれェエエエエエ!!!」
3日後にものすんごいキラッキラの剣が出来上がってたわ。流石師匠ね!
「マリーよ、どうするんじゃそれ? 王家に納めるのか?」
「え? 次の三つ葉塚歌劇団の新作で使いますけど?」
「……まあ、宝物庫の肥やしになるより使った方がええな。なんせ観客は目の肥えた奥方様ばかりなんだろ? 安もんじゃ笑われちまわぁ!」
流石師匠わかってるぅ!
「所で師匠この剣の意匠をそのままネックレスに転用できません? 記念品として売りたいんですけど?」
「ハァ!? この細かい装飾を更に小さくしろだと!? 馬鹿も休み休み言え! この阿呆弟子が!」
「アラアラ? 出来ないんですかぁ? やっぱりその指、太すぎるんじゃないですぅ?」
「ぐぬぬぬーーーっ小娘がああああ! 3日後にまたきやがれええええええ!!!」
この金の翼を広げた不死鳥のネックレス。ものすごく売れたわ。
「ワシ、刀匠やめて細工師になろうかな?」
「両方やれば良いんですよ」
マリエルよ。まあスペード家の皆さんが私をヨイショしたくなるのはちょっとした理由があるのよね。
「あ、ああああああ!」
まだ小さかった私はスペードキングとクイーンの昔話を突然思い出したの。それは剣に憧れる二人がスペード家家宝の宝剣を持ち出し……アリアが折ってしまうという悲しいエピソードよ。
女性らしく振る舞う事を強要され続けたアリアは、剣を買ってもらう事以前に、練習さえさせてもらえなくなっていくの。でも剣の道を諦めきれないアリアは……本物の宝剣に触れてみたくなったのよね。そしてデュカスも家宝の剣には興味があって……。二人で持ち出してポッキンと……。
「この事件のせいでスペードエースとキング、クイーン、全員がぎくしゃくしていくんだったわ」
そう、女の子らしくしろと言われ続けて、剣を用意してもらえなかった……それが問題。
「なら先に用意すればいいじゃない」
私、天才か?? だが驚くべきことにお金がなかった……。
「くっ……最近、劇場を大きくしたんだったわ」
そこらへんに置いてある安物なら買える……でも私の愛するスペードクイーンがそこらへんのちゃちな剣を振り回していいものか? 良くない! それに確かデュカスの誕生日もある。確か毎年毎年剣を欲しがるのよね、あの子。何かしらコレクター? ならばしょうがないわ。良きフィギュアは何体あっても良い物ですもの。いっぱい集めたい。
「……打つしか……ないわよね」
なければ作る、それしかないのだわ……。私はその足で職人たちがたくさん住む地域へ突撃したわ。
「頼もう!!」
「帰れ!!」
即追い出されたけど、推しを思う我の心が折れる事能わずッ! しつこさに定評のある私、毎日毎日雨の日も風の日も嵐の日も通う事なんて容易いミッションよ。
「嬢ちゃん……あんたの気迫にゃ負けたぜ……!」
とうとうドワーフの師匠の心を折ってやったわ!! そこから金属との語らいよね。私は腕の力も足りないから魔法で腕力を強化してやったわ。まあ腕力だけじゃ足りなくて全身強化が必要だったわけだけど。その辺、自己バフ系が上手く使えるようになったわよね。ついでに師匠や兄弟子にもかけたら喜ばれた物よ。
「嬢ちゃん……魔法が使えるんだな……? どうだい、付与いけるかい?」
「そういえば、舞台用にキラキラ光るエフェクトのついた剣が欲しかったのですわ。やってみましょう! 師匠!」
まずはお得意のヒールを込めた短剣なんて作ってみたわ。ええそう、アレよ。RPGなんかでお馴染みの「刺さってもダメージを負わずに回復してしまう謎のシステムが組み込まれた回復短剣」よ。え? お馴染みじゃない?……まあそう言うものも世の中にはあるって事よ。
「な、な、な……意味が……意味が分からぬ!!!」
んなこと言ったって出来ちゃったんだからしょうがないでしょう、師匠。
「あ、でもこれ貴族のお嬢さんたちにはいいかも。護身用ってやつね。回復するのは人だけだから、縄を切ったりこけおどしに構えたり……良いわね。デコって売ろうかな?」
「でこ……?」
ふ、やっぱりお年を召した方には女子のキラキラ好きは理解されなかったか……。ま、私自身キラッキラな世界からは遠ざかっていたんだけどね……フン! 推しが幸せならそれでいいのよっ!!
「可愛い装飾とかいっぱいつけるって事です! 女性用なら武骨な剣なんて要りませんでしょ!」
「ん? あ、ああ……まあそうだが……わしらは実用一辺倒だからそんな事考えた事もなかったわい」
ま、冒険にキラキラは要らないわよね。
「でも舞台用の剣も欲しいから……こう、鍔に金色の翼を広げた不死鳥とかつけて……そうだ! 刀身が燃えたらそれっぽいですわね! 師匠! ごっつい指の癖に細かい作業が得意なんですからこう、ちゃちゃっと作ってください!」
「無茶言うな!マリー! ならお前だって早くその剣に炎の付与をつけてみせろ! どうだすぐ出来まいよ!」
「ぐぬぬぬ……ッ!」
まあ、鍛冶の合間に魔法の習得なんてDVD見ながら、チャットしつつ、推しグッズを作り、ついでに会社に出勤することにに比べたら大したことないのですわ。
「出来ましたけど? ドヤァ。師匠はどうですかぁ? え、まだ? まだ細工出来ないんですって? アラアラ師匠の「創り手の指」が泣いてらっしゃるのではなくて? ドヤドヤァ」
「小娘がーーーーッ!! 3日後にまた来やがれェエエエエエ!!!」
3日後にものすんごいキラッキラの剣が出来上がってたわ。流石師匠ね!
「マリーよ、どうするんじゃそれ? 王家に納めるのか?」
「え? 次の三つ葉塚歌劇団の新作で使いますけど?」
「……まあ、宝物庫の肥やしになるより使った方がええな。なんせ観客は目の肥えた奥方様ばかりなんだろ? 安もんじゃ笑われちまわぁ!」
流石師匠わかってるぅ!
「所で師匠この剣の意匠をそのままネックレスに転用できません? 記念品として売りたいんですけど?」
「ハァ!? この細かい装飾を更に小さくしろだと!? 馬鹿も休み休み言え! この阿呆弟子が!」
「アラアラ? 出来ないんですかぁ? やっぱりその指、太すぎるんじゃないですぅ?」
「ぐぬぬぬーーーっ小娘がああああ! 3日後にまたきやがれええええええ!!!」
この金の翼を広げた不死鳥のネックレス。ものすごく売れたわ。
「ワシ、刀匠やめて細工師になろうかな?」
「両方やれば良いんですよ」
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