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そして入学へ
47 ハの人は見た
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その子供に気が付いたのは長い行列の一番後ろに並んだハゲ……違う剃っている厳つい男だった。拳で戦う拳士のそのハ……頭を剃った男は、最近土曜日になると現れるどこかの物好き令嬢が趣味で施す回復魔法の待ち列に並んでいた時だ。
とても美しい少女なのだが、何せ口がちょっと悪い。しかしながら、高貴な貴族に良くある高圧さが全くなく、金もないが実力もない、そんな冒険者でも馬鹿にせずタダ同然の安価で回復魔法をかけてくれる。
「あ、私今、回復魔法の修業中なのよ、だから~私の経験値になるのよ!オホホホ!」
なんて金のない冒険者たちに負担にならないよう取ってつけた理由まで口にする……これが「姫聖女」か。マリエル・クラブ……この国の4大公爵家の一つクラブ家のクラブ・クイーン。突拍子もない事をすると噂だが、彼女の奉仕活動は有名だ。
貧民街の子供達を拾い集め読み書きを教えるなど、訳が分からんがそれで救われたガキが本当に多い。そして身につけた知識で貧民街を脱出し、働き始めた者が多い。これからそういう子供が成長し、この国の豊かさに貢献するだろう……。
それだけでもあり得ないくらい素晴らしいのに、今度は冒険者を癒すと言い出す。最初は皆、疑心暗鬼だったがマリエルの回復術の凄さと、恩を着せない物言いと本当にお金を少ししか受け取らない態度に徐々に心酔していった。
「神殿の回復は高い金を払っても少ししか治らんのに、マリエル様はすっかりきれいにしてくれる」
「新しい物だけでなく古傷もかなり良くなる」
「本当にお優しいなあマリエル様は……」
そうやってマリエルの回復を求める者達が列をなす、その一番後ろにうずもれるように青い顔の子供が並んだのだ。
「おい、坊主。前に行け」
「ひ……はい」
ハ……頭を剃っている厳つい冒険者に上から声をかけられ、子供は青い顔を更に青くして消え入らんばかりに委縮する。それでも彼はこの列から出ようとはしない。自分の前に子供を押し出し、ハ……頭を剃っている男はちらりと前をみる。
ハ……頭を剃った男の前には妙齢の美女がいる。厳つい男を胡散臭そうに見てから、男の視線が足元に落ちているのを見て……。
「あら、坊や。ちゃんと前を見てなきゃダメよ」
「え!?あ、はいっ」
自分の手に大切に包み持っているモノの気を取られて、列が進んだことに気づかない子供に声をかけ自分の前に入れてやる。その美女の前にいた若い男も
「坊主、前に詰めろ」
「はいっ!」
自分の前に子供を進ませる。こうして男の子は気づかぬまま、前へ前へと進みとうとうヒューイの目に止まる。
〈おいおい、自己中心的な冒険者共があんなガキに気を使ってんのかぁ?ったくこれも聖女様効果ってやつか?はー参ったね。〉
マリエルが行っている回復魔法をかける順番がきちんと整列されているのは、ヒューイがにらみを利かせているからだ。ヒューイはかなりの実力がある冒険者で割り込みや威張り散らす者たちを一睨みで退散させるだけの力がある。
その取り仕切っているヒューイがちょいちょいと手招きをする。子供を前に送れ、そういう合図だ。そうやって男の子とピーチェは最速でマリエルの目の前にやって来たのだった。
〈見るからに金がない貧民街の汚いガキ。だが、この姫聖女様なら……〉
「皆までいうな、皆まで言うな!」
「何も言ってねーよ!」
全員が思った通り、マリエルは小さな小鳥に持てる限りの回復魔法をかけるのだった。
とても美しい少女なのだが、何せ口がちょっと悪い。しかしながら、高貴な貴族に良くある高圧さが全くなく、金もないが実力もない、そんな冒険者でも馬鹿にせずタダ同然の安価で回復魔法をかけてくれる。
「あ、私今、回復魔法の修業中なのよ、だから~私の経験値になるのよ!オホホホ!」
なんて金のない冒険者たちに負担にならないよう取ってつけた理由まで口にする……これが「姫聖女」か。マリエル・クラブ……この国の4大公爵家の一つクラブ家のクラブ・クイーン。突拍子もない事をすると噂だが、彼女の奉仕活動は有名だ。
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それだけでもあり得ないくらい素晴らしいのに、今度は冒険者を癒すと言い出す。最初は皆、疑心暗鬼だったがマリエルの回復術の凄さと、恩を着せない物言いと本当にお金を少ししか受け取らない態度に徐々に心酔していった。
「神殿の回復は高い金を払っても少ししか治らんのに、マリエル様はすっかりきれいにしてくれる」
「新しい物だけでなく古傷もかなり良くなる」
「本当にお優しいなあマリエル様は……」
そうやってマリエルの回復を求める者達が列をなす、その一番後ろにうずもれるように青い顔の子供が並んだのだ。
「おい、坊主。前に行け」
「ひ……はい」
ハ……頭を剃っている厳つい冒険者に上から声をかけられ、子供は青い顔を更に青くして消え入らんばかりに委縮する。それでも彼はこの列から出ようとはしない。自分の前に子供を押し出し、ハ……頭を剃っている男はちらりと前をみる。
ハ……頭を剃った男の前には妙齢の美女がいる。厳つい男を胡散臭そうに見てから、男の視線が足元に落ちているのを見て……。
「あら、坊や。ちゃんと前を見てなきゃダメよ」
「え!?あ、はいっ」
自分の手に大切に包み持っているモノの気を取られて、列が進んだことに気づかない子供に声をかけ自分の前に入れてやる。その美女の前にいた若い男も
「坊主、前に詰めろ」
「はいっ!」
自分の前に子供を進ませる。こうして男の子は気づかぬまま、前へ前へと進みとうとうヒューイの目に止まる。
〈おいおい、自己中心的な冒険者共があんなガキに気を使ってんのかぁ?ったくこれも聖女様効果ってやつか?はー参ったね。〉
マリエルが行っている回復魔法をかける順番がきちんと整列されているのは、ヒューイがにらみを利かせているからだ。ヒューイはかなりの実力がある冒険者で割り込みや威張り散らす者たちを一睨みで退散させるだけの力がある。
その取り仕切っているヒューイがちょいちょいと手招きをする。子供を前に送れ、そういう合図だ。そうやって男の子とピーチェは最速でマリエルの目の前にやって来たのだった。
〈見るからに金がない貧民街の汚いガキ。だが、この姫聖女様なら……〉
「皆までいうな、皆まで言うな!」
「何も言ってねーよ!」
全員が思った通り、マリエルは小さな小鳥に持てる限りの回復魔法をかけるのだった。
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